土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
68 巻, 4 号
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地震工学論文集第31-b巻
  • 古川 愛子, 松尾 卓弥, 西川 晃司
    2012 年68 巻4 号 p. I_523-I_532
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     構造ヘルスモニタリングの一手法として,スペクトル要素法に基づく高振動数領域の振動特性を利用した損傷同定手法の提案を行う.小さな損傷の検出と部材単位での効率的な損傷検出が可能なkHzレベルの振動特性を利用して損傷同定を行う手法である.圧電型アクチュエータでの調和外力の起振を想定し,損傷による周波数応答関数の変化に着目する.同定には高振動数領域の解析に適したスペクトル要素法を用いるのが特徴である.鋼トラス橋を対象に数値シミュレーションを行い,高振動数領域において損傷の有無が振動特性に与える影響を明らかにした.また,様々なケースの下で損傷同定解析を行い,提案手法の有用性を示した.
  • 市川 翔太, 張 鋭, 佐々木 智大, 川島 一彦, Mohamed ELGAWADY, 松崎 裕, 山野辺 慎一
    2012 年68 巻4 号 p. I_533-I_542
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     RC橋脚に設計地震力を超える地震力が作用すると,軸方向鉄筋の局部座屈や破断及びコアコンクリートに圧壊が生じ,耐力は徐々に低下していく.大地震後も継続使用でき,その後の補修も少なくて済むダメージフリー橋脚を実現させるためには,塑性ヒンジ部の損傷を防ぐことが重要である.本研究は,塑性ヒンジ部の損傷の軽減を目的として,超高強度繊維補強コンクリート(UFC)製プレキャストセグメントを使用し,変形性能を改善するために,塑性ヒンジ区間において鉄筋をアンボンド化し,UFCセグメント内をRC構造とした橋脚とUFCセグメント内を空洞のままとしPC縦締めを行った橋脚の2種類の構造を提案し,これらの耐震性能を実験的に検討したものである.
  • 川島 一彦, 太田 啓介, 大矢 智之, 佐々木 智大, 松崎 裕
    2012 年68 巻4 号 p. I_543-I_555
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     縮小模型実験により実大RC橋脚の地震時の破壊特性や曲げ復元力をどの程度正確に評価することができるのかは,従来,実大模型に関する実験データがほとんど存在しなかったため,ほとんど検討されてきていない.本研究では,実大橋脚模型の震動台実験とこれに合わせた縮小模型実験の比較から,粗骨材の最大寸法と鉄筋断面積の評価法がRC橋脚の破壊特性及び曲げ復元力に及ぼす影響を検討した,その結果,1) 粗骨材の最大寸法が13mmの縮小模型に比較し,5mmの縮小模型の方が塑性ヒンジ部におけるコアコンクリートの圧壊が著しいこと,2) 鉄筋の断面積を呼び径に基づいて評価した場合に比較して,鉄筋の最小断面積に基づいて評価した場合の方が,より実大橋脚模型に近い曲げ復元力を与えること,3) 縮小模型に比較して,実大橋脚模型の方が,かぶりコンクリートの剥落,軸方向鉄筋の座屈,コアコンクリートの圧壊といった損傷の進展が著しく,縮小模型実験に基づいて正しく実大模型の損傷の進展を再現できないことを明らかにした.
  • 大塚 久哲, 高 文君, 福永 靖雄, 今村 壮宏
    2012 年68 巻4 号 p. I_556-I_564
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     I型断面フレキシブルRC橋脚は,橋軸方向にフレキシブルな橋脚であるが,橋軸直角方向には耐震壁により地震時のエネルギーを吸収することができる.本研究は,I型断面フレキシブルRC橋脚の縮尺模型による水平加力実験結果から,同橋脚の破壊性状,復元力特性および吸収エネルギー能力を明らかにすることを目的としている.骨格曲線は中央壁と両側柱を1本の曲げせん断変形部材と仮定して,曲げとせん断の骨格曲線を合成した4折線型を提案した.実験値と理論値の比較から,耐荷力は安全側に評価できるものの,変位評価に関しては,更なる改良が必要であることが分かった.
  • 大塚 久哲, 服部 匡洋
    2012 年68 巻4 号 p. I_565-I_576
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     構造物にねじりと曲げが同時に作用すると相互作用によりそれぞれの耐力が純荷重時に比べて低下することが知られている.しかし,橋梁の設計において,ねじりはひび割れが想定される場合,ねじり剛性を1/10~1/20に下げた等価線形解析によって簡易的に評価するのが一般的であり,ねじりを厳密に評価する耐震設計は行われていない.よって,本研究では,汎用解析ソフトを用いて,ねじりと曲げの相関特性及びねじりの非線形性を考慮した非線形動的解析手法の提案を行い,必要な解析ツールの定式化を行った.また,RCアーチ橋を対象とした非線形動的解析を実施し,等価線形解析や純曲げ/純ねじりの骨格曲線を用いた解析と比較し,提案手法の有用性を検証した.
  • 中村 英之, 高橋 良和, 澤田 純男
    2012 年68 巻4 号 p. I_577-I_583
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     レベル2地震動に対しても塑性変形に依らずに耐震性能を発揮する高性能な耐震柱を実現する方法として,集合弾性耐震構造が提案されている.矩形断面柱を鉛直軸方向に分割することで変形性能の向上を図るとともに,分割した柱部材を束ねるように強度の大きい拘束部材を設け,予めプレストレスを導入する.これにより変形時に柱部材間に摩擦が生じ,その摩擦によるエネルギー吸収による減衰効果が期待できる.さらにプレストレスを柱の高さ方向に適切に変化させることにより,柱の変形性能の向上を図る.このようにして耐震性能の向上を図ることが集合弾性耐震構造の基本的な考え方である.本研究では,集合RC柱供試体を対象とした静的正負交番載荷実験を行い,軸力-曲げモーメント作用下における柱の弾塑性挙動及び復元力特性を検証した.
  • 宇野 州彦, 大塚 久哲, 三藤 正明
    2012 年68 巻4 号 p. I_584-I_597
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     液状化が発生する地盤において,杭基礎構造物は地震時慣性力と地盤の液状化や側方流動等で,液状化層と非液状化層の層境界部で大きな断面力が発生し,これらの箇所において杭の塑性化や損傷を招くと考えられる.このことは過去の被災事例からも明らかとなっている.著者らは,橋梁杭基礎の損傷メカニズムと杭に対する地盤の液状化および慣性力の影響を把握するために実施した,無対策の杭の模型振動実験において,層境界部で局所的な断面力が杭に発生することを確認している.これを受けて,本研究では,地震時に大きな断面力の発生する杭中間部に免震ゴムを取り付けて振動台実験を行い,杭基礎の耐震性が向上することを示した.さらに免震ゴムをモデル化した杭基礎の,有効応力解析による再現性を確認するため,模型振動実験の再現解析を実施した.
  • 西村 隆義, 本山 紘希, 井澤 淳, 室野 剛隆
    2012 年68 巻4 号 p. I_598-I_607
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     軟弱地盤上に構造物を建設する場合は,杭基礎を用いて支持力を確保することが一般的である.しかし,杭基礎は上部構造物の慣性力に抵抗できるように設計されるため,結果として上部構造物も杭基礎も大規模化することが多い.そこで,本研究では地盤改良により鉛直支持性能を確保することで,直接基礎の免震効果を積極的に活用できる地盤改良併用型直接基礎構造を提案し,振動台実験およびシミュレーション解析により,直接基礎の免震効果と鉛直支持性能に着目した検討を行った.その結果,直接基礎は長周期化することにより杭基礎と比べて応答加速度が小さくなること,また地盤改良を施すことで直接基礎の免震効果と鉛直支持性能の両者を満足する構造形式が実現可能であることを確認した.
  • 宮森 保紀, 湯村 美紀, 藤生 重雄, 樋口 匡輝, 山崎 智之, 三上 修一, 大島 俊之
    2012 年68 巻4 号 p. I_608-I_616
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     本研究では,低温環境下にてサブストラクチャ仮動的実験を行うための実験システムを構築し,この実験システムの検証実験を制震ダンパーを用いて行った.サブストラクチャ仮動的実験システムとしては,オープンソースの仮動的試験ソフトウェアUI-SIMCORを利用し,低温室内の載荷装置を動作させるプログラムと組み合わせることで仮動的実験を可能にした.さらに,構造解析部では汎用構造解析ソフトの導入によりモデル化を容易にした.実験結果からはダンパーの非線形な応答を含め,解析モデル全体の応答が得られた.これらのことから本検討で対象とした仮動的実験システムは,低温下での汎用的な仮動的実験システムとして有効であると考えられる.
  • 松崎 裕, 熊谷 祐二, 川島 一彦
    2012 年68 巻4 号 p. I_617-I_626
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     近年の強震観測網の充実により,断層近傍において短周期成分が卓越した大加速度振幅の上下方向地震動が観測されてきている.ラーメン橋脚における水平振動と同位相の変動軸力とは異なり,こうした上下方向地震動により,単柱式橋脚であっても橋梁の上下方向の固有周期に対応した短周期かつ大振幅の変動軸力が橋脚に作用することとなる.そこで,本研究では,そうした変動軸力がRC橋脚の耐震性に及ぼす影響を実験的に解明するため,静的正負交番繰返載荷実験に基づいて検討した.その結果,短周期かつ引張を含む繰り返しの変動軸力の作用により,軸方向鉄筋座屈後におけるコアコンクリートの損傷進展が著しくなること,最大引張軸力が大きいほど,その損傷領域が大きいことなどが明らかとなった.
  • 党 紀, 青木 徹彦, 五十嵐 晃
    2012 年68 巻4 号 p. I_627-I_641
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     本研究では,水平2方向地震動を受ける鋼製橋脚の耐震安全性上の相違を検討するために,9種類の正方形補剛断面鋼製橋脚に対して,静的繰返し実験,非線形振動解析,水平1方向および水平2方向ハイブリッド実験を行った.これらの実験及び解析結果を用い,鋼製橋脚が水平2方向地震力に独立および同時作用されたときの最大耐力,応答変位を比較し,水平2方向地震動に対する鋼製橋脚の耐震安全性を検討した.水平2方向地震動を受ける鋼製橋脚は,その最大荷重が,平均的に1方向載荷時の約85%となり,応答変位は平均的に1方向載荷時の1.25倍となった.水平2方向地震動の同時作用を無視すると,橋脚耐力の過大評価,応答変位の過小評価などのことを明らかにした.
  • 樋口 俊一, 堤内 隆広, 大塚 林菜, 伊藤 浩二, 江尻 譲嗣
    2012 年68 巻4 号 p. I_642-I_651
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     近年,地中構造物を対象として,地盤と構造物の連成効果を考慮した高度な解析技術により,ひび割れや鉄筋の降伏以降の構造物の挙動を適切に評価することが求められている.しかし,地盤の非線形挙動ばかりでなく,構造物が非線形化するまでを対象とした基礎的な実験データは少ないのが現状である.そこで,RC杭基礎を対象とした遠心力模型振動実験を実施し,杭主筋が降伏に至るまでのデータを取得した.実験は地盤条件をパラメータとし,乾燥地盤と飽和地盤における杭基礎の地震時挙動の違いを比較した.また,飽和地盤を対象とした動的有効応力解析を実施し,RC杭の応答の再現性について実験結果と比較した.その結果,地盤の液状化と地盤―構造物の連成効果を考慮することで,RC杭の非線形応答を適切に評価できることがわかった.
  • 米澤 健次, 鈴木 正寛, 穴吹 拓也, 樋口 俊一, 伊藤 浩二, 江尻 譲嗣
    2012 年68 巻4 号 p. I_652-I_659
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     地盤と構造物の連成効果を考慮した高度な解析技術を確立することを目的として,RC造ボックスカルバートを対象とした遠心模型振動実験を実施した.実験変数は杭基礎の近接の有無とし,近接構造物がボックスカルバートの応答性状に及ぼす影響を検討した.その結果,入力レベルが小さい初期加振においては近接構造物の有無による影響が見られたが,地盤と構造物ともに非線形領域に至る加振においては,近接構造物の有無に関わらず,両者はほぼ同様の応答性状を示した.また,本実験を対象として地盤と構造物の連成系の非線形有限要素解析を実施し,実験結果との比較を行った.その結果,構造物の鉄筋ひずみ及び地盤・構造物の応答変形性状の比較より,解析は実験の地盤及び構造物の応答性状を概ね良好に再現できることを確認した.
  • 佐藤 知明, 五十嵐 晃, 松田 泰治, 足立 幸郎, 宇野 裕惠
    2012 年68 巻4 号 p. I_660-I_671
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     多径間連続桁の耐震性能向上策の一つとして,反重力すべり支承(Uplifting Slide Shoe:UPSS)が提案されている.UPSSは地震時に上部構造が斜面上をすべり上がることにより,地震時の水平動による上部構造慣性力(運動エネルギー)の一部を鉛直方向の力(位置エネルギー)に変換し,水平方向の応答変位や下部構造へ伝達される水平力を制御するものである.本研究では,UPSSを用いた振動系における地震時のエネルギー推移の把握を目的として,1質点系モデルを用いて,地震時の基本的なエネルギーの変遷を検討した.水平方向に生じた運動エネルギーは,UPSSの位置エネルギーおよび上部構造の歪エネルギーとして一時的に貯留されるとともに,すべり面における摩擦減衰および粘性減衰により安定的に消費されることを示した.
  • 白石 晴子, 五十嵐 晃, 足立 幸郎, 宇野 裕惠, 加藤 祥久, 佐藤 知明
    2012 年68 巻4 号 p. I_672-I_682
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     多径間連続橋用の支承に要求される,常時の温度伸縮などによる不静定力の緩和,地震時水平力の分散および水平変位応答の抑制の機能を備えた支承として提案されている反重力すべり支承(UPSS支承,Uplifting Slide Shoe)に制震ダンパーを併用した系について検討を行った.上部構造の水平方向のエネルギー吸収に加え,鉛直運動に伴うエネルギー吸収機構を付与することで,同じ水平変位量の制約の中で最大水平荷重の増加を避けながら,高いエネルギー吸収性能が得られ,地震応答の制御が容易となると考えられる.橋梁モデルを用いた弾塑性応答の時刻歴解析により,UPSS支承-ダンパー組合せ系の効果を確認した.さらに,効果的な応答制御効果を得るためのパラメータの設計条件に関する仮説を提示し,その妥当性を示した.
  • 松田 哲夫, 五十嵐 晃, 上田 卓司, 宮崎 貞義, 松田 宏
    2012 年68 巻4 号 p. I_683-I_696
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     免制震すべりシステム(Isolation Seismic Controlled Slide System : ICSS)とは,橋台間に挟まれた落橋しにくい一連の多径間連続桁橋にすべり支承を設置して上下部構造をアイソレーションさせることにより,温度変化等に起因する不静定力を極めて小さくし,特定区間の下部構造に設置した免震支承および制震ダンパーにより地震時の挙動を制御するシステムである.本論文では,免制震すべりシステムを用いた橋の耐震性能における支承部デバイスの役割を確認するため,橋長約1,200mの長多径間連続桁橋(鋼18径間連続曲線橋)を対象に動的解析を行った.この結果より,各デバイスの応答を整理・分析し,免震支承の積層ゴム部分を除くデバイスは大きな減衰性能を有していること,および地震波や入力条件の影響を受けにくい安定した地震時挙動を示すことを明らかにした.
  • Elif Cagda KANDEMIR, Taiji MAZDA, Hiroshige UNO, Hirokazu MIYAMOTO, Ry ...
    2012 年68 巻4 号 p. I_697-I_703
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     This paper presents a retrofitting procedure of a five-span girder bridge with nonlinear viscous dampers installed to the abutments. The study focuses on providing required damping ratio by the nonlinear viscous dampers for the desired structural responses of existing bridge. The nonlinear viscous damper parameters are figured out iteratively by the simplified single degree-of-freedom (SDOF) system possessing the fundamental characteristics of the bridge including natural period and stiffness. This iterative solution is also compared with the energy equivalent method. In addition the usage of effective weight of the bridge structure has been indicated as sufficient for obtaining damper coefficient. The dynamic analysis results have confirmed that iterative method using SDOF system is effective in terms of the reduction of structural responses under severe earthquake waves.
  • 田中 賢太郎, 北原 武嗣, 松村 政秀, 頭井 洋
    2012 年68 巻4 号 p. I_704-I_712
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     本研究では,既設橋梁の下部構造の耐震性向上を目的として,履歴エネルギー吸収による制震効果を期待した桁連結装置として鋼製ベローズを用いた地震時水平力の低減効果を検討した.ここでは,期待するエネルギー吸収特性を変化させた2種類の鋼製ベローズを比較対象とし,これらの組合せが水平地震力の低減効果に与える影響について数値解析により検討した.レベル1地震動およびレベル2地震動を入力した非線形時刻歴応答解析により,桁間に鋼製ベローズを設置することにより,下部構造の水平地震力を低減することが可能であることを示した.
  • 今瀬 史晃, 宇佐美 勉, 舟山 淳起, 王 春林
    2012 年68 巻4 号 p. I_713-I_729
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     一定鉛直荷重と繰り返し水平荷重が作用する,鋼平面剛結トラス構造の破壊に至るまでの損傷過程に関する実験と解析について述べている.研究の主目的は,斜材あるいは弦材に繰り返し部材座屈が生ずる場合,または斜材が座屈拘束ブレース(BRB)で繰り返し塑性の影響を受ける場合に,トラス構造全体の破壊に至るまでの損傷過程を実験的に求め,著者らが提案している梁要素を用いた解析手法が適用できる限界を検証することである.提案解析手法は,ボルト穴の支圧破壊が顕著になるまでは,即ち損傷が部材座屈あるいは部材の塑性化に支配される領域では,実験結果をある程度の精度で模擬出来ることが分かった.
  • 舟山 淳起, 今瀬 史晃, 宇佐美 勉, 王 春林
    2012 年68 巻4 号 p. I_730-I_747
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     橋梁の耐震性能向上策として座屈拘束ブレース(BRB)などの制震デバイスを用いる方法が非常に効果的である.既存橋梁においては,既設のブレース材を取り替えることなく,座屈拘束材によって被覆することで制震ダンパーとしての機能を付与させBRB化するというアイディアもある.本研究では,BRB化されたH形鋼斜材または座屈拘束されていないH形鋼斜材を有する鋼平面トラス構造模型を5体製作して単調増大または繰り返し載荷実験を実施し,斜材をBRB化することによる耐震性能向上効果について確認した.併せて,著者らが提案している数値解析手法の妥当性の検証も行った.
  • 杉岡 弘一, 島 賢治, 松下 裕明
    2012 年68 巻4 号 p. I_748-I_759
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     既設長大橋のレベル2地震動に対する耐震補強として,制震・免震設計法の適用が増加している.この様な中,せん断パネルダンパーに着目し,その配置ケースと地震応答低減効果との関係を長大鋼アーチ橋に対する動的解析の実施を通して検証した.その結果,せん断パネルダンパーの配置によって橋脚柱基部や上部構造鋼部材に対する地震応答低減効果が変化する場合があることが明らかになり,耐震性能向上対策におけるせん断パネルダンパーの適用効果を示した.さらに,固有振動周期の違う鋼アーチ橋との比較から,その違いに着目したせん断パネルダンパーによる耐震性能向上効果を示している.
  • Kimiro MEGURO, Rajendra SOTI, Sathiparan NAVARATNARAJ, Muneyoshi NUMAD ...
    2012 年68 巻4 号 p. I_760-I_765
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     The collapse of unreinforced masonry structures, which are widely distributed around the earthquake prone regions of the world, is one of the greatest causes of death in major earthquake disasters. This paper presents an innovative retrofitting method for masonry structures, which uses bamboo band arranged in a mesh fashion and embedded in a mortar overlay. In order to evaluate the effectiveness of the proposed retrofitting technique, shake table tests were conducted using retrofitted and non-retrofitted 1/4 scaled masonry houses with sinusoidal ground motion inputs. Based on the experimental results, the retrofitted specimen exhibited good seismic performance withstanding over twice larger input energy than what non-retrofitted specimen could do.
  • 有賀 義明, 柿崎 辰圭, 猪子 敬之介, 竹内 幹雄, 小黒 明, 浅賀 裕之, 依田 昌宏, 竹原 和夫
    2012 年68 巻4 号 p. I_766-I_773
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     地下では地上に比べて地震動の加速度振幅が小さい傾向があるため,一般に,地下は地上よりも耐震上有利であると思われている.しかし,地上構造物と地下構造物の地震時の相互影響によっては,地震被害が連鎖し,両者の地震時安全性に大きな影響が及ぶ可能性があると推察される.そこで,地下に地下街があり,地下街の両側に高層ビルが建っている場合を想定して三次元動的解析を行い,地下街と高層ビルの地震時の相互影響について検討した.地盤のS波速度を変化させた場合にどのような影響が生じるかを解析した結果,地盤のS波速度を低く設定した場合,高層ビルの変位振幅は増大し,地下街と高層ビルの接続では地震時引張応力が増大するとの知見が得られた.
  • 猪子 敬之介, 竹内 幹雄, 小黒 明, 有賀 義明, 川井 伸泰
    2012 年68 巻4 号 p. I_774-I_780
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     地下空間の高度利用に伴い,大都市では地下構造物と都市計画法による容積率緩和を受けた大規模な高層建物との全面接続が計画されるようになっている.これらの地下構造物と建物,周辺地盤の地震時の相互影響や免震継手の効果に関しては十分に体系付けられていない.そこで,本研究では2次元動的解析を用いて,建物の大規模化および地盤特性の変化による地震時挙動が周辺地盤や地下構造物に与える影響を検討した.その結果,建物の質量・剛性が大きくなると建物地下部の地震時応答は抑制され,隣接の地下構造物との相対変位が増加すること,入力地震動の伝播の効果を評価すると建物が地震波の伝播を阻害する場合は相対変位が小さく,阻害しない場合はその逆の傾向を示すことなどの結論を得た.
  • Mohammad Hossein ERAMI, Masakatsu MIYAJIMA, Shougo KANEKO
    2012 年68 巻4 号 p. I_781-I_789
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     This study investigates the necessity of considering different soil resistance against pipeline relative movement in upward and downward directions. In this way, results of FEM analyses are verified by experimental tests on a segmented ductile iron pipeline with 93mm diameter and 15m length installed at a 60cm depth from the ground surface in the moderate dense sand backfill condition. Fault movement, totally 35cm, has three same steps occurring in reverse way and intersection angle of 60 degrees with the pipe. This study demonstrates how assuming same resistance for soil against both upward and downward relative movements of pipeline, as suggested in JGA guideline, eventuates in imprecise FEM models.
  • 七郎丸 一孝, 宮島 昌克
    2012 年68 巻4 号 p. I_790-I_799
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     過去の地震被害から不均一性が高い地盤において,地中構造物の被害が多いことがわかっており,埋設管の耐震検討には地盤の不均一性(地盤構成や硬軟の変化域)を考慮することが求められている.水道施設耐震工法指針・解説2009年度版においても不均一度係数が定められており,この不均一度係数について,近年の地震である平成16年新潟県中越地震および平成19年新潟県中越沖地震による水道管の被害データと地盤データを用いた解析を行い検証を行った.また,微地形分類図における微地形境界部に管路被害が集中していることに着目し,境界部と境界以外との被害率を比較した.その結果より,境界部で被害率が高くなる傾向を確認し,微地形境界部の不均一度係数を検討した.
  • 東出 知大, 薮口 貴啓, 今井 俊雄, 小池 武
    2012 年68 巻4 号 p. I_800-I_806
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では水道ライフラインにも多くの地震被害が発生したが,とくに地中埋設管の被害として大口径の導・送水管に配置された伸縮可撓管の脱管による漏洩被害が発生した点に従来にない特徴があった.本研究では,なぜ幹線に配置された伸縮可撓管が脱管したのかその損傷メカニズムを解明して,今後の耐震設計に役立てようとするものである.
  • 鈴木 崇伸
    2012 年68 巻4 号 p. I_807-I_816
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     旧基準で建設された地中構造物の中には耐震性に懸念のある構造が多くあり,簡便な評価計算法が望まれている.本論文は多くの設計で採用されている応答変位法の計算手法を応用して,地中構造物の曲げ変形に関する計算方法を提案している.正弦規則波を用いて,境界条件を考慮した解析解を示とともに,構造条件が異なる箇所に対しても簡易な応答計算が行えることを示している.また地中構造物の耐震解析にかかわる非線形現象をバイリニア近似することにより,地盤バネの降伏や構造部位の降伏を解析解で追跡できることを示している.解析解を用いて概略の評価を行い,最終的に動的解析で安全評価を行う設計手法が望ましいと考える.
  • 山田 岳峰, 市村 強, 堀 宗朗, 土橋 浩, 大保 直人
    2012 年68 巻4 号 p. I_817-I_829
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     本論文は,構造目地の設置による大型ランプトンネルの耐震性の向上効果を定量的に検討する.複雑な構造を持つ大型トンネルの地震応答は2次元解析では評価しきれないため,大規模計算が必要となり,本論文では3次元解析を用いた.トンネル軸方向と軸直角方向にレベル2地震動を入力した場合,ランプトンネルの応答が集中する箇所に構造目地を設置することで,トンネル構造の応力が低減されることが確認された.その一方で構造目地の変形は軽視できないほど大きく,止水性の検討が必要となることも示された.大型ランプトンネルの構造目地の設置箇所を検討する際,本研究で用いたような大規模数値計算を使う3次元地震応答解析が有効であることを確認した.
  • 山田 岳峰, 市村 強, 堀 宗朗, 土橋 浩, 大保 直人
    2012 年68 巻4 号 p. I_830-I_843
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     首都高速中央環状線山手トンネルのランプトンネルを対象に,レベル2地震動による擬似非線形3次元FEM地震応答解析を行った.その結果,1)レベル2地震動入力時には地盤のインピーダンス比が大きくなる地層境界付近に位置するランプトンネルで応力集中が大きくなる,2)当該箇所の横断面では軸方向変位について平面保持の仮定が成立せず従来的な2次元応答の組み合わせでは応答評価が難しい,3)このような3次元的な応答に対しては断面力評価に加え応力評価が望ましい,ことがわかった.ランプトンネルのような複雑な構造を有する大型トンネルでは,ソリッド要素を用いた大規模3次元数値解析手法を活用し,様々な入力地震動を考慮した耐震安全性の検討が望まれる.
  • 川西 智浩, 清野 純史, 西山 誠治
    2012 年68 巻4 号 p. I_844-I_854
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     地下鉄開削トンネルの耐震設計にあたっては,静的解析法の一種である応答変位法が一般的に用いられているが,地盤ばねの算定精度などに課題を有している.一方,周辺の地盤をFEMでモデル化する解析手法としては,動的解析法と静的解析法を用いることができるが,特に開削トンネルの破壊形態を推定する場合には,FEM系の静的解析法を用いることも有効であると考えられる.本研究では,FEM系静的解析法の一つである応答震度法を用いる場合について,その作用の設定方法を変えた解析的検討を行い,動的解析法の結果と比較することにより,応答震度法におけるより精度の高い作用の設定方法について検討する.
  • 長田 光正, 市村 強, 堀 宗朗, 並川 賢治, 土橋 浩, 山田 岳峰, 小原 隆志, 滝本 邦彦
    2012 年68 巻4 号 p. I_855-I_866
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     ランプトンネルとの分合流部を有するシールドトンネルの全体系を対象に,構造が複雑で鋼製セグメントとRC構造の接合構造を有する分合流部周辺のRC構造に着目し,部材の健全性が検証できる精度でトンネルの構造形状を再現した解析モデルを用いて,三次元地震応答解析を実施した.そして,トンネル全体系の挙動を考慮しながら,分合流部周辺の地震時挙動を,変位,応力および断面力といった設計量で評価した.その結果,梁モデル等による解析では分析することができない複雑な挙動がみられることから,地盤条件や構造物の形状によっては,本モデルのような解析が必要になる可能性がある.また,複雑な構造を有する分合流部周辺においても,トンネル全体系を対象とした三次元地震応答解析により,耐震安全性が懸念される箇所の合理的な抽出が可能となり,設計量を評価して実務設計に反映することができると考えられる.
  • 田中 努, 金井 拓弥, 鈴木 猛康
    2012 年68 巻4 号 p. I_867-I_875
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     鉄筋コンクリート構造の都市トンネルの縦断方向の配筋は横断方向の主鉄筋の配力筋として定め,縦断方向の抵抗力を超える力やひずみが発生する場合は継手を設けて低減させる耐震設計が行われることが多い.しかしながら,地震時ひずみの実測値や数値解析結果から逆算して求めた継手のばね定数は,その構造から決まるばね定数より大きく,設計で期待するほどの変位吸収効果が得られない危険性が高い.
     継手によるトンネル躯体のひずみや応力の低減効果が小さいならば,躯体にひびわれを許す設計や既設トンネルの耐震性評価が必要となることから,本論文では,WCOMDを用いて鉄筋比に応じたひびわれ後の躯体の引張剛性の変化を把握し,応答変位法の考え方を用いて,地震時に想定される地盤ひずみと躯体ひずみの関係を図に表した.これを基に,既設トンネルの躯体状態の評価や,新設トンネルの縦断方向の配筋量によりひびわれ後の躯体のひずみを制御する考え方を提案している.
  • 松田 泰治, 大熊 信之, 遠藤 洋平, Elif Cargda KANDEMIR
    2012 年68 巻4 号 p. I_876-I_882
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     アーチダムは薄肉な三次元構造物であり,耐荷機構および振動特性は基礎岩盤および貯水との相互作用に大きく影響される1).施工時に設けられる鉛直ジョイント部は,剥離・滑動挙動が確認されており,解析モデルにおける鉛直ジョイント部を適切に評価する必要がある.また,アーチダムの堤体形状はダムサイト毎に多種多様であるにもかかわらず,堤体形状が応力状態に及ぼす影響については十分に検討されていない.そこで本研究では,鉛直ジョイント部の非線形特性を考慮できる解析モデルを構築し,堤体形状として左右対称性および非対称性に着目した.実在するアーチダムから作成したダム-岩盤連成系の三次元モデルを非対称モデルと位置づけ,非対称モデルをもとに左右対称的な堤体を有するモデルを2ケース構築した.さらにそれぞれの解析モデルを対象として固有値解析,常時挙動解析を実施し,アーチダムの基本的な振動特性および耐荷機構について示し,鉛直ジョイント部の非線形特性および堤体形状がこれらに及ぼす影響について検討した.
  • 大熊 信之, 松田 泰治, 金澤 健司, 池田 浩一
    2012 年68 巻4 号 p. I_883-I_890
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     2基の大規模アーチダムにおいて,現在の動的特性を把握することを目的に2種類の常時微動計測を実施した.1つはダムの固有振動モードを把握するための高密度計測であり,もう1つはダムの固有振動数の周期的変化を把握するための長期計測である.計測の結果,低次の固有振動モードを同定するとともに,それらのモードに対応する固有振動数の周期的変化を捉えた.具体的には,これらの周期的変化には,従来から知られていたダム水位依存性に加え,ダム表面温度に依存した変化が含まれていた.さらには,本計測で得た固有振動数および振動モードと,近年の地震観測記録および建設直後の起振実験で得られたそれらは概ね一致した.このことは,大規模アーチダムの動的特性評価において,高密度計測と長期計測を併用した常時微動計測の有用性を示している.
  • 木全 宏之, 藤田 豊, 堀井 秀之, Mahmoud YAZDANI
    2012 年68 巻4 号 p. I_891-I_898
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     重力式コンクリートダムを対象として,基礎岩盤の不連続面の進行性破壊を考慮した大規模地震時の動的クラック進展解析を実施した.まず,基礎岩盤のせん断破壊や開口破壊を表現するため,不連続面の構成則を想定し,既往模型実験に対するシミュレーション解析から,構成則の妥当性を検証した.そして,堤高100mのモデルダムを対象に,筆者らが既に提案した接線剛性比例型減衰と想定した不連続面の構成則を適用し,動的クラック進展解析を実施して,堤体のクラック進展挙動ならびに基礎岩盤の進行性破壊挙動について検討した.
  • 池野 勝哉, 原 基久, 吉田 誠, 菅野 高弘, 小濱 英司
    2012 年68 巻4 号 p. I_899-I_906
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     著者らは,経済的な大水深岸壁としてハイブリッド重力式桟橋の開発に取り組んでいる.これは,底版と上部工を鋼管杭等の柱体で連結した桟橋形状の構造をマウンド上に設置し,地震時の慣性力や土圧等の水平力に対して,自重によって抵抗する重力式の特徴を有するものである.本論文では,ハイブリッド重力式桟橋の概要について述べるとともに,大型の水中振動台を用いた模型実験を実施し,ケーソン式と比較することで地震時の安定性について考察している.また,FLIPによる有効応力解析で模型実験の再現を試み,堤体の変形モードおよび柱体に生じるモーメント分布の再現性が高く,変形照査の可能な構造形式であることを確認したので報告する.
  • 中村 泰, 佐藤 正勝, 菊池 喜昭, 菅野 高弘, 森川 嘉之, 星野 正美, 三城 健一
    2012 年68 巻4 号 p. I_907-I_919
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     2段タイ材地下施工法とは,岸壁の増深や耐震などの機能・耐力増加を図る補強工法であり,既設岸壁下方水中部に増設タイ材を追加設置することで,矢板壁に生じる曲げモーメントや既設タイ材に発生する張力を大幅に低減させる新工法である.タイ材を上下2段に設置した場合の岸壁の地震時挙動や耐震補強効果に関しては,挙動が複雑なため十分な知見が得られていなかった.そこで,2段タイ材設置による耐震補強効果の確認を目的として,大型遠心模型振動実験及び二次元有効応力解析を実施した.その結果,増設タイ材の設置により矢板壁の発生断面力が低減できることがわかり,岸壁の耐震性向上と増深補強に有効であることを確認した.
  • 鍬田 泰子, 長澤 正治
    2012 年68 巻4 号 p. I_920-I_929
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     日本に限らずアジア諸国は近年数々の地震・津波による大災害を経験し,その後,震災復興を契機に災害に強いまちづくりに向けて新たな都市基盤が構築されつつある.本稿では,日本と水利用形態の異なるインドネシア・バンダアチェを対象に,2004年スマトラ島沖地震津波の震災復興によって再構築された水道システムを背景にして住民の水利用の変化とそれに伴う住民意識についてアンケート調査に基づき分析を行った.飲み水と生活用水を使い分け,ほとんど直接飲用されない水道水であっても,水質については井戸水より塩害の影響がなく住民から一定の満足が得られているが,日常・災害時の水道の安定供給については十分な満足が得られず,住民の利用方法に課題があることが示された.
  • 大西 洋二, 鍬田 泰子
    2012 年68 巻4 号 p. I_930-I_939
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     平成23年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,東日本一帯で最大約225万戸もの断水が発生し,いわゆる広域災害が引き起こされた.兵庫県南部地震以降に災害応援の仕組みが整備され,それ以降の地震では広域な災害応援が行われてきたが,本地震はそれらの体制や応援側の派遣キャパシティをはるかに超えるものであった.本研究は,東日本大震災での応急給水に関する応援・受援体制とそれによる応急給水量についてマクロ分析を行った.その結果,総派遣給水車355台の多くは被災地外の人口50万人以上の派遣可能な自治体から出たものであったが,広域災害の場合1人3□の目標応急給水を達成するのは支援・受援側からみても困難であることが分かった.
  • 岡本 祐, 鍬田 泰子
    2012 年68 巻4 号 p. I_940-I_949
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     市町村合併に伴い水道システムも統合させる動きがあるが,元々独立していた水道システム同士を統合し水源を一元化することは,システムの冗長性が極端に低い箇所をシステムの中に創出する可能性がある.適切なシステム設計のためにも,形状の強度,すなわち位相強度を評価できる指標が求められている.本研究ではシステムの位相強度の評価が可能なトポロジカルインデックスを用いて,水道系に適した新たな位相強度指標を提案した.さらに,実管路網を用いて本指標の適用性を確認するとともに,水道システムの統合を経験した管路網に対して水道システムの位相強度を地震動レベルごとに分析し,統合によってシステムの位相強度は必ずしも向上するとは限らないことを示した.
  • 丸山 喜久, 山崎 文雄
    2012 年68 巻4 号 p. I_950-I_958
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     本研究では,中央防災会議・首都直下地震対策専門調査会が想定している東京湾北部地震が発生したときの上水道管と木造建物の被害率を広域に統一された手法で予測した.対象地域は東京,神奈川,埼玉,千葉の1都3県とし,上水道管被害率と木造建物被害率は250mメッシュ単位で算出した.とくに震度6弱以上の揺れが予測されている東京湾沿岸の地域に関して町丁目ごとに上水道管と木造建物の被害率を整理すると,両者の被害率がともに高く予測される町丁目が各都県に存在することが分かった.これらの地域では,地震後の埋設管の復旧作業に大きな支障が生じる可能性が指摘される.
  • 田中 宏司, 奥津 大, 山崎 泰司, 片桐 信, 鈴木 崇伸, 杉山 俊幸
    2012 年68 巻4 号 p. I_959-I_968
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     通信管路設備は,地下に布設するケーブルを効率的に運用・保守するだけでなく,地震時にはケーブルに作用する外力を低減する性能が求められる.一方,高度成長期に大量構築した管路設備が老朽弱体化しており,メンテナンスや補強により効率的に設備の信頼性を維持していく必要がある.本研究では,新潟県中越沖地震で光ファイバケーブルの障害が生じた老朽化した鋼管について,現場調査結果にもとづいて再現解析を行い鋼管の地震時挙動を把握した後に,管内面にライニング補強を施した場合の内管の挙動を解析および実験により確認した.老朽管路にライニング補強を施すことで,地震時のケーブル防護効果が向上し,合理的な耐震対策として期待できることが確認できた.
  • 早乙女 愛, 沼田 宗純, 目黒 公郎
    2012 年68 巻4 号 p. I_969-I_975
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     効果的な災害時の支援物資の供給システム構築を目標とし,本研究では,東日本大震災における救援物資を対象に,「どの様な物資が,いつ,どれくらい必要とされたのか」といった「要求」と実際に配送された「供給」について整理し,物資の種類・量の分析を試みる.本稿では,2011年東日本大震災における仙台市の救援物資の実績データを分析し,避難者の「要求」と実際に供給された物資の種類と量から成る「供給」データの関係について基礎的な検討を行った.その結果,要求と供給には,タイミングのズレがあること,要求に対して供給された物資の種類と量が十分ではなかったことが明らかになった.
  • 高田 和幸, 杉山 茂樹, 藤生 慎
    2012 年68 巻4 号 p. I_976-I_983
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震では,鉄道やバスなどの各輸送機関が麻痺し,外出先からの帰宅に困難を強いられたり,また帰宅を断念せざるを得ない市民が多数発生した.そこで本研究では,東北地方太平洋沖地震による帰宅困難者を対象としたWebアンケート調査を行い,当日の行動について分析した.はじめに,震災発生後の帰宅者の行動特性について分析を行った.次に,震災発生後に移動せずにその場に留まるか否かを説明する滞留選択モデルと,徒歩で帰宅を試みた者が帰宅できたか否かを説明する帰宅成功モデルを推定した.その結果,地震発生時にいた場所から自宅までの距離や,安否確認に困らなかったことなどが滞留を促す要因であること,また移動開始場所から自宅までの距離,子供の有無,移動経路に関する情報の取得容易性が帰宅成功率に影響を与える要因であることが明らかとなった.
  • 辻原 治, 白綛 裕也, 中嶋 弘幸, 岡本 輝正
    2012 年68 巻4 号 p. I_984-I_994
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     地震動に対する理解を支援するための防災教育教材として,LED地震動表示装置を開発した.本装置は,ランドサット立体地図に埋め込まれたフルカラーLEDをコンピュータ制御によって発色させることで,各地における揺れを同時に時系列で表現できる.LEDは独立行政法人防災科学技術研究所のK-NETの各サイトの位置に対応させており,インターネットでダウンロードされたK-NETの任意の地震動記録を表示することができる.このような装置を防災教育に活用することで,地震動の理解に関して,CG(コンピュータグラフィクス)等を用いた説明とは異なる効果やリアリティーを受講者に伝えられることが期待できる.また,立体地図を使っていることで,地形と揺れ方の関係を理解させるのに役立つ.
  • 大原 美保, 近藤 伸也, 沼田 宗純, 目黒 公郎
    2012 年68 巻4 号 p. I_995-I_1005
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     災害が発生すると,実態把握を目的として多数の組織が異なる被災地調査を行うが、被災地への過度の負担を避けるためには組織間の連携や情報共有が不可欠である.また,東日本大震災のような未曾有の広域災害に対しては,既存の学術領域の枠組みに基づく活動だけでは、新たに出現した社会問題に対して解決策を提示できない可能性がある.よって本研究では,東日本大震災の総合対応に関する学協会連絡会に所属している28学会および2012年2月15日時点で学会ウェブサイトに東日本大震災後の活動に関する情報を掲載している58学会を対象として,震災後の活動状況をレビューし,震災対応のための体制整備,学会間の連携状況,提言活動、相談への対応や専門家の派遣という4つの視点から比較分析した.
  • 藤生 慎, 沼田 宗純, 大原 美保, 目黒 公郎
    2012 年68 巻4 号 p. I_1006-I_1014
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     東北地方太平洋沖地震で数多くの建物被害が発生した宮城県仙台市宮城野区岩切地区での建物被害認定作業への従事を通じて効率的な被害写真管理手法の提案と開発を行った.今回構築した仕組みは, 仙台市宮城野区職員や応援に来た行政職員やが行う建物被害認定作業の業務負担量を軽減するための方法として提案し開発したものである.システム導入前は, 建物番号, 住宅現況図, 住宅地図など紙ベースの煩雑な資料をもとにしてデータ整理を実施していたが, 本システムの導入により作業量の効率化を図ることが可能となった.また, 人的ミスも大幅に削減することが可能であったと考えられる.また,本システムの導入により2次調査や罹災証明書の発行業務を円滑に実施することが可能であることが確認された.
  • 國分 瑛梨子, 沼田 宗純, 目黒 公郎
    2012 年68 巻4 号 p. I_1015-I_1022
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     東日本大震災では,特定の市町村の被害に対する報道の集中,社会的に関心の高い原発事故に対する報道の集中等があった.この「報道の集中」は,「支援の集中」等の問題を引き起こし,過去の災害から繰り返し発生している問題である.そこで本稿は,報道の集中に関し,これを定量的に明らかにすることを目的として,市町村の集中度合を測る指標である「市町村報道率」を定義し,東日本大震災の発災後10日間におけるテレビ局別に報道された市町村と被害量との関係を分析した.その結果,人的被害が大きい市町村であっても報道で頻繁に取り上げられる,一方で,取り上げられる回数が極端に少ないところもあり,市町村により偏りがあることが分かった.
  • 水野 智雄, 宮島 昌克
    2012 年68 巻4 号 p. I_1023-I_1035
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/07/26
    ジャーナル フリー
     2006年に耐震改修促進法が改正され,行政において,住宅の耐震診断・耐震改修の促進が図られている.しかし,密集市街地では,耐震補強の方法や費用の面,建築基準法の接道規定により建替えや改築が困難な場合がある.そこで,本研究では,建築事業者を対象としたアンケート調査により,確保すべき耐震性能の程度に関する認識及び耐震化が促進される可能性のある低廉で簡易な耐震補強方法に関する賛否を確認するとともに,住民を対象としたアンケート調査により,セットバックに関する方策を提案し,賛否を確認した.その結果,建築事業者は行政よりも安全側の考えであることが判明した.また,住民の耐震化意向には,接道の狭あい状況やセットバックの程度はほとんど影響しないことが判明した.
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