日本小児血液・がん学会雑誌
Online ISSN : 2189-5384
Print ISSN : 2187-011X
55 巻 , 2 号
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会告
ご挨拶
第59回日本小児血液・がん学会学術集会記録
シンポジウム2: 小児血液・がん患者に対する感染症対策 ~予防から治療まで~
  • 佐野 弘純, 小林 良二
    2018 年 55 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
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    造血細胞移植では強力な移植前処置が行われることに加えて,免疫抑制剤の使用や移植片対宿主病(graft-versus-host disease: GVHD)のために感染性の合併症が多く,移植を成功に導くために感染症の管理が極めて重要である.急性GVHDがあると免疫抑制剤の使用や腸管粘膜バリアの破綻から細菌性血流感染症(blood stream infection: BSI)の発症リスクが高まるが,逆に細菌性BSIを発症するとその後急性GVHDを発症しやすくなる可能性がある.移植後の深在性真菌症発症のリスク因子は10歳以上・GVHDの合併・ステロイドの投与であるため,年長のGVHD合併例では抗真菌薬による予防を考慮すべきである.移植後のヒトヘルペスウイルス6型(human herpes virus-6: HHV6)の再活性化は臍帯血移植例に多く,特に低ナトリウム血症を合併した際には注意が必要である.ステロイド抵抗性の急性GVHDに対して,間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell: MSC)は全身性の免疫抑制作用が目立たない有望な治療薬であるが,肺感染症などが増加するとの報告もあり注意が必要である.移植後の感染症をコントロールし,移植を成功に導くためには,移植後の時期ごとに想定される感染症のリスク因子を把握し,感染症発症の予防および早期発見に努めることが重要である.

シンポジウム3: AMLの新規治療
  • 富澤 大輔
    2018 年 55 巻 2 号 p. 116-122
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    小児の急性骨髄性白血病(AML)は,cytarabineとanthracycline系抗がん剤を中心とした多剤併用化学療法,白血病の遺伝子染色体異常および治療反応性に基づくリスク層別化,再発リスクの高い群に対する造血幹細胞移植,支持療法の進歩等によって,約60%の無イベント生存率,約70%の全生存率を達成している.しかしながら,小児AML患者の約10%を占める寛解導入不能例,約30%を占める再発例の予後は極めて不良であり,白血病そのものの克服が依然最大の課題である.AMLでは成人を含めて,長年にわたって臨床的に有効な新規薬剤の開発が進まない状況が続いたが,2017年に米国においてgemtuzumab ozogamicin,midostaurin,CPX-351,enasidenibの4種の新規医薬品が承認された.本総説では,これらの4種の薬剤の開発経緯を概説するとともに,今後の小児AMLにおける新規薬剤開発の展望と課題についても述べる.

シンポジウム4: 小児の血栓症
  • 野上 恵嗣
    2018 年 55 巻 2 号 p. 123-127
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
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    凝固第V因子(FV)は向凝固機能を有し,本因子欠乏は出血症状を呈する.しかし抗凝固機能も有することが明らかになり,凝固機序の概念に大きな転換がおこり,現在では血栓症の原因の一つに挙がる.代表的な疾患として,活性型プロテインC(APC)によるFV開裂部位の点変異(R506Q)によりAPCレジスタンス(APCR)を呈するFVLeidenである.FVLeidenは,Caucasianに頻度が高いが,日本人を含むnon-Caucasianの報告はない.またFV異常症に起因するAPCRや血栓症は本邦に存在しないとされていた.しかし我々は,血漿FV低下を示すも反復する深部静脈血栓症(DVT)を呈する若年症例を経験した.本患者はFV遺伝子W1920R点変異を有し,本変異がAPCR関連血栓性素因であることを初めて報告した(FVNara).FV-W1920Rの易血栓機序として,APC惹起FVa不活化と,APC惹起FVIIIa不活化におけるFV補因子機能の両障害によりAPCRを惹起することが解明された.FVNaraの報告以来,本邦でDVT発症のAPCR関連FV分子異常症家系が報告されている.従って未解明のFV関連血栓症の症例がさらに存在するかもしれない.今後FV分子機能の詳細な研究や血栓症症例の集積,血栓症発症の病態解明はDVT発症の制圧に繋がることが期待される.

  • 小嶋 哲人
    2018 年 55 巻 2 号 p. 128-132
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
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    静脈血栓塞栓症(VTE)は,様々な先天的/後天的要因により発症する多因性疾患で,欧米人に多く日本人には少ないとされてきたが,食生活の欧米化,診断技術の向上などにより日本人にも決して少なくないことが判明している.遺伝性血栓性素因には,アンチトロンビン(AT)やプロテインC・Sの生理的凝固抑制因子や様々な凝固関連因子の遺伝子異常が同定されているが,いまだに原因不明なものもある.我々は長らく原因不明であった静脈血栓症家系において,凝固因子であるプロトロンビンの遺伝子にミスセンス変異(c.1787G>T,p.R596L:Yukuhashi変異)を同定,報告した.詳細な解析結果から,この変異型プロトロンビンは凝固活性がやや弱いものの,変異がトロンビンのAT結合部にあり,一旦トロンビンへと活性化されるとAT抵抗性となり,長時間活性が持続するため血栓症の原因となることが判明した.これは,通常では出血傾向を示す凝固因子の遺伝子変異が,逆に血栓症の原因となる詳細な分子病態を解明したもので,新しい遺伝性血栓性素因・ATレジスタンス(ATR)として世界に先駆けた報告となった.ATRは従来の凝血学検査では検出できないが,我々が血漿検体でのATR検出検査法を開発したところ,新たな日本人VTE患者に異なるATR遺伝子変異を同定した.本総説では,このATR血栓性素因について最近の知見も踏まえて概説する.

シンポジウム6: 妊孕性温存のがん・生殖医療
シンポジウム8: 笑顔のたねパートII
  • 大住 力
    2018 年 55 巻 2 号 p. 136-140
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
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    私は東京ディズニーランド等を管理・運営するオリエンタルランドに入社し,約20年間,人材育成,運営,マネジメントに携わってきましたが,2010年に退職し,公益社団法人「難病の子どもとその家族へ夢を」を設立しました.

    立ち上げ当時は,子どもたちをミッキーに会わせてあげることしか頭にありませんでしたが,実は誰かに迎えられたり,名前を呼ばれてみんなでお喋りしたり,一緒にご飯を食べる等,社会の一員として当たり前の生活こそが大切だと知りました.現在,当法人は家族と社会とを繋ぎ交流することで,彼らに「社会的健康」を体認してもらい,笑顔と安心感を提供する活動を心がけています.

    また,一方的な支援ではなく,家族との交流を通じて得た“家族・いのち・しあわせ”という生の本質について本気で向き合っている考え方や生きざまといった“家族のチカラ”を社会に還元しています.皆さんが自分事として捉え,自らを成長させていく機会として,活動を社会の中で循環させていく.「難病を患う子どもとその家族全員」と「社会」双方向の“架け橋”こそ,当法人が目指すところです.

    こうした想いは,まさにディズニーの教えに通じ,中でもこの言葉は私たちの活動の根幹にあります.

    “He lives in You.(答えは,あなたの中にある)”

    ~Walt Disney(ウォルト・ディズニー)~

    〈あなた〉が自分自身をみつめ,考え,〈いま〉を生きるために,きっと力をくれるでしょう.

三団体合同公開ワークショップ: 小児がんおよびAYA がん患者の長期フォローアップの現状と展望 ―長期フォローアップ体制整備事業の開始を受けて―
  • 石田 也寸志
    2018 年 55 巻 2 号 p. 141-147
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
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    小児がんに対する治療が進歩し,生存率が向上するとともに治療後の「晩期合併症」が問題となっている.治療終了後成人期の小児がん経験者全体の60~90%が何らかの晩期合併症を有し,40~60%は2つ以上の身体的問題を抱えているといわれている.また約1/4~1/2の経験者の合併症は要医療ないしは重症であり,そのような経験者にとって避けては通れない問題になっている.将来にわたる小児がん治療後の晩期合併症の軽減や回避のためには,長期フォローアップデータの蓄積とそれに基づく次世代の治療法の改良が最も重要である.一方既に治療を受けた小児がん経験者にとっては,原疾患自体または治療による合併症発症のリスクを前もって知ることがフォローアップの出発点になる.治療サマリーを元にしてエビデンスに基づいて自分のリスクを知り,将来の健康を維持・増進するような生活を心掛け,積極的に合併症発症を予防すること,合併症の早期発見のため適切なスクリーニングを受けることが重要である.万が一不幸にも晩期合併症を発生した場合には,早期に適切な対応を行うことで健康を維持可能な場合も多い.本稿では,このような長期フォローアップに関する問題点を,I.晩期合併症の増加,II.フォローアップロス,III.フォローアップの標準化,IV.成人期移行の問題に焦点を絞り記述した.

  • 関 由起子
    2018 年 55 巻 2 号 p. 148-152
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
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    小児がん患者の生存率は医学の進歩により飛躍的に向上し,成人し自立した人生を歩むことが出来るようになった.しかし,入院中の子どもたちへの学校教育への支援は不十分であり,将来の自立に負の影響を及ぼしている.本論では入院中の子どもたちの学校教育の課題を踏まえた上で,病弱の特別支援学校(小・中学校のみ)がセンター的機能を用いて行った,入院中の高校生への学習支援の取り組みと課題について論じる.A特別支援学校ではこの学習支援の目的を 1.学習空白をなくす,2.心理的安定および学習意欲を高める,3.在籍高校との所属感の維持継続を図ると定め,併設するB病院および高校生の在籍校と連携し,大学生ボランティアと共同で学習支援を行った.2016年度に支援を受けた生徒9名へのアンケートや関係者への発言等を質的に分析した結果,目的に対する効果が得られたことが明らかになった.特に大学生による支援は,高校生の心の安定に対して教員からの支援では得られない大きな成果が見られた.しかし,高等学校の制度に基づいた教育支援でないため,自己学習が困難な生徒や留年が懸念される生徒には十分な支援が出来ず,また病弱特有の“自立活動”を行うことが出来なかった.大学生ボランディアの導入にも様々な課題があるため,入院中の高校生への特別支援教育の制度体制の見直しが必須である.

ワークショップ(教育セッション): 小児血液・がん領域のゲノム医療において考慮すべき遺伝医療の特性と課題
  • 加藤 麻希, 倉橋 浩樹
    2018 年 55 巻 2 号 p. 153-158
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    ゲノム医療の実現化が国策として進められている中で,遺伝子変異情報をがんの早期発見や治療薬選択に利用しようという「がんゲノム医療」の動きが加速している.特に,次世代シーケンサーを用いた網羅的変異解析としてのがん遺伝子パネル検査は,近い将来での保険収載を視野に入れ,慌ただしくその準備が展開されようとしている.このような網羅的ゲノム解析データを扱う上で避けては通れない問題として,二次的所見・偶発的所見として同定される生殖細胞系列変異の取り扱いがあり,その対応の主役となる遺伝カウンセリングの役割に注目が集まっている.わたしたちは造血器腫瘍の分野での遺伝子パネル検査を支援する遺伝診療体制の構築を目指して活動している.遺伝カウンセリングの専門職である認定遺伝カウンセラーの慢性的な人的不足が解消されていないため,主治医やその他の職種も巻き込んだ包括的な遺伝カウンセリング体制の構築は喫緊の課題である.

パネルディスカッション1: 骨肉腫の治療
  • 田仲 和宏
    2018 年 55 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    骨肉腫は,原発性悪性骨腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍である.かつてほとんど救命できない予後不良の疾患であった骨肉腫の治療成績は,多剤併用化学療法の導入により劇的に改善した.現在では世界的にも術前化学療法が標準となっており,Methotrexate,Adriamycin,Cisplatin 3剤によるMAP療法が標準レジメンである.術前から化学療法を行うことにより,切除標本を用いた組織学的腫瘍壊死率が算定でき,化学療法の有効性の判定が可能となる.術前化学療法が奏効したと判断されれば,術後においても同一レジメンが継続されるが,効果不十分とされた場合には,術後化学療法においてレジメンを変更する試みがなされてきた.しかし,欧米で行われた大規模比較試験EURAMOS1では,MAPによる術前化学療法の効果不十分例に対し,術後にIfosfamideとEtoposideを追加しても予後の改善は認められなかった.Japan Clinical Oncology Groupでは,MAPに対する効果不十分例において,術後化学療法でIfosfamideを追加する意義を検証する比較試験JCOG0905が実施されており,その結果が待たれる.近年,軟部肉腫に対しては新規薬剤が次々に登場しているが,骨肉腫に対しては長らく新薬が登場していない.既存の薬剤の組み合わせによる治療開発には限界があり,さらなる骨肉腫の治療成績の改善には,有効な新薬の開発が必須である.

原著
  • 田中 邦昭, 梅田 雄嗣, 岩永 甲午郎, 上月 景弘, 窪田 博仁, 濱端 隆行, 大封 智雄, 納富 誠司郎, 才田 聡, 加藤 格, ...
    2018 年 55 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    1983年から2014年までに治療を受け,終了から1年以上生存している小児固形腫瘍患者104例(男性61例,女性43例)を対象に内分泌障害の頻度およびリスク因子を後方視的に検討した.初発時および最終観察時の年齢中央値は4歳(0–16歳)および15歳(1–33歳),疾患の内訳は脳腫瘍22例(下垂体浸潤例を除く),脳腫瘍以外の固形腫瘍82例であった.評価可能な104例中48例(46.2%)は少なくとも一つ内分泌障害を合併していた.性腺機能障害は評価可能な72例中33例(45.8%)に認め,高用量cyclophosphamide(7.5 g/m2以上)およびifosfamide(60 g/m2以上),診断時年齢(10歳以上)が独立したリスク因子として挙がった.甲状腺機能障害は評価可能な95例中18例(18.9%)に認め,頭頚部照射が独立したリスク因子として挙がった.成長障害・成長ホルモン分泌不全は評価可能な83例中16例(19.3%)に認めたが,独立したリスク因子は認めなかった.副腎機能障害は全例で認めなかった.疾患群別の検討では骨肉腫やその他の肉腫,神経芽腫で性線機能障害,髄芽腫と頭蓋内胚細胞腫瘍で複数の内分泌障害を合併する傾向を認めた.高用量アルキル化剤や放射線治療を併用する骨軟部腫瘍,脳腫瘍症例では内分泌障害の発症リスクが高く,晩期合併症軽減を目指した治療の改良が必要と考えられた.

  • 日野 もえ子, 石和田 稔彦, 青木 孝浩, 岡田 玲緒奈, 奥主 朋子, 大楠 美佐子, 渡邉 哲, 亀井 克彦, 下条 直樹
    2018 年 55 巻 2 号 p. 171-176
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    小児がん患者では,真菌感染症が疑われる場合でも,真菌の分離同定はしばしば困難であり臨床経過により診断治療が行われることが多い.2004年1月から2014年12月までに当科で治療を受けた小児血液がん患者6人より分離同定された糸状菌2株,酵母5株に関し,薬剤感受性試験を行い,分離同定することの意義について後方視的に検討した.糸状菌はいずれも耳漏より検出された.1例では好中球抑制期間に外耳炎を繰り返し,Aspergillus terreusが同定された.薬剤感受性試験の結果よりミカファンギン(MCFG),ボリコナゾール(VRCZ)を併用し造血幹細胞移植を行った.酵母はすべてカンジダで,血液より分離同定された.Candida tropicalis分離例は治療開始後にβ-Dグルカンの上昇,脾膿瘍の悪化を認めたが感受性試験にてMCFG感受性良好であることを確認し治療遂行できた.C. parapsilosisC. glabrata分離例はいずれもMCFG投与下のブレイクスルー感染であった.MCFG感受性良好として知られているC. glabrataに関しては薬剤感受性試験の結果,キャンディン系薬剤に対するMICの上昇が確認された.近年米国でもキャンディン系耐性カンジダが問題となっており,今後小児がん患者においても,治療効果が思わしくない際には薬剤感受試験を行うことが必要だろう.

  • 森 尚子, 佐藤 祥子
    2018 年 55 巻 2 号 p. 177-181
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    在宅で,終末期の苦痛緩和のためにミダゾラムによる持続静注を用いた思春期小児がん患児2例(18歳 類上皮肉腫,17歳 横紋筋肉腫)を経験した.2例とも,家族だけでなく本人からもinformed consentを取得した.Palliative Prognostic Indexを用いた推定予後は2例とも3週間未満で,鎮静の適応となった症状は,1例は終末期の身の置き所のなさ・不眠・不安,もう1例は難治性の口渇感と嘔気・嘔吐であった.ミダゾラムの開始量は,各々3 mg/hr,1.25 mg/hrで,呼吸抑制がないことを確認しながら,20~30%ずつベースの流量を増量し,1~2段階増量したところで苦痛緩和を得た.持続鎮静の期間は2週間未満で,鎮静に関連した致死的合併症は認めなかった.在宅でも,医療スタッフ間の密な協力体制があれば,ミダゾラムの持続静注による鎮静は安全に施行可能であると考えられた.

  • 山本 将平, 外山 大輔, 杉下 友美子, 金子 綾太, 岡本 奈央子, 小金澤 征也, 藤田 祥央, 秋山 康介, 磯山 恵一
    2018 年 55 巻 2 号 p. 182-186
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    小児がん患者家族の会(以下家族の会)は,がんの子どもを持つ同じ境遇の家族からなる自助グループであり,各小児がん診療施設に存在している.医療者とは独立した組織であり,家族にとって心強い存在であるにも関わらず家族の会がない施設も多数みられる.家族の会の立ち上げ,運営を企画する有志の家族がいないことが理由として考えられている.我々は,医師の声かけによって家族の会を立ち上げた.医師から直接,数名の家族に家族の会の幹事をお願いする方法で幹事を決定した.家族の会立ち上げ準備会で会の詳細を決定し,発案から3か月で家族の会を開催することができた.会の立ち上げには医師が関わったが,その後の運営には医師,看護師などの医療者は関与していない.家族の会の定期的な開催には,開催場所の確保,対象家族への案内が必須であり医療者の理解と協力が必要である.家族の会の立ち上げが医療者の声かけによってなされることでお互いの良好な関係が構築できる利点がある.また,これにより,家族の会がピアサポーターとして患者家族と医療者の橋渡し的な存在となりうる.本方法による家族の会の立ち上げは,今後,家族の会の立ち上げを考えている施設のモデルケースとなりうるためここに報告する.

  • 森 美智子, 石田 也寸志, 白畑 範子, 奥山 朝子
    2018 年 55 巻 2 号 p. 187-193
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    〔研究目的〕日本の医師・看護師,米国NPの3者の立場から,Nurse Practitioner(NP)の小児がんを含むがん医療内容の教育ニーズを比較分析し,NPのがん教育到達目標の検討を行う.

    〔方法〕研究に同意した方に質問紙調査を行い,医師・薬剤師と協働する際にNPに必要と思われるがん教育の到達レベルについて尋ねた.

    〔結果〕日本の医師(230名),日本の看護師(246名),米国NP(166名)から回答を得た.NPに必要ながん診療に関する知識の必要性は日本の看護師81.3%,米国NP 78.0%,医師57.2%であり,医師は全般的に低かった中で,緩和医療,抗悪性腫瘍薬の副作用に関しては80%を超えていた.日本の専門看護師は米国NPよりNPのがん教育の必要性をより高く設定しており,米国NPはNPの分野を問わずがん治療認定医の基本的能力レベルを必要としていた.

    〔結論〕NPの小児がんを含むがん教育の到達目標設定は日本の看護師・米国NPでより高く,がんの基礎など幅広い知識を必要と感じていた.医師の期待するNPの知識は幅広い知識より,緩和・副作用に関するものが多かった.

症例報告
  • 竹内 雄毅, 文野 誠久, 古川 泰三, 内藤 泰行, 飯田 拓, 小関 道夫, 田尻 達郎
    2018 年 55 巻 2 号 p. 194-198
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    乳児巨大後腹膜奇形腫に対して,3D-CTによる側副血行路評価に基づいて術式を選択し,腎を温存しながら腫瘍全摘しえた2例を経験したので報告する.

    症例1は3ヶ月の女児.巨大腹部腫瘤で発見され,術前3D-CTで左腎静脈が圧排,途絶していたが,卵巣静脈への側副血行路の発達が想定された.これらの温存のため腎門部を愛護的に操作し,全摘し得た.症例2は4ヶ月女児.3D-CTで下大静脈および両側腎静脈が途絶しており椎骨静脈叢への側副血行路を認めた.下大静脈および右腎静脈を術中切離して腫瘍を全摘しえた.両症例とも重大な術後合併症は認めず,腎機能も温存できている.

    乳児後腹膜奇形腫では,臓器や重要血管が予想し難いほどの偏位を呈し,手術における致命的なリスクとなり得る.腫瘍と臓器の位置関係や,重要血管の走行を確認するうえで術前3D-CTは必須であり,側副血行路の発達に基づいた術式の選択が重要と考えられた.

  • 城戸 祟裕, 小林 千恵, 矢板 克之, 穂坂 翔, 鈴木 涼子, 福島 紘子, 八牧 愉二, 岩淵 敦, 室井 愛, 矢野 陽子, 福島 ...
    2018 年 55 巻 2 号 p. 199-203
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    生来健康で活発だった14歳女児.診断の1年前より頭痛と食思不振,意欲低下があり,6か月前より頻回の嘔吐がみられ経口摂取量は更に低下した.病前と比較し–13.5 kg(36%)の体重減少をきたし神経性食思不振症を疑われたが,頭部CTで下垂体上部から第3脳室を占拠する6 cm大の腫瘤性病変を指摘された.血清hCGの上昇と病理組織からGerminoma with STGCと診断し,化学療法はICE療法を選択した.閉塞性水頭症,汎下垂体機能不全,中枢性尿崩症による高張性脱水に加え,2系統の血球減少(Hb 9.0 g/dL,Plt 5.8万/μL)を認めた.骨髄は低形成で膠様変性を伴い,造血回復の遅延が懸念されたため化学療法は減量した.全脳全脊髄照射は回避し,全脳室照射と局所照射を行った.栄養状態の改善に伴い膠様変性は消失,治療終了後血球は正常化した.骨髄に膠様変性をきたす疾患として神経性食思不振症が多く報告されているが,本症例では類似の低栄養状態に加え,下垂体機能不全の要素が関与したと考えられた.

  • 吉田 正司, 康 勝好, 渡邉 健太郎, 川上 領太, 柳 将人, 板橋 寿和, 佐々木 康二, 磯部 清孝, 森 麻希子, 荒川 ゆうき, ...
    2018 年 55 巻 2 号 p. 204-207
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/07/31
    ジャーナル 認証あり

    重症先天性プロテインC欠損症の電撃性紫斑病は進行が早く,しばしば重症化する.人プロトロンビン複合体製剤であるPPSB®-HTは一部の血友病患者の家庭での補充療法に使用され,比較的多くのプロテインCを含んでいる.

    当科では,重症先天性プロテインC欠損症患者2例の電撃性紫斑病に対して乾燥濃縮人活性化プロテインCで治療を行っていたが,治療のために頻回な入院が必要であり,患者・家族にとって大きな負担であった.そのため,家庭でも使用可能なPPSB®-HTに変更したところ,早期に治療介入することで重症化を予防することができた.

    PPSB®-HTは重症先天性プロテインC欠損症の電撃性紫斑病の予防と治療に有用と考えられるため,今後血友病の凝固因子製剤補充に準じた保険適用が期待される.

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