農業食料工学会誌
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82 巻, 6 号
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研究論文
  • —低温期の生育抑制を評価する生体指標—
    坪田 将吾, 難波 和彦, 岩﨑 泰永, 深津 時広, 内藤 裕貴, 太田 智彦
    2020 年82 巻6 号 p. 593-600
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    促成栽培イチゴの生育を省力的に診断する生体計測手法開発のため,一季なり品種に特有な生理状態の変化を含む,低温期に地上部の生育が抑制される現象を評価できる指標を明らかにした。気温の異なる3つの試験区で生育を調査,比較した結果,新葉から第3葉の生体情報に生理状態によると考えられる違いがあった。生産現場で用いられる第3葉の葉柄長は生育抑制の様子をよく表していたが,第2葉を経時計測することで生育抑制の状態変化をさらに早く捉えられることが明らかになった。一方,新葉の葉柄長や葉面積では変動が大きく指標としては不適であったが,発生頻度や草高によってさらに早く生育抑制の状態推測が可能なことが明らかになった。

  • 船引 邦弘, 佐藤 禎稔, 藤本 与
    2020 年82 巻6 号 p. 601-608
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    ポテトハーベスタは,バレイショの作付面積の増加に対応するため,これまで以上の作業精度と能率の向上が求められている。本研究は,高性能な次世代型ポテトハーベスタの開発に向けて,現行機の作業精度試験と作業能率試験を行い性能の比較評価を行った。その結果,国産オフセット式は,旧型の食用インライン式よりも作業精度と能率の両面で優れており,でん原インライン式は作業能率に特化して開発されたことが明確になった。国産新型オフセット式は海外製オフセット式と比較して塊茎の損傷率では4.0ポイント優れており,海外製オフセット式は国産機の1.3倍の能率であり,栽培規模が大きい農家向けに開発されていることが示された。

  • 五十嵐 翔, 海津 裕, 堤 俊雄, 芋生 憲司
    2020 年82 巻6 号 p. 609-616
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    草刈作業の省力化を目的として,低コスト1周波GNSSコンパスと低コスト1周波RTK-GNSSを用いたロボット草刈機の自律走行制御システムの開発を行った。自律走行試験を行った結果,横方向の誤差は2.4 cm RMS,ヘディングの誤差は2.1°RMSであった。横方向の誤差10 cm以内ならば刈り残しが発生しないため,本研究で開発した自律走行制御の有効性が確認された。そして,低コスト1周波GNSSコンパスは方位角測定のセンサとして有望であることが示唆された。本研究の成果により,低コストで自走式の機械に自律走行機能を付加できる可能性が示された。

  • —試作機の播種性能—
    重松 健太, 大野 智史, 高山 定之, 遠藤 準, 難波 和彦
    2020 年82 巻6 号 p. 617-623
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,湿潤土壌に対応した大豆用高速畝立て播種機の開発を行っており,本報では新たに開発した試作機の播種性能を試験した。既存の耕うん同時畝立て播種機は,アップカットロータリを用いるため作業速度が0.3~0.6 m/sと低速で,湿潤土壌では土の練り付けが課題であった。試作機は乾燥土壌条件では1.6 m/sで作業可能であり,出芽率は90 %以上であった。また,土壌の液性指数が1を超える湿潤土壌条件下では既存機の2倍の速度である1.2 m/sで作業可能であった。出芽率は,既存機では土壌表面のクラストにより大きく低下した一方で,試作機では90 %以上を維持した。試作機は既存機より湿潤土壌への適応性が高いことが明らかとなった。

  • 田邊 大, 市浦 茂, 中坪 あゆみ, 小林 隆, 片平 光彦
    2020 年82 巻6 号 p. 624-635
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    本報はUAVをバレイショ生産におけるリモートセンシングデバイスとして利用し,そこで得られる画像情報と収量データを基に構築したCNNによる画像の回帰を応用した収量予測を検討した。実験は施肥を6段階に設定したほ場で行い,開花期における空撮画像の取得と生育,収量調査を行った。収量予測は,生育データを基にした回帰分析と,空撮画像と収量データを組み合わせたデータセットでCNNによる画像の回帰を応用した収量予測モデルを構築した。空撮画像は処理区によって被覆の違いが確認され,生育の進行に伴い草丈に処理区間差が生じた。CNNによる収量予測モデルは,各生育ステージで回帰分析よりも高い精度で収量を予測できた。

  • 曽我 綾香, 吉田 誠, 黒木 信一郎, 蔦 瑞樹, 中村 宣貴, 今泉 鉄平, タンマウォン マナスィカン, 中野 浩平
    2020 年82 巻6 号 p. 636-641
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    ホウレンソウの鮮度を反映する放散揮発性化合物を特定するために,ガスクロマトグラフィー・質量分析計(GC-MS)によるメタボロミクス解析を行った。5,15,25 °C貯蔵時に生成される揮発性化合物をガス吸着管で捕集し,加熱脱着法によりGC-MSへ導入した。揮発性化合物量から貯蔵積算温度を推定するPLS回帰分析によって,テルペン,アルコール,炭化水素及び未同定を含む10種類の化合物が鮮度を説明する重要な物質として選択された。さらに,階層クラスター分析から,これらの化合物の構成比で貯蔵積算温度を3段階に推定できることが示された。これらのことから,放散成分プロファイリングはホウレンソウの鮮度評価に有用であることが示唆された。

  • —培養工程の照射タイミングが子実体発生に及ぼす影響—
    岡田 晃治, 難波 和彦, 門田 充司, 柏野 泰章
    2020 年82 巻6 号 p. 642-649
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    近年,シイタケ生産のほとんどを菌床栽培が占めている。栽培は環境を制御して行われるが,光環境については,培養や発生に必要なこと以外,あまり明らかになっていない。本研究では,培養工程における光環境に注目し,照射タイミングが子実体発生に及ぼす影響を検討した。照射開始が培養開始から15,30日目と遅くなるに伴い発生個数が減少した一方で,生体重と直径は増加した。このことは,1次培養における照射タイミングをコントロールするだけで,任意の大きさの子実体を作り出せる可能性を示唆した。しかし,発生を適温下で行うと,これらの差は無くなった。培養工程の光環境の最適化には,発生環境の考慮も必要であることが示唆された。

技術論文
  • 松尾 誠治, 梅田 大樹, 岩崎 泰永
    2020 年82 巻6 号 p. 650-658
    発行日: 2020/11/01
    公開日: 2023/04/29
    ジャーナル フリー

    本研究では,トマト栽培の草勢状態を判断する指標の一つとして,株画像から花・果実と葉・茎の面積比を画像認識する学習システムを構築した。しかし,これらの画像解析の前処理として行われる物体のラベリングなどのアノテーション作業には,多大な計算コストがかかる。そこで,著者らは誤差逆伝播を用いた教師なし学習によるクラス分けと教師あり学習の物体検出を組み合わせた半教師あり学習によるセグメンメンテーション手法を提案した。その結果,花・果実と葉・茎との面積の割合を高い正答率をもって認識することができ,計算コストを軽減した提案システムの有効性が示唆された。

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