土木学会論文集B1(水工学)
Online ISSN : 2185-467X
ISSN-L : 2185-467X
74 巻, 4 号
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水工学論文集第62巻
  • 中谷 加奈, 里深 好文
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1201-I_1206
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     土石流の到達範囲には発生規模と地形条件が影響する.地方自治体の設定する警戒区域は,災害履歴と勾配を基に一つの規模を想定して設定されるが,近年は局地的な豪雨等の影響で,より大規模な土石流が多く発生傾向にある.近年,詳細な解像度の地形データが入手可能であるが,到達範囲を検討する際の適切な解像度は十分に把握されていない.本研究では災害事例を基に土石流の発生規模を分類して,異なる発生規模について解像度の異なる地形データで数値シミュレーションを実施した.結果から,小規模の土石流では解像度の違いが影響し,特に流路の地形データへの反映が到達範囲に影響することを示した.
  • 岩崎 理樹, 井上 卓也, 矢部 浩規
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1207-I_1212
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究は,急流河川に発生する三角波が河川構造物に及ぼす影響を把握する水理実験を実施するものである.移動床条件で三角波が発生する水理条件においても,平坦固定床条件では三角波が発生しないことを利用し,固定床と移動床条件で底面に設置されたブロックの移動特性の違いについて比較した.実験結果より,平坦固定床条件で移動しない条件であっても,三角波が発生することでブロックが移動する可能性があることがわかった.三角波発生条件で生じる水面波と河床波による瞬間的な高流速や,反砂堆上に生じる上昇流がブロックの不安定化に寄与していることが示唆された.この結果は,三角波の発生を想定せずに,平坦固定床条件でブロックの設計重量を計算すると,危険側の設計となることを示唆している.
  • 佐藤 裕和, 肱岡 勝成, 深田 耕太郎, 遠藤 雅実
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1213-I_1218
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     堤内地に設置された水防林の洪水氾濫流木の捕捉効果について,1/100スケールの水理模型実験を行い検証した.氾濫流量は約5×10-3m3/s,流木は直径3mm,気乾密度約640kg/m3の木材を長さ3, 4, 5cmにして用い,水防林は樹径3.05mm,樹林中心間隔3cmで正方格子状に配置し,水防林幅は0, 0.1, 0.2, 0.4mとした.樹林間隔と同程度の長さを持つ3cmの流木では,いずれの水防林幅でも堤内地への流入流木に対する水防林での捕捉は見られなかったが,流木長と水防林幅の増大とともに捕捉率が上昇することが確認された.すなわち,4cmの流木では水防林幅0.1, 0.2, 0.4mに対してそれぞれ平均約7.4, 11.1, 14.1%の捕捉率,同様に5cmではそれぞれ平均約45.6, 45.7, 58.1%となり,氾濫流木の堤内地への流入を半量程度抑制した.また,捕捉流木の水防林内での空間分布を見ると,破堤口沿いの前面に集中することが明らかとなった.
  • 原田 紹臣, 高山 翔揮, 中谷 加奈, 里深 好文, 水山 高久
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1219-I_1224
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     平成29年7月に九州北部で発生した豪雨災害において,多量の流木流出に伴って多大な被害を受けた.これを受けて,現在,砂防施設の管理者は既設不透過型砂防堰堤の前庭部(副堰堤等)における流木捕捉工の設置等により,既設堰堤を有効に活用した流木対策の推進が求められている.しかしながら,これらの流木捕捉工の構造や捕捉機構に関してはこれまで充分に議論されていないため,これらに対して更なる技術知見の収集が急務となっている.そこで,流木の流出移動に伴う流木の回転について着眼した基礎的な水理実験により,前庭部における流木捕捉工に関する新たな構造(越流堰)について提案している.なお,実験結果によると,四角の断面形状を保有する越流堰を流木捕捉工と落水部との間に付加的に設置した場合,捕捉工における捕捉効果に対して有効となることが分かった.さらに,実験結果より,流木の回転運動は流速場の変化等に影響を受けることが示唆された.
  • 森下 慧, 田上 雅浩, 岡田 将誌, 肱岡 靖明, 平林 由希子
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1225-I_1230
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     灌漑は干ばつに対する有効な対策の1つであり, 灌漑による干ばつ時の穀物生産損失への低減とその設備投資費用を全球規模で推定することは,気候変動に対する適切な緩和策と適応策のバランスを議論する上で重要である.本研究では,生産循環カップルモデルを用いて,灌漑による干ばつ時の穀物生産損失のポテンシャル低減効果を全球で評価し,さらに406件の文献を基に構築した費用算定モデルを用いて,灌漑設備投資費用を推定した.モデルで示された灌漑のポテンシャル低減効果はオーストラリアにおいて最も大きく,アメリカでは小さかった.各国の灌漑設備投資費用とGDPとを比較し,灌漑設備導入の実現性を調査したところ,スリナムやモーリタニアでは自国のみで導入可能だが,アルメニアでは灌漑以外の対策を実施する必要があることがわかった.
  • 町田 陽子, 二瓶 泰雄, 倉上 由貴
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1231-I_1236
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     河川堤防は横断面の「点」の安全性評価が主であり,「線的」構造物としての検討事例は非常に少ない.本研究では,河川堤防の線的構造物としての浸透能の評価を行うために三次元浸透実験・浸透流解析を行った.実験では,堤体の縦断方向長さを大きくした堤体模型を設置し,定水位浸透実験を行った.その結果,均質材料を用いた土堤では,堤体模型作製時の縦断方向の区切りの有無により透水係数のバラつきやのりすべり状況が異なり,かつ,区切り無のケースでも浸透能の縦断方向変化が卓越していた.また,裏のり尻のドレーン工は部分的な設置でものりすべり抑制に寄与していた.さらに,三次元非定常浸透流解析では,透水係数の縦断方向の不連続変化により,境界部付近における大きな浸透混合層が形成され,浸透能の縦断方向変化の重要性が示唆された.
  • 佐藤 豊, 大渕 貴, 福岡 捷二
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1237-I_1242
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本論文は,空中写真からの旧河道判読と土質構造を河川縦断方向で整理することによって,基盤漏水が発生する旧河道の抽出,土質構造の関係を検討し,堤防弱点箇所の抽出検討に資することを目的とする.梯川堤防の漏水実績から,基盤漏水発生箇所は氾濫原と谷底平野の境界付近の旧河道で発生し,主に基礎地盤の透水層の透水係数とその上位にある表層の土質と層厚に関係することが確認された.また,古府地区の3箇所の漏水発生に伴う堤防変状形態の比較検討から,パイピングと堤防変状の関係は,パイピングが発生する砂粒子の粒度特性とその砂層の層厚,分布深度及びすべり滑動側の荷重を示す堤防形状に影響されることを示した.
  • 島田 友典, 渡邊 康玄, 横山 洋, 米元 光明
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1243-I_1248
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,堤防決壊が頻発する中,破堤被害軽減技術の構築は重要であるが,技術検討を行うには破堤現象の解明が不可欠である.現象解明を目的として千代田実験水路を用いた破堤実験を行うことで様々な知見を得ているが,それらは限られた河道条件下で求められたものである.そこで縮尺模型実験,および千代田実験をもとに開発された数値計算モデルを用いて,河道横断形状の相違が破堤現象に与える影響について検討を行った.単断面と複断面河道において氾濫流況や破堤拡幅形態などの現象が定性的には同じであること,高水敷幅が分岐流線幅より狭い場合には氾濫流量を増加させる危険性があることなどを示した.
  • 森田 大詞, 川尻 峻三, 川口 貴之, 渡邊 康玄, 田中 悠暉, 古溝 幸永
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1249-I_1254
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     2016年北海道豪雨の際,常呂川では多数の噴砂が発生した.本研究では,この噴砂の発生要因を解明するため,発生した噴砂の規模と河川水位や河川縦断方向の土質との関連性について調べた.さらに,地盤調査によって噴砂が発生した周辺地盤の特性について把握した.その結果,裏のり尻から噴砂発生地点までの距離が大きくなるほど,噴砂の規模は小さくなる傾向にあることがわかった.また,噴砂より堤内側には行き止まり難透水性箇所と考えられる透水性の低いシルト質土層の分布が確認できた.さらに,表面波探査によって噴砂発生箇所に特徴的な地盤性状も把握できた.
  • 上村 勇太, 福岡 捷二, 田端 幸輔
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1255-I_1260
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     洪水時の堤防の浸透破壊危険性を評価するためには,水位上昇から降下時を含めた一連の水位ハイドログラフに対する堤体内浸潤線解析法が必要である.本研究では,水位上昇から降下に至る堤体内水面形が計測された大規模堤防浸透実験結果を用いて,洪水時の外水位上昇・降下時の浸潤線解析法をポテンシャル理論に基づき提案している.すなわち,流線網解析を用いて導いた浸潤線形状の式と,堤体内の水の連続関係から非定常堤体内浸潤線の解析手法を構築した.この方法を大規模堤防浸透実験結果に適用し,堤体内の浸潤線形状の時間変化過程を説明している.
  • 倉上 由貴, 二瓶 泰雄, 安井 智哉, 桜庭 拓也, 佐藤 佑太, 入江 美月
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1261-I_1266
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     河川堤防における地震・洪水の複合災害の実態解明やその技術開発を行うべく新たに導入した地震・洪水複合災害用水路を用いて,加振・浸透実験を行い,浸透条件下の河川堤防の耐震性や浸透対策工の耐震効果を検討した.まず,基礎地盤のみ浸潤させたケースと表のり面に河川水として一定水位与えたケースでの加振実験を行い比較したところ,表のり面の河川水が押え盛土のような効果を発揮し,基礎地盤のみ浸潤させたケースよりもはらみだしや沈下を抑制した.また,堤体の変形が生じるとともに過剰間隙水圧の値も上昇することが分かった.裏のり面薄層ドレーン工では,ドレーン工が過剰間隙水圧を消散し,天端沈下を抑制し,浸潤面低下のみならず加振時の過剰間隙水圧上昇を抑制していることが明らかとなった.
  • 植村 昌一, 宇治橋 康行, 平松 晋也, 鈴木 博人
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1267-I_1272
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     鉄道では,降雨災害が発生する恐れがある場合には,列車の安全性を確保するために,運転中止などの運転規制が行われる.しかしながら,降雨災害は,運転規制の発令前に発生する場合がある.鉄道の安全性の更なる向上のためには,これらの災害に対して対策を講じることが重要である.本研究では,これらの降雨災害のうち,自然斜面の崩壊の一事例に着目した.そして過去に発生した強雨に対する斜面の安定性について,物理モデルを用いて定量的に評価した.またさらには,崩壊の捕捉性向上のため,降雨流出解析から求めた貯留高に基づく危険度評価指標を提案し,斜面安定性との関係を分析することにより,その有効性を示した.
  • 川尻 峻三, 川口 貴之, 渡邊 康玄, 宮森 保紀, 川俣 さくら, 御厩敷 公平, 金子 大輝, 高橋 大樹
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1273-I_1278
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     2016年8月に発生した北海道豪雨災害では,橋台背面盛土の侵食・流失とそれに伴う道路陥没による被害が顕在化した.そこで本研究では,既設道路橋と旧鉄道橋を対象として橋台背面盛土の性状を把握するため地盤調査を実施した.また,流水作用時における橋台背面盛土の基礎的な侵食過程を観察するために水理模型実験を行った.地盤調査から,右岸と左岸では盛土材料の土質に違いはなかったものの,S波速度分布は異なっていたため,右岸と左岸の橋台背面盛土では密度や含水比などの地盤性状が異なっていると考えられる.また,水理模型実験から模型盛土の侵食は橋台と盛土の境界部で発生し,橋台内部へ侵食が進行すること,最終的な崩壊形態は被災した橋台と同様であることが確認された.
  • 篠原 麻太郎, 二瓶 泰雄, 倉上 由貴, 鈴木 健吾
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1279-I_1284
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,国交省の「水防災意識社会 再構築ビジョン」における危機管理型ハード対策として,越水に対して簡易的な天端補強工法を検討するために,小型・大型模型による越水実験を行った.天端補強の工夫点としては,天端の欠落を抑制する“天端一体化工法”と,天端の一体化された部分を裏のり肩の一部まで引き延ばす“天端-裏のり肩一体化工法”を提示し,耐越水性向上効果を検証した.その結果,両工法では,天端が欠落せず,越流水の剥離位置が裏のり肩に固定され,かつ,越流水の着水位置を下流側にすることができた.その結果,堤体土の侵食面と着水位置の距離が大きくなり,侵食面近傍の流速が低下し,堤体土の侵食速度を大幅に抑制できた.この“ひさし効果”は.着水位置をより下流に移動できる天端-裏のり肩一体化工法の方が優位であることが示された.
  • 長谷見 優, 田中 規夫
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1285-I_1290
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     荒川流域など洪水常習地帯に江戸時代に発達した水塚には,水除け機能を持つとされる構え堀が併設されている場合がある.しかし,設置理由には水塚のための盛土材料を取るためなど諸説あり,その減災機能は明らかになっていない.本研究では,構え堀構造の持つ水除け機能を水理実験で明らかにすることを目的とした.既往文献や現地観測を踏まえた調査により,構え堀のタイプを前面型,L字型,馬蹄型に分類した.構え堀,屋敷林,水塚をモデル化した屋敷模型を作成し,構え堀タイプと堀がないケースを合わせて7ケースで実験を行い,水面形と流体力を計測した.吉見地方に多く存在した構え堀の形態である幅の広い前面型と馬蹄型の構え堀は,水塚の避難所(倉)における水位,流体力ともに大きく減少させた.
  • 井上 卓也, 中谷 剛, 矢部 浩規
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1291-I_1296
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,豪雨の増加に伴い避難勧告の数も増加している.旅行者や外国人などその土地に明るくない人が避難勧告を受けた場合,避難場所とそこまでの経路を検索する必要がある.しかし,洪水時の浸水域は時々刻々と変化するため,携帯のルート検索機能などで示された経路が本当に利用可能かは不明である.
     本研究では,リアルタイムの内水氾濫予測と浸水域を考慮した経路検索機能を組み合わせ,リアルタイムの避難経路検索システムを構築した.また,2014年9月の北海道豪雨における新千歳空港周辺の通行止め状況を用いて構築したシステムの検証を行い,本システムによって当時の通行止め状況を精度良く再現できることを確認した.
  • 佐山 敬洋, 寶 馨
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1297-I_1302
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     時々刻々と変化する浸水状況を把握することは,水害対応や安全な避難にとって不可欠である.現状では自治体職員や水防団による巡視,住民からの通報など断片的な情報を頼りに被災状況を推定しているが,これらの情報をいかに面的に集約するかが今後の課題である.本研究は,現地の浸水情報と,事前に実施する多数の氾濫シミュレーションを同化する技術を提案する.この手法は,各シミュレーションの尤度を逐次更新して重み付き平均する第一次推定と,地点間の相関関係を反映して補正量を最適内挿する第二次推定で構成される.仮想的な氾濫に適用した結果,第一次推定で大まかな浸水深分布を捉え,第二次推定で観測地点周辺を詳細に補正する挙動を確認した.また分散共分散行列の設定法を検討して,誤差を含む非連続の情報を同化した場合の結果を示した.
  • 武内 慶了, 福島 雅紀, 諏訪 義雄, 天野 邦彦
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1303-I_1308
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     洪水到達時間が短く河川水位の上昇速度が大きい中山間地域を対象に,逃げ遅れによる人的被害の防止を目的とし,避難行動の実態を踏まえ減災効果を発揮するハード対策(減災システム)の設計時に必要となる重要な観点について検討した.具体的には,中山間地域に数多く存在する霞堤及び谷底平野部を例に取り上げ,霞堤背後に二線堤を設置する方法を想定し,平面2次元流況計算を通して考察した.その結果,1)目の前の浸水といった危機的状況においても避難が可能となる時間を延ばすこと,2)それを実現するために既存施設の利点を残すこと,3)幅広い洪水外力規模において所定の効果が発揮されること,等の重要性を見出した.
  • 関根 正人, 斎藤 涼太
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1309-I_1314
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     想定を超える規模の局地的集中豪雨によって引き起こされる道路冠水による被害が各地で多発している.本研究の対象領域とした東京都心部は国道や都道の起点や終点が存在し,東京郊外と比べると交通量の多さが際立つ.そのような,道路が車両に占有されている状況では,車両の体積分に応じて地上浸水深が増大し,内水氾濫被害の深刻化を招くことが懸念される.本研究では,道路交通センサスのデータから道路の混雑状況を定量化し,従来の都市インフラ情報に加えて,新たに定義した指標を組み込んだデータベースの作成方法およびそれを用いた浸水予測手法を確立した.当手法を適用し,車両の存在を考えた場合の予測計算の結果を,既存の車両のない場合の計算結果と照らし合わせることで,道路の混雑がどれほど浸水の深刻化に影響するかを明らかにした.
  • 井上 亮, 大津 颯, 井内 加奈子
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1315-I_1320
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,地球温暖化により大規模水害が頻発すると懸念されており,ソフト防災対策の強化も求められている.ソフト防災対策の成否は,住民が水害危険度を適切に認識しているかに依存するが,その実態は明らかではない.本研究は,住民が経験した水害の被災規模が危険度認識に与える影響を評価するため,詳細な浸水深データが整備されたニューヨーク市の沿岸部のハリケーン・サンディによる被災住宅地を対象に,不動産取引価格と浸水深の関係をヘドニック・アプローチを用いて分析した.その結果,浸水深の増加に伴う不動産取引価格下落が確認され,被害規模に応じた水害危険度認識形成の可能性が示唆された.
  • 三好 学, 田村 隆雄, 武藤 裕則, 安藝 浩資
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1321-I_1326
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,全国規模で整備されているオープンデータを用いて,広域かつ詳細な浸水深分布を得ることを目指して,内水氾濫解析モデルを構築する.平成26年台風11号を対象とし,徳島県東部県土整備局の管轄領域(50km×45km)において地表面モデルのみで解析を行う.この地表面モデルは,準線形貯留型モデルを用い,流末に到達した流量を算定し,その流量分を地表面モデルの湛水量から差し引く機能を追加した.堤内に残った湛水量から得られた浸水深分布を,それより狭い領域メッシュの地盤標高モデルに反映させることにより,詳細な浸水深分布を得る.これにより求めた計算水位と平成26年台風11号時の観測水位とを比較し,内水解析モデルが田の冠水,家屋の浸水の判別ができることを検証した.
  • 矢野 真一郎, 土橋 将太, 笠間 清伸, 竹村 大, 富田 浩平, 楊 東, 津末 明義
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1327-I_1332
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     平成24年と同29年の九州北部豪雨で被災した花月川流域を対象に,矢野ら(2016)により開発された流域全体の流木発生ポテンシャルと橋梁位置での相対的流木災害リスクの評価法に斜面の地質と降雨量から斜面崩壊危険度を評価するモデルを組み込む改良を試みた.また,温暖化後の状況を想定し,1時間雨量の確率年ごとの流木災害リスク評価を行い,流木発生に対する温暖化の影響評価を実施した.その結果,温暖化の進行に伴う降雨強度の増加が流域の流木発生ポテンシャルと橋梁の流木災害リスクをともに増加させるが,その変化傾向は異なることが明らかとなった.
  • Eva Mia SISKA, Takahiro SAYAMA, Kaoru TAKARA
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1333-I_1338
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     In most developing countries, a water use shift to urban centers and the tourism industry, is often implemented to increase total economic welfare. The shift in water use and lack of water availability due to spatial and seasonal variabilities often create social tensions and become a source of conflicts among sectors. This study focuses on Bali (Indonesia) as one of the world's most well-known tourist destinations, where conflicts among sectors have recently increased. In order to understand Balinese spatial and seasonal variabilities in water use, this study estimated water use on this island from 1994 to 2013. The results suggest that even though there is an economic shift from agriculture to tourism, there is still an increasing trend in agricultural water use from 2003. This study also identifies Badung Regency and Denpasar City as regions prone to conflict. This is because, in addition to high water use and low water availability, the regions have many competing different sectors. Thus, better accuracy in predicting hydrological variation is required.
  • Hue Thi DAO, Keiichi MASUTANI, Hiroshi ISHIDAIRA
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1339-I_1344
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     Coastal zones are productive areas for agriculture and fisheries. However, these areas are influenced by salinity intrusion. Saline water can be used to develop brackish fish farming, but it may reduce rice paddy yields. To understand the relationship between water withdrawal and salinity intrusion as well as water quantity and quality issues, the hydrodynamic model MIKE HYDRO has been applied to four water diversion scenarios in the Soc Trang and Bac Lieu provinces of Vietnam. The results showed that there is sufficient water available to meet all demand in terms of water quantity. However, salinity intrusion damages rice farming, and shrimp farming is impacted by low salinity. The model simulations for all scenarios displayed a lack of downstream freshwater releases that created regional conflicts over water resources. Investigations of salinity changes from water withdrawals can augment future water diversion plans to more effectively supply water to all end users as well as reduce conflicts from lack of water.
  • 宮本 守, 松本 和宏
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1345-I_1350
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     近年の降雨観測技術の向上により洪水氾濫を引き起こす集中豪雨の降雨強度や時空間分布を正確に捉えることが可能になり,それに伴って洪水予測の精度も向上している.しかしながら洪水予測の際には降雨データ等の入力データの他に,モデル構造やキャリブレーション等の誤差要因も挙げられる.本研究では土研分布モデルのパラメータを最適化した際の誤差の収束結果と河川流量の再現性に着目し,キャリブレーションに起因する誤差を最小にした条件下で地上観測雨量とC-bandレーダ雨量の洪水予測に対する信頼性を比較した.誤差の収束結果はC-bandレーダ雨量の方が優れていることが示されたが,地上観測雨量でもNash-Sutcliffe指標が0.96以上の高い再現性であることがわかった.一方で,誤差評価地点以外での再現性はC-bandレーダ雨量の方が再現性が高いことが確認された.
  • 吉川 泰弘, 朴 昊澤, 大島 和裕, 横山 洋
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1351-I_1356
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,地球規模の計算モデルに取り込み可能な計算負荷の小さい簡易的なアイスジャム計算モデルを構築し,実河川で発生したアイスジャム現象の再現を試みることにより,本計算モデルの評価と課題を明らかにすることである.本計算モデルは,河川水の流れ,河氷の流れ,固定した氷板の形成融解,河川水温の計算式で構成した.河氷速度の計算式として,河氷流下堆積式を提案した.実河川のアイスジャムの再現結果から,本計算モデルは,簡易な基礎式を基にしているが河氷の流下堆積現象を表現可能である.一方で,河氷の破壊現象を考慮していないため,河氷面積が実際よりも小さく計算される地点においては水位の再現性が低い課題を示した.また,本計算モデルにおける重要なパラメーターを示した.
  • 倉橋 実, 永谷 言, 川村 育男, 角 哲也
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1357-I_1362
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     近年,計画規模を上回る異常豪雨の発生頻度が増加する傾向にあり,増大する外力への対応が課題となっている.一方で,対策に要する予算制約は厳しくなる状況にあり,超過洪水に対する既設ダム有効活用の必要性が高まっている.
     本稿では,既設ダムの超過洪水に対する治水耐力について,治水機能を有する全国の336ダムを対象として評価し,既設ダムに対する再開発による機能向上の必要性を明らかとした.また,具体的な再開発手法の検討対象として宮崎県大淀川流域ダム群を選定し,流出予測計算を用いて水系内における各ダムの再開発効果を定量的に分析することにより,水系全体の治水機能を効率的に維持してくためのダム再開発手法について考察した.
  • Masashi SHIMOSAKA, Taichi TEBAKARI, Kentaro DOTANI, Shuichi KURE
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1363-I_1368
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     In 2011, massive floods occurred in the Chao Phraya River basin (CPRB) in Thailand. This affected both Thai socio-economics and the global industrial production supply-chain. There is also a risk of droughts in the CPRB during the dry season. The CPRB has two multi-purpose, large-scale reservoirs: the Bhumibol and Sirikit reservoirs. The aim of this study was to develop a science-based reservoir operation system that can easily be put into practice. To accomplish this aim, we studied the optimum operation of these two reservoirs. On the basis of our observations, we propose a new reservoir operation method for reducing the risk of droughts and floods. This method was developed and validated with the aid of historical hydrological and rainfall data. The volume of water to be released is determined by the accumulated daily rainfall data, daily inflow data, and storage volume. The reservoir operation method proposed provides better stabilization between the reservoir's water discharge and storage volume. This reduces the risk of drought and allows for water discharge without increasing the risk of flooding in the lower section of the basin.
  • 島田 立季, 桑原 正人, 片山 直哉, 柏田 仁, 竹林 洋史
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1369-I_1374
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     市街化が進行し大規模工業地帯を擁する三重県四日市市の密集市街地において,二級河川三滝川から隣接する海蔵川への放水路計画事業が実施されてきた.本研究では,両河川が分担する計画流量配分を達成可能な分派部形状について,平面二次元洪水流及び河床変動解析(混合砂モデル)や水理模型実験を用いて検討を行った.その結果,計画流量の適正分派が可能な分派形状(導流堤,越流堤)を設定したことに加えて,氾濫リスク管理の観点から計画規模以上の洪水について,氾濫リスクバランスも維持されることを確認した.さらに,分派部では経時的な土砂堆積,植生侵入・繁茂など土砂環境の維持の観点に加えて,粒度分布が異なる河川が合流することによる土砂環境の変化にも配慮し,将来的な河道安定性についても評価した.
  • Sunmin KIM, Yasuto TACHIKAWA
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1375-I_1380
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     We are proposing a simple yet very efficient data-driven model based on an artificial neural network to predict the water level at Hirakata Station without using rainfall-forecast information. The proposed model is based only on the observed upstream water levels at Katsura Station on the Katsura River, Mukaijima Station on the Uji River, and Inooka Station on the Kizu River. The proposed model uses a simple, single hidden layer on a feed-forward neural network, and it does not require much input data, but the prediction is sufficiently stable and reliable up to 9 hours of lead time, which can be very useful information for practical flood warning.
  • 渋尾 欣弘, 李 星愛, 佐貫 宏, 吉村 耕平, 田島 芳満, 佐藤 愼司, 古米 弘明
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1381-I_1386
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     都市部の雨水排水能力を上回る豪雨が増加傾向にある中,XRAINや高解像度降水ナウキャストなどの降雨情報を雨水管理に活用する機運が高まっている.一方で,河川流域に比べ下水道排水区では流達時間が短いため,降雨外力ごとに異なる時間分解能や降雨強度が都市浸水解析に与える影響を適切に評価する必要がある.そこで本研究では,異なる時間解像度における降雨強度の違いに着目し,XRAIN,高解像度降水ナウキャスト,降水短時間予報,MSM-GPVによる都市浸水解析を実施した.その結果,XRAINでは1時間雨量が同じでも時間解像度を下げることで下水道網の解析に影響することがわかった,高解像度降水ナウキャストと降水短時間予報では高降雨強度により雨水管の貯留傾向を過大に評価する傾向があり,MSM-GPVでは,降雨強度が低いため都市浸水予測の外力としては適用が難しいことがわかった.
  • 竹村 吉晴, 福岡 捷二, 吉井 拓也
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1387-I_1392
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     荒川中流部は,最大で約2.5kmになる広大な川幅を持つ.そこに横堤群や荒川第一調節池を建設することで,川幅を生かした洪水調節が行われてきた.現在,荒川中流部の洪水調節機能を向上させるため,第二,第三,第四の調節池が計画されている.本論文では,調節池群設置の有効性と留意点を明らかにするため,著者らが構築してきた荒川中流部の洪水流解析モデルに基づき,整備計画規模洪水に対する現況の荒川中流部の洪水調節機能について検討した.横堤群は荒川中流部の貯留量を高め貯留率のピークを遅らせる効果を持つが,早い段階で高水敷全体に洪水が及ぶため,洪水ピーク付近でその効果は小さくなる.その結果,広い高水敷と横堤群だけでは整備計画規模洪水に対し,基準点岩淵の流量を整備計画目標流量6200m3/sまで低減できないことを明らかにした.
  • 田中 規夫, 五十嵐 善哉, 伏見 健吾
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1393-I_1398
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     現在の荒川において潜在的な破堤氾濫リスクがどこに存在するかを探ること,江戸時代の旧堤防(特に控堤)が現代においても有している減災機能を明らかにすることを目的とし研究を行なった.昭和22年型(1/200)波形を用いて,氾濫原に存在する控堤を含む洪水・氾濫流解析モデルを作成し,控堤の有無による氾濫状況の相違を評価した.荒川本川からの氾濫箇所は吉見町付近の狭窄部上流,支川では和田吉野川上流,市野川の狭窄部上流など,堤防の高さや河川線形は異なる現代においても明治43年洪水と類似した箇所に氾濫リスクが存在することが明らかになった.埼玉県管理区間の和田吉野川や市野川の氾濫をそれぞれ相上堤が7.8時間,長楽堤が2.5時間ほど貯留し下流域への氾濫を遅らせていた,横手堤も相上堤から溢れた水を1.8時間ほど滞留させる効果を保有していた.
  • 田端 幸輔, 福岡 捷二, 吉井 拓也
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1399-I_1404
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     水害リスク軽減に向けた危機管理対策を検討するためには,河川からの氾濫流量ハイドログラフを適切に見積もること,実際に生じた大規模氾濫の実測データに基づく氾濫水の挙動が氾濫計算によってどの程度再現可能であるのかを明らかにすることが求められる.本論文では,鬼怒川平成27年9月洪水を対象に,観測水面形情報に基づいた洪水流と氾濫流の一体解析により得られた溢水及び堤防決壊による氾濫流量ハイドログラフを用いて氾濫計算を実施し,痕跡調査結果,防犯カメラ映像から得られた浸水到達時間情報を基に氾濫計算の有効性を検証した.更に,決壊箇所付近の家屋被害,内水河川や道路盛土と氾濫流挙動の関係,安全避難のためのリードタイムを検討し,今後の水害リスク軽減策に必要な課題を提示した.
  • 坂本 貴啓, 篠崎 由依, 佐藤 裕和, 白川 直樹
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1405-I_1410
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     河川の清掃活動は,治水,利水,環境保全にかかる最も重要な河川管理行為の一つである.清掃は河川管理者が所掌する一方で,多くの市民団体が活動の一環に取り入れ,河川管理への寄与がなされる場合も多くあるが,その実態の定量評価は行われていない.本研究では,51水系の129団体にアンケートと現地調査を実施し,清掃活動に投資している人的・時間的資源量を活動量として指標化し,管理者による清掃活動に占める度合いを推定した.分析の結果,調査対象団体が清掃に費やす活動総量は年1,077,972[人・時間],団体1回あたりの活動量は年14,520[人・時間]となった.団体の活動に関連する清掃量を距離換算すると,直轄区間の114%程度をカバーしうることを示した.また,遠賀川の分析事例では,このような活動が河口堰管理費の75%程度に等価であることを示唆した.
  • 妹尾 泰史, 石川 忠晴
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1411-I_1416
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     江戸時代に各地に造られた霞堤は氾濫を前提として水害軽減を図るもので,今後の超過洪水対策で参考になる可能性がある.本研究では急勾配扇状地の黒部川に設けられた霞堤の水理機能を数値計算により検討した.計算地形はGISデータと20世紀初頭および中葉の各種データを複合的に用いて作成した.また19世紀の氾濫頻度と最近の流量統計から河道容量を2,700 m3/s程度と推算し,ピーク流量(Qp)が3,000, 4,000,5,000 m3/sの洪水波形を用意した.Qp=3,000 m3/sでの計算結果は1934年の同規模出水の氾濫分布をよく再現した.大きなQpでの洪水での結果は,氾濫流を河道沿いの狭い地帯に制限し農村が広く分布する扇状地東部への氾濫流拡散を抑えるよう霞堤が設計されていたことを示唆した.
  • 秋山 壽一郎, 重枝 未玲, 藤原 周平
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1417-I_1422
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     降雨外力と河口潮位を与条件とし,洪水流,遊水地による洪水調節,ポンプ排水,直接降雨および市街地等の氾濫原要素を考慮して流域スケールの内外水複合氾濫解析が可能な“治水バランス・水災リスク評価シミュレータ”を構築し,六角川水系を対象として,まず2012年7月出水時の内水/外水位,洪水流量,遊水地への越流流量,最大浸水域について検討・検証を行った.次に1/100確率規模の仮想外力を与条件とした内水,外水氾濫解析を実施し,同流域の治水バランスと水災リスクについて検討を加えた.
  • 阪口 詩乃, 中山 恵介, 小林 健一郎
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1423-I_1428
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,洪水氾濫解析を対象とし,段波理論を利用した簡易洪水氾濫モデル及び粗度と勾配の効果を考慮した簡易洪水氾濫モデルを提案することで,洪水波の伝搬機構の解明を試みた.簡易洪水氾濫モデルを1次元の氾濫問題に適用し,良好な再現結果を得ることができた.さらに,簡易洪水氾濫モデルを利用することで,洪水氾濫初期には波として進行する効果が卓越し,時間の経過に伴って地形勾配による効果が大きくなることがわかった.また,2次元の洪水氾濫解析に適用した結果,メッシュサイズが氾濫水深に比して数100倍以上であれば,局所慣性法モデルが良好な再現性を示すことが示された.
  • 武田 誠, 村瀬 将隆, 中島 勇介, 小松 健大, 松尾 直規
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1429-I_1434
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     近年の大規模な洪水や豪雨による災害対策の検討には,数値解析モデルが重要なツールとなる.これまで,水理学的な現象に対して,詳細なメカニズムを考慮した解析モデルが構築され,精度の高い計算が実施されている.解析精度を高めることは非常に重要である.一方,メカニズムの理解を深めるための数値解析の活用も非常に重要である.本研究では,佐山らのT-SASのアイデアを活用し,浸水の起源を考慮した流れの数値解析を構築して,高潮と洪水の重畳による都市の浸水解析を行った.本研究より,高潮と洪水の重畳による浸水の拡がり,高潮と洪水の個々の拡がり,都市特有の地下浸水に対する高潮と洪水の寄与度などが考察できた.
  • 石田 義明, 久加 朋子, 清水 康行, 田井 明
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1435-I_1440
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     2017年の九州北部豪雨は,観測史上最大を記録するもので,過去に経験をしたことのない大洪水が筑後川中流右岸側の中小河川で発生した.本研究では赤谷川を対象に出水直後の被害状況の整理を行い土砂移動を伴う氾濫解析を行った.解析結果は実測痕跡水位,水深,実測浸水範囲と概ね合致した.今回の出水により氾濫原内に新たな流路が形成され,それに伴い河岸浸食等の流路変動も解析で確認された.これらのことは2016年北海道豪雨災害の多くの急流河川でも同様に大量の土砂が流出し河道内に堆積したことは類似するが,北海道豪災害の場合は著しい流路の首振り蛇行であること,今回の九州災害では比較的直線的な流れで流路の首振り蛇行は少なかった点の違いが明らかとなった.
  • 赤穗 良輔, 前野 詩朗, 高橋 巧武, 吉田 圭介, 石川 忠晴
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1441-I_1446
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     道路などの連続盛土や灌漑水路などは氾濫流の変形過程に大きく影響する.これらの地物を考慮できる氾濫流解析モデルとして,氾濫原の地物を一次元モデルで表現し,二次元氾濫モデルに接合させる手法が,計算精度および計算効率の面で有効である.本研究では,一次元モデルと二次元モデルの格子生成方法に着目し,氾濫流の変形過程への影響について検討した.基礎的な数値実験より,一次元格子が二次元格子の格子線と一致するようにモデル化することで,氾濫流が水路を越流するような流況で再現性が向上することが明らかとなった.また,平成27年の鬼怒川洪水氾濫域を対象として,本モデルを用いた数値実験を行った.畦道および水路の堤防を部分的に嵩上げすることで,市街地への氾濫水の到達時間の遅延や浸水量の低減できる可能性が示唆された.
  • 梶山 敦司, 里 明信, 岸上 直之, 柳崎 剛, 里深 好文
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1447-I_1452
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究では,従来,河床縦断グラフとして表示されてきた一次元解析結果に対して,河道幅を考慮した平面二次元で表現する手法を開発し,GISデータとして出力するプログラムを作成した.本プログラムを用いた熊本県白川を対象とした適用例では,最大水深,最大流速と水深の時系列変化の表示を平面二次元化することによって,水理現象を容易に理解できることを示した.また,分離して示されることが多かった平面二次元解析結果と一次元解析結果の接合例を示した.本研究で開発した手法を用いることにより,これまで河床縦断グラフを見慣れていない若手技術者や一般市民に対しても水理解析結果の把握が容易になると考えられる.また,平面二次元解析結果との接合により,上流から氾濫原までの水理現象を一連の図として表示することが可能となる.
  • 重枝 未玲, 秋山 壽一郎, 大久保 剛貴, 中島 晴紀
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1453-I_1458
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究は,水位の経時変化を上・下流端境界条件とした平面2次元解析法を提案し,堰を超える非定常流れの実験および平成24年九州北部豪雨時の彦山川での出水に適用することで,その再現性について検討したものである.まず,流束差分離法に基づき,洪水波の伝播を考慮した上で水位から単位幅流量を求める上・下流端境界条件式を新たに提案した.次に,実験結果や実出水の観測値に基づき,解析法の検証を行った.その結果,(1) 水位を境界条件とした解析は,堰を超える流れの水位や流量の実験結果を予測可能であること,(2) 同解析は,実河川の流量・水位ハイドログラフ,痕跡水位を再現できること,(3) その流量の予測精度は,下流の影響を受ける場合に河道内構造物や底面粗度によるエネルギー損失に影響を受けること,などがわかった.
  • 岡崎 亮太, 中津川 誠, 小林 洋介
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1459-I_1464
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は,河川水位の的確な予測を目指し,全国で整備が進められている水文情報の機械学習による予測手法を提案することである.2016年8月の北海道豪雨など,近年大規模水害が頻発しており,住民の避難等に活用するため予測情報の重要性が高まっている.本研究では機械学習手法の一つであるランダムフォレスト(RF)法を用いて予測リードタイムが6時間以上の水位予測を行った.また,RF法から得られる寄与度が大きい説明変数を抽出し,それらと目的変数の関係を回帰式で表す方法を関連要因相関法として提案し,予測を行った.以上の結果から,ピーク水位の予測に関して過小評価しない安全側の結果が確認でき,情報工学的手法に基づく実用的な水位予測を提案することができた.
  • 寺田 光宏, 石垣 泰輔, 尾崎 平, 戸田 圭一
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1465-I_1470
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     東京,名古屋,大阪等,日本の低地の都市にはたくさんの地下鉄と地下駅が存在する.本論文では,数値解析を用い,大阪中心部の地下街,地下駅,15本の地下鉄路線を含む内水氾濫の解析を実施した.氾濫解析結果から,氾濫水が地下鉄トンネル内を迅速に広がることがわかった.特に,新路線のなにわ筋線において,梅田地区から新大阪駅へと氾濫水は広がることが確認できた.また,大野処理区では十三駅や新大阪駅周辺で浸水が発生することが確認できた.
  • 柏田 仁, 二瓶 泰雄
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1471-I_1476
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     河川流量用のデータ同化手法として開発・実用化されている力学的内外挿法(Dynamic Interpolation and EXtrapolation method,DIEX法)の考え方を河川水位のデータ同化手法に拡張し,河川洪水予測手法(Dynamic Interpolation and EXtrapolation method for Flood prediction,DIEX-Flood)を開発した.本手法の精度や有効性を調べるために,利根川水系・江戸川に本手法を適用した.現在時刻の水位データを同化することで,離散的な水位の「点」データから「線」データに内外挿でき,その最高水位は痕跡水位縦断分布と良好に一致した.さらに,現在時刻の水理・河道条件を初期値とする不定流計算を実施することで,全川を対象とした水位予測を行った.その結果,精緻な境界条件が与えられた場合には全川で高精度の洪水予測が可能であった.境界条件に誤差が含まれる場合でも,洪水伝播のリードタイムによって,下流地点では数時間先まで高い予測精度が保持された.さらに,上流端流量と付加項に一定の幅を持たせることで不確実性を考慮した洪水予測が可能であることを示した.
  • 田中 智大, 市川 温, 萬 和明, 立川 康人
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1477-I_1482
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     気候変動による超過洪水リスクに対応するためには,非構造的対策を含めた総合的な水害リスク管理が重要となる.そこで,これまで浸水被害額の確率分布である水害リスクカーブを作成する手法が開発されてきた.水害リスクカーブを用いることで対象領域全体のリスクおよびリスク軽減策の効果を評価できるが,建築規制や水害保険といった対策の費用は各世帯が負担するため,軽減効果も各世帯ごとに評価することが重要となる.そこで本研究では,水害リスクカーブ作成手法を応用して浸水被害額の確率分布の空間分布である浸水被害確率マップの作成手法を提案し,淀川流域(8,240 km2)の京都市周辺域を対象に浸水被害確率マップを作成する.次に,非構造的なリスク軽減策の1つである宅地のかさ上げを対象に,浸水被害確率マップを用いて対策による地先の便益を推定する.また,現実的な宅地かさ上げ対策として住居の建て替え時期にかさ上げを実施するシナリオを想定し,建築時期別の世帯数データを用いることでリスク軽減の経年変化を推定する.
  • Magfira SYARIFUDDIN, Satoru OISHI, Ratih Indri HAPSARI, Djoko LEGONO
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1483-I_1488
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     A remote monitoring method of rain triggered lahar has been developed and applied to study lahar event on Feb. 17, 2016, at Mount Merapi. Lahar is a wet mass of volcanic fragments flowing rapidly downhill. The system was developed by modifying the Manning formula of kinematic wave model, combined with empirical equations for lahar properties estimation. The rainfall intensity estimated from X-MP radar at Mt. Merapi was also applied to give better spatial rainfall information. The modified model gave lower mean velocity and peak discharge compared to the original kinematic wave model results. These results implicitly indicated that the flow carried more sediment while managed to simulate the stoppage mechanisms in the downstream area. The modified model overestimated the water depth during higher rainfall rate but showed a similar trend with the real observed data. Thus, this method can be an alternative for lahar flow estimation in Mt. Merapi.
  • 谷口 健司, 渋尾 欣弘
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1489-I_1494
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     観測史上最大とされる大雨やそれに伴う洪水被害が数多く発生するなか,今後の治水対策の検討に向けた想定最大規模降雨に基づくハザードマップの整備が進められている.ハザードマップ作成のための洪水浸水想定においては,一般に氾濫原での降雨による内水湛水は考慮されず,河川からの越流及び破堤氾濫に起因する浸水のみが評価される.実際に想定最大規模の降雨が生じた際には,河川流出及び内水による浸水が同時に生じることも想定される.本研究では,梯川流域を対象に,様々な氾濫因子を考慮可能な氾濫解析モデルを用いて,複数の降雨波形によるシミュレーションを行った.氾濫原に降雨を与えることで,河川からの越流氾濫が顕著でない場合でも,広範に内水氾濫が生じ,浸水深も大きくなるとの傾向が得られた.これは,河川氾濫と堤内地での湛水を同時に評価することの重要性を示唆するものである.
  • 重枝 未玲, 秋山 壽一郎, Adelaida Castillo DURAN, 中木 翔也, 西山 晋平, 勝原 亮介
    2018 年 74 巻 4 号 p. I_1495-I_1500
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/03/30
    ジャーナル フリー
     本研究は,1次元洪水流モデルと分合流部の取り扱いを組み込んだ「1次元河道ネットワークモデル」と,同モデルと分布型流出解析モデルとを組み合わせた「分布型流出・1次元河道ネットワークモデル」を新たに構築するとともに,彦山川を対象に雨量を入力条件とした分布型流出・洪水流解析を実施し,同モデルの水位・流量ハイドログラフの再現性を検討したものである.本研究から,(1)「分布型流出・1次元河道ネットワークモデル」は,複数の支川が合流する河川での水位・流量ハイドログラフ,痕跡水位を十分な精度で予測できること,(2) その精度は平面2次元解析と同程度であること,(3) その計算効率は平面2次元解析の1,500倍程度,準平面2次元解析の3倍程度であること,などが確認された.
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