自律走行を行うロボットコンバインの安全対策として,イネ収穫期の圃場内における人を画像処理によって検出する手法の開発を行った。圃場で人がいる場合といない場合の写真を撮影し,人がいる場合は人の検出と位置の特定を行った。これまでに画像処理によって人を検出する手法として,テクスチャ特徴量を使った手法を開発したが,画像奥側やイネ倒伏部分の検出精度が悪かったため,本研究ではウェーブレット変換によるテクスチャ特徴量と顕著性マップによる色特徴量を用いた手法を開発した。本手法は同一の画像データに対して従来の手法と比べ約19.3%検出精度が向上したため,テクスチャ特徴量に加え,色特徴量を用いることの有効性が確認できた。
傾斜地を走行するトラクタ挙動は上下・ピッチング・ローリングおよび前後進により表現可能であることから,前輪にスイング機構を有するトラクタのこれらの運動方程式を用いて,支持条件の違いによる挙動特性について考察を行った。また実際に転倒事故が起きた傾斜地における挙動シミュレーションを行い,重心変化による前後転倒への影響について考察を行った。その結果,スイング機構が有る場合は後輪に作用する反力に依存した挙動を示し,無い場合は前後輪の反力に依存した挙動を示すことを明らかにした。また,本供試条件において前後方向への転倒事故を防止する重心位置は後軸から軸距の32~65%であり,最適値は49%の位置にあることを明らかにした。
法面で草刈作業を行い,肩,腕,大腿の筋電図を測定した。筋電図の積分値と作業面積から身体各部負担を算出した。動力刈払機と自走式モアの違いが,負担にどの程度の影響を及ぼすのか比較検討し,負担の小さい作業機械を明らかにした。その結果,実作業時の負担は,自走式モアの方が肩で47%,腕で66%,大腿で58%小さく,ロスタイムの負担は,動力刈払機の方が肩で53%,腕で42%,大腿で13%小さかった。実験区での全作業時の負担は,自走式モアの方が肩で30%,腕で56%,大腿で50%小さかった。widthとlengthが異なる多数の法面を想定すると,widthとlengthによって,負担の小さい作業機械が入れ替わることがわかった。
自走式の小型農具(耕うん機,除草機,畝立機等)は開発途上国において有用であり,その効果は所用動力とともに評価するべきであるが,動力測定は空間の制約があり難しい。本研究では,エンジンの回転反力を直接測定し,スリップリングなしで歩行型除草機を動力測定できる装置を製作した。本体との接続部を改造してエンジンが軸まわりに回転できるようにし,ロードセルで支持して検出した力をエンジン軸トルクに換算した。室内におけるロータ軸トルクとの較正では決定係数0.98,負荷をランダムに設定した推定では二乗平均相対誤差4.2%を得た。これにロータ軸回転数を乗じ,圃場にて精度よく連続的に動力測定ができるようになった。
本研究では刈払機のハンドル部振動低減のため遠心クラッチの質量をアンバランス化した。刈払機ハンドル部振動に及ぼすクラッチカバーの上下,左右方向振動寄与を,実稼働伝達経路解析を用いて分析したところ,ハンドル前後方向振動はクラッチ左右方向振動の影響が高いことが判明した。そこでクラッチシューに微小な錘をカウンターウェイトと逆相側に付加することによりクラッチ質量をアンバランス化した。その結果クラッチの上下方向振動は僅かな増加が見られたものの,寄与の高い左右方向振動は大幅に低下した。そして高寄与部位振動を重点的に低減することでハンドル前後方向の振動加速度レベルを10dB程度大幅に低減することができた。
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