土木学会論文集B1(水工学)
Online ISSN : 2185-467X
ISSN-L : 2185-467X
74 巻, 5 号
選択された号の論文の257件中151~200を表示しています
水工学論文集第63巻
  • 肥後 陽介, 音田 慎一郎, 高野 大樹, 山内 敏貴
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_901-I_906
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     河川堤防の越流破堤の主要因である表面流による侵食挙動は,その力学挙動の解明と精緻なモデル化が重要である.本研究では,水路模型を用いた表面侵食実験を実施し,ハイスピードカメラと画像解析により,表面侵食挙動を表面流に起因したせん断力による土のせん断破壊挙動として観察した.画像解析には画像相間法を適用して変位場を得ると共に,せん断ひずみ場を定量化した.その結果,粘着性土においては,局所的にせん断ひずみの集中する破壊面を伴い,土魁となって侵食が起こっていることを明らかにした.さらに,このような粘着性土の表面侵食挙動は,表面土の応力状態とMohr-Coulombの破壊規準に基づいて土のせん断破壊として説明し得ることを示した.これは,土の構成式によって表面侵食を解析可能であることを示唆している.

  • 原田 大輔, 江頭 進治
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_907-I_912
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     ネパール国ウエストラプティ川では,僅かな区間内で顕著な河床材料の分級が生じている.本研究は流砂機構の違いに着目して,この分級現象を説明しようとするものである.一般に適用されているような流砂量式を用いてウエストラプティ川で見られるような河床材料及び流砂の縦断分級を説明することは難しい.そこで,河床材料の評価方法として掃流砂層厚を,また無次元掃流力の5/2乗に比例する掃流砂量式を導入して,河床変動計算を行い,流砂及び河床材料の縦断分級現象を評価した.その結果,本手法を用いて縦断分級現象を評価できることが分かった.

  • 平松 裕基, 本合 弘樹, 関根 正人
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_913-I_918
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,水流によって移動することのない大礫が河床表面に露出する場を対象として,その間隙に位置する砂礫の空間的な構造を理解することを目指した.河床材料は移動しない大礫,掃流砂として移動する砂礫,浮遊砂として移動する細砂の三つの粒径集団から構成される.掃流砂礫群の粒度幅の違いが河床表層の構造に与える影響に着目した実験を行った.この構造に関する計測は静的平衡状態に到った後の河床を対象としており,河床表層に位置する掃流砂礫群の三次元的な座標を可能な限り精度よく評価することに努めた.その結果,縦横断方向の粒子の分布に顕著な違いはないこと,ならびに最大粒径をもつ粒子同士の距離の生起確率は距離の大きなものほど低くなることが明らかにされた.

  • 熱海 孝寿, 福岡 捷二
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_919-I_924
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     石礫河川の流砂現象には粒子形状の影響が大きく,流れと流砂運動に対する影響を明らかにすることは重要である.本研究では,石礫河川の粒子形状に着目し,異なる形状を持つ粒径集団からなる石礫群を用いた数値移動床実験によって主流部と堆積層内の流れ構造および相互作用,また,河床形状,粒子移動量に及ぼす粒子形状の影響について調べた.その結果,主流部の流れは河床表層から水深程度の深さの範囲で,堆積層内の流れに影響を与えること,そして,堆積層内の流れが主流の乱れ構造に影響を与えることを明らかにした.さらに,異なる粒子形状が河床変動の機構に違いをもたらす.過程を詳細に分析し,流砂量,河床の形状,河床変動に及ぼす影響を明らかにしている.

  • Ahmad Ali GUL, Atsuhiro YOROZUYA, Hiroshi KOSEKI, Shinji EGASHIRA, Sho ...
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_925-I_930
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     This paper introduces one of the prominent observed phenomena, and describes it in terms of textbook hydraulics knowledge. The authors conducted field measurements in Brahmaputra river where bedform and boil were observed and analyzed the effects of those on the spatial-temporal distribution of suspended sediment. Dense measurements were conducted in an area where boils were observed, for comparison dense measurements were also carried out in an adjacent area where no boils were observed. It was found that bedform had occurred in the area where boils were observed, whereas, no bedform was observed in the area where boils did not exist. Using ADCP backscatter as surrogate for Sediment Concentrations (SC), results show higher SC exists where boils are observed, which suddenly decreases downstream of the boil. ADCP observation of the boil shows higher vertical velocities during upward flow at the downstream of the bedform crest. Thereafter, a downwards flow was also observed. The rapid settling of SC in the downstream of boil is linked with downwards flow due to boil. Results shows that the force generated by the boil lifts the larger particles, and this strength is larger than the one estimated as τ*.

  • 関根 正人, 佐藤 裕, 芦澤 穂波, 吉川 文崇
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_931-I_936
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,上流側から掃流砂として輸送されてきた砂礫が,河道湾曲部の粘土河床上で生じる浸食・堆積のプロセスに及ぼす影響を実験的に明らかにすることを目指した.ここでは,給砂量や通水時間を様々に変化させた一連の系統的な実験を行った.実験の結果,輸送されてくる砂礫の量の違いにより,粘土河床の変動のプロセスに変化が現れ,次のような特徴的な河床構造となることがわかってきた.砂礫の接触に伴い粘土河床の浸食が促進され,粘土河床は内岸付近ほど顕著に浸食を受ける.ただし,ある閾値を超えるほどの量の砂礫が輸送されると,浸食された内岸側の粘土河床に砂が入り込み混合層を形成するほか,さらにその上に砂のみの層が形成されることもある.このように河床が砂礫で被覆されると,それ以上の浸食は抑制される.ただし,上流からの砂礫の供給がなくなると,砂層は流出するため粘土河床が露出し,さらに浸食を受けることになる.

  • 関根 正人, 芦澤 穂波, 佐藤 裕, 吉川 文崇
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_937-I_942
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,粘着性土で構成された河床上に模擬巨石を配置し,上流側から輸送されてくる砂礫の捕捉効果と河床変動メカニズムを解明することにある.多摩川や鬼怒川で土丹層が局所的に露出した区間がみられ,これが河川管理上問題となっている.この土丹層は粘着性土が固結化してできたものである.本研究は,将来的には土丹層が露出した区間を砂礫河床に回復させる対策に資する基礎研究となるように考えて行ったものであり,ここでは粘土河床を対象に実験を行った.結果として,模擬巨石を河床上に配置し上流側から砂礫を供給すると,粘土河床上に砂層を形成させることができ,粘土自体は遮蔽を受けて更なる浸食が生じなくなること,形成された砂層はその後の水流の作用を受けて浸食されるが引き続き砂礫の供給があれば再生されること,などを明らかにした.

  • Changlu ZHOU, Akihide TADA, Shinichiro YANO, Akito MATSUYAMA, Changpin ...
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_943-I_948
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     Cohesive sediment has been identified as an important carrier for heavy metal transport in coastal and offshore areas. Minamata Bay was heavily polluted by wastewater discharge contained mercury in 1950s and pollution research around this area has been carrying out. To further understand the distribution and transport of mercury contaminants in Minamata Bay, a current induced cohesive sediment transport model was developed, considering the process of resuspension, deposition, settling, etc. Hydrodynamic environment was provided by the Princeton Ocean Model. Wind and river discharge impacts on bottom shear stress were analyzed and the density current caused by the Komenotsu River had significant effect on the sediment transport in research areas. Simulation results on bottom ocean layer showed good agreement with measured data of three observation stations. Relation between flow field and bottom cohesive sediment concentration was also discussed.

  • 赤堀 良介, 山口 里実, 佐藤 大介
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_949-I_954
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では草本群落を想定した植生模型を有する水路に浮遊砂モデルとしてのPVC粒子を流下させ,浮遊砂濃度と流下方向流速の鉛直分布を観測し両者の関係を調べた.実験では植生模型の相対高さを変化させた際の濃度フラックスの変化も検討した.結果より,植生高さの変化が濃度フラックスの分布を変化させ,植生域での貯留量が18%程度変化することが示された.濃度分布を決定付ける拡散係数に関しては,流速の変曲点が存在する領域で大きい値を取り,結果として濃度分布の勾配が局所的に緩やかなものとなった.また植生高さが低い場合にせん断面で生じた乱れがsweepとして河床に到達し,Wake zoneとして認識される植生後流の高周波成分が卓越する領域が安定して存在し得ない状況があることが示された.

  • 濱木 道大, 岩崎 理樹, 井上 卓也, 清水 康行
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_955-I_960
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     河川横断構造物や土砂採取の影響により流域内における土砂の連続性が崩れ,河床低下や海岸侵食などの問題が社会問題化して久しい.これを解決する手段として,総合土砂管理の理念に基づくダム排砂や置き土等による土砂還元が行われているが,その効果検証を明確に行う手法については未だ確立されていない.本論文では,置き土等河道内に供給された土砂の行方を追跡し,その影響評価に資する技術を構築することを目的とし,これまでのモデルで考慮されないことが多い土砂の鉛直方向の分散効果を河床変動解析モデルを元に構築した土砂トレーサーモデルに導入し,既往の水路実験結果との整合性を確認した.また,直線水路において交互砂州の有無が鉛直分散に与える影響について検討を行い,モデルの特性を把握した.

  • 山口 里実, 久加 朋子
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_961-I_966
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     低水護岸や水制は側方侵食に効果がある反面,その周辺の流れや流砂特性を大きく変化させるため,これらの設置が河道特性へ与える影響を明らかにすることは,効率的な整備や河川環境への配慮の観点からも重要である.本研究では,低水護岸や水制工の設置が河道特性へ与える影響を明らかにすることを目的とし,急流河川でよく見られる側岸侵食を伴う蛇行流路を対象として,低水護岸または水制によって水衝部の側岸侵食を抑制した場合の流路の応答について水理模型実験を実施した.河道の一部分に水制を配置したところ,この区間の側岸侵食を抑制しながらも,すぐ下流側の河道では本来の蛇行する流路特性が維持される現象がみられた.

  • Saroj KARKI, Hajime NAKAGAWA, Kenji KAWAIKE, Masakazu HASHIMOTO, Yuji ...
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_967-I_972
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     The present experimental study investigated the effect of channel sinuosity and curvature on the evolution of flow and morphology in sine-generated meandering channels. Experiments were conducted in meandering channels of two different sinuosities and curvature, composed of erodible bed and banks under the steady discharge, with and without groynes. Results showed that the channel with low sinuosity and a low ratio of the radius of curvature to the channel width (R/B) is more prone to erosion and morphological changes compared to the channel of higher sinuosity and R/B ratio. Channel sinuosity also influenced the overall morphological evolution with LS channel showing more distinct characteristics of a meander, forming point bar, pool and riffle sequences. Variation in the flow pattern with sinuosity was observed which ultimately determined the zones of maximum erosion-deposition in the channel. Although the groynes minimized the bank erosion, they also tend to shift the erosion from one point to another.

  • 北村 旭, 椿 涼太, 河原 能久, 内田 龍彦
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_973-I_978
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     洪水時に河床波が形成されると,土砂運動や通水抵抗が変化することは広く認識されている.しかし,河床波上を移動する個々の砂粒子の運動と河床波の発達や変遷過程との関連性を捉えた研究例は限られる.本研究では実河川において頻繁に見られる河床の3次元性に着目し,一定流量の条件下において,平坦河床から2次元砂堆を経て,3次元砂堆が形成される変遷過程を対象として,河床近傍流速と河床波上を移動する個々の砂粒子の運動を直接計測した.その結果,平坦河床から2次元砂堆が形成される期間においては,粒子の移動速度と流速成分の変動が2次元砂堆の形成に伴って抑制されていき,2次元砂堆から3次元砂堆に切り替わる時刻では特異的に流速成分の変動がほぼなくなることが確認された.その後,発達した3次元砂堆の形成においては,横断方向の土砂移動ではなく,流下方向の土砂移動の空間的な不均一性が重要であることが示唆された.

  • 桑村 貴志, 渡邊 康玄, 米元 光明, 坂井 純
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_979-I_984
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     北海道東部の音更川では、平成23年9月および平成28年9月の出水において堤防の流出や大規模な河岸浸食が生じた.洪水後の調査により大規模な河岸浸食の多くは蛇行流路の発達によるものと推定され,蛇行流路の発達には砂州と呼ばれる中規模河床波の形成が大きく関わっているものと考えられるものの,実河川における出水時の中規模河床波の形成過程に関する知見はその複雑性ゆえに未だ十分ではない.

     よって本研究では,音更川の既往の4つの主要出水を対象として非定常流下における線形安定解析を適用し,出水中における単列砂州と複列砂州の増幅率の関係から中規模河床波の発達特性を示したほか,蛇行流路の発達は中規模河床波の形態に大きく影響を受けていることを示した.

  • 秋山 壽一郎, 重枝 未玲, 内野 雅文, 小野 英一, 長船 建太郎
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_985-I_990
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     まず自然安定河道に関する国内外の信頼性の高い資料に基づき,筆者が提案する安定河道の発生条件(K値,動的平衡状態にある無次元掃流力τ*sおよび川幅水深比 B/h)の明確化を図った.次に河川整備計画期間程度の将来河道を対象として,安定河道の条件を用いた安定断面の設定と平面2次元河床変動解析に基づく“流下能力と安定性を兼備した複断面水路横断形の設定法”を提示した.最後に同設定法を緑川河道に適用し,整備計画河道横断形の検討事例を示した.

  • 音田 慎一郎, 安庭 正晴, 細田 尚
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_991-I_996
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     近年,局地的集中豪雨の出水において,河岸侵食を伴う大規模な流路変動が確認されており,甚大な被害をもたらしている.こうした被害を軽減するためには,流路変動を引き起こすメカニズムを把握し,数値モデルによって精度よく予測することが必要である.本研究では,表面流と浸透流を同時に予測できる流れの3次元モデルと平衡流砂モデルを用いて,側岸を固定した直線水路での交互砂州形成過程と側岸を可動とし,河岸侵食を伴う流路変動に関する数値解析を行った.側岸固定での交互砂州の形状特性についは実験結果を概ね再現しており,また,側岸を可動とした場合には,交互砂州形成によって河岸侵食が進行し,流路が蛇行していく様子が再現できた.

  • 加藤 千恵, 清水 義彦, 岩見 収二, 大西 史哲, 加藤 翔吾, 村越 重紀
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_997-I_1002
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     洪水時の複列砂州河川の河道被災として,大きな蛇行流路の形成による河岸侵食がその典型的な事例であり,その機構解明は河川管理上重要な課題である.こうした背景のもと著者らの既往研究により,複列砂州の片側河岸砂州が拡大し,これが下流に交互伝播することで単列蛇行流路が形成する過程と,側岸侵食からの供給砂が流路固定,単列蛇行化を促進することを水理実験から見出し,さらに河岸侵食と上流側土砂供給がこの流路形成に影響を与えることを認識した.そこで本研究では,側岸侵食を伴う複列砂州の単列蛇行流路の形成過程に与える土砂供給の影響を,移動床水理実験と平面2次元河床変動解析から検討した.その結果,土砂供給による堆積傾向が単列蛇行流路の発達を促して強調化させることを提示した.

  • 住友 慶三, 渡邊 康玄, 泉 典洋, 山口 里実, 米元 光明
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1003-I_1008
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     河道内が樹林化した札内川において,撹乱誘発による礫河原の再生を目的として,樹林内に残る旧流路への接続掘削による分岐流路の維持に取り組んでいる.そのような中で,2016年8月に既往最大規模の出水が発生した.出水による河道内の変化状況から,旧流路への接続掘削による分岐流路の維持は,出水時の礫河原再生に効果的であることが示された.また,河道中央部への分岐流路の維持により,分岐流路での河床変動を促し,出水時の堤防方向への侵食を抑制する効果が期待できることを河床変動計算により示した.さらに,水面比高差拡大による撹乱頻度の低下に伴う早期の再樹林化,側岸侵食の進行による堤防決壊リスク増加という新たな課題に対しても,早瀬区間における礫河原への分岐流路掘削により,礫河原の撹乱更新及び側岸侵食軽減の効果が期待できることを示した.

  • 岡部 和憲, 久加 朋子, 清水 康行, 長谷川 和義, 新庄 興, 山口 里実
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1009-I_1014
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     2016年8月,音更川上流区間では大規模な流路の蛇行化とそれに伴う左右岸連続7箇所の堤防決壊が生じた.痕跡水位調査からは,決壊した堤防はピーク水位時には存在しており外水氾濫を防いだものの,その後の流量低下時に決壊に至った状況が確認された.本研究では,音更川を急流河川災害のモデルケースとし,流量ハイドログラフ形状の違いが流路変動および堤防侵食リスクに与える影響を数値解析より検討した.結果,当該区間では出水ピークを前後にずらしても計算終了時の流路形状は類似し,同じ場所で同程度の川幅拡幅と堤防決壊が生じた.ただし,堤防侵食に至る時間は異なり,流量をゆっくり増大させるケースでは出水ピーク前に堤防決壊し,流量ピーク時に堤防の存在しない区間が生じた.当該区間の流路変動に伴う堤防侵食リスクは,流量ピーク値の大きさよりも,ある程度以上の大流量が出水前半・後半にかかわらず継続することが関与していると考えられる.

  • 渡邉 健人, 久加 朋子, 山口 里実, 清水 康行
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1015-I_1020
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     2016年8月の北海道豪雨災害では,十勝川水系の多くの支川にて既往最大流量を観測し,大規模流路変動が生じた.十勝川の一次支川である札内川においても,河川全域にわたって大規模な流路変動が生じると共に河道内樹木(ヤナギ類)の大規模な流失と低水路幅の拡幅が認められた.本研究では,樹林化の進行に伴い網状流路から単列蛇行流路に流路形態が変化していた札内川において,2016年8月出水時の河道内樹木の流失と残存状況が流路変動に与えた影響を把握することを目的に,札内川上札内観測所付近の破堤箇所を対象に現地データの整理を行うと共に,数値計算による検討を行った.結果,河道内樹木による流路変動への影響はある程度認められたものの,短期間の大規模出水の場合,長期的な植生の侵入により固定化された単列蛇行砂州の形状自体が流路変動特性を支配する主要因となる可能性が示された.

  • 植村 昌一, 平松 晋也, 宇治橋 康行, 鈴木 博人
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1021-I_1026
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     鉄道における降雨時の安全性向上のためには,列車運転中止規制が発令されないときに発生する災害の原因を明らかにし,その対策を講じることが重要である.そこで,本研究では,JR東日本の線路において2006年から2013年の期間に列車運行中に発生した5件の切取斜面崩壊に着目した.そして,現地調査や災害記録をもとに崩壊発生原因を調査し,表層土浸透水の集中,伏流水の集中,道路表面水の集中の3つの発生形態に分類した.その上で,崩壊の発生形態毎に水の挙動を考慮した災害指標を提案した.国土交通省解析雨量のデータや鉄道雨量計のデータを用いて計算された過去複数年の災害指標値を分析することで,これらの有効性を検討した.

  • 佐藤 裕和, 松山 貴大, 深田 耕太郎, 遠藤 雅実
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1027-I_1032
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     堤内水防林の洪水氾濫土砂の捕捉効果について,水理模型実験により検証した.模型は1/100スケールとし,直線開水路内に氾濫域を設け,破堤口地点から直径3.05mm,樹木間隔3cm四方の水防林を幅0.1-0.4mで設置した.土砂は5-8号の混合珪砂(乾燥密度約1.43g/cm3)を自然乾燥状態で用い,4.9×10-3m3の堤防を越流破堤させ土砂を流入した.水防林区間通過後の流入土砂質量比は,水防林なしの場合で約77%,水防林幅0.1mと0.2mで約62%,幅0.3mで約64%,幅0.4mで約61%であったが,水防林内での土砂捕捉効果よりも,破堤規模緩和による堤内への土砂流入抑制効果が卓越した.また,水防林区間の通過中,中央粒径d50については小さくなる傾向が確認され,d84/d16については一定の傾向が見られなかった.

  • 五十嵐 孝浩, 竹林 洋史, 浜田 裕貴, 的場 萌実, 飛岡 啓之, 澤田 悦史, 平川 了治, 上村 雄介
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1033-I_1038
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     2018(平成30)年4月1日より一般へのデータ提供が開始されたXバンド MPレーダ雨量情報とMP化されたCバンドレーダ雨量情報を合成した新しいXRAIN(C-X合成レーダ雨量情報)を用いて,平成29年7月九州北部豪雨を対象として,C-X合成レーダ雨量と合成前のXバンド MPレーダ雨量の違いが,土砂災害危険情報サービスの土砂災害危険度判定に与える影響を検討した.

     C-X合成レーダでは,Xバンド MPレーダで発生していた強雨による電波の減衰の影響で発生する消散がないことを確認するとともに,C-X合成レーダーによる判定では,土砂災害の発生実績を確実に捕捉出来ることを確認した.

  • 横山 洋, 吉川 泰弘, 伊波 友生, 前田 俊一, 矢部 浩規
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1039-I_1044
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     2018年3月に季節外れの大雨と暖気により,北海道内の各地でアイスジャム洪水が発生した.気候変動により今後,融雪期も含めた気象条件の変動が予想される中,今回のアイスジャム洪水の発生状況を整理し,被害の現象解明や今後の課題について検討することは,現在及び将来の結氷河川の維持管理や防災に資するものである.本研究では道内11河川で確認されたアイスジャムについて,発生の日時と場所,河道の特性について調査結果を整理した.またアイスジャムスケールを用いて,アイスジャム発生危険箇所の抽出を試みた.これらの分析を踏まえて,アイスジャム発生による被害と今後の課題について整理した.

  • 重枝 未玲, 秋山 壽一郎, 鬼束 幸樹, 中島 晴紀, 勝原 亮介, 桂 佑樹
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1045-I_1050
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
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     本研究は,花月川を対象に現地調査および数値解析に基づき,平成29年7月九州北部豪雨時の被災要因を把握するとともに,今後の河道改修で考慮すべき点を検討したものである.水位を境界条件とした平面2次元洪水流解析と降雨を外力とした流域流出・洪水氾濫解析を実施し,花月観測所で1,350~1,400m3/s程度の大流量が流下したことに加え,その河道線形や中規模河床形態などの河道特性が,花月川での河川構造物の被災要因であることを示した.これらに基づき,同河川では流下能力の確保のみならず河道特性を踏まえた河川改修の必要性を示した.

  • 津末 明義, 楊 東, 竹村 大, 富田 浩平, 矢野 真一郎, 土橋 将太, 大久保 僚太, 笠間 清伸
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1051-I_1056
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     矢野ら(2018)により開発された流域全体の可能最大流木発生量に相当する流木発生ポテンシャルと橋梁位置での相対的流木災害リスクの評価法について,流木集積による氾濫発生に起因する経済損失を計量したリスク評価法への改良を試みた.平成24年と同29年の九州北部豪雨で計3回被災した大分県日田市の花月川流域を対象に評価した結果,従来の評価法による流木の集積傾向の評価では分からなかった橋梁の流域内での位置,洪水時の流量,地形条件等に依存した流木に起因する氾濫状況を予測し,治水経済調査マニュアルに準拠した被害額を算定することで,現実的な流木災害リスク評価が可能になった.また,花月川における橋梁改修による流木災害リスクの低減効果が定量的に明らかとなった.

  • 竹村 大, 増田 淑稀, 津末 明義, 大久保 遼太, 富田 浩平, 矢野 真一郎, 笠間 清伸
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1057-I_1062
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     平成24年九州北部豪雨で被災した矢部川上流の支川である星野川流域を対象に,矢野ら(2017)により開発された流域全体の流木発生ポテンシャルと橋梁位置での相対的流木災害リスクの評価法を適用して流木災害リスクの評価を試みた.星野川流域は歴史的な石橋が多く存在しているが,石橋は桁下構造がアーチ形式であることから洪水時に水面を流れてくることの多い流木が捕捉されやすい構造である.しかし,これまで石橋の流木捕捉に関する情報は無かったことから,模型水理実験により石橋の流木捕捉率評価において必要となる代表径間長の設定法を検討した.その結果,石橋の代表径間長は最大径間長の半幅で設定できること,ならびにそれを用いた評価により星野川流域の多くの石橋において流木災害リスクが相対的に高いことが明らかとなった.

  • 矢野 真一郎, 大久保 遼太, 津末 明義, 竹村 大, 富田 浩平, 笠間 清伸, 二瓶 泰雄
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1063-I_1068
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     平成29年7月九州北部豪雨では大量の流木が流出し,洪水被害を拡大させた大きな原因となった.本研究では,C-X雨量データを用いて各時間累積最大雨量を算定し,地形的要因と累積雨量に対して各渓流の斜面崩壊の発生率が持つ統計的関係を解析した.また,特に被害の大きかった赤谷川と溜池の決壊が生じた奈良ヶ谷川について,矢野ら(2018)で提案された流木発生ポテンシャルの評価を行い,今次水害での流木発生量との比較分析を行った.その結果,今次水害の斜面崩壊,すなわち流木流出は斜面の傾斜角と3時間または6時間最大累積雨量との相関が高いこと,ならびに潜在的な流木発生源として傾斜角10°程度の斜面まで考慮する必要があることなどが明らかとなった.

  • 清水 義彦, 長田 健吾, 岩見 収二, 草場 智哉
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1069-I_1074
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     中山間地域の洪水災害は,平成29年7月九州北部豪雨に見るように,最近の豪雨傾向による洪水流量の増大と相まって,大量の土砂・流木を含む山地洪水としての様相を呈している.従来,流木対策の多くは渓流砂防としてなされているが,今後,豪雨外力の増大化が見込まれる中,洪水流量の増加に伴って土砂・流木の流下範囲も本川河道に拡大することが予想され,河道内においても積極的に流木貯留施設を設けるべきである.こうした観点から本研究では,中山間河道に設置した流木の貯留施設について,施設機能の考え方とその効果評価を対象に,流木群の流動追跡に関する実用的な数値解析を提案して検討した.具体的には,熊本県白川水系黒川に設置された黒川貯木場を検討対象とし,その機能と有効性を評価し,今後の流木災害軽減に向けての知見を提示した.

  • 原田 紹臣, 中谷 加奈, 木村 一郎, 里深 好文, 水山 高久
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1075-I_1080
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     平成29年7月に九州北部で発生した豪雨災害において,多くの流域では多量の流木が下流に流出して甚大な被害を与えた.なお,従来の技術知見とは異なり,顕著に流木を捕捉した不透過型砂防堰堤が存在し,更なる砂防堰堤における流木捕捉に関する議論が望まれる.一方,これまで掃流区間等の緩勾配区間河川において整備されてきたコンクリート・スリット堰堤の流木処理機能については,未だ明確にされていない.そこで,効果的な流木対策計画立案を目的に,コンクリート・スリット堰堤における流木対策の効果及びその高度化に関して,基礎的な実験により考察している.本実験結果によると,コンクリート・スリット堰堤の流木処理機能として,堰上げ効果に伴う上流湛水部において発生する背水の影響による流木の一時的な貯留が確認された.ただし,給水停止後には背水の影響が消失し,捕捉された多くの流木が透過部を通過して流出するのが確認された.そこで,給水停止後における流木流出対策として,線材を透過部に網状的に配置させた対策工を提案し,その各部材における機能や特性について実験により考察した.

  • 中谷 加奈, 長谷川 祐治, 里深 好文
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1081-I_1086
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     山地渓流では流路幅が狭く,橋脚の無いワンスパン橋梁が多く存在する.橋脚を有する形状と比べて集積・閉塞が発生しにくいと考えられるが,土砂災害発生時には流木による閉塞事例が多く報告される.しかし,ワンスパン橋梁の流木閉塞の検討は殆どなく,被害軽減のためには発生要因や起こりやすさを明らかにする必要がある.本研究は,山地渓流のワンスパン橋梁への流木閉塞について,流木・橋・水理条件を変えて実験から検討した.橋に到達する際の流木濃度を指標として検討し,流木長と橋の余裕高の比率が小さいと閉塞には高濃度を必要とし,比率が大きいほど低濃度で閉塞が起こることを確認した.また,閉塞と非閉塞の混在領域が見られたため,ロジスティック解析により閉塞の起こりやすさを回帰曲線で示し,さらに閉塞確率を推定する手法を検討した.

  • 橋本 彰博, 押川 英夫, 小松 利光
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1087-I_1092
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     福岡・大分両県に甚大な被害をもたらした「平成29年7月九州北部豪雨」は,朝倉市北小路公民館で9時間に774mmという驚異的な降雨を記録するなど,狭い範囲を襲った記録的な降雨で,洪水・流木・土砂による三重苦の複合災害という意味で転換点ともいうべき凄まじい豪雨災害であった.本研究では大肥川流域を対象に災害の特徴と被災状況について調査した.その結果,大肥川流域では上流部で洪水・流木・土砂の3重複合災害,中・下流部で洪水・流木の2重複合災害を示していた.このような複合災害に対しては,ある程度の被害は避けられないものとして,組織の壁を超えた連携による既存のインフラの活用など,社会のレジリエンスを高めるための対応策が急務である.

  • 竹林 洋史, 藤田 正治
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1093-I_1098
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     2016年4月16日の地震によって非常に多くの斜面崩壊が阿蘇地域を中心に発生した.崩壊した土砂の中には,山王谷川流域のように,豪雨中に発生した崩壊では無いにも係わらず,流動化して土石流となり下流域に伝播し,土砂災害を発生させたものもある.また,地震時に発生した崩壊であるため,多くの崩壊が同時に発生して土石流化し,それらが合流しながら流れたと考えられる.本研究では,山王谷川を対象として現地調査を実施するとともに,複数の斜面崩壊を考慮した土石流の数値シミュレーションを実施し,山王谷川で発生した土石流の流動特性を検討した.その結果,地震によって同時に発生した崩壊による土石流は合流しながら規模を拡大させ,下流に伝播していたことが明らかとなった.また,細粒土砂の相変化が発生しなかったり,地盤内の間隙の水の飽和度が低いと,土石流は下流まで到達しない可能性が示された.

  • 関根 正人, 佐藤 耕介, 菅 俊貴
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1099-I_1104
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     近年の豪雨被害のうち,流域に最も深刻な影響を与えるもののひとつが河川堤防の決壊である.2015年の鬼怒川の事例がその代表であり資産を失うばかりか人命に関わる事態にもなりうる.気候変動が進行中である昨今,堤防が決壊するメカニズムをより深く理解し,これを対策に活かしていくことは喫緊の課題である.著者らはこれまでに粘土と砂からなる模擬堤防を対象とした基礎的な検討を行ってきたが,本研究では礫をも含有する堤体の決壊プロセスについて新たな検討を進め,粘土ならびに礫がこのプロセスならびにメカニズムに及ぼす影響を明らかにすることに努めた.ここでは,粘土・砂・礫の含有比率の異なる模擬堤防を用意し,その決壊プロセスを実験的に調べた.その結果として,粘土が発揮する粘着力と礫によるかみ合わせ効果性により,堤防の耐浸食性が格段に向上することが明らかになった.

  • 門田 章宏, 葛西 博文, 小田島 勉
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1105-I_1110
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     近年,2015年9月の関東・東北豪雨等,異常気象に伴う集中豪雨や洪水により越水し,様々な堤防決壊が発生している.この災害を踏まえ,施設能力を上回る洪水時の氾濫による被害リスク及び被害軽減を考慮することが課題となっている.越水発生から決壊に至る間での越水による堤体の浸食・崩壊を遅らせるためには,堤防の天端をアスファルト舗装するとともに,法面,法肩,法尻などの堤体の表面を被覆することや裏法尻に洗掘防止のための保護工を設けることなどがあげられる.そこで本研究では,越水した場合に深掘れの進行を遅らせ,決壊までの時間を少しでも引き延ばすことを目的とした法尻ブロックの形状および平場部の有無による越流水に対する洗堀抑制効果を河床変動により検討を行った.

  • 中島 奈桜, 内田 龍彦, 河原 能久
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1111-I_1116
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     水理条件により河床では種々の河床波が生じる.これらは河道の抵抗となり,河川管理上抵抗を予測するため,河床波の発達,形成過程を理解する必要性がある.河床波の中でも砂堆は,2次元的な抵抗として扱われているが,河岸の状況により横断方向に変化することがある.しかし,河床波と河岸抵抗の関連性は不明な点が多い.本研究では,河岸に抵抗を4ケース用意し,河床波の波高と波長について横断方向に測定を行った.その結果,十分安定した河床波では河岸抵抗の粗度が大きくなるにつれて波高,波長共に河岸方向に減少することを実験的に示した.本実験では河床波の横断特性として側壁粗度の約10倍の大きさの範囲で河床波の波高の減衰が見られた.

  • 田中 龍二, 赤穗 良輔, 前野 詩朗, 中山 彰人
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1117-I_1122
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     実河川の流況解析を行う場合,解析に必要なメモリや計算時間の制限により解析格子を十分小さく出来ないため,低水路の河岸浸食などを精度良く再現することは困難である.そこで,本研究では,河岸浸食範囲を追跡する動的な計算格子を用いた数値解析モデル構築のための基礎データを得ることを目的として,模型実験と数値解析を行った.模型実験では高水敷の浸水の有無による河岸浸食特性を明らかにした.数値解析では,異なる格子サイズを用いて,河岸浸食に最適な計算格子サイズの検討を行い,河岸浸食の精度を確保するための格子サイズを明らかにした.

  • 青木 健太郎, 藤田 正治, 加藤 陽平
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1123-I_1128
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     地球規模で進行している温暖化の影響により,平成27年の関東・東北豪雨,平成28年の北海道・東北地方を襲った一連の台風,平成29年の九州北部豪雨など,全国各地で大規模な水災害が発生している.今後,更なる温暖化の進行により現在よりもさらに激しい降雨も予想され,大規模な水災害が頻発し,甚大な被害が発生する可能性がある.山地部で豪雨が発生した場合,表層崩壊や深層崩壊により多量の土砂が生産され,その土砂が平野部の河川まで到達することで河床上昇を引き起こし治水安全度の低下をもたらすことが考えられる.本研究では,土砂動態モデルを構築して山地部からの土砂供給量や土砂供給タイミング,土砂の発生場所の違いを考慮した解析を行った.その結果より平野部河道で河床変動が顕著となる範囲や山地部の河床変動状況を示すとともに,土砂供給のタイミングや発生場所によっては河床変動の傾向が異なることなど,今後の新たな治水計画を考える上で必要となる知見を得ることができた.

  • TIN TIN HTWE, Hiroshi TAKEBAYASHI, Masaharu FUJITA, Yuji HASEGAWA
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1129-I_1134
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     This study presents bed deformation phenomena in the braided stream by experiment first and the effects of a narrow pass on navigable channel characteristics in braided stream are discussed. Two 10 cm x 10 cm timber posts are set at both sides of the flume to make a narrow pass section. The depth integrated two dimensional flow calculation was conducted to evaluate horizontal distribution of water depth in the experimental flume to clarify the effects of a narrow pass on the water depth along thalweg. The narrow pass makes channel geometry more stable and the difference of bed elevation between channel bed and bar crest is larger. As a result, the flow depth tends to be deeper and it is easier to keep the navigation flow depth. Therefore, the deep-water depth could keep for navigation on braided channel and maintenance of a fairway after some years. It could be effectively reduced the dredging frequency as much as possible to keep the deep flow depth for the navigation due to the effect of a narrow pass.

  • 佐藤 隆宏, 太田 一行, 新井 涼允
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1135-I_1140
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     蛇行河川に設置されたダム堰の上下流における混合砂の堆積構造を調べるため,移動床実験と平面二次元河床変動解析において同一波形の非定常ハイドロを連続して与え,ダム堰上流が満砂になるまでの堆積過程とダム堰下流への土砂流出による洗掘・堆積過程を調べた.実験では水位変化と河床位平面分布を測定するとともに,河床堆積物の粒度鉛直分布測定とX線CT撮影を行った.計算では流砂層モデルを用いて,ダム堰越流部の射流を含む全域を一括して解析した.両者の比較の結果,上流貯水池の堆砂デルタが両者ともに岸沿いで先行して堆積すること,ならびに,X線CT画像で明瞭となった堆砂デルタの河川横断方向に非一様な堆積構造が粗粒子の存在率等に課題はあるものの概ね再現可能なことを確認した.

  • 岩見 収二, 藤田 正治
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1141-I_1146
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     河床材料が幅広い粒度を持つ河床では,流量条件によって選択的な土砂移動が生じる.このような場合の河床変動は,空隙率の変化を伴うとともに,移動しない材料による遮蔽効果を受けたものとなる.近年,ダムからの土砂還元等の選択的な土砂移動を伴う対策が散見されるようになってきており,対策によって生じる生物生息環境を含む下流河川への影響を評価するためには,このような河床変動状況を適切に評価することが不可欠である.本研究は,連続した河床材料を有する河床において選択的な土砂移動が生じる場を対象に,移動しない河床材料による遮蔽効果と空隙率変化を考慮した河床変動モデルの検討を行い,数値水路を対象に試算を行ったものである.

  • 溝口 敦子
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1147-I_1152
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     粒度分布に二峰性の特徴がある河床上の移動床問題に関する研究は,以前から多数の研究者により行われてきた.しかし,個別要素法などで粒子レベルの計算など様々な解析が可能となった現在も,ダム下流の河道の解析となると,河床材料,状態のとらえ方の問題から,簡素化してとらえたとしても粗粒化河床への砂の供給現象が解けていない現状がある.本研究では,一様粒径であれば浮遊状態で流下する条件で砂を礫床へ供給する実験を行い,これまでとらえられていない礫上を流下する砂の存在により水位が変化する現象などを明らかにした.

     また,実験条件に合わせ,これまでの枠組みでの一次元河床変動解析を実施した.これにより,砂の流下現象の再現性を示し,少なくとも礫床が動かない条件では,礫間へ沈み込む砂量を調整し評価できれば,流下現象をある程度表現できることなどを示した.

  • 山口 進, 井上 卓也, 赤堀 良介, 佐藤 大介, 清水 康行, 泉 典洋
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1153-I_1158
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は,ニックポイントの新たな移動形態として考えられている上流側近傍での深掘れの発生理由を明らかにすることである.その手法として,ニックポイントに砂礫が流入する現象を実験水路で再現し,その法肩の上流部でPTV解析を行うことで,ニックポイント上流部に衝突する砂礫の速度分布にどのような傾向があるかを調べた.その結果,ニックポイント上流部では鉛直下向き方向に流砂の衝突速度が大きくなる箇所が存在し,その位置は水深によって変化することが分かった.

  • 仲吉 信人, 柴田 朝葉, 小澤 史周, 髙野 眞一
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1159-I_1164
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     湿球黒球温度(WBGT)は日本で最も普及している暑熱ストレスの指標である.WBGT市販センサの多くは本来の前提条件から外れた測定がされているものが多く,研究に使用される場合でも研究者ごとに独自の手法で測定されているケースが少なくない.本研究では,黒球温度のサイズ,湿球・乾球温度測定方法の違いがWBGT測定値に与える誤差を実測・理論的考察より定量評価し,適切な換算式について検討を行った.春季の快晴日に行った測定では,黒球温度のサイズの違いは最大で2.2KのWBGTの誤差に繋がり,湿度センサから湿球温度を逆算する手法では,WBGTに0.92Kの誤差を生じさせた.一方で,乾球温度測定に伴う誤差は小さいことが確認された.

  • 小澤 史周, 仲吉 信人, 橘田 舜平
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1165-I_1170
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では長期温熱生理実験により,熱環境とそれに対する生理応答,バイオリズムの通年変化を把握することを目的とし,異なるアプローチで複数の被験者に対して日常生活環境下での気象(温度,相対湿度,風速,長短波放射),生理応答(皮膚温度,深部体温)の同時連続測定を行った.生活パターンが異なる全ての被験者で,深部体温と暴露熱環境には24時間の周期が確認された.一方で,深部体温の上昇・下降時刻は被験者間で異なり,更には同一被験者においても測定日ごとに違いが確認された.行動に伴う熱環境変化によって,深部・皮膚温度が変化することが確認された一方で,熱環境と深部体温の卓越周波数は24時間より短い区間では明確な一致は見られなかった.

  • 清本 翔太, Alvin C. G. Varquez , 神田 学
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1171-I_1176
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     都市気象のシミュレーション手法や将来予測をグローバルに展開する上で、全球を対象としながら高解像度の人工排熱データを構築することが必須である.しかし既往研究では人工排熱の空間分布の構築手法に様々な仮定が含まれる.特に工場や発電所など(点源)の空間分布は、商業・住宅地(面源)や道路(線源)に比べ正確に表されていない.

     そこで本研究では、最新の人工衛星による地表面の短波長赤外線データ(VIIRS-Nightfire)を用いて、高排熱源と思われる工場や発電所などの位置を特定し、それを人工排熱データとして組み込む手法を提案する.その空間分布は日本における発電所や製鉄所の位置情報を用いて確かめられ、火力発電所や高炉を持つ製鉄所で排熱が多くなる結果が得られた.

  • Alvin C. G. VARQUEZ, Natsumi KAWANO, Manabu KANDA, Makoto NAKAYOSHI
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1177-I_1182
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     The contribution of anthropogenic heat (AH) to the surface energy budget is well known. However, further investigation of realistic AH emissions in cities and their interactions with its surrounding atmospheric environment is still limited. Furthermore, past studies are site-specific providing limited insight to general impacts of AH. In this study, a realistic, high-spatiotemporal AHE dataset was used as surface boundary input into a weather model. With monthly-representative typical diurnal climatic pattern from 2006 to 2015 as lateral boundary, weather simulation of atmospheric environment of 15 large Asian cities included in the world’s top 30 largest cities declared by the United Nations was conducted. Results suggest that the effect of AH per location is sensitive to the background climate. An empirical equation is introduced to approximate the amount of temperature increase for any city of a given AH and background monthly temperature.

  • 近藤 慧史, 仲吉 信人, 金子 凌
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1183-I_1188
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     本研究では,データ同化を含めた気象シミュレーションモデルWRFを使用し,2013年8月12日に高知県四万十市江川崎で観測された日本最高気温である41.0℃の猛暑を対象に再現計算と感度分析を行い,猛暑の形成要因を調査した.江川崎は集落の規模が小さいため,都市の人間活動による熱影響は気温上昇にほとんど影響せず,土壌水分の違いによる広域の熱影響の変化が気温に影響することが確認された.また,気温が上昇する際は北西風が卓越し,海風となる南寄りの風が流入すると気温が下降する.さらに上空の温位が低下することでも地表気温は低下することから,これも気温上昇に影響を与えるものと示唆された.

  • Yukun WANG, Akiko NISHIMURA, Yuji SUGIHARA, Guoyun ZHOU, Yukiko HISADA ...
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1189-I_1194
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     This study provides the analytical results based on a geographic information system, i.e., GIS, for direct measurement data of air temperature near the land surface and the land-use data in the Fukuoka metropolitan area. The results visualized by GIS confirmed a typical heat island pattern of the surface air temperature to be seen more distinctly in nighttime. We proposed a new index called the temperature fluctuation intensity, indicating how the air temperature varies temporally compared to the mean value. The spatial patterns of the surface air temperature in nighttime and the thermal inertia estimated from the land-use categories were found to be correlated approximately with each other. In addition, we examined the meteorological condition when the temperature drop in the urban area occurs due to local winds such as the sea breeze. This results suggested that the clear temperature-drop appears under unstable meteorological conditions and it is generated by more localized winds. For the case of the clear temperature-drop, the intrusion time of the sea breeze is relatively late and the wind velocity varies rapidly.

  • 何 暁卿, 稲垣 厚至, 神田 学
    2018 年 74 巻 5 号 p. I_1195-I_1200
    発行日: 2018年
    公開日: 2019/12/05
    ジャーナル フリー

     風速の地上観測データを用いて,地上風速の長周期変動特性について検討を行った.データには日本全国155地点に配置された気象官署の1分データについて,それぞれの地点で得られた3年間のデータを解析した.得られた結果として,155地点すべてにおいて,約30min周期のところでスペクトルギャップに相当する極小値,あるいは変曲点が存在することを確認した.また,スペクトル強度と周波数の関係を両軸対数スケールでプロットにしたところ,スペクトルギャップの低周波側においても,慣性小領域のようなスペクトル強度の勾配が直線的に減少する領域が存在することが示された.その傾きは-1.2~-2.0であり,二次元乱流の理論から計算される-3.0に比べて大きい.この傾きがその地点の平均風速に比例して減少することを確認し,そのモデリングを試みた.また,上記の解析に加え,季節の違いなどについても検討を行った.

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