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加藤 一夫, 井上 卓也, 山口 昌志, サムナー 圭希, 清水 康行
2018 年74 巻4 号 p.
I_901-I_906
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
フリー
扇頂部にあたる真駒内川合流付近の豊平川は古くから河道の変化が大きい区間であるとともに,明治40年から始まったダム建設や昭和42年以降の砂防ダムの建設による土砂供給量の減少や昭和30年から50年代の大洪水による河床砂礫の流出などによって河床は大きく低下し,橋脚の根入れ不足や低水護岸の崩壊などの問題が顕在化している.本研究では,豊平川流域の土砂動態資料を分析し問題となっている河床低下との因果関係を示すと共に,既往の土砂流出モデルに新たに流域条件の変化を組み込んだモデルを構築し,砂防ダムを有する渓流の流域間での比流出土砂量の差異や藻岩取水堰の実測堆砂量との関係を定量的に示した.
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秋山 浩一, 青木 慎弥, 鶴田 芳昭, 石川 忠晴, 高橋 大地
2018 年74 巻4 号 p.
I_907-I_912
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
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気候変動による豪雨頻度の増加とともに,土砂流入の確率的側面の評価が長期貯水池管理において重要となってきた.本研究では表記流域における崩壊地面積の変化を40年間に得られている9セットの航空写真の解析から求め,短時間豪雨および貯水池土砂堆積との関係を検討した.相対輝度の閾値を設定して各セットの写真に対して崩壊地面積を推定し,
Zi=Zi-1·exp(-αΔt)+βRi,という関係を仮定した数値モデルを組み立てた.ここに
Δt:時間増分,
i:計算ステップ,
Z:崩壊地面積,
R:閾値以上の雨量,αとβは定数である.計算値と観測値の比較から,3時間 80~90mmという閾値が崩壊地面積の変動をよく説明すること,その計算結果は40年間にわたる貯水池内土砂堆積量の時系列とよい相関を示すことが示された.
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厳島 怜, 大槻 順朗, 佐藤 辰郎, 田中 亘
2018 年74 巻4 号 p.
I_913-I_918
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
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砂防えん堤の排水ゲートからの土砂排出による中小河川への土砂還元施策(福岡県・加茂川)を対象に,旧湛水池からの土砂排出特性ならびに下流急流区間(概ね1/5-10)における堆砂状況について現地観測により明らかにした.花崗岩帯を背後に持つ旧湛水池には29年分の堆積土砂(約13,700m
3)が砂と粘性土との互層を成して堆積していた.排水ゲート開放後,直後に堆砂量の約12.1%,その後の出水でさらに6.6%が流出した.出水期を経て堆積域には階段状の地形が形成され安定的な河床に達している.排水ゲート開放後の出水時における濁水のSS濃度は約1200mg/Lと推定され,既往のダム撤去の事例と比べると小さい部類に含まれるが,排出された土砂は下流のStep-Pool構造が発達する急流部にも堆積し,えん堤に近い一部のPoolを埋没させている.これより,急流河川においても土砂還元による顕著な地形や底質の変化が生じうることが示唆された.
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中本 英利, 竹林 洋史, 宮田 英樹, 藤田 正治
2018 年74 巻4 号 p.
I_919-I_924
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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宅地内の家屋の一部が全壊・半壊した2014年の広島市安佐南区八木三丁目で発生した土石流を対象とし,家屋の破壊過程を考慮した平面二次元の土石流数値シミュレーションを実施し,家屋の存在が土石流の氾濫域に与える影響を検討した.その結果,本数値シミュレーションモデルによって,家屋の半壊・全壊の状態を比較的良く再現できた.また,家屋の破壊を無視すると,土石流の主流域が家屋が少ない領域に移動するとともに,氾濫範囲が狭く評価されることが明らかとなった.さらに,家屋を考慮しない数値シミュレーションでは,土石流は扇形に広く薄く流れて土石流扇状地を形成した.その結果,家屋を考慮した場合とは氾濫域が大きく異なった.このような氾濫域の違いは,遠方への避難が困難な場合に,少しでも生存率を高めるための避難候補地の決定において非常に有効な情報である.
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江頭 進治, 原田 大輔, 南雲 直子, 山崎 祐介, 萬矢 敦啓
2018 年74 巻4 号 p.
I_925-I_930
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究は崩壊・土石流によって荒廃した流域における微細砂の流出予測法を論じたものである.2017年7月九州北部豪雨において荒廃した赤谷川を対象として,崩壊・土石流による土砂流出の実態を分析し,土石流の流動性は,微細砂の相変化によって説明できることを明らかにした.ついで,崩壊・土石流による主要流路沿いの堆積土砂に着目し,微細砂の流出は,洪水によって堆積土砂が侵食され,そこに含まれる微細砂が水流に取り込まれる機構を通じて引き起こされるものとして,微細砂の流出現象を定式化している.さらに,レジーム則などを用いて予測法の単純化を図り,その方法の適用性を現地データによって確認している.
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山崎 祐介, 江頭 進治, 南雲 直子
2018 年74 巻4 号 p.
I_931-I_936
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究では,豪雨に伴う崩壊分布の推定法および土砂流出量の推定法を提案している.土砂流出予測法は,崩壊土砂が土石流化したものを質点系支配方程式で記述し,崩壊土砂の流下に伴う侵食・堆積の解析にもとづいて開発している.これを福岡県赤谷川流域において2017年7月に発生した豪雨を対象に適用し,次のような結果を得ている.本推定法は,豪雨に伴って支川流域で発生した崩壊土砂が土石流化し,流下にともない侵食して主要河道に到達し,そこで堆積するという土砂流出過程をよく再現している.流域河道の次数をHorton-Strahlerによる方法で分類し,各河道の平均渓床勾配と土石流の平衡勾配を用いて表現される渓床の侵食・堆積現象は,実際の土石流の侵食・堆積の傾向とよく一致している.流域内の侵食・堆積の空間分布は,河床勾配の空間分布と土石流の平衡勾配によって推測可能である.
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原田 大輔, 江頭 進治
2018 年74 巻4 号 p.
I_937-I_942
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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2017年7月の赤谷川の災害では,上流の山地域からの大量の土砂と流木の流入が被害を深刻化させた.本研究では土砂と流木の流入及びそれらの洪水流に伴う挙動を解析的に取り扱う手法を構築した.この方法において,上流から多量の細粒土砂が供給される条件での解析を行い,また,流木については,これを移流・拡散方程式に基づいて記述して,流木の挙動及びその堆積過程を解析した.その結果,解析対象区間に流入した土砂の約7割が解析対象区間に堆積したことで元々の流路は埋没し,流路の位置が大きく変動した.また,解析の結果,上流から下流にかけての土砂分級現象が再現でき,これは現地の状況とも対応している.流木の挙動を考慮した場合には,これらの橋梁部への捕捉によって流路・河床変動及び洪水流の挙動への影響が顕著に見られた.
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山野井 一輝, 村上 秀香, 藤田 正治
2018 年74 巻4 号 p.
I_943-I_948
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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山地渓流の土砂流出は,水理量だけでなく流域内での土砂生産・供給に強く影響を受ける.対象流域のヒル谷では,秋季と春季に凍結融解による土砂生産に起因して土砂流出特性の季節変動が見られる.また,大規模な出水時には,プールや河道近傍に貯留されていた土砂が大幅に流出し,その後数年間土砂流出量が減少するような,長期的な土砂流出変動も確認される.以上のような土砂流出特性の変動現象が土砂流出モデルによって表現されれば,より高度な土砂管理に結びつくと考えられる.そこで,本研究では,筆者らの土砂流出モデルをヒル谷に適用した.適用には,長期間の予備解析を実施し効果的な粒度分布の設定を行い,さらに10年間の解析によって,実際に現地で観測される土砂流出特性の季節変動性や出水に伴う長期変動特性が表現されることを確認した.
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青木 健太郎, 藤田 正治
2018 年74 巻4 号 p.
I_949-I_954
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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近年,計画を上回る規模の降雨が頻発し,全国各地で洪水災害による甚大な被害が発生している.今後,地球温暖化が進行すると降水量がさらに増加することが予想され,大規模な洪水災害が頻発し,甚大な被害が発生する可能性がある.大規模水害を引き起こすような豪雨の場合,河床の上昇または低下量がかなり大きくなるため,治水計画において洪水中の河床変動を考慮することが不可欠となる.本研究は,平野部の河道を単純化した一次元河床変動モデルに,山地流域からの土砂供給量や供給タイミングの違いを境界条件として与えて大規模洪水時の河床変動特性について検討した.河床変動が顕著となる範囲を示すとともに,土砂供給のタイミングによっては河床が低下することなど,今後の新たな治水計画の考え方の一歩になるような知見が得られた.
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Rocky TALCHABHADEL, Kazuyuki OTA, Hajime NAKAGAWA, Kenji KAWAIKE
2018 年74 巻4 号 p.
I_955-I_960
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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This paper presents a three-dimensional numerical model to simulate flow and sediment transport processes in the tidal basin during the operation of Tidal Basin Management (TBM). The numerical model was applied to four cases of laboratory experiments demonstrating the mechanism of the operation of TBM. It was compared with established two-dimensional shallow water model. In all four cases, the three-dimensional model showed better results than the two-dimensional model and the agreements with experimental values are better. The complex phenomena like vortex formation and sediment attachment to the wall are well captured by the numerical model. The proposed model can be used in real field condition to assess the sediment transport and land heightening in the tidal basin for sustainable TBM.
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吉村 健, 朝崎 勝之, 角 哲也
2018 年74 巻4 号 p.
I_961-I_966
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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2005年の台風14号に伴う耳川流域での甚大な災害を契機として,河川管理者である宮崎県は,耳川水系総合土砂管理計画を2011年に策定した.同計画に基づき,水系に8つのダムと7つの水力発電所を有する九州電力(株)は,山須原ダム,西郷ダム,大内原ダムの3ダム連携でのダム通砂の実施を計画している.
本研究では,河川の安全度の観点から河川の流速やダム水位,通砂継続時間に着目し,一次元河床変動計算を用いて3ダム連携での最適なダム通砂方法を策定した.
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原田 守博, 畑中 重光, 三島 直生, 飯尾 尚平
2018 年74 巻4 号 p.
I_967-I_972
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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都市流域における豪雨時の雨水流出抑制方策の一つとして,ポーラスコンクリート(POC)舗装がある.POCは連続した粗大空隙を内包することから高い透水性をもち,豪雨でさえも浸透吸収できるものの,一方で水平方向の排水能力も大きい.したがって,舗装内に浸透した水は速やかに流出し,河川への雨水流出抑制対策としては十分に機能しないことが危惧される.本研究では,室内実験によってPOCの非線形透水法則を明らかにするとともに,屋外に設けられた大型POC槽に人工降雨装置を設置して雨水の浸透・流出実験を実施した.さらに,非線形透水法則を考慮した水理解析によって実験結果を検証し,POC舗装を広域に敷設した場合の雨水流出抑制効果を試算した.その結果,POC舗装は雨水排除効果をもつだけでなく,不透水舗装よりも雨水流出量を遅延かつ低減させる一定の能力をもつことが明らかとなった.
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Saritha Gopalan PADIYEDATH, Akira KAWAMURA, Tadakatsu TAKASAKI, Hideo ...
2018 年74 巻4 号 p.
I_973-I_978
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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Various Storage Function (SF) models have been widely used among different parts of the world in which the Urban SF (USF) model is a newly developed SF model mainly for urban watersheds. In this study, we aim to conduct the performance evaluation of USF model and to compare the results with the conventional SF models of Hoshi, Prasad, Kimura, and the linear model. The reproducibility of hydrograph was evaluated using the performance evaluation criteria's of Root Mean Squared Error, Nash Sutcliffe Efficiency (NSE), and other error functions of peak, volume, and time to peak. The results revealed that higher values of NSE for USF model indicate that the hydrograph reproducibility by USF is more reliable than that reproduced by other SF models. Further, AIC and Akaike Weight (AW) were used to compare and identify the best model among all based on the information criteria perspective. The USF model received the lowest AIC score and highest AW in most of the events which indicate that the USF is the most parsimonious model compared with other SF models.
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辻本 久美子, 太田 哲, 森 也寸志
2018 年74 巻4 号 p.
I_979-I_984
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
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本研究では土壌水分特性に着目し,分布型水文モデルにおける土壌水分の流動計算と,衛星搭載マイクロ波観測輝度温度からの土壌水分量推定アルゴリズムの双方で,一貫した形で土壌水分特性を表現し,対象地域の土壌水分特性を陽的に表現できる手法を提案した.その効果を熱帯湿潤アジアのカンボジアの一流域において検討し,地域特有の土性に対する土壌水分量の推定に有効であることを確認した.
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Tung Duc VU, Hiroshi ISHIDAIRA
2018 年74 巻4 号 p.
I_985-I_990
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
フリー
Discharge information is a key component in understanding the hydrological regime of delta regions and developing coastal management. Although its importance is recognized, many delta regions collect limited discharge data due to the complexity of river flow and the lack of gauging stations. In this study, we investigated the potential of using Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer (MODIS) reflectance data to estimate discharge in the branched flow of the Red River Delta (RRD). We extracted data from MODIS Band 1 (620-670 nm, 250 m resolution) for the location of the in-situ station and applied regression analysis to confirm a positive relationship between suspended sediment concentration (
SSC) and the reflectance of the river water surface (
R). The regression coefficient β and water balance equations were used to calculate discharge in the branched flow and then compared to observation data. The results revealed a close relationship between monthly average
SSC and
R. Discharge was reasonably simulated with a Spearman's correlation coefficient of 0.76 at Thuong Cat (TC) by using
R as a parameter, with some overestimation. We discuss possible error sources in this proposed method and their potential effects on estimated results.
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兎澤 知浩, 山崎 大, 佐山 敬洋, 沖 大幹
2018 年74 巻4 号 p.
I_991-I_996
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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陸面過程モデルは大気モデルの下部境界条件から、大気モデルと相互作用する地球システムの一要素へと発展してきた。しかし既往の全球陸面過程モデルでは降雨流出過程の表現が十分でなく、特にサブグリッドの斜面流動過程を、低地での氾濫や陸水と河川水の相互作用を考慮して表現したものは少ない。そこで本研究では、降雨流出氾濫モデルの一つであるRRI (Rainfall-Runoff-Inundation)モデルに対して高解像度地形データを用いたアップスケール手法を適用する。これにより、サブグリッドの降雨流出過程を詳細に解く、地球システムモデルの一部としての全球陸域モデルの開発を試みる。2015年に発生した鬼怒川洪水の再現シミュレーションにより、本モデルがRRIモデルとほぼ同等の精度を保ちつつ計算効率を飛躍的に(10倍以上)向上させることが確かめられた。
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豊田 康嗣, 佐藤 隆宏, 石井 孝, 新井 涼允
2018 年74 巻4 号 p.
I_997-I_1002
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
フリー
流出特性の異なる全国6流域を対象として,小水力発電の発電単価を算定した.発電単価とは小水力発電の建設に関わる工事費を年間の発電電力量で除した値である.発電電力量は,長期の流出解析結果から流況を作成し,有効落差等を乗じることで算定した.本研究では,導水路および水圧鉄管を低コストに抑えた方式と従来の方式における発電単価を算定し,流出特性が及ぼす影響について考察した.降雪の多い流域では,年間を通じて安定した発電を実施できるため,発電単価が安い傾向が確認された.
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Daiwei CHENG, Tadashi YAMADA, Tomohito, J., YAMADA
2018 年74 巻4 号 p.
I_1003-I_1008
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
フリー
In recent years, several serious water-related disasters which surpassed the design standard have occurred in Japan. It raised an urgent need of considering risk management in river planning. On the other hand, how to study the basic natural of uncertainty in rainfall-runoff system had always been an important topic in hydrology.
Based on the above, Yoshimi and Yamada have recently suggested a theory of using the Ito's stochastic differential equation to study the uncertainty of runoff rate due to the random fluctuation in rainfall. The method can be used in the risk analysis of rainfall-runoff process and also gives a clear physical explanation to the uncertainty of the process. The present study is based on Yoshimi and Yamada's work, aimed at using the theory to practical problems. As a result, the present study firstly applied the method to Kusaki dam basin, unlike the deterministic analysis method, stochastic method gives a result of prediction interval, which is very important for risk management. Secondly it discussed the fractional natural of the rainfall uncertainty and developed a method to consider this kind of uncertainty using stochastic differential equation. The result of the new method is consistent with ensemble method.
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三宅 慎太郎, 佐山 敬洋, 寶 馨
2018 年74 巻4 号 p.
I_1009-I_1014
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
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流域全体で降雨流出から洪水氾濫までを一体的に予測する分布型水文モデルの開発が進められている.本研究は,このようなモデルのリアルタイム運用を目指して,最適内挿法による河川水位のデータ同化法を提案する.この手法は,複数の事前シミュレーションから背景誤差共分散行列を推定し,観測水位情報に基づいて流域内の河川水位を更新する.提案手法を兵庫県の千種川流域に適用し,同化の双子実験を行った結果,河川水位の分布は観測地点,非観測地点ともに精度が向上するとともに,その周囲の浸水深分布の推定も改善することが確認された.また背景誤差共分散行列の推定について,距離に応じた相関の減衰を考慮することで,同化精度が向上することが分かった.
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松本 和宏, 宮本 守
2018 年74 巻4 号 p.
I_1015-I_1020
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
フリー
複数の水位観測所で観測された複数の洪水イベントのハイドログラフを,分布型流出モデルにより再現する場合に,1組でなく,少数組みのパラメータの組み合わせを用いて説明する数理最適化手法を提案し,提案手法による解析事例について報告する.静岡県安倍川流域の3か所の水位観測所で観測した9回の洪水イベントについての27種類のハイドログラフを再現するために,少なくとも,8組みのパラメータを用意する必要があることを明らかにした.
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杉浦 正之, 田中 耕司, 辻倉 裕喜
2018 年74 巻4 号 p.
I_1021-I_1026
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
フリー
モデルの最適化の方法として,MCMCが使用される事例が多くなっている.MCMCは,最適なパラメータを推定するとともに,同時にパラメータの確率分布を推定できることが特徴である.本論文では,パラメータ構造が二層になっている水位予測モデルを対象に,最適なパラメータをMCMCで推定できるモデルを構築した.このモデルの適用性を評価するために,検証洪水による精度をNash値で評価した結果,おおむね良好な結果が得られた.また,確率分布の特性等から,変動幅が大きく不安定なパラメータがあることを確認することができ,パラメータの改善の方向を示すことができることがわかった.
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秋山 壽一郎, 重枝 未玲, 内野 雅文, 中島 忠
2018 年74 巻4 号 p.
I_1027-I_1032
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
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自然安定河道に関する信頼できる多くの資料に基づき,まず安定河道の発生条件として
K値を推定し,複列砂州で0.02≦
K<0.03,単列砂州で0.03≦
K<0.09,砂州非発生で0.09≦
K<0.26となることを明らかにした.次に同条件と水位解析に基づき,単断面から複断面までの水路を対象として,流下能力と安定性を兼備した横断形を設定できる方法を提案した.最後に同法を遠賀川河道に適用し,その有用性を具体的に示した.また断面形を複断面から緩傾斜断面に改修する場合についても具体例を示した.
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濱木 道大, 岩崎 理樹, 井上 卓也, 佐藤 大介, サムナー 圭希, 清水 康行
2018 年74 巻4 号 p.
I_1033-I_1038
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
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近年,全国的に河床低下傾向となっている河川が増加しており,総合土砂管理の考え方に基づき土砂還元等による対策が試行されている.しかし,還元した土砂を追跡する有効な手法が確立されておらず,効果検証に課題が残っている.本論文では,土砂還元による流砂追跡手法を開発することを目的として,室内水路実験による着色流砂(トレーサー)の追跡実験を行い,トレーサー群の平均的な移動速度及び分散状況を把握した.更に,トレーサー濃度を考慮した平面2次元河床変動解析による再現検証を行い,平均的な流砂の移動速度(表層濃度の到達距離)を精度良く再現するためには,鉛直方向の分散現象を考慮した交換層厚の設定が有効であることを見出した.
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田口 真矢, 小林 素直, リマ アドリアーノ, 泉 典洋
2018 年74 巻4 号 p.
I_1039-I_1044
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
ジャーナル
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近年,岩盤河床の侵食に関する知識は,河川工学,地形学,生態学など様々な分野から関心が寄せられている.岩盤河床の侵食は,主に流砂の摩耗作用により誘発されるため河床上の砂礫の堆積状態を表す被覆率に大きく影響される.河川湾曲部では二次流による河床付近の砂礫の運搬により,河道横断面内において被覆率が適値となる位置は限定され,その位置で岩盤河床の侵食が局所的に発生すると予測される.
本研究では,一様湾曲水路を用いた室内実験により岩盤河床が完全に被覆された箇所と完全に露出した箇所を同時に有する場合における岩盤河床の侵食を再現した.本論文では,実験により観測された岩盤河床の侵食発生箇所及び地形形状の特徴について報告する.
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サムナー 圭希, 井上 卓也, 人見 美哉, 清水 康行
2018 年74 巻4 号 p.
I_1045-I_1050
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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近年,北海道の多くの河川で岩盤の露出と侵食が河川構造物の安定性の低下を引き起こしている.岩盤侵食の主な原因は流砂の衝突によるものであると報告されているが,岩盤は乾湿や凍結融解の繰り返しによっても侵食される.岩盤の侵食地形は砂礫被覆割合と岩盤強度の関係から,渓谷型,単一澪筋型,複数筋型に分類できる.岩盤床が露出している豊平川花魁淵において針貫入試験を行い,岩盤強度を計測したところ,水際部の岩盤強度が一番低いことから乾湿サイクルによる風化を確認した.本研究では,乾湿風化を考慮した侵食モデルを構築し数値計算を行った.結果,風化による侵食が卓越すると岩盤河床は平滑化され,逆に流砂の衝突による侵食が卓越すると澪筋の下刻が進行した.
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Hao ZHANG, Hajime NAKAGAWA, Kei NISHIO, Taku HASHIZAKI
2018 年74 巻4 号 p.
I_1051-I_1056
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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This paper presents an experimental study on the fluid-sediment dynamics around a group of Bandalling structures which consist of a permeable lower part and an impermeable upper part. The Bandalling structure is a kind of hybrid groyne coming from an indigenous technical knowledge in the Indian subcontinent. The experiments are conducted on a movable bed with suspended sediment transport under both non-submerged and submerged conditions. The results indicate that Bandalling structures share some common hydraulic and morphological features of those of impermeable and permeable groynes. The vertical component of the flow velocity near the Bandalling structures plays an important role in the suspended sediment transport and the bed deformation process. Significant differences are observed on the flow structure and sediment transport characteristics between submerged and non-submerged conditions.
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関根 正人, 堀 江翼, 佐藤 耕介
2018 年74 巻4 号 p.
I_1057-I_1062
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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近年,気象の極端化が進行している.それによって記録的な豪雨が頻発しており,河川の増水に伴う堤防決壊によって人的・物的被害が発生している.河川計画の観点からも堤防決壊のメカニズムの解明は喫緊の課題である.しかし,その知見は未だ不十分である.堤防の主な構成材料が土である以上,越流が生じた場合破堤は避けられず,破堤までの時間を引き延ばすことが重要である.したがって,天端が破堤現象に与える影響を明らかにすべく実験的検討を行った.堤体に砂質土の層が含まれている模擬堤防と,天端を補強した模擬堤防の水理実験を行い,その結果を比較・検討した.そして,補強された天端が破堤までの時間を引き延ばすメカニズムを考察し,従来よりも効果的な天端の補強方法の可能性を模索した.
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原田 守啓, 大橋 一弘, 井上 公斗, 三輪 浩
2018 年74 巻4 号 p.
I_1063-I_1068
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究は,二峰性粒度分布の条件下で移動しない大径粒子が小径粒子の運動に与える影響を巨視的に把握することを目的とした水理実験を行った.砂粒子径の34倍の径を持つ球状粗度および円柱粗度を設置した水路における砂粒子の移動軌跡を画像解析により把握し,砂粒子の平均ステップレングスの計測とピックアップレートの推定を行った.掃流力に対するステップレングスとピックアップレートの応答は一様ではなく,平均ステップレングスは一様砂・平坦河床における推定値と比べて2オーダー程度小さく,粗度要素のスケールに制限されている可能性が示唆された.一方,ピックアップレートは,流量と流砂量の変化に対応して広い幅で変化することが確認された.
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関根 正人, 平松 裕基, 中川 裕貴
2018 年74 巻4 号 p.
I_1069-I_1074
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究では,洪水時でも移動しない大礫が骨格を構成する河床の流砂現象に着目した.著者らは,河床材料を大礫(L粒子),掃流砂として移動する砂礫(M粒子),浮遊砂として移動する砂(S粒子)の三つの粒径集団に分けて,これらを一つの粒径で代表させてきた.しかし,現地の河床材料は連続する粒度分布をもつため,掃流砂礫に粒度幅をもたせることが河床の鉛直構造に与える影響について調べた.その結果,いずれの場合でもL粒子群の間隙内でM粒子のみからなる層が形成された.さらに,層内で粒径毎に上面の高さが異なるような鉛直分級が生じた.また,一連の研究で検討してきた平衡状態に関する基礎的な知見をさらに積み上げていくことにより,河床の変動過程の把握につながっていくと考えている.
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新井 涼允, 太田 一行, 佐藤 隆宏, 豊田 康嗣
2018 年74 巻4 号 p.
I_1075-I_1080
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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ダム堆砂対策の一環として実施される排砂・通砂や置き土は水際部における侵食および崩壊を伴う現象である.水際の崩壊を評価する解析モデルは存在するものの,サクションの与え方が簡易的であり,かつ崩壊のタイミングの精度は不明である.本研究では非粘着性土の斜面模型に水位上昇を与える水際崩壊実験を実施した.また,これまで多くの研究者に利用されてきた河岸のすべりを解析する平面崩壊(planar failure)モデルに,サクションの影響を忠実に表現できるよう改良を加え,水際崩壊実験に適用した.実際のすべりイベントと平面崩壊モデルの安全率の結果から,すべりのタイミングを概ね再現できることが確認された.
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太田 一行, 須藤 仁, 佐藤 隆宏
2018 年74 巻4 号 p.
I_1081-I_1086
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究では液相ならびに粒子相(粒径階毎)の運動方程式を解く多相Euler法を用いて,混合粒径からなる高濃度土砂流の3次元解析法を開発した.粒子相の応力構成として,粒子流の振動エネルギーに基づく衝突応力ならび粒子集合体の膨張に伴う摩擦応力を取り入れた.開発したモデルの妥当性検証のため,高濃度土砂流の定常実験ならびに大規模土石流実験の再現計算を行った.解析モデルは実験データの土砂濃度分布,輸送速度,3次元的な分級,粗度の影響を良好に再現することに成功した.
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関根 正人, 池田 憲昭, 芦澤 穂波, 佐藤 裕
2018 年74 巻4 号 p.
I_1087-I_1092
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究の目的は,輸送された掃流砂が粘土河床に与える影響と,その結果生じる粘土河床の横断方向と鉛直方向の構造の変化を解明することにある.浸食速度と粘土河床上の掃流砂の被覆率との関係から,掃流砂による浸食促進効果と浸食抑制効果が明らかになった.また,砂が粘土河床を被覆することで形成される砂と粘土の混合層は,特異な発達過程を有することが明らかとなった.はじめ,掃流砂は横断面に対して一様に輸送される.しかし,その混合層は直線的な水路ならば中央部分に,一様湾曲水路なら内岸側に寄るように形成されていく.混合層が形成された後,その層は横断方向に拡幅していく.
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椿 涼太, Sándor BARANYA, Marian MUSTE, 戸田 祐嗣
2018 年74 巻4 号 p.
I_1093-I_1098
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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開水路において砂堆を形成している砂粒子の流下をParticle Image Velocimetry法(PIV)により計測した.まず,数時間通水して安定的に砂堆が形成・流下する状況を形成した.つぎに,約2分間 2台の小型防水カメラ(アクションカメラ)を水面に固定し,側方から水路床を照明し,個別粒子を確認できる時空間的解像度で,砂堆上を流下する砂粒子を撮影した.PIVに先立つ前処理として,撮影した画像を加工して,砂堆上を流下する砂粒子のみを画像的に抽出し,2台のカメラの撮影範囲を,幾何補正を行ないながら合成して約15×15cm
2の範囲を移動する砂粒子の画像を作成した.この画像をPIVで分析して,粒子群の移動速度の時空間変化を計測した.流量を2通りに変えて,2次元的砂堆および3次元的砂堆を形成し,それぞれの状況での砂粒子に移動パターンについて,時間平均および時間変動と砂堆の形状の関連について検討した.分析結果より,2次元的砂堆では,複数のクレスト・トラフでの土砂移動が同時に起きる傾向があるが,3次元的砂堆ではクレストごとに土砂移動の時間変化が異なることがわかった.このような土砂移動パターンの違いが,2次元的砂堆および3次元的砂堆の形状維持・変形やマクロ的な土砂移動量の相違に関連することが示唆された.
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Sytharith PEN, Norihiro IZUMI, Adriano Coutinho de LIMA
2018 年74 巻4 号 p.
I_1099-I_1104
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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Linear stability analysis (LSA) is performed in order to investigate the bed stability of open channel flow. The bed is assumed to be covered with sediment. The governing equations are the Reynolds averaged Navier Stokes equation (RANS) and the dispersion/diffusion equation of suspended sediment
c. In addition, as a turbulent closure model, we employ the standard
k-ε model which includes the transport equation of turbulent kinetic energy
k, and the transport equation of the dissipation rate ε. Asymptotic expansions of the variables are then introduced into the governing equations to obtain the perturbation equations. The perturbation equations are solved with the use of the spectral collocation method incorporated with the Chebyshev polynomials. It is found that density stratification increases the velocity and suspended sediment concentration at the region near to the bed in the base state condition. The unstable region of antidune is shifted to the range of smaller wavenumber around the critical Froude number due to the effect of density stratification.
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ペン シサリス, 泉 典洋, 萩澤 さくら
2018 年74 巻4 号 p.
I_1105-I_1110
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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混濁流は,含んだ浮遊砂による密度の増加が駆動力となって流下する重力密度流の一種である.塩水密度流や温度密度流などの場合,駆動力となっている塩分濃度や温度が拡散によって流下とともに減少するため,長い距離を流下することができない.一方,混濁流では,拡散と浮遊砂の沈降が釣り合うことによって平衡状態(等流状態)に達する底面近傍の高濃度層が存在することが明らかとなってきた
1).本論文では,平衡状態に達した高濃度層を仮定し,この高濃度層に最も簡単な乱流モデルの1つである混合距離モデルを適用することによって,混濁流によって発生する底面不安定現象に関する線形安定解析を行ったものである.解析によって,密度Froude数が0.4程度より大きい領域で平坦な底面は不安定となり,界面波が形成され得ることが明らかとなった.
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石原 道秀, 安田 浩保, 五十嵐 拓実
2018 年74 巻4 号 p.
I_1111-I_1116
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究では,交互砂州の流下速度が低下するときの力学機構について,模型実験における水面と水底面の同時計測手法STを用いて取得した時空間的に高密度な定量情報に基づいて考察した.STの計測値より算出した水面勾配ベクトルおよび無次元掃流力τ
*wから,交互砂州の流下速度が低下する要因が砂州波高
HBの発達に伴う流れの迂回により砂州前縁部への掃流砂の供給が途絶えたことであることが示唆された.さらに流下方向の縦断底面勾配
iと流路幅方向の横断底面勾配
jが交互砂州の流下特性や発達状態を判定する指標となる可能性を示唆した.
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加藤 千恵, 清水 義彦, 岩見 収二, 大西 史哲, 加藤 翔吾, 村越 重紀
2018 年74 巻4 号 p.
I_1117-I_1122
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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複列砂州河川においても顕著な単列の蛇行流路が形成され,洪水時の河岸侵食の誘発や低水路・砂州の固定化,樹林化にみる河道の二極化が生じる事例がしばしば指摘されており,その現象の解明は河川管理上,重要な課題となっている.本研究では,こうした複列砂州河床形態での単列蛇行流路の形成過程を明らかにすることを目的として,侵食性河岸を有する移動床水理実験から検討した.その結果,通水時間の経過とともに複列砂州の河岸砂州の一方が拡大し,水路中央付近の洗掘域が流下方向で向かって対岸側に移動することで単列蛇行流路が形成される過程を明らかにした.さらに,流量低減時においても単列蛇行流路の単位幅流量の増加と,上流からの流砂の不連続性から河岸侵食が継続的に進行することを見出した.
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五十嵐 拓実, 安田 浩保
2018 年74 巻4 号 p.
I_1123-I_1128
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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流路変動の発達機序を定量的に明らかにするために水表面と水底面の曲面形状の対応関係を把握した.流路変動についての研究は世界中で数多く実施されてきたが,水底面や水理量の時空間分布の実測情報が不足しているため,その発達機序を解明するには至っていない.本研究では,浸食性河岸を有する直線流路を用いた移動床模型実験を実施し,水表面と水底面の高密度な計測を実施した.計測値から流路変動の発達時に水底面に対応した水表面の曲面形状が形成されていることが明らかとなった.さらに,計測値から求めた水面勾配から交互砂州の流下停止,横断方向への砂州の伸長などの流路変動の発達機序を説明できることが示唆された.
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渡邊 康玄, 山口 里実, 金 暢大
2018 年74 巻4 号 p.
I_1129-I_1134
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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一部を拡幅させ河岸浸食が生じるよう浸食域を設けた直線水路を用いて,交互砂州による河岸浸食に関する水理実験を実施した.実験条件は,浸食域の河岸の高さを変えて3ケース設定し,交互砂州を十分に発達させたのちに河岸浸食を許す場合と平坦河床から河岸浸食を許す条件で砂州を形成させた場合の2通り,計6ケースである.その結果,河岸の高さと砂州の発達状況の組み合わせにより,現象が大きく異なることが明らかとなった.河岸が低いほど横断方向への浸食が進む傾向を示すものの,砂州と浸食箇所の位置関係は大きく変化しない.また,河岸高が高い実験では,砂州を発達させたのちに河岸浸食を許す場合は河岸浸食が進行するものの,平坦床から河岸浸食を許す場合には砂州が発達した後も河岸の浸食は生ぜす砂州は下流への進行を続けた.
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久加 朋子, 山口 里実
2018 年74 巻4 号 p.
I_1135-I_1140
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究では,河道内側岸に繁茂する樹林帯が出水時の流路変動に与える影響を把握することを目的に,音更川における大規模流路変動の事例を対象とした数値計算による検討および実際の植生を用いた水路実験による検討を実施した.結果,いずれの検討においても,植生なしのケースに比べて植生ありのケースにおいて,流路水衝部で発生する局所的な側岸侵食がより大規模化する現象が確認された.これは,1) 側岸の植生が河岸侵食を抑制する一方で,2) 蛇行水衝部などで側岸の植生域が消失した場合,その直下流の側岸部に残存した植生の耐侵食性により水衝部の下流への移動が妨げられるためであることが示された.
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中路 宗志, 厳島 怜, 島谷 幸宏
2018 年74 巻4 号 p.
I_1141-I_1146
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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急勾配河川では洪水時の河床洗堀や河岸浸食が著しいため,環境に配慮した河道設計技術が確立されていない.本研究では長崎市に位置する急流都市河川である大井手川の環境に配慮した河道の設計のため, 移動河床での模型実験を行った.実験の結果,急勾配河川で川幅に制約がある都市河川でも石積水制によって河岸,河床の防御が可能であり,水制の配置を考慮することで,河道内に複雑な環境構造を形成しうることが示された.また今回の水制の最適構造と既往知見を比較し,水制間隔と水制長や川幅との関係や,水制間隔が相対水制高と洗堀深に与える影響について考察を行った.
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Saroj KARKI, Yuji HASEGAWA, Masakazu HASHIMOTO, Hajime NAKAGAWA, Kenji ...
2018 年74 巻4 号 p.
I_1147-I_1152
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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The experimental study presented herein discusses the short-term evolution of flow and morphology in an erodible meandering channel under steady discharge, with and without groyne structures. Experiments were conducted in a low sinuosity meandering channel with erodible bed and erodible banks composed of non-cohesive, non-uniform sediment. Series of groynes were placed as a countermeasure with an objective to study its effect on the erosion control, planform shifting and overall channel morphology. Various parameters of flow and morphology viz. channel topography, surface velocity distribution and water level were measured in order to analyze and compare differences in channel evolution, velocity distribution and water surface profile variation in the presence of groynes structures. Results showed a significant change in channel morphology and flow field with groynes like reduction in the size of point bar, deflection of high-velocity zone towards the channel center and an overall rise in the water surface profile. Although the presence of groynes resulted in the overall reduction in erosion by deflecting the flow towards the center, the outer bank region (especially between the groynes) still remained at the risk of erosion.
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山口 里実, 久加 朋子, 清水 康行, 泉 典洋, 渡邊 康玄, 岩崎 理樹
2018 年74 巻4 号 p.
I_1153-I_1158
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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急流河川において出水時の流路変動による大規模な側岸侵食は深刻な災害を引き起こす.本研究では,出水時の土砂動態と大規模侵食を誘発する流路変動の関係を把握することを目的とし,特に河道内の土砂動態と流路変動との関連性を検討した.ペケレベツ川と音更川の出水時の河道内土砂収支を整理し,側岸からの流出土砂が供給源となり河道内へ堆積することで側岸侵食が拡大した可能性を示した.また,側岸からの流出土砂量の違いが流路変動へ与える影響を実験的に検討し,側岸から流出する土砂が直下流の砂州の外岸側への拡大に寄与することで大規模侵食を誘発する流路変動の要因となり得ることを示した.
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大原 美保, 南雲 直子, 澤野 久弥
2018 年74 巻4 号 p.
I_1159-I_1164
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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災害に対して強靭な地域社会を実現するには,「致命的な被害を負わない強さ・減災のための緊急行動・速やかに回復するしなやかさ」という3つの要素が重要である.2015年9月の関東・東北豪雨災害では,鬼怒川の堤防が決壊し,茨城県常総市内が広域にわたり浸水した.当時,常総市内には常総市商工会会員の事業所が約1,700社立地しており,鬼怒川東側の約1,000社のうち,約600社の事業所が浸水被害にあった.本研究は,常総市商工会会員である事業所へのインタビュー調査を通して,事業所の「致命的な被害を負わない強さ」・「速やかに回復するしなやかさ」・「減災のための緊急行動」の実態を把握するとともに,今後の水害による事業所への影響評価手法の改善への示唆を得た.
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松冨 英夫, 今野 史子
2018 年74 巻4 号 p.
I_1165-I_1170
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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降水や洪水の観測データおよび洪水氾濫域における浸水痕跡水位などの現地調査に基づき,2017年7月の秋田豪雨による降水,洪水と雄物川沿いの主な氾濫域における氾濫の状況を論じ,降水の時・空間分布,洪水伝播,最大の浸水痕跡水位と浸水深の平面分布,氾濫流速,氾濫貯留量の実態を明らかにしている.降水や氾濫,人命・建物被害の特徴とともに,雄物川における今後の治水・利水の課題(計画降水の時・空間分布の再検証,河川整備率の早急な向上,揚排水機場建屋の根入れ深さの再検証)を指摘している.
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長谷部 由莉, 守屋 博貴, 二瓶 泰雄, 片岡 智哉, 森 義将, 岩本 祐子, 矢野 真一郎, 佐山 敬洋
2018 年74 巻4 号 p.
I_1171-I_1176
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究では,2017年7月に発生した九州北部豪雨における洪水氾濫被害と避難行動を検討するために,現地調査やデータ解析,複数の数値シミュレーションを行った.主な研究対象は中小河川(妙見川・奈良ヶ谷川・北川・赤谷川等)である.この結果,人的被害としては被災時に自宅にとどまり,その家屋も流失したケースが7割以上を占め,より安全な場所への水平避難の重要性が示唆された.今次豪雨の予測雨量は実測値よりも過小であり,予測雨量を用いると河川流量や氾濫発生の有無にまで大きく影響することが実証的に示された.避難行動開始のタイミングを気象情報や河川水位との関係で整理した結果,特に安価で分かりやすい水位観測所整備の重要性が示唆された.
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中村 要介, 池内 幸司, 阿部 紫織, 小池 俊雄, 江頭 進治
2018 年74 巻4 号 p.
I_1177-I_1182
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究は平成29年7月九州北部豪雨を一例とし中山間地河川である花月川を対象として,RRIモデルと解析雨量・降水短時間予報を用いた疑似リアルタイム環境での洪水予測シミュレーションを実施した.予測計算は流域・河道の状態量を30分毎に更新・保存しながら6時間先までの水位を逐次計算し,実績水位と予測水位の差から洪水予測に内在する予測時間毎の水位誤差を定量的に評価した.その結果,予測時間が長くなるほど予測水位誤差の幅が大きくなることがわかった.また,RRIモデル×降水短時間予報を用いた今次災害のリードタイムは70分であった.さらに,予測水位の誤差分布を考慮し予測水位を補正することで,補正しない場合より2時間早く氾濫危険水位の超過を予測できる可能性が示唆された.
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鈴木 健吾, 篠原 麻太郎, 守屋 博貴, 二瓶 泰雄, 長谷部 由莉, 五十川 周, 矢野 真一郎, 赤松 良久
2018 年74 巻4 号 p.
I_1183-I_1188
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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本研究では,平成29年九州北部豪雨により生じたため池の決壊状況と要因を明らかにするとともに,ため池決壊の有無による下流域の洪水氾濫に及ぼす影響を把握するために,現地調査,大型ため池模型の越水実験,洪水氾濫シミュレーションを実施した.その結果,山の神ため池は,越流を主要因とした決壊が発生し,越流時間は40-50分程度,越流水深は50cmであった.高さ1mの大型ため池模型を用いた越水実験により,ため池の決壊過程としては,下流水路からの溢水や堤体の越水による下流水路周囲や裏のり面全体が侵食され,下流水路・洪水吐が順々に流失し,決壊に至ったものと推察された.氾濫シミュレーションから,山の神ため池の決壊から下流域の集落に洪水が到達する時間はわずか10分と短時間であったことが示された.
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小室 隆, 赤松 良久, 山口 皓平, 渡辺 豊, 守屋 博貴, 二瓶 康雄
2018 年74 巻4 号 p.
I_1189-I_1194
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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平成29年7月九州北部豪雨において筑後川水系寒水川では大規模な土砂氾濫が発生し大きな被害を受けた.本研究では寒水川を対象に被災直後から現地調査を行うと共に,国土地理院が撮影した空中写真と衛星画像を用いて斜面崩壊・土石流および水・土砂氾濫域の抽出を行った.その結果,寒水川では大量の水と土砂が河川に流入したため,土砂災害警戒区域より下流の平野部で,水だけでなく土砂も氾濫する土砂氾濫が生じたことが明らかとなった.また,LPを搭載したUAVによる測量を行い,河川周辺の土砂堆積量の見積もり及び河川氾濫の再現シミュレーションを行った.再現シミュレーションの結果,災害前の地形を用いた場合には実際の水・土砂氾濫域を十分に再現することはできなかったが,災害後の地形を用いた場合には実際の氾濫域と同様に下流部右岸でも広範囲に氾濫する様子が再現可能であった.
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守屋 博貴, 二瓶 泰雄, 長谷部 由莉, 峯 浩二, 鮓本 健治, 矢野 真一郎, 渡辺 豊, 福田 信行
2018 年74 巻4 号 p.
I_1195-I_1200
発行日: 2018年
公開日: 2019/03/30
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平成29年7月九州北部豪雨災害において,橋梁部の流木捕捉により河道閉塞が生じた福岡県朝倉市北川における洪水・土砂・流木災害の実態を明らかにするために,現地調査と平面二次元氾濫解析を実施した.洪水痕跡・家屋被害に関する現地調査より,北川上流の道目木地区と下流の本陣橋周辺において被害が集中し,上流部では斜面崩壊と洪水,下流部では橋梁部の流木捕捉が主な氾濫要因であることが示された.流木捕捉有・無を考慮した氾濫解析の結果,流木捕捉有の氾濫水量は流木捕捉無の4.6倍も大きく,流木捕捉無では発災当日23時には氾濫水量がほぼ0であったが流木捕捉有ではそのピーク値を維持していた.これより,流木捕捉による河道閉塞が浸水時間の長期化・氾濫水量の大幅な増加に大きく寄与した.
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