ちふす菌ヲ注入スレバ虫様突起ハ己ニ12時間ニ於テ炎症ヲ惹起シ, 時日ト共ニ強度ノ組織的變化ヲ見ル, 虫様突起炎症ノ原因ニ就テ論議アルモ菌ノ注入ニヨリテ腔内ヨリノ直接感染ナルヲ立證シ得ベシ.
此際血中凝集價ノ静脈内免疫ニ比シ, 遙カニ低度ナルハ一面菌ノ血液内浸入ノ少量ナルニ因ルモノナル可シ.
然シテ虫様突起内ニ鼠ちふす菌ヲ注入シテ腸管各部ニ於ケル菌ノ存在ヲ檢スルニ虫様突起ニハ四週間, 盲腸, 結腸ニハ十日乃至二週間存在スレドモ十二脂腸及回腸ニハ檢出シ得ズ, 余ハ此ノ事實ヨリシテ後腸各部ニ於ケル凝集素ノ状態ヲ長期ニ渉リテ檢セルニ, 十二脂腸, 回腸ニ比シ遙カニ多量ナルヲ見タリ, 虫様突起ニ於テハ其ノ炎症ニヨリ血量増加ガ凝集素ノ増量ニ影響アリト雖モ其ノ増加ノ程度二倍量ヲ越ヱズ, 然ルニ組織内凝集素ノ増量ハ遙カニ多量ニシテ尚ホ組織液ハ之ニ食鹽水3倍量ヲ加ヘタルモノナルヲ以テ組織内凝集量ヲ3倍セバ血清ノ凝集價ヲ凌グコト遙カニ大ナルベク, 故ニ血量ノ増加ニ因ツテ招來セシ凝集素ト見ルハ不穏當ニシテ, 恐ラク組織内ニ産生セラレタルモノト推考シ得ベシト信ズルハモノナリ, 而シテ次ノ事實ハ余ノ所謂局所抗體産生テフコトヲ雄辨ニ立證シ得ルモノナリト信ズ.即チ虫様突起ノ外盲腸, 結腸ニ於ケル抗體ノ産生ナリ, 此部ハ虫様突起ノ如ク該菌ニヨリ病理的變化ヲ惹起セザルモ, 正ニ十二指腸及回腸ニ比シ凝集量多量ナリ, 是レ虫様突起ヨリ流入スル鼠ちふす菌ガ常ニ此部ヲ刺戟シテ凝集素量ヲ増加セシモノト推考シ得ベケレバナリ, 是等凝集素量ハ菌ノ存在セザル十二指腸, 回腸ニ比シ, 又静版内免疫ノ際ニ於ケル組織内抗體量及ビ炎症ニヨル影響ノ有無ヲ參酌シテ熟察スルニ所謂Wassermann.及ビCitron氏等ニヨリ唱ヘラレタノレガ如ク組織内ニ於テ産生セルモノ即チ局所免疫ニ因ルモノト思考セント欲ス.

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