生体医工学
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Annual57 巻, Abstract 号
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  • 永井 美和, 厚海 慶太, 谷口 和弘, 松居 和寛, 西川 敦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S75_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    筋に電気刺激を加えると活動電位が生じて筋が収縮することを利用し,運動機能を再建・再現することを目的とした電気刺激を機能的電気刺激(FES)と呼ぶ.我々は表面電極型のFESを用いて,日常動作における使用頻度が高く,ヒトらしさを特徴づける手指を対象にした巧緻動作の制御を目指している.しかし手指は自由度が高いため冗長性が顕著であり,その制御は困難である.本研究では,冗長性問題に対する解を提示している運動制御則のコンセプトに基づいた平衡点制御モデルを用いることで,簡便で直感的なFESによる手指制御を行うことを最終的な目的とする.本モデルでは関節周りに存在する拮抗筋群をまとめて扱うことで,関節の平衡点と剛性を独立に制御可能であること,および非線形性を持つ筋を拮抗状態とすることでその特性を線形近似可能であることの2点を仮定している.我々はこれまでに,FESを入力した際に等尺性条件下で指先に発生する力を出力とした神経筋系の伝達関数が2次遅れ+むだ時間で近似可能であることを報告してきた.今回の報告では,入力をFES,出力を中手指節関節角度とする系の伝達関数が4次遅れ+むだ時間で近似可能であることを示す.

  • 関根 一光, 馬場 麻人, 浜田 賢一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S75_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    【緒言】チタン(Ti)の高い生体親和性を応用し,生体内で早期癒合性を示す多孔質性状かつ改質表面を備えた足場材料の開発をおこなっている。今回,この足場材料のガス代謝や体液浸潤の違いによる生体内癒合性について評価したので報告する。【方法】Tiマイクロ粒子をワックス樹脂と加熱混和し,そのまま成形したopened試料,Ti円板上に同じ厚みで成形したsemi-opened試料をそれぞれ成形し,焼結することで2種のTi多孔質体を得た。比較対象には同寸法のバルクTiを用意し,対照試料とした。それぞれ半数の試料は,水酸化処理を介したコラーゲン処理をおこない,改質表面処理試料とした。未処理および処理試料をEOG滅菌後,ラット背部筋層内に,ランダムに各群試料を同数,固定せずに背部に対して平面に配置して縫合した。埋入1週,2週,および4週後に垂直方向への引き抜き試験をおこなった。【まとめ】未処理のSemi-openedおよびopenedではそれぞれ約40kPa,約50kPaの引き抜き強度であった。処理群では,semi-openedおよびopenedでいずれも約90kPaであった。多孔質体構造と表面処理は相乗的に癒合促進するため,今後の応用が期待出来る。

  • 谷藤 祐紀, 川村 勇樹, 山本 衛
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S76_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    生体内の骨組織には,常に何らかの力学的負荷が作用している.日常生活において,長期間にわたって負荷が持続的に作用すると,非破壊的な負荷レベルであっても骨に微小損傷が引き起こされることが知られている.この微小損傷の存在が,骨のリモデリングや骨強度の低下および維持に関連していると考えられている.従って,微小損傷の進展や分布の状態と力学的強度の低下との関連を定量化することで,骨の力学的制御機構の解明に繋がると推察される.しかしながら,クループ負荷を作用させた皮質骨試料内の微小領域における力学的評価は未だに実施されていない.そこで本研究では,非破壊的なクリープ負荷を作用させたウシ大腿骨骨幹部より作製した皮質骨試料に対してマイクロビッカース硬さ試験を行った.クリープ負荷前後の微小硬さの変化を調べることで,クリープ負荷が皮質骨の微視的な力学的特性に及ぼす影響について検討した.その結果,クリープ負荷試験後の試料では,ビッカース硬さが減少する傾向がみられ,クリープ負荷によるマイクロダメージの増加が骨強度の低下に関連していることが示唆された.

  • 大野 正太朗, 厚海 慶太, 谷口 和弘, 松居 和寛, 西川 敦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S76_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    外部から末梢の神経系に対して電気刺激を加え,筋収縮を誘発させ目的の動作を得る機能的電気刺激は,電気刺激療法や運動支援などの分野で実用化や研究が進められている.中でも表面電極を用いた手法は対象者への負担が少ないことや着脱が容易であることから多く用いられている.日常生活の中で使用頻度の高い手指の運動再建に着目すると,正確な動作を再現するための制御モデルが確立されていない.他方,ヒト肘関節においてヒト運動制御則(平衡点仮説)に基づいた制御モデルが提案されている. 当該モデルは入力を電気刺激とし出力を力とした神経筋系と,入力を力とし出力を角度とした筋骨格系をカスケード結合したモデルである.我々は当該モデルをヒト手指に応用することで制御モデルを確立できると考え,これまでヒト中手指節(MP)関節の神経筋系モデルを導出した.本研究では,ヒトMP関節における筋骨格系のモデル化を行った.拮抗筋群に一定の電気刺激を加えながら外力を印加し,入力は外力印加装置からの正弦波状外力とし出力を関節角度とした.外力の周期を変更することで周波数特性を得てボード線図を描くことで周波数伝達関数を導出した.

  • 佐原 玄大, 土方 亘, 山田 昭博, 井上 雄介, 白石 泰之, 軽部 雅人, 源田 達也, 岩元 直樹, 舘崎 祐馬, 盛田 良介, 山 ...
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S77_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    【背景】心臓ペースメーカなどの植込み型能動型医療機器の恒久的な電源として,本研究では電気刺激による筋収縮を利用した体内発電に着目している.筋肉は信号に応じて体内の化学エネルギを運動エネルギに変換する組織であり,従来研究されてきた体内発電よりも能動的かつ高出力な電源の実現が期待できる.少量の筋肉を利用した発電機構設計の基礎的検討として,動物(ヒキガエル,ヤギ)の骨格筋の収縮特性を調査した.実用を想定した有酸素下における筋収縮を調べるため,筋肉は血流を有する必要があった.【方法】ヒキガエルでは,腓腹筋の腱のみを体外に導出して測定装置を接続した.電気刺激による筋肉の等張性収縮および等尺性収縮を調べた.ヤギでは,広背筋の一部を離断することなく表層から固定し,筋体の部分的な収縮を得た.その際の変位ならびに張力の継時的変化を同時に測定した.【結果】カエルの調査では単一筋の張力あるいは筋長を一定にした際の筋収縮特性が得られた.ヤギの調査では筋の一部を収縮させた際の動的な収縮特性が取得できた.【考察】当該手法は,血流を有する骨格筋の収縮特性の調査法として有用であると考えられる.

  • 氏原 嘉洋, 花島 章, 本田 威, 児玉 彩, 橋本 謙, 毛利 聡
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S77_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    心臓の拡張機能障害は,増加の一途を辿っており,その対策は喫緊の課題である.我々はこれまでに,心臓進化の観点から拡張機能障害の理解を深めるために,哺乳類と爬虫類を比較し,哺乳類の心臓は爬虫類よりも弛緩能には優れるが,伸展性が制限されていることを明らかにした.そこで本研究では,哺乳類と同様に二心房二心室のニワトリまたはウズラ(鳥類)の左心室の拡張機能を調べ,ミシシッピアカミミガメ(爬虫類)と比較した.まず,ニワトリの弛緩状態の左心室は,カメの心室よりも単位心筋重量あたりで有意に伸びにくかった.ニワトリとウズラの心筋細胞の幅はカメと同程度あったが,サルコメア長はカメよりも有意に短かった.サルコメア構成要素で心筋細胞の伸展性を規定するコネクチン分子の配列を解析したところ,ニワトリのコネクチンは柔軟性に富む領域がカメよりも著しく短く,伸びにくいことが示唆された.また,ウズラの心筋細胞は,哺乳類様のT管膜は存在しないが,カメよりも弛緩もカルシウム排出のスピードも大きい傾向を示した.以上の結果より,鳥類の心臓は,哺乳類と同様に,弛緩能を向上させた一方で,受動的な伸展を制限してきたことが示唆された.

  • 木村 剛, 門田 純平, 橋本 良秀, 藤里 俊哉, 岸田 晶夫
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S78_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    生体組織から細胞成分を除去した脱細胞化生体組織を酵素で可溶化し、生理的条件下に調整することでヒドロゲル(ECMゲル)が得られる。ECMゲルは、生体組織の生理活性物質を有しており、組織から抽出精製された単成分ゲルとは異なる特性を発現するため注目されている。本研究では、ブタの膀胱組織(UBM)、小腸粘膜下組織(SIS)を高静水圧法(HHP法)にて脱細胞化し、得られたECMゲルの特性および毛細血管網構築に関して検討した。各ECMゲルのゲル化挙動を比濁度測定にて検討した結果、コントロールのコラーゲンよりも早期のゲル形成が示された。圧縮試験より、500~1500Paの弾性率の様々なECMゲルが調製できることがわかった。各ECMゲル上に血管内皮細胞を播種・培養し、毛細血管網構築を検討した。毛細血管様のネットワーク形成が観察され、ネットワーク長および擬血管径を画像解析にて計測した。ECMゲルは、コラーゲンゲルに比べてネットワーク長は5~7倍の増加し、擬血管径も2~3倍の増加し、低弾性率のECMゲルにて太く長い擬毛細血管ネットワークが形成されることが明らかとなった。脱細胞化ECMゲルの物性制御により擬毛細血管網の形成を制御できることが示唆された。

  • 藤田 尚正, 藤澤 俊明, Tseng Yu-Hua, 佐藤 真理
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S78_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    [背景・目的]我々は脂肪細胞に高発現する光受容タンパク質Opsin3(Opn3)に着目し、褐色脂肪の光感受性について検討している。現在までにOpn3を介した光刺激が褐色脂肪の糖取り込みやエネルギー産生を亢進することを見出したが、詳細な分子制御機構は不明である。本研究ではmessenger-RNA-sequencing (mRNA-seq)解析により分子メカニズムの解明を目指した。[方法]野生型(WT)とOpn3-knockout(KO)マウスから褐色脂肪細胞株を樹立し、光刺激下にて8日間培養した。WT、Opn3-KO細胞への光照射の有無の計4群からRNAを抽出した。Illumina HiSeq 2500にてmRNA-seqを行い、全遺伝子群のFPKM値を算出した。得られた26886遺伝子を解析ツールR、KEGG、DAVIDにて解析した。[結果・考察]褐色脂肪細胞において光刺激で変動する875の遺伝子が得られた。その内、Opn3経由で光に反応した遺伝子は465であった。これらの遺伝子は、KEGG解析では、Fatty acid metabolism、Biosynthesis of unsaturated fatty acids、PPAR signaling pathwayと強い相関を示した。DAVID解析では、関連のある11のクラスターが得られ、Fatty acid metabolism、Lipid metabolismなどの脂質代謝クラスターがHigh Enrichment Scoreを示した。

  • 西林 健人, 川嶋 大介, Liu Xiayi, 小原 弘道, 武居 昌宏
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S79_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    iPS細胞等の幹細胞の分化誘導の過程において,未分化細胞やがん細胞等の特異細胞を検出するために従来の研究では,電気インピーダンス・トモグラフィ法(EIT)法によりセンサー内のイースト細胞懸濁液をインピーダンス測定し,導電率分布を可視化することで細胞分布の取得を行ってきた.しかし,それでは細胞の生死状態までは識別できない.そこで我々はイースト細胞の生細胞と死細胞を可視化,識別できる新しい手法を提案し,従来の手法との比較を行った.イースト細胞の死細胞率Φdの細胞懸濁液を作製し,インピーダンス測定を行った.さらに,各死細胞率ΦdとΦd=0の虚部インピーダンスの比Ψdを定義しボード線図に示すと,死細胞率Φdの増大と共にΨdも増大していき,f=3kHzにおいてピーク周波数fpが存在することが分かった.この結果を利用しセンサー内の死細胞率分布Φd,EITを画像再構成すると,Φd,EITによって死細胞率Φdの識別が定性的に確認できた.従来の手法と比較すると,従来の手法ではΦdの識別が難しく,特にΦd=0~0.5の範囲での識別はほぼ不可能だが,新しい手法ではすべての範囲でΦdの識別が可能であることが定性的に確認できた.

  • 中村 奈緒子, 春風 宏樹, 大平 涼太, 木村 剛, 岸田 晶夫
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S79_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2022/12/15
    ジャーナル フリー

    次世代の歯科治療技術として、人工歯に歯周靭帯(歯根膜)機能を担持させた人工歯周組織ユニットの開発を目指した。歯周靭帯機能を付与することで、衝撃の緩和や噛みごたえを感じることが可能となると考えられる。これまでに、抜去歯を脱灰し再度石灰化させた人工歯を調製し、歯周靭帯繊維と歯槽骨からなる脱細胞化下顎骨に挿入して、人工歯と歯周靭帯繊維の結合について検討した。ラット腎皮膜下移植にて、歯周靭帯線維が宿主細胞の浸潤によって再構築され、人工歯表面と結合したことより、三次元的な繊維構造を有するECMと石灰化表面の結合が可能であることが示唆された。そこで、配向性を有する前十字靭帯をシート状に加工し、種々の脱細胞化処理方法で歯周靭帯様の靭帯ECMシートを調製した。また、種々の濃度のアクリル酸を表面グラフト重合および交互浸漬法にて、種々の三次元構造を有する人工歯表面モデルを作製した。移植実験より、脱細胞化処理方法およびプレート表面の構造の違いによる生体反応の違いが観察された。以上より、靭帯ECMシートによる人工歯周組織ユニット開発への応用の可能性が示唆された。

  • 青山 千裕, 池内 真志
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S80_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    アルギン酸で作られたゲルは栄養やガス交換は可能だが、免疫グロブリンのような高分子タンパク質は通さない性質を持つ。このゲルに細胞を包埋して移植すれば免疫反応からの隔離が可能だとされ、再生医療などの分野での技術開発が進められている。一方、細胞の凝集塊を形成させ三次元的な状態で培養する3D内容は、従来の平面培養よりも生体に近い状態の再現や高い細胞活性が得られる可能性が示唆されており、こちらも毒性試験や再生医療など多岐にわたる分野で注目されている。当研究室では様々な培養基材状に貼付するだけで、大量に均質な細胞塊を形成することができるデバイス "TASCL(Tapered Stencil for Cluster Culture)" の開発を行ってきた。本報では、様々な条件のアルギン酸ゲルでTASCLを作成し細胞塊の形成に成功した。また、アルギン酸製TASCL上で形成した細胞塊をTASCLごと、さらにアルギン酸ゲルで封止することにも成功し、均質な細胞塊を大量に包埋した移植用細胞塊シートを作成できることを示す。

  • 井上 聡, 矢口 俊之, 住倉 博仁, 大越 康晴, 荒船 龍彦, 本間 章彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S80_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    再生医療において,臓器の再生構築をするには細胞を組織として構築する必要がある.しかし,一般にイメージされる心臓などの様な大きさを持つ臓器の構築を行うのは困難とされている.そこで本研究では,二次元的な細胞パターニング技術として提案されてきた水溶性二相系(Aqueous Two Phase System, ATPS)法を応用し,新規な細胞組織構築技術の開発を行う.ATPS法は細胞を常にウェットな状態で扱えるためダメージが少なく,溶媒を介して分子シグナリングを確保できるといった優れた特徴を持つ.この二相((1)Dextran(DEX)相,(2)Polyethylene glycol(PEG)相)に分離する培養液(ATPS培養液)を用いて,DEX相の液滴内に細胞を懸濁させ,PEG相に浮遊させた状態を維持することにより細胞の凝集塊形成の実現可能性を評価した.マウス由来繊維芽細胞(NIH3T3)をDEX相で懸濁し,その細胞懸濁液10 [μL]をPEG相を培地として,チューブ型循環培養器内で4時間の浮遊培養を行った.その結果,DEX相内に直径200 [μm]程の細胞凝集塊が複数形成された.今後,この凝集塊の評価を行うとともに,本手法の開発を進め,新たな細胞組織構築法の確立を目指す.

  • 公文 優花, 湯川 博, 小野島 大介, 馬場 嘉信
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S81_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    幹細胞による再生治療メカニズム解明は、再生医療の更なる安全性、治療効果向上において極めて重要である。幹細胞は自己複製能と多分化能を持つ特殊な細胞であり、障害部位への特異的な集積能力や再生因子産性能を持つことから患者に移植することで治療効果を発揮することが知られている。更に、近年では幹細胞から放出されるエクソソームも同様に治療効果を持つことがわかっており、新規治療ツールとして注目され始めている。しかし、エクソソームの詳細な生体内挙動及び細胞間移動等について解析できる技術が乏しく、再生機能の役割については未だ未解明のままである。本研究では、エクソソームを生体内で高感度に検出できる技術の確立を目指した。最先端量子ナノ材料である量子ドットをグルコース修飾することで、もともと細胞が持つグルコーストランスポーターを通して細胞内に導入することに成功した。また、グルコーストランスポーターを持つとされるエクソソームにおいても同様に内部への導入が確認された。エクソソームの内部に導入することで、膜上に蛍光色素を付着させる従来法に比べてより安定で高感度のラベル化に成功した。

  • 秋本 和哉, 上條 史記, 伊東 雅之, 篠原 一彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S81_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    医工学系資格取得を目標とする教育機関において、学生の苦手分野を効率的に学修できる教育環境の構築は重大な責務である。本研究では、AIを用いた効率的な教育環境の構築を目指す応用例として、臨床工学技士国家試験問題の自然言語処理(以下NLP)による問題文前段階処理について検討したので報告する。問題文に対してPythonとJUMAN++を用いた形態素解析を行うことで、問題文中に存在する形態素をキーワードとして抽出することができた。しかし、JUMAN++が備える基本モデルでは多数の専門用語が用いられる問題文に対して誤解析が不可避となる。そのため、①抽出したキーワードを精査、②解析対象に適した辞書の構築、③専用コーパスの作成、これら3つの手順を反復することで解析精度の向上が期待できる(図1)。医工学系資格検定問題にNLPを応用する為には、高精度な形態素解析が必要不可欠である。今後は、NLPによる問題解析を行うと供に、専用データベースを構築し、教育環境改善に向けてAIを利用したアプリケーション作成について更なる検討を重ねる。また、図表を対象とした深層学習による画像解析に関しても、NLPと並行して検討を進める。

  • 伊東 雅之, 秋本 和哉, 上條 史記, 篠原 一彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S82_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    1950年代に研究開発が始まった人工知能(AI)は、データの多様化・増加、コンピューティングの高度化、アルゴリズムの高度化という三大技術変革を背景に、現在三度目のブームを迎えており、近年は様々な分野において有効な活用法が検討されている。AIの優れた特徴としては(1)自動応答、(2)ビッグデータから最適解の探索、(3)規則の探索、(4)瞬時判断と高速実行、(5)行動監視 等が挙げられるが、我々は主に(2), (4)の特徴を活かした研究を進めている。本学当学科では医療系の国家資格の一つである臨床工学技士資格の養成校として、通常の教養科目と専門科目の教育に並行して、医学、臨床工学、工学の3分野から構成される国家試験に備える教育を行っている。しかし学生の苦手分野はそれぞれ異なるため、学生の学力向上を図る画一的な手法では効率が悪くなるケースが多い。そこでAIを用いた応用例の一つとして、国家試験問題を解析してオリジナル問題を作成し、学生個々に対応した効率的で多様な教育環境の実現を目指した研究を進めている。本報告では、自然言語処理技術を用いた特定キーワードの抽出、深層学習を用いた適正問題の抽出に関する基礎検討の現状を紹介する。

  • 齋藤 正親, 菊地 由紀子, 工藤 由紀子, 佐々木 真紀子, 水戸部 一孝
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S82_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    採血は看護技術の中でもとりわけ繊細な手技を要求される技術の一つであり,経験に依存する部分が大きく,学生が卒業までに十分な技術を修得できないことが課題となっている.そこで我々は,学習効率の向上を目的として,高空間分解能の採血手技計測システムを開発し,CGで再現した注射器を光学透過型HMDにより実空間に重畳して提示し,学生が教員の注射器の動きを真似て練習できる学習支援システムを開発した.しかし,習熟度を定量評価する機能を実装していないため,教員の手技との差異を学生が自覚し難いことが新たな課題として顕在化した.そこで,本システムに採血手技の定量評価機能を加えることで,採血の学習効率を高めることができると考えた.そのための基礎研究として本研究では,看護教員と学生の手技を比較・解析し,定量評価のための評価指標を構築することを目的とする.本発表では,モーションキャプチャした注射器,注射器を持つ指および手首の動作データから,採血の評価指標となる動作の特徴を定量化する手法について報告する.

  • 中山 雄斗, 林 拓世
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S83_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    生体計測装置から正確に生体信号を取得するには,適切な基準点の設定や電極の装着が求められる.しかし,対象の身体的特徴や測定者の技量により,その正確性や再現性は異なる.本研究では,測定条件に関わらずに正確な電極装着を可能とすることを目標に,対象に配置した仮想電極をリアルタイムに追従する安価なシステムの開発を試みた.システム構成にはRaspberry Pi 3と対応するカメラモジュールを採用し,プログラミング言語にC++,動画像の入出力処理と画像処理にOpenCVを用いた.動画像上に配置した仮想電極の追従は,グレースケールに変換した1フレームごと画像データより対象の移動量をSURF関数の特徴点抽出より取得し,精度の高い特徴点の平均変化量を仮想電極の座標に反映するものとした.結果,フレームレートが4.4fpsと低速であるものの,320×240画素の動画像上に仮想電極を追従させることができた.本システムでは仮想電極の初期配置を手動で設定しているが,画面上より取得される対象の身体的特徴を基に電極の自動配置を可能とすることで,様々なシチュエーションに対応ができるようになると考えられる.

  • 関 拓哉, 辛川 領, 矢野 智之, 荒船 龍彦
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S83_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    形成外科における微小領域を対象とし顕微鏡を使用したマイクロサージャリーでは、神経の縫合や血管ふん合を用いた再建手術を行うため、繊細な手技技術が必要となり、その技術を向上させるトレーニングが重要である。しかし、顕微鏡などの手術用具は高価であり、トレーニングを目的として研修医全員分を用意するのは難しい。また、これらのツールを違和感なく使用するには継続的なトレーニングが必要である。我々の先行研究ではよりアクセス性が高く、かつ効率的な手技の向上を実現するため、スマートフォンとPCを用いて画面上に自分の手元の映像に手技見本となる映像を重畳するシャドウイングトレーニングシステムを開発した。しかし、一眼のカメラ及び2Dディスプレイを用いるため奥行や立体感が感じられず実際の手技との乖離があるという課題が明らかとなった。本研究では、2台のカメラとHMDを用い、3Dで手元を拡大して映像取得しながらマイクロトレーニングが可能なARトレーニングシステムを開発し,形成外科専門医によるシステム使用による妥当性評価を行ったので報告する 。

  • 保多 隆裕, 祇園 景子, 鶴田 宏樹, 宮崎 悟, 水野 佳子, 猿渡 昌子, 平田 健一, 永井 洋士, 福本 巧
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S84_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    米国では企業や団体が医療ベンチャーを支え、そこから生まれる原型を大手メーカーが事業化するエコシステムが存在するが、法体系や社会システムの異なる日本では米国型システムは機能しておらず、特に開発初期を担う創造的人材が決定的に不足している。この現状を打開すべく、“メディカル・デバイス・プロデューサー(MDP)”育成研修プログラムを開発した。MDPは、臨床現場で医療従事者と密に連携し、ニーズを起点とした医療機器のコンセプト創出を行い、実際の製品開発までを推進する。その過程で専門人材とチームを形成し、知財・薬事戦略・保険適用・事業戦略を立案する。MDPには専門知識や経験に加え、コミュニケーションスキルやチームマネジメントスキルが要求される。研修の対象は、医療機関や医療機器メーカーの医師、臨床工学技士、工学系研究者などで、プログラムはエントリーおよびアドバンストコースで構成され、前者は約1年間のコースで、ワークショップ形式の授業とハンズオンセミナーで開発スキルの基礎を学んだ後に、臨床現場見学から開発候補品創出までの一通りの模擬実践を行う。(本研修はAMED国産医療機器創出促進基盤整備等事業の助成を受けた。)

  • 島袋 雄一, 比嘉 広樹
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S84_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    上肢不自由者の自立を支援するツールとして生活支援ロボットアームがある。このロボットアームには、上肢不自由者が操作して自身の代わりに食事や物を拾う等の上肢を扱う日常生活動作の支援を行うことが要求される。本研究では、ロボットアームを利用して食事支援を行うことを検討している。今回、仮想空間においてロボットアームによる食事支援のためのシミュレータを検討した。仮想空間には3D総合開発環境ソフトウェアUnityを使用した。仮想空間内に、着座した状態のユーザと、テーブル、食器等を配置し、ロボットアームを操作して、水分摂取とスープ摂取のシミュレーションを行った。環境内のロボットアームの制御にはゲームコントローラを使用した。また水やスープ等の液体には、小球を複数個用いて表現した。健常被験者1名に同コントローラを操作してもらい、シミュレータの評価を行った。実験結果より、水分摂取、スープ摂取とも実行可能であることが示された(図1参照)。しかし、操作時に2種類のモードを切り替えることに多少操作しづらさが感じられた。今後の課題として、ロボットアームの手首回旋時における自動制御の導入が挙げられる。

  • 芳野 光, 齋藤 正親, 菊地 由紀子, 工藤 由紀子, 佐々木 真紀子, 水戸部 一孝
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S85_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    採血技術は看護師の経験に依る部分が大きく言語化が困難であるため,学生にとって修得が困難な技術の一つである.しかし,採血は臨床上頻繁に行われるため,教育現場では学習効率の高い自習教材を求める声が高まっている.我々は過去の研究において,熟練者の手技をHand-MoCapにより計測し,熟練者の手に装着したレシーバおよび注射器を3D-CGで再現したが,レシーバと注射器だけでは自習教材として不十分であった.本研究では,レシーバの動きから手指の動きを再現し,HMD型MR(Mixed Reality)デバイスを介して熟練者の手指および注射器の動きを3D-CGとして実空間に重畳表示・移動操作可能な「採血手技MR訓練システム」を開発した.従来のビデオ教材では視認しづらい注射針の軌跡を可視化したり,腕の透明度を変えて血管内部での注射針の動きを詳細に表示したり,看護教育現場で採血手技を模倣学習するための機能を開発した.今後,既存の採血訓練シミュレータと併用した場合の本システムによる訓練効果を検討する予定である.

  • 楠元 直樹, 平岡 茂美, 川島 徳道, 渡部 篤也, 蓮沼 裕也, 徳岡 由一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S85_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    本装置は、ガラス製水銀封止球に外部からマイクロ波を印加し、紫外線を発光させる。その紫外線によってガラス製水銀封止球周辺の酸素をオゾンに変換又は分解させる装置である。内部に電極がないため、水銀灯の寿命が大幅に改善される。発せられる主要な紫外線波長は184.9nmと254.7nmである。前者はオゾンを発生させ、後者はオゾンを分解する。オゾンを分解可能なため人体への影響を抑える事が可能である。高濃度オゾンは高い殺菌効果が期待でき、オゾンによる滅菌を、本装置により確立させることを目的とし、殺菌効果の評価を行った。寒天培地に微生物を塗布し、本装置によって殺菌する。その後、インキュベーターで培養し、翌日、発育したコロニー数をカウントする。発育コロニー数より生菌率を算出し、本装置の殺菌効果を評価する。黄色ブドウ球菌は、本装置により10分間で十分殺菌可能である。芽胞形成菌である枯草菌は、芽胞状態になると本装置によって殺菌することは困難であったがオゾン濃度をさらに上昇させることで、コロニーの形成が確認できなった。最も殺菌が困難とされる芽胞形成菌に対して、本装置が有用と考えられる。

  • 渡部 由香, 深尾 祐有奈, 嶋津 将輝, 佐藤 匠海, 竹本 侑希, 楠 正暢
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S86_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    歯や骨の主成分であるハイドロキシアパタイト(HA)は、六方晶の結晶構造内にイオン分布の偏りがあり、これを起源とする電気的異方性によりタンパク質吸着性を持つ。この性質を利用し、クロマトグラフィーの充填剤等に応用されてきた。我々はタンパク質吸着性をさらに効率的に生かすため、HAを配向制御した薄膜を吸着層としてバイオチップを構成することを目指し研究を行ってきた。これまでに、パルスレーザーデポジション(PLD)法を用い、a面、c面の配向制御技術を確立してきたが、本研究ではバイオチップ化する際の生産効率を考慮し、大量生産向きかつ再現性に優れるスパッタリング法を用いた。成膜条件を検討した結果、スパッタリング法においてもa面、c面配向HA結晶膜の作り分けに成功した。また、作製した試料の表面観察を行い、その平滑性についての評価を行ったので報告する。

  • 里城 直希, 清水 理優, 崔 軫煥, 八木 哲也, 林田 祐樹
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S86_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    神経・筋組織など,興奮膜を持つ細胞組織の自発活動や外来性刺激に対する応答を計測・解析し,その結果を元に刺激のパラメータを逐次更新しながら与えることで,組織の活動を所望の状態へ制御する技術の開発が世界的に多くの関心を集めている.この技術は,臨床にも用いられる脳深部刺激や,幹細胞の成熟化育成にも応用可能と期待されるが,依然としてその確立には基礎研究からの知見が乏しい.そこで,そうした実験研究用のプラットフォームとして,in vitroの細胞組織に対して,外来性刺激と細胞活動計測を多チャネルで行う電子デバイスシステムの開発を行った.ディッシュ型平面多点電極を組織試料とのインターフェイスとし,最大20チャネルからの細胞外電流パルス刺激および最大32チャネルからの細胞外電位計測を実現している.信号フィルタやサンプリング周波数等の計測パラメータ,および電流振幅やパルス幅などの刺激パラメータは外部コンピュータから変更可能であり,さらに,刺激パラメータについては,内蔵のプログラム可能ロジック回路(FPGA)に所望の閉ループ制御ブロックを実装することで,培養組織の活動制御や成熟化育成などを自律的に行うことが可能となる.

  • 林田 祐樹, 梅比良 裕一, 里城 直希, 高山 浩輔, 石川 慎之祐, 八木 哲也
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S87_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    我々は,失明者の脳視覚皮質内に埋植された多チャンネル電極を介して外界像に対応する時空間的な微小電流刺激を与え,その神経回路を駆動することで視覚機能の一部再建を目指す皮質型視覚補綴に関する研究を行っている.本研究では,視覚補綴における刺激条件の至適範囲を決定するうえで必要不可欠となる動物実験のためのプラットフォーム構築を目指した.これまでに,出力64チャネルを持つ微小電流刺激用VLSIチップと,これを最大64チップまで連動制御できる無線式電子モジュールを試作開発した.そこで今回,頭部固定下の齧歯動物を用いた脳皮質の膜電位イメージングによって,この刺激用VLSIチップを使うことで設計通り高精度の皮質内刺激が可能であることを確認した.またこの実験から刺激電流と皮質神経応答の定量的関係が明らかとなり,視覚補綴に有効と思われる刺激パラメータが決定された.続いて,無拘束の齧歯動物を用いた行動実験により皮質刺激と光知覚の関係を調べるため,上記の無線式電子モジュールを改良しウェアラブル化を行った.現在,このウェアラブルシステムの基本制御プログラムを開発し,システムの実証試験に向けた行動実験環境を整備している.

  • 伊藤 奈々, 武田 朴, 日向 奈惠, 笠井 亮佑, 上條 史記, 荻野 稔, 篠原 一彦, 田仲 浩平
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S87_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    医療機器は年々複雑化し、医療従事者はその操作を正確に行えるように学習する必要がある。学習は、集中学習より分散学習が効果が高いとされている。医療従事者は勤務スケジュール上、分散学習は困難である。我々は、個々の従事者が分散学習を行える、画像と文字を眼鏡に表示しその切り換えを音声で行う(ハンズフリー)ARマニュアルの開発を行っている。その有効利用には、学習タイミングと学習回数を最適化する必要がある。本学臨床工学科1年生と2年生から無作為に抽出した11名(男性8名、女性3名)、18~20歳を対象とし、集中学習群と分散学習群に分け、血液透析回路の組立を行わせた。集中学習は、1週間に2日連続で組立を3週行い、分散学習は、1週間に1日組立を6週行った、初回から3か月後に学習効果判定を行った。比較検討項目は、組立工程ごとの精度と組立た回路の完全性、所要時間である。集中学習と分散学習の結果は順に、工程ごとの平均点は58点、67点、検査結果が11点、13.8点、所要時間は11.4分、14.5分であった。一般的に言われている通りに分散学習の方が集中学習よりも血液透析回路の組立においても優れていることが示唆された。

  • 中西 義孝, 本島 那奈, 宮本 陽来, 中島 雄太
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S88_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    “ぬるぬる”とした粘性液体を手のひらに存在させることを日常生活で絶えず経験する。その目的は粘性液体の特性により異なるが、皮膚の摩擦制御であったり、皮膚の洗浄や保湿などさまざまである。粘性液体を手指または手のひら同士で擦りあわせれば、心地よかったり、官能的であったり、気持ち悪かったり、嫌悪感をおぼえたり、などを感じる。これらの感情は、粘性液体の粘度特性および温度の影響を受けると想像できる。本研究の目的は、生理学的指標を用いて、手のひらに粘性液体を保持することによって引き起こされる感情的変化を調べることである。粘性液体として粘性の異なるニュートン流体および非ニュートン流体を準備した。ニュートン流体はポリビニルアルコールの、非ニュートン流体はポリエチレングリコールの分子量および濃度を調整して準備した。被験者にはあらかじめポータブル心拍計を装着させ、手のひらに粘性液体を垂らしたのち、自由に触ってもらった。ポータブル心拍計より得られた各心拍間隔の揺らぎから、自律神経の活動度の指標(副交感神経/交感神経)を算出した。

  • 小野寺 修, 藤井 慎也, 森口 秀樹, 辻岡 正憲, 藤岡 宏樹, 馬目 佳信, 平栗 健二
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S88_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    近年、医療デバイスの応用には高分子材料が多岐に使われている。しかし高分子材料は体内に入ると材料表面の細菌感染や非適合性の反応を誘起するという問題がある。ダイヤモンド状炭素 (DLC) 膜は生体適合性、抗菌性に優れ、医療デバイスへのコーティング材料として期待されている。さらに先行研究ではDLC膜に微量の生体必須元素を含有させて表面処理を施すと生体特性に有利な影響を及ぼすことが報告されている。本研究では高周波プラズマ化学気相成長プロセスを用いて汎用ポリスチレン上にフッ素含有DLCを成膜しその後、酸素ガスでの大気圧プラズマ処理により表面改質を行った試料 (O-F-DLC) を作製し膜物性と抗菌特性を検討した。抗菌特性評価は、国際標準化機構 (ISO Z 22196) によって定められたフィルム密着法によって評価した。また評価菌種液は大腸菌と黄色ブドウ球菌を用いた。抗菌試験の結果より、O-F-DLCは抗菌活性値が2以上となり、抗菌性があると判断された。これは大気プラズマ処理により表面修飾された高濃度酸素により菌の増殖が抑制されたと考えられる。以上のことから、DLC膜に表面改質を施すことは、抗菌特性を向上させる有用な技術であることが示唆された。

  • 中根 紀章, 佐々木 一真, 奥 知子, 山内 忍, 本橋 由香, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S89_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【目的】シャント状態が良好な場合は連続的で低周波数成分が主となるLowPitchと呼ばれるシャント音が発生し、シャント状態が悪化すると断続的で高周波数成分が主となるHighPitchと呼ばれるシャント音が発生する事が知られている。我々は、シャント音の発生メカニズムや、血管狭窄状態に応じたシャント音の特徴変化を定量的に評価する為の調査方法について検討している。これまでに、透析患者のシャント音の分析、擬似血管と水を用いたシャント音のウェーブレット変換による時間-周波数解析、PIVによる流れの状態の可視化調査を行ってきた。実験結果を理論的に調査する為に、数値計算を用いた解析を試みている。【方法】シリコンチューブとアクリルを用いて狭窄部分と周辺を模擬した擬似血管狭窄モデルを作成し、内部に水を拍動流として流すモデルを考案した。有限要素法による血管変形、有限体積法による血液の流れを同時に計算する連成解析を行った。【結果】狭窄下流側において流れが乱れ、血管壁に衝突する様子が確認できた。又、狭窄直後の血管壁で激しい振動が確認できた。これらの結果は実験結果の特徴を捉え、比較的良い一致を得る事ができた。

  • 関 俊輔, 佐々木 一真, 本橋 由香, 奥 知子, 山内 忍, 佐藤 敏夫, 清 千布美, 矢嶋 博行, 坂内 誠, 赤松 眞, 阿岸 鉄 ...
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S89_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    [目的] 我々は、血液透析患者のバスキュラーアクセス(VA)上に置いた電子聴診器で測定したシャント雑音から周波数領域におけるシャント雑音の経時変化を表す正規化相互相関係数Rと、時間領域における経時変化を表す基準化持続時間NDTを求めるVA機能評価方法について検討している。今回の報告では、エコーから得られる血管抵抗指数RIや上腕動脈血流量FVの経時変化と、電子聴診器から得られるRやNDTの経時変化との関係について調べた。[方法] あかまつ透析クリニックで維持血液透析を行っている患者の吻合部、PTA治療部、A・V穿刺部に電子聴診器を置き、それぞれの位置でシャント雑音を測定した。得られたシャント雑音から開発した解析ソフトウェアを用い、RとNDTを算出した。また、同時にエコーによるRIとFVも測定し、R及びNDTとRI及びFVとの間の経時的な相関関係について調べた。[結果及び考察] PTA直後から一次開存終了までに得られた各測定データの経時変化から、一次開存終了に向かって狭窄が進行するのに伴ってRIが上昇し、FVが減少し始めるのと同時にRとNDTも減少し始めることが確認できた。

  • 可児 雅弥, 本橋 由香, 奥 知子, 山内 忍, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S90_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【目的】嚥下反射の惹起性が低下した患者に対して冷圧刺激法などの冷感刺激を利用したリハビリテーションが実施されており、近年では冷却炭酸水の有用性が注目されている。一方で、食塊の送り込み能力が低下した患者にはゼリー食などの嚥下調整食を用いて誤嚥を予防している。今回の報告では、炭酸水やゼリー食嚥下時の嚥下音を測定・解析し、こられの予防策を効果的に用いる手法について検討した。【方法】嚥下試料として炭酸強度の異なる3種類の炭酸水およびゲル化剤添加量の異なる5種類の水ゼリーを作製した。炭酸水は市販の炭酸水メーカを使用して作製し、ボトル内の圧力値に基づいて炭酸強度を管理した。また、各試料の温度は10℃、20℃、30℃となるように調整した。各試料嚥下時の嚥下音は被験者の舌骨直上および輪状軟骨直下気管外側上に装着した心音センサから採取し、合成嚥下音信号の包絡線から嚥下機能の指標となるP値を算出した。【結果及び考察】P値を算出した結果、炭酸水は炭酸強度が強いほど、また温度が低いほど嚥下反射を惹起させ得る可能性が示唆された。また、硬さが約4100Paのゼリー食が誤嚥を効果的に防止できる可能性が示唆された。

  • 清水 公治, 池田 浩治, 加賀山 祐樹, 鈴木 由香
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S90_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    臨床研究法が2018年4月1日に施行され、厚生労働省より臨床研究を実施する上での疑問点に対するQ&A等が発出された。しかし、多様な医療機器については解釈が困難なことが多い。そこで、日本臨床試験学会医療機器/再生医療委員会では、医療機器の臨床研究を実施するにあたっての疑問点、課題等の意見募集をweb上で行った。期間は2018年10月9日~11月30日、対象は日本臨床試験学会会員・その他で、記述式の自由回答とした。意見のあった機関数は11(アカデミア8、企業3)で、意見の総数は34件であった。件数の内訳は、定義・該当性8件、実施困難・開発阻害5件、教育5件、結果の利活用3件、その他13件となった。臨床研究法は医薬品を中心に議論が実施され、運用に関する資料も整備されつつあるが、医療機器に関しては不明確な点が多く残されている。また、誤解による混乱も見られる。日本臨床試験学会では、臨床研究法下での医療機器を用いた臨床研究が適切に推進されるように、セミナー開催やQ&A発出等を通して、現場での疑問解消を目指す予定である。本発表では、意見調査の結果とともに今後の課題、取り組みについて報告する。

  • 小山 和人, 小ヶ口 晃, 嶋崎 定幸, 中山 正大, 寺井 宏樹, 竹村 研治郎
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S91_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    シートベルトウェビング(ベルト部分)は乗車に際して必ず触れるものであり,製品開発において触感の向上が重要な課題のひとつである.シートベルトウェビングの触感向上に関する先行研究の多くは触感を説明する要因として物性値を測定しているが,ヒトが触覚受容器の応答によって触感を知覚することに鑑みると,物性値のみでは必ずしもシートベルトウェビングの触感を言い表せるとは言えない.このため,本研究では物性値だけでなくシートベルトウェビングを触察した際の振動情報も用いて触感を定量化した.被験者に7種類のサンプルをSD法により評価させ,その結果から主成分分析を用いてシートベルトウェビングの触感に関する主成分を求めた.この結果,低次触感では「粗滑感」「硬軟感」「湿感」,高次触感では「高級感」の主成分が抽出された.つぎに,サンプルの物性値および触察時の振動情報を測定し,重回帰分析を用いて,物性値および振動情報と触感に関する主成分の関係を定式化した.この結果,物性値および振動情報から触感を予測する線形モデルを構築した.

  • 山本 新, 峯村 康平, 加藤 諒, 大嶋 真広, 京相 雅樹, 島谷 祐一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S91_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    生体埋め込み医療機器への無線電力伝送の実現は、従来の埋め込み機器の欠点であった電池交換のための手術を不要とし、患者のQOLの向上が期待される。特に磁界共鳴方式による無線電力伝送は、体内深部に埋め込まれた医療機器に効率よく電力を送信する方法として研究が進められている。しかし、生体内に受電コイルを埋め込むと、コイルの電気的特性が空中に比べて大きく変化する。すなわち体内ではコイルの実効インダクタンスが増大するとともに自己共振周波数が大きく低下する。またコイルの交流抵抗が増大する。この結果、受電回路の共振周波数にずれが生じ、電力伝送効率が低下してしまう。これらの変化はコイルを取り巻く体液や生体組織によって生じていると思われるが、その詳細な原因についてはいまだ解明されていない。そこで本研究では、生体埋め込み型機器への効率的な無線電力伝送を目的とし、体液に含まれる電解質の濃度、移動度、コイルを覆う体液層の厚み等が影響しているとの仮説のもと、生体等価ファントムを使用して体内環境を再現し、受電コイルの電気的特性変化の原因を解明する試みを行った。

  • 齊藤 直, 山崎 直樹, 新関 久一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S92_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    最近になり、心拍変動に対する周波数解析により求めた自律神経活動指標を用いてストレス状態を評価する装置が開発されている。本研究では、自律神経活動指標の更なる応用を目指し、暗算課題負荷試験時において、短時間ウィンドウシフト周波数解析を用いて自律神経活動指標の動態を導出し、更にその動態を脳波と比較することにより、暗算課題時のストレスに対する自律神経活動指標の動態を調査することを目的とした。健常成人男性3人の被験者に対して、各被験者9回、計27回の暗算課題負荷試験を実施した。暗算課題負荷試験のプロトコルは、閉眼安静2分、暗算課題5分、続けて閉眼安静2分であった。実験の結果、安静から暗算への移行時にはアルファ波の減衰及び副交感神経活動指標の低下、暗算から安静への移行時にはアルファ波の出現及び副交感神経活動指標の上昇が確認された。また、暗算課題中の幾つかの区間では、脳波と自律神経活動指標に相似した応答が見られた。しかしながら、脳波と自律神経活動指標の応答が一致しない区間もあり、更なる調査、解析が期待される。

  • 尾﨑 晃洋, 新間 良平, 竹村 研治郎
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S92_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    近年,柔軟軽量なソフトロボットに関する研究が広く行われており,ロボットハンドもその対象として注目されている.ロボットハンドが様々な形状の物体を把持するには多様な把持姿勢の実現が求められる.すなわち,ロボットハンドを構成するロボットフィンガには,屈曲伸展運動に加えて内転外転運動が必要になる.このため,本研究では,屈曲伸展運動および内転外転運動が可能なソフトロボットフィンガを具現化する.開発したソフトロボットフィンガはアラミド繊維で繊維強化されたシリコーンゴム製のチューブで構成される.チューブ内部には半円筒状の閉流路が2本設けられており,それぞれ独立して内部を加圧できる.閉流路を加圧するとチューブは膨張するが,周方向および手掌側に配置された繊維によって,その膨張は一部拘束される.結果,双方の閉流路を加圧するとフィンガは屈曲し,一方の閉流路を加圧するとフィンガは内転する.本フィンガは,直径7.0 mm,全長60 mm,質量0.70 gであり,上記閉流路を最大14 kPaで加圧した際の最大屈曲角度および内転角度はそれぞれ79°および34°であった.

  • 宮本 忠吉, 伊藤 剛, 中原 英博
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S93_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【背景】本研究は、システム生理学的研究アプローチを用いて、高強度インターバルトレーニングによる最大下運動時換気抑制のメカニズム解明に取り組んだ。【方法】対象は健常男性14名。安静時、低強度、高強度運動時の各々の条件下にて、呼吸化学調節系をController(制御部)とPlant(制御対象部)の二つのサブシステムに分離し、両者の特性変化をトレーニング前後で比較検討した。Controller特性は分時換気量 [VE] = Gc x (呼気終末CO2分圧[PETCO2] - B)の一次直線で、Plant特性はPETCO2 = A / VE + Cの式を用いて双曲線近似した。【結果】 Controller特性において、安静及び運動時のGc値はトレーニングによって変化しなかった。強度に依存してController特性は上方へとシフトし、トレーニングはその反応を有意に抑制した (p<0.05)。 Plant特性のA値及び、平衡線図上のX軸漸近線として表されるC値は、高強度運動トレーニングによって有意に減少した (p<0.05)。【結論】 高強度インターバルトレーニングによる高強度運動時の呼吸抑制、すなわち、呼吸平衡点(動作点)がシフトする現象[VE 減少とPETCO2の増加]は、Controllerの適応変化が主たるメカニズムであることが判明した。

  • 伊藤 剛, 中原 英博, 宮本 忠吉
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S93_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    背景:先行研究にて3ヶ月間、週1回の高強度(80%最大ワット)インターバルトレーニング(HIT)を実施すると、心臓の形態的変化が生じ最大及び最大下での運動時の呼吸循環機能が劇的に向上することを報告した。本研究は、トレーニング強度(95%最大ワット)を上げて、同様の呼吸循環機能の変化を調査した。方法:男子大学生16名を対象に、トレーニング群(Tr群)8名と対照群(C群)8名に振り分けた。Tr群は自転車エルゴメーターを用いたHITを週1回、2ヶ月間実施した。トレーニングの内容は最大運動負荷の95%負荷を疲労困憊まで持続させ、3分間の休息を挟んで計3セット繰り返す方法を用いた。HIT前後で最大運動負荷テスト、一定負荷運動テスト中の呼吸循環機能の測定と血圧の測定を実施した。結果: Tr群においてのみ、最大運動時の昇圧反応の増強と運動パフォーマンス及び最大酸素摂取量が向上した。また、最大下運動時の換気抑制などの生理学的適応変化が認められた。結論:先行研究よりもトレーニング強度を上げた週1回のインターバルトレーニングを用いても、先行研究と同等の生理学的適応変化が生じることが示された。

  • 大野 功輔, 菅原 俊継, 木村 主幸, 清水 久恵, 山下 政司
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S94_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    人工呼吸器関連肺炎(Ventilator Associated Pneumonia:以下VAP)とは、入院時や人工呼吸管理開始前には肺炎がなく、気管挿管による人工呼吸管理開始後48時間以降に発症する肺炎である。人工呼吸器使用時の気管吸引や回路交換などが原因の一つとされているが、気管吸引操作によって開放された回路内の細菌汚染の程度などは調査されていない。またVAP発症の原因菌について、緑膿菌やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Methicillin resistant Staphylococcus aureus:MRSA)などが報告されているが、いわゆる従属栄養細菌については調査されていない。本研究では人工呼吸器の模擬回路内に付着した従属栄養細菌の菌数の経時的変化について検討を行った。模擬回路を大気開放したのち最大10日間まで菌数変化を調査した結果、菌は増殖しないものの、生存し続けた。また採取した菌を同定した結果、基礎疾患のある入院患者に対して人工呼吸器や留置器具を介した肺炎を引き起こす報告があるChryseobacterium indologenesが検出された。以上から一般的には病原性が弱いと言われている従属栄養細菌でも肺に侵入し感染を起こした時にVAPなどに繋がる可能性が示唆された。

  • 金子 眞生, 並木 和茂, 中森 秀樹, 平塚 傑工, 平栗 健二
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S94_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    医療機器として使用されているステンレス (SUS) などの金属材料は生体との接触面において滑りにくく、摩擦による浸襲や不快感が生まれる。また、医療機器は使用後に滅菌を行う必要があり、機器の劣化が課題となっている。生体適合性等の特性を有するDiamond-Like Carbon (DLC) は、医療機器の表面改質手段として注目されている。本研究では、医療機器のDLC表面コーティング技術を活用し、医療機器に摺動性、耐薬品性、耐滅菌性等の機能性付与を目的としている。本実験は実際の医療機関で扱われているSUS304基板を用いた。DLCは、イオン化蒸着法を用いて成膜をした。摺動性を評価するために、ボールオンディスク試験および模擬生体環境下での摩擦係数測定を行った。また、耐久性に関しては、医療現場を模擬した薬品性実験及び滅菌試験を行った。ボールオンディスク試験の結果より、DLCにより摩擦係数が約20%に低減した。模擬生体環境下での摩擦係数測定では、DLC膜の生体に対する摩擦係数の低減効果が得られた。酸性溶液への浸漬および滅菌処理後の結果からDLCの安定性が確認された。以上のことから、DLC膜は、医療機器の表面を改善するための有用な技術であることが示唆された。

  • 天野 優子
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S95_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    静岡県産学官7団体(浜松商工会議所、公益財団法人浜松地域イノベーション推進機構、浜松医科大学、静岡大学、光産業創成大学院大学、静岡県、浜松市)は、平成21年度にJST地域産学官共同研究拠点整備事業に採択され、平成23年度から「はままつ次世代光・健康医療産業創出拠点」(通称:はままつ医工連携拠点)の運営が開始された。事業終了後においても、はままつ医工連携拠点は自立して継続的に医療機器、介護・福祉機器等の開発支援を進めている。 浜松医科大学は、はままつ医工連携拠点の参画機関として地元企業と連携し、医工連携を進めている。事例紹介として、これまでに事業化した機器の紹介、研究開発時における課題を発表し、さらに今後の医工連携において必要と思われる事項を考察する。

  • 佐藤 敦也, 廣瀬 稔, 塚尾 浩, 小川 貴康
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S95_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    [背景・目的]医療現場で使用されている液化ガスボンベのガス残量は、重さを測定することで推定されている。しかし、医療機器に搭載されている場合、一時的に医療機器から取り外す作業が必要になる。本研究では超音波発生装置を用いて、ボンベ側面で超音波を送受信し残液の有無を判別するために基礎的研究を行なった。[方法]超音波発生装置、振動子、固形ゲルを用いてマンガン鋼製ボンベの音速を評価した。次に、ボンベの側面に送信素子、受信素子を180度対に設置し空の状態と水充填時の受信波を比較した。[結果]マンガン鋼製ボンベの音速は約2660m/sであった。水充填時では空の状態と比較して、位相が遅れた波形が得られた。[考察]鋼の音速と比較して、マンガン鋼の音速は約1/2であった。素子の当て方によってパルス波が変化し、観測点がずれたために実際の値より小さくなった可能性が示唆された。素子が液面より上ではボンベの周りを伝わる振動波のみだが、液面より下では液中を伝わる直進波が加わるため、受信波の位相が遅れたと考えられる。[結語]ボンベ側面で超音波を送受信することで残液の有無を判別できる可能性が示唆された。

  • 鈴木 亮也, 本橋 由香, 奥 知子, 山内 忍, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S96_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【目的】血液透析回路における血液凝固の好発部位として、静脈側エアトラップチャンバが指摘されている。我々は、血液凝固の発生を低減できるチャンバの最適形状について検討している。今回の報告では、凝固発生に影響を及ぼすチャンバ形状として、①チャンバ長さ、②血液流入口形状、③濾過フィルタ形状の3点について検討した。【方法】血液凝固に及ぼす影響を定量的に評価する指標として、血液凝固が完了するまでの時間TCOAGと、回路内圧上昇曲線の2次多項式近似から得られる2次係数Aを採用した。①のチャンバ長さについては、7cm、14cm、21cmの3種類とした。②の血液流入口形状としては、水平流入(流入角度θ=0°)、垂直流入(θ=90°)の2種類とした。③の濾過フィルタ形状としては、メッシュ型とコーン型の2種類とした。血液回路内に循環させた牛血に塩化カルシウムを添加して凝固を促進させ、回路内圧が200mmHgを超えた時点を凝固完了とした。【結果及び考察】①長さについては14cm、②流入口形状については水平流入が凝固抑制に有意な効果が見られた。しかし、③の濾過フィルタ形状については有意な結果が得られなかった。

  • 佐々木 一真, 関 俊輔, 本橋 由香, 奥 知子, 山内 忍, 佐藤 敏夫, 阿岸 鉄三
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S96_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    【目的】我々は、シャント雑音の時間-周波数解析に基づいた正規化相互相関係数Rと正規化持続時間NDTから、VA機能を定量的に評価する新しい手法を提案している。近年、超音波診断装置を活用したVA機能評価方法が普及してきたが、狭窄度がかなり進行した時点で始めて上腕動脈血流量FVの低下が認められるなど問題点も指摘されている。今回の報告では、超音波診断装置から求められる血管抵抗指数RIやFVと、シャント雑音から求められるRとNDTの関係性について調査した。【方法】内径6mmのシリコンチューブ内に狭窄率を段階的に変化させた狭窄パーツを挿入した擬似血管狭窄モデルに拍動流を流した。回路内流量は狭窄上流の圧力を一定に保つことで調整し、狭窄による流量低下を模擬した。そして、狭窄下流の擬似シャント雑音を電子聴診器で測定後、RとNDTを算出した。また、狭窄上流部において超音波診断装置を用いてRIを測定した。【結果及び考察】狭窄率が大きくなるにつれてRとNDTは一様に低下する傾向が見られた。一方、RIは狭窄率の増加とともに上昇することから、RIとR及びNDTの間には強い負の相関があることが確認できた。

  • 山田 章, 瀬戸 将一朗, 米澤 旭
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S97_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    半導体イオンセンサISFETは応答性が極めて高いため、緩衝能の低い水溶液であってもpHを測定できる。我々は、微小サイズのISFETセンサと微小流体デバイスを組み合わせることで、測定の応答性と精度を高めたpH測定デバイスを開発してきた。センサ周囲のサンプル溶液の流れを制御することで、サンプル液-測定基準液間の液間電位を形成されにくくして測定誤差の低減を図った。一方、開発した装置を活用して、凍結濃縮に伴う水溶液のpH変化の直接測定を検討している。生体サンプルの低温保存の際に、周辺溶液の凍結・融解はサンプルの構造や機能に影響を与える。原因の一つに、凍結濃縮に伴う水溶液中の水素イオン濃度指数(pH)の変化があるが、凍結・融解中のpH値やその経時変化の実測例は皆無に近い。本研究では、融解途中の水のpHをモニタする手法を検討した。凍結させた氷塊を融解させながら外周から順に回収してpHを測定することで、凍結濃縮によるpH変化を見積もることに成功した。

  • 峯村 康平, 辰田 昌洋, 山本 新, 宮脇 奈央, 京相 雅樹, 島谷 祐一
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S97_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    体内埋め込み型機器への給電を目的とした磁界共鳴型無線電力伝送実験をラットを用いて行った。無線による電力伝送が可能になることで、体内埋め込み機器は電池交換の手術が不要になることや電源ケーブルによる感染症の防止が期待できる。しかし、埋め込まれた受電共振回路からの発熱に対して、安全性に不安が残るといった問題が上げられる。そこで本研究では、ラット腹腔内に埋め込んだ受電コイルへの電力伝送実験とその際、発生する温度変化の計測を行い、安全性の評価を行った。本実験では送信側回路に直列共振型ハーフブリッジインバータを作製して、電力伝送実験を行った。また、受信側回路にはラット体内に埋め込むことを想定し、外直径27.0mm、内直径5.0mmの受信コイルを使用した。 受電側スパイラルコイルの表面にはNTCサーミスタを取り付け、コイル近傍の温度変化を測定できるようにした。またコイルから数cm離れた場所の体温も同時に計測した。実験結果から、ラットの体温や電力の電送効率が温度変化に影響することが確認されたが、想定する二次電池への充電に必要な電力範囲内では安全性に問題ないことがわかった。

  • 上甲 志歩, 大須賀 美恵子, 多田 雄真, 石川 淳
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S98_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    造血細胞移植患者は感染予防のため無菌室での長期治療が必須であり,心身に大きなストレスがかかる.対象患者へのインタビューから得た「家族やペットに会いたい」「買うものを自分で選びたい」との願望をもとに,家族との体験共有を目的とした精神ケアシステムを開発している.遠隔にある360°カメラのリアルタイム映像と音声を,ネットワークを介して病室の患者にヘッドマウントディスプレイ(HMD)かプロジェクションマッピング(PM)で提示する.360°映像をバーチャル空間の球体に貼り付け,球体内にある視点カメラを,HMDの場合は頭の動き,PMの場合は本人のスマートホン操作で動かすことで,左右の見渡しやズームイン・アウトを実現した.試用実験を実施した.協力者は患者の見ている映像をタブレットで見ながら360°カメラを持って病院1階のコンビニ内を歩き,患者は11階病室でHMDを装着して陳列棚を見渡して買う物を選んだ.1例ではあるが「自分で選べてうれしい」「外の世界を感じて面白い」「画質や通信の悪さはあるが、病棟に設置して欲しい」という感想を得た.今後は画質や通信を安定させる改良に取り組む予定である.

  • 長倉 俊明, 平良 百萌, 木戸 倫子, 大野 ゆう子, 石井 豊恵
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S98_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    近年の発展途上国の平均寿命の伸びは著しく、人口問題や社会保障の問題になっている。そこで、平均寿命延長の原因分析のために、1980~2016年の間における全世界から先進国28ヶ国・発展途上国22ヶ国を選び、1980年、1990年、2000年、2010年、2016年ごとの国際統計から「平均寿命」を含む社会指標データを50項目を選択し、約40年分のクラスタ分析をそれぞれ行った。その結果、社会指標は大きく3つに分かれ、その項目内容から「貧困のクラスタ」「富のクラスタ」「情報・社会福祉のクラスタ」とした。そして約40年間、平均寿命は常に「情報・福祉のクラスタ」に含まれ、特に「平均寿命」と近い関係にある社会指標は1980年は熱量供給量/人と中等教育在学率、1990年はGDP/人と病床数/人であった。2000年は再び“中等教育在学率、2010年は2000年の社会指標に加えインターネット利用率と高等教育在学率、2016年も同様であった。さらに先進国と発展途上国別でも平均寿命に関係が近い社会指標は特に大きな差はなかった。すなわち、発展途上国の平均寿命延長には「富」に加えて「情報」が加わった可能性が考えられる。

  • 福原 真一, 岡 久雄
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S99_1
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    健康日本21の策定や2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催等により、本邦におけるスポーツや運動に対する関心が高まっている。日々の運動の効果を確認する評価項目の一つとして筋機能評価が挙げられる。筋機能の正確な評価のためには筋電図と筋音図の同時計測が有用である。筆者らは以前より筋電/筋音を容易に計測できる筋電/筋音ハイブリッドセンサを開発し、動的運動中の筋収縮機能をリアルタイムで解析できる手法を考案した。筋電/筋音の時間波形を二乗和するだけで定量値を得られることから、運動中の筋機能の変化を速やかに運動者やトレーナーに提示することができる。本研究では、この解析をリカンベントバイクのペダリングに適応し、負荷を漸増したときの大腿直筋、内側広筋および外側広筋の筋収縮機能を評価した。その結果、すべての筋の筋電/筋音は負荷と共に増加し、運動負荷に応じた筋機能が反映された。また、3つの筋を同時に計測することにより、ペダリング負荷に対する筋負担の割合の変化を常時モニタリングすることができた。これより、運動中の最適な体の動かし方やその効果の判定をリアルタイムで実施できる可能性が示唆された。

  • 奥野 竜平, 川端 翼, 赤澤 堅造
    2019 年Annual57 巻Abstract 号 p. S99_2
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/27
    ジャーナル フリー

    スポーツ等において,必要以上の筋緊張はしなやかな四肢の動作を阻害し,パフォーマンスを低下させると言われている.力の抜き方として武道やヨガなどにおいて呼吸と運動の関連性が報告されている.しかし,四肢の骨格筋における報告は少ない.そこで本研究では,呼吸と筋の力学的特性を明らかにすることを目指す.本研究では筋長変化を伴わない等尺性収縮時において,呼気を止めている場合と吐いている時による筋弾性様特性の違いを明らかにすることを目的とする.被験者は健常男子(22~23歳)3名である.実験は息を吐き出し続けている場合と息を止めている2つの条件において,肘関節角度を一定に維持した状態において,負荷トルクを加えたときの微小な関節角度変化を計測した.そして,負荷トルクと関節角度の変化から弾性様係数を算出した.負荷トルクを最大随意収縮時の発揮トルクの10%とした.本実験を角度毎に20セット行った.本実験で得られた結果の一例を図に示す.被験者3名のうち2名において各肘関節角度において呼気を吐いている時の弾性様係数が止めている時と比べて小さくなっていることが示された.

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