トラクタは傾斜地での旋回時に転倒の危険性が高く,遠心力の転倒への影響を把握することは,農作業安全の観点から重要である。本研究では,トラクタの遠心力を考慮した上下・ピッチング・ローリング・前後方向の4自由度の運動方程式を立案した。また,機体にかかる遠心力を模型実験により確認するとともに,剛性路面上での旋回時のトラクタ挙動解析を行った。その結果,実験により走行速度4.0 m/s以下の範囲において遠心力の理論値と実測値が良い一致を示した。また,向心加速度4.0 m/s2 程度において緩傾斜地で転倒に至ることが示され,転倒防止のためには傾斜地での旋回時は走行速度をできるだけ低くする必要性が示された。
自動化とロボット化が進むコンバイン作業の安全性と作業精度の向上を目的として,カメラで撮影した収穫シーンから周辺環境をピクセル単位で分割するアルゴリズムを開発し,その処理速度と精度を明らかにした。収穫シーンは,既に収穫した領域,未収穫の領域,畦およびその他の4つに分割された。同じデータセットに対して異なるネットワークの処理速度と精度を測定した。その結果,すべてのネットワークは,4つの領域分割が可能であり,コンバイン収穫時の周辺環境を精度良く分割できた。最も精度の良いネットワークでは,ピクセルの分割精度,領域に分割する精度の平均および平均IUは,それぞれ95.17 %,86.08 %および80.07 %である。
一輪歩行型田植機の懸架装置を簡略化することを本研究の目的とする。改造した田植機に車輪のピボット懸架装置を搭載し,固定装置の操作により自由ピボット懸架と固定懸架を切り替えるようにした。耕盤の深さが変化する水田にて,自由ピボット懸架では本体のピッチ角が平均1.8° と安定していたのに比べ,固定懸架では平均4.7° で車輪の沈下とともに変化する傾向にあった。車輪に98 Nの荷重を付加することにより,均一な耕盤の水田での自由ピボット懸架での滑り率を半減することができた。
イチゴのトラック輸送時における緩衝包装の保護効果について環境面から評価を行うため,輸送時の損傷を考慮したLCAを行った。併せて,ホットスポット分析により負荷の大きいプロセスの特定を行った。包装条件および輸送距離条件ごとに輸送振動試験を行い,得られたイチゴの損傷率から緩衝包装の有無による環境負荷の比較を行った。ライフサイクルにおいて,「イチゴの生産(施設栽培)・出荷準備」段階における環境負荷が最も大きな寄与度(81.2~99.1 %)を示すことが明らかとなった。緩衝包装が持つ保護効果により,損傷分を補うために生じる追加のイチゴ栽培およびそれに伴う環境負荷が抑制され,緩衝包装なしの条件と比較して環境負荷が低くなった。
燃料消費量算出の基礎となるエンジン出力の簡易な推定法を用いて,北海道の土壌におけるロータリ耕うん時に要するエンジン出力を推定した。PTO軸出力は耕うん体積比動力量(kWh/m3)から推定した。けん引出力比(エンジン出力に対するけん引出力の比)は土性・ほ場表面の状態別に示した。土壌物理性から計算したPTO軸出力とけん引出力比から計算したけん引出力等を合計したエンジン出力を,ダイナモメータ試験から算出したエンジン出力と比較した結果,3 kW程度高く算出されるが,両者を要因とした回帰式の傾きは1.0に近く,空知地方の低地土および十勝地方の火山性土における推定精度は実用上問題ないことが示された。
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