土木学会論文集A1(構造・地震工学)
Online ISSN : 2185-4653
ISSN-L : 2185-4653
70 巻, 3 号
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和文論文
  • 戸田 圭彦, 山口 隆司, 岑山 友紀, 直江 康司
    2014 年 70 巻 3 号 p. 333-345
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/19
    ジャーナル フリー
     限界状態設計法に基づいた欧米の設計基準では,高力ボルト摩擦接合の設計においてすべり後の支圧耐力に期待することが可能とされている.しかし,我が国の道路橋示方書では,高力ボルト摩擦接合継手に対してすべり後の挙動に関する規定は存在しない.限界状態設計法への移行を踏まえ,すべり以降の限界状態を適切に把握し,これに基づいた設計が可能となるよう,合理的な支圧耐力の評価法の確立とその設定が求められる.本研究では,1行1列摩擦接合継手の支圧変形測定試験を行い,その基本的な力学的挙動と支圧耐力について,ボルト孔変形量の観点から明らかにした.その結果,孔変形量を基準とした変形支圧限界応力を提案し,ボルト軸力が導入された場合にはそれが導入されない場合に比べて最大で30%程度高い変形支圧限界応力が得られることを示した.
  • 坂井 晃
    2014 年 70 巻 3 号 p. 346-358
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/19
    ジャーナル フリー
     我が国における震度は,気象庁の計測震度に基づいた10階級の震度階が用いられているが,長周期地震動に対しては別途,長周期地震動階級が試行されている.気象庁による長周期地震動階級は,絶対速度応答スペクトルの最大値によって4階級に分けられている.本研究は,筆者が提案している速度対応の震度レベルと長周期領域における速度応答スペクトルの平均値との関係を明らかにするとともに,長周期地震動レベルとして速度と変位の中間的な特性を有する震度レベルを新たに提案して,最大速度応答スペクトルによる長周期地震動階級と比較した.長周期地震動レベルと各種震度レベル・最大速度応答スペクトルとの比較検討には,設計用長周期地震動波形と観測地震波を使用した.
  • 下里 哲弘, 玉城 喜章, 有住 康則, 矢吹 哲哉, 小野 秀一, 三木 千壽
    2014 年 70 巻 3 号 p. 359-376
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/19
    ジャーナル フリー
     本研究では,28年間実腐食環境下で自然暴露され,腐食減厚分布に明確な違いを有する実腐食腹板を用いて,その腹板の実腐食減厚分布が鋼プレートガーダーのせん断強度特性に及ぼす影響の解明を目的として,実大試験桁を用いた大型載荷実験を行った.実験の結果,実腐食減厚分布を有する鋼プレートガーダー腹板のせん断強度は,実腐食減厚分布の影響を受けて異なる特性を示すことを明らかにした.
  • 丸山 喜久, 伊藤 智大, 若松 加寿江, 永田 茂
    2014 年 70 巻 3 号 p. 377-388
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/19
    ジャーナル フリー
     2011年3月に発生した東北地方太平洋沖地震では,都市ガスや上下水道などの地中埋設管に多数の被害が生じた.とくに宮城県仙台市では約23万戸の断水が発生し,水道管被害の多くは丘陵地を造成した人工改変地に集中した.管路被害予測式では,地震動強さの関数である標準被害率曲線に各種の補正係数を乗じることにより,被害率を算出している.しかしながら,自治体の地震被害想定等では,改変地形の考慮が必ずしも充分ではないことがある.本研究では,東日本大震災により被害を受けた宮城県仙台市を対象地として水道管被害の分析を行い,丘陵の造成地の影響を考慮する方法を提案する.なお,補正係数の値に関しては,他地域の事例も併せて分析したうえで設定すべきものと考えられる.
  • 伊藤 誠慈, 吉野 彰宏, 伊藤 義人
    2014 年 70 巻 3 号 p. 389-408
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/19
    ジャーナル フリー
     日本における車両用防護柵は防護柵設置基準・同解説によって性能設計される.その中では,4つの安全性能以外にも,景観等への配慮が求められている.本論文では,新しい車両用防護柵の多目的な性能を実現するため,多目的関数を遺伝的アルゴリズムにより最適化することにより,安全性,経済性および景観性を同時に満足する性能照査型最適設計を行う手法を考案した.多目的関数のPareto集合解が,有意な解であることを部材の静的な有限変位弾塑性解析と防護柵への車両衝突シミュレーションによって実証し,また,景観に配慮した既製の橋梁用ビーム型防護柵と比較することによって,提案した新しい性能照査型最適設計法の有効性を確かめた.
  • 山口 隆司, 長崎 英二, 潘 超, 木村 勇次
    2014 年 70 巻 3 号 p. 409-417
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/09/19
    ジャーナル フリー
     鋼構造物におけるコスト削減・省力化のため,接合部のコンパクト化が注目されており,それを可能とする超高力ボルトの登場が待たれている.このような背景の中で,物質・材料研究機構は,材料強度が1,800N/mm2級の水素感受性の低い超高力ボルト用鋼材を開発した.本研究では本材料を用いた超高力ボルトの実現を目指し,耐遅れ破壊に有効なねじ形状を提案するため,従来のねじ形状を比較対象にしたFEM解析を行い,ねじ部の応力集中をより緩和できる,より簡易な新しいねじ形状を提案した.さらに,提案した新しいねじ形状の基本性能を確認するため,引張破断試験およびリラクセーション試験を行った.これらの結果より,提案した新しいねじ形状は1,800N/mm2級超高力ボルトに適用可能であることを示した.
  • 長尾 毅, 曽根 照人, 西村 壮介
    2014 年 70 巻 3 号 p. 418-434
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     性能設計体系のもとで設計者が岸壁の最適な耐震性能水準を合理的に設定する方法を検討した.提案する方法は,耐震性能水準の変化に伴う地震被災時の直接被害及び経済被害を考慮し,地震ハザード及び港湾全体の埠頭の整備状況等を踏まえて,投資可能予算総額一定の条件の下で各種費用と港湾の総資産により定義される目的関数が最小となる変形量許容値を最適化アルゴリズムにより評価するものである.3つの港湾を対象に提案法の適用例を併せて示した.
  • 米田 昌弘
    2014 年 70 巻 3 号 p. 435-443
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     本研究では,実在の歩道橋(支間長は約33mで有効幅員は1.5m)を対象として,中央点での静止者数を一人ずつ順番に増加させた状態(立位の状態)で歩道橋を人力加振し,得られた減衰自由振動波形から,歩道橋の振動特性とりわけ構造減衰に及ぼす静止者の影響について検討を加えた.その結果,幾分のバラツキは認められたが,静止者数が増加するにつれて,構造対数減衰率δが明らかに増大する結果が得られた.また,ISO5982:1981の立位用2自由度系モデルを用いた複素固有値解析結果との対比を行ったところ,構造対数減衰率の実測値と解析値は比較的良く一致することもわかった.なお,静止者がしゃがんだ場合には,減衰自由振動波形に明確なうなりが観測され,さらに大きな減衰付加効果が認められた.
  • 佐藤 忠信
    2014 年 70 巻 3 号 p. 463-473
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/20
    ジャーナル フリー
     地震動位相を線形位相遅れとそれからの変動部に分解したときに,波動が伝播する媒質の不均質性に内在する自己相似性が,位相変動部における低振動数側での位相の増加傾向と高振動数側でのそれとの間に相似性を発現させるという仮説を立て,それから必然的に導出される位相の確率特性を数理的に明らかにし,最も単純な場合に,それが非整数ブラウン運動過程としてモデル化できることを示す.この結果が,実地震動位相の解析を通してこれまで得られている知見と一致していることを述べた上で,地震動位相の不確定性が地震動振幅の減衰特性として評価できること,さらに,単純な断層破壊過程と局所的地盤伝達関数を用いた強震動模擬モデルを利用して,位相の不確定性が強震動の振幅特性に及ぼす影響をHurst指数により定量的に評価できることを示す.
和文報告
  • 南 邦明
    2014 年 70 巻 3 号 p. 444-456
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     本報告は,橋梁で使用される480N/mm2級鋳鋼の機械的性質および化学成分を把握することを目的として,鋳鋼の現状調査を行ったものである.調査は,整備新幹線等の建設工事で使用したSCW480Nおよび耐候性の鋳鋼を対象とし,機械的性質については,降伏強度,引張強度,シャルピー衝撃値,伸びおよび降伏比を調査した.化学成分については,炭素(C),珪素(Si),マンガン(Mn),燐(P),硫黄(S)の主要5元素,および耐候性を高める合金元素としてニッケル(Ni), クロム(Cr), 銅(Cu)の合わせて8元素を調査した.さらに,炭素当量(Ceq)も調査した.これらの結果とJIS鋳鋼規格値および鋼材の機械的性質や化学成分との比較を行い,鋳鋼の各特性の現状を明確にした.
  • 島 弘, 古内 仁, 上田 多門, 斉藤 成彦
    2014 年 70 巻 3 号 p. 474-484
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/12/19
    ジャーナル フリー
     鋼コンクリート複合構造における形鋼シアコネクタは,一般にはコンクリートの圧縮斜材からせん断力と垂直力を同時に受ける.しかし,この条件下での一般性のあるせん断耐力式およびせん断力-ずれ曲線式は提案されていない.そこで,本研究では,一長一短ある既往の実験結果を組み合わせることによって,新たに二種類のせん断耐力式を提案し,その精度を検証した.一つ目のモデルは,せん断耐力を圧縮斜材角度の関数とするものであり,圧縮斜材角度に関する適用範囲は限定される.二つ目は,垂直力が無い時のせん断耐力式に垂直力の影響分として垂直力に抵抗係数を乗じたものを累加するものであり,圧縮斜材の角度に関して連続した式となる.また,せん断力-ずれ変位曲線式としては,頭付きスタッドと同様の指数関数形が適用できる.
和文ノート
  • 米田 昌弘
    2014 年 70 巻 3 号 p. 457-462
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     歩行者の鉛直歩行外力に関して,わが国では,一般に梶川が提示した歩調と衝撃力比および移動速度の関係を使用する場合が多い.歩行外力は個人差が大きいと予想され,たとえば体格の異なる男女では歩行外力も含めた歩行特性は異なる可能性がある.そこで,本研究では,1歩/秒~4歩/秒の広範囲の歩調域において,歩行時と走行時における人体腰部の加速度応答をFFTでスペクトル解析した結果(パワースペクトル)を用いて,歩調成分の衝撃力比を算定した.その結果,本手法で算出した衝撃力比は,性別や体格差などによる個人差は幾分認められたが,算定値は梶川の衝撃力比と比較的良く一致した.また,歩行速度も梶川の歩行速度と非常に良く一致したが,走行速度は若干の相違が認められた.
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