一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
57回大会(2005年)
選択された号の論文の296件中251~296を表示しています
  • 林 美木子, 田中 辰明
    セッションID: 1Ga-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 建築外皮の汚れは単に生活環境を改善するだけではなく衛生的環境を改善し、さらに建物の耐用年限を延長するためにも重要だと考える。汚れ、特に建築外皮における汚れの研究は数少なく充分であるといえない。本研究では建築外皮に付着する微生物学的な汚染を分析し実態を知り、汚染を招く環境と汚染機構の解明に寄与することを目的とする。本研究ではカビと藻類を対象微生物とした。方法 _丸1_建築外皮の汚れている部分を鋭利な刃物で削り取る。(試料の状態は粉末または細片)_丸2_顕微鏡観察を行う(40_から_200倍)。_丸3_カビ及び藻類の培養は、カビの場合、試料をPotato Dextrose Agar培地に接種し、7_から_10日間25℃で培養した。また藻類は、試料を無機塩類を主成分とする藻類選択培地に接種し1ヵ月培養した。検出されたカビ及び藻類の同定は形態学的方法を用いた。結果 建築外皮に付着した汚れから複数の種類が分離同定された。外観の汚れが目立たない場所からも、培養後カビや藻類が検出された。光・熱・湿気・空気の流れなど外的環境が微生物の生息に影響する。また外壁の断熱状況は外的環境を左右するため微生物の生息に影響すると考えられる。建築資材・壁の塗料を劣化させる有害性のあるカビが検出された。カビが生息するところに藻類も生息し、外観的な汚染原因にもなる。
  • 五十嵐 由利子, 中村 和吉, 萬羽 郁子, 池田 知子
    セッションID: 1Ga-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】 調理によって発生する油煙は室内全体に広がりやすく、天井や壁面の汚れともなる。そこで、室内に拡散し蓄積された油汚れについて、テフロン板を実住宅に添付し、汚れによる色の変化を測定することで、その評価が可能かどうかの検討を行うことを目的とした。
    【方法】 白色の壁紙、PP板、テフロン板を試料の候補とし、実住宅のキッチン天井に設置し、1月後に色彩色差計(ミノルタ_(株)_製CR-200)を用いて計測した。その結果から、テフロン板がもっとも適切であると判断した。実住宅4戸(間取りは異なる)について、キッチンとキッチンに隣接する空間の壁面、天井面にテフロン板(20×40mm)4枚を設置し、1月毎に1枚ずつ回収し、色彩色差計を用いて計測し、設置前との色差(△E*ab値)を算出した。なお、レンジ上部に温度記録装置を設置し、調理時間を温度記録から算出し、△E*ab値との関係を見ることとした。また、各月のうち1週間の調理内容の記録を依頼した。調査期間は2004年8月から12月である。
    【結果】 2ヶ月後の△E*ab値は低かったが、3ヶ月を超えると値が増加し、場所による差も見られた。また、キッチン内より隣接する居室の隅角部の天井の値が高くなっていた住宅もあった。これらの結果から、テフロン板を試料とし、蓄積した汚れを色彩色差計で評価できることが分かった。
  • 石田 浩彦, 長塚 路子, 久保野 由美, 平山 良一, 吉川 翠
    セッションID: 1Ga-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 ダニ防除法提案につなげるため、ダニの棲息場所である室内塵の匂いとダニの関係について調べている。演者らは、中古枕表面より見出した高いダニ誘引性を示すノナナールが1)、広く室内塵(掃除機でとれたダスト、ホコリ)にも明瞭に含まれ、室内塵も誘引性を示す事を示唆した2)、。そこで今回、アレルギー症状改善に環境対策が望まれる寝室と、比較として台所の室内塵の誘引性について調べた。
    方法 室内塵は一般家庭(N=23)の寝室及び台所(調理スペース、食卓下含む)より掃除機で採取し、1mmフィルターで再度採取した。匂い成分は、ジクロロメタンで油脂成分とともに抽出し、誘引試験(抽出物各200mg)および揮発成分分析を行った。誘引試験は、ヤケヒョウヒダニを用い、容器内の中央にダニ(約500匹)、ダニから25cmの距離で左右に抽出物、コントロール(ろ紙)を置き、23℃75%RH、24時間静置した。誘引率は全体数に占める誘引匹数(%)で示した。官能評価もあわせて行った。
    結果 寝室ダスト、台所ダストいずれからもノナナールが明瞭に認められ、官能評価の結果では台所ダストは調理油的な匂いが認められた。抽出物の誘引性は、コントロール3%以下に対し、寝室掃除機ダスト29%、台所掃除機ダスト11%で両者いずれも誘引性が認められ、寝室の方がかなり高い値を示した。誘引性の発現には、誘引成分間の匂いのバランス、特に含有している油分が皮脂主体である事が重要であると考えられ、皮脂成分に着目した寝室のダニ防除や、ダスト除去策も重要であることが示唆された。
    1)日本家政学会第55回要旨,p214、2)日本家政学会第56回要旨,p150
  • 橋本 令子
    セッションID: 1Ga-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】快適な環境を作るには、音と景観の相互作用に十分配慮することが必要である。音から想起される景観のイメージは、音印象に影響を及ぼし景観によって音の不快感が軽減することもある。この効果を利用したものに騒音と緑との関係があげられる。緑は騒音を緩和するための環境整備として、またリラックスを与える休息の色として使用されている。そこで生理、心理測定を行い、緑には騒音を和らげる効果があるかどうかを検証した。【方法】音刺激は不快な騒音として交通音、工事音、快適な音として小川の音を選定した。場面として3つの音源と音源を隠すための緑として、交通音には緑の生垣、工事音には緑フェンス、小川の音には木々の緑を設定した。また騒音は緑との比較を行うため交通音に白壁、工事音に白フェンスを準備し8試料を作製した。生理評価は脳波と心電測定、心理評価は15形容詞対による7段階評価を行った。被験者は本学学生15名である。測定後、脳波はα波、β波、1/fゆらぎを求め、心電は心拍変動を算出した。心理評価は主成分分析を行い、生理評価との関係を重回帰分析により追究した。【結果】交通音に緑の生垣を呈示した場合は、脳波、心電測定ともに騒音を和らげる効果が認められた。工事音においては白フェンスにおいて効果がみられた。これは人工的な装飾した緑であるため快いとは判断されないようである。小川の音は快適性が得られたが木々の緑を加えることによりその効果は増す。生理評価と心理評価との関係は、脳波と心電において関係が認められた。騒音は音源を隠すことで気分が緩和されるが、自然の緑を取りいれることでその作用は大となることが確認できた。
  • 菅原 芳明
    セッションID: 1Ga-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 発表者等は,精油の香りの匂い知覚を把握する手段として,官能評価(SD法)を基礎とする知覚変化表示システム(官能スペクトル)を考案し,種々の精油への応用を試みて来た(Sugawara, et al., Chem. Senses, 1999;2000)。本法の応用の一貫として,今回,官能スペクトルを用いた光触媒型匂い(臭い)消臭器の消臭機能評価を行った。
    方法 光触媒(酸化チタン)型消臭器は,製造先(大野石油店)より購入し実験に供した。設置場所は被検者自宅冷蔵庫とし,冷蔵庫内の匂い(臭い)の感じ方の変化についてSD法による官能評価を実施した。官能評価は,消臭器設置前,消臭器を設置しその1週間後,消臭器の除去1週間後の計3回,13組の印象項目について+5から-5の11段階評価を行った。
    結果・考察得られた官能評価データを,横軸に13の印象項目,縦軸に各印象項目の印象スコア差の平均を取って官能スペクトル表示したところ,1)「設置後一設置前」のスペクトルが庫内の匂い(臭い)の印象の改善傾向を示したのに対して,2)「除去後一設置後」のスペクトルは庫内の臭い印象の悪化傾向を示した。そこで,得られたこれらのスペクトル変化(印象変化傾向)について,統計学的にも有意と言えるのか否かの検討を行うと共に,追試によるスペクトルの再現性検証実験を行った。その結果,官能スペクトルは消臭(作用)の機能スペクトルとして利用可能との結論に達した。得られた結果と共に,報告する。
  • (その1)調査対象の基本属性と意識
    宮崎 陽子, 李 華, 岸本 幸臣
    セッションID: 2Ga-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    研究目的 阪神・淡路大震災から10年が経過した。現時点での住宅・生活復興状況とその背景要因を明らかにし、居住者視点による復興政策の課題を探ることを目的とする。
    調査方法 調査対象世帯は、阪神間および神戸市の持家、民間借家、復興公営住宅に居住する被災世帯で、2004年11_-_12月にかけアンケート調査を実施した。調査方法は直接配票・郵送回収方式を採用し、有効回収票は428票、有効回収率は35.7%である。
    考察結果(基本属性)現在の家族人数は単身と2人世帯を併せると6割を占め、平均世帯人員は2.36人である。回答者年齢別には50代までは『夫婦と子』が、60代以上では『夫婦のみ』や『単身』の世帯が多く、中・熟年ファミリー層と高齢核家族層に分かれた。また、年収が『300万円以下』世帯が51.2%と半数で、経済条件の厳しさがうかがえる。(被災条件)被災時の住宅形式は戸建が56.9%で最も多く、低層集合(19.0%)と長屋(17.5%)がほぼ同率である。所有形態では持家が57.6%、民営借家が32.4%だが、持家の8割が戸建、民営借家では長屋と低層集合で7割を占め、被災住宅タイプに違いがある。被災状況は『全壊・全焼』が50.7%、『半壊・半焼』は18.1%で、長屋や低所得層に壊滅的被害が多い。被災後の平均転宅回数は1.6回で全壊世帯ほど多く、住宅移動を強いられたことがうかがえる。(現住宅条件)被災後の現住宅は持家層(52.7%)と借家層(42.0%)に分かれていた。(住宅・生活再建評価)住宅が『完全に再建』との評価は半数あるが、生活では『完全に』は3割に減少し、『再建は無理』は各々で1割強存在している。家計回復状況は『震災前より減少』が55.2%で、『回復は無理』と併せて7割近くを占めている。
  • (その2)自由記入回答からみた意識特性
    宮崎 陽子, 李 華, 岸本 幸臣
    セッションID: 2Ga-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    研究目的 前報に同じ
    調査方法 前報に同じ
    考察結果(質問内容への関心度)本調査では調査票の最終項目に「被災者に国が最低限の住宅補償を行うことについてどう思うか」の質問を設定し、自由記入回答を求めた。その結果、回答を記入した者は39.5%で、自由回答としては相対的に高率といえる。そのうち質問内容に対応した回答は87.3%で、それ以外の意見のみを記入した者は10.4%であった。以上から、国の住宅補償への関心度は全体的に高いことがうかがえる。(回答者属性別の記入の有無)年齢で50代以上、世帯年収で200万円以上の層が約5割の回答率で、それ以下の年齢・年収層は約3割であった。また、全・半壊など被災が甚大なほど回答率が高い傾向がみられた。さらに現居住地が区画整理地区(69.7%)か一般地区(38.9%)か、現住宅が持家(69.4%)か借家(24.2%)かによる回答率の差が顕著であった。(該当回答の内容)国の住宅補償について、「当然必要」等の積極的賛成派は71.3%で最も多く、「高齢者には必要」等の条件付き賛成派を含むと肯定層は92.0%にものぼる。具体的内容には、二重ローンや生活破綻、被災者間の公的援助の差など様々だが、自身の経験を踏まえた主観的・客観的両面からの切実な意見が多くみられた。(回答者属性別の該当回答)肯定層の内訳をみると、被災程度では、全・半壊世帯の7割強が積極派で、一部損壊世帯では積極派(57.1%)が減少し消極派が相対的に多い。区画整理地区居住者にも積極派が多く、こうした層に既存住宅補償制度に対して何らかの不満のあることがうかがえる。
  • (その3)復興の特性と今後の課題
    宮崎 陽子, 李 華, 岸本 幸臣
    セッションID: 2Ga-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    研究目的 前二報に同じ
    調査方法 前二報に同じ
    考察結果 (住宅復興政策の評価)「住宅復興3ケ年計画」は、制度自体を知らない者が57.9%に達し、回答項目では被災者に役立たないが21.8%を占めている。昨春改正された「住宅再建支援法」についても、否定的回答が68.3%を占め、新らな災害に役立つとする肯定的回答は41.7%に留まっている。(住宅復興の責任主体)被災者の「住宅再建責任」は,公共の責任とする回答が50.0%、弱者だけ公共の責任とする回答も25.9%見られ、個人責任論を大きく上回っている。被災者への住宅の公的保障の前提となる「居住の権利」の認知は、何となく知っているの50.5%が多く、次いで全く知らないの29.4%が続いている。全体として認知率は69.0%と高率を示している。被災者への「国の住宅保障」でも、全半壊世帯には是非必要の回答が57.7%と多く見られる。(評価の背景要因)「住宅・生活復興評価」では、復興後の住宅状態との関わりが顕著で、復興住宅入居者の評価が格段に低い結果となっている。また,区画整理地区内の者は、それ以外の地区の者よりも復興評価が低下し、事業が復興の制約になっていたことを示している。「住宅保障主体や居住の権利の認知度」が、震災後の移転回数や現住宅状態に大きく影響されていることが分かる。(まとめ)震災からの住宅復興は、地域差や現住宅状態間の格差を拡大させながら、復興離脱層を生み出しており、復興の厳しさが自由記述にも顕著であった。被災者の生活再建を包括的に支援する新たな制度創設が今後の課題として問われている。
  • (その1)住生活の実態と住空間の評価
    中村 久美, 今井 範子, 伊東 理恵
    セッションID: 2Ga-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 環境とうまく共生していく生活のあり方として,季節を意識し自然との応答性のある住み方に注目,それを支える住空間と住生活の実態を明らかにし,そのあり方を考える.方法 奈良市内に立地する,敷地や住棟,住戸計画に環境への配慮がみられる集合住宅を調査対象に選定.質問紙調査を実施.調査期間は2004年11月下旬.有効サンプル243結果 夏季,通風の確保のため窓や居室の扉の開放,カーテンによる日射の調節などの働きかけが行われているが,日射や照り返しを防ぐバルコニー緑化を行っている世帯は少ない.風の通る涼しい場所を選んで諸行為を行う住みこなしがみられるが,リビングの開口部条件により実施率に差があり,2面開口のリビングに比べ,南面にのみ開口部をもつリビングでは,その割合は相対的に低い.季節の花を飾ったり,インテリアや飾り付けを変えるなどの季節の演出を積極的に行っている世帯ほど,窓周りや部屋の住みこなしも活発であり,バルコニー,団地オープンスペースで自然と触れ合う生活もよくされている.季節を意識した住み方に積極的な層が存在する.季節を意識し,自然と関わりながら住むうえでの不都合として,バルコニーの狭さや水道栓の不備を指摘する世帯は半数を超える.昼間でも照明の必要な部屋や風通しのための玄関開放のしにくさ,季節を演出する空間の必要性,その飾るモノの収納空間不足も指摘されている.バルコニー以外の住戸に関する評価は低くないが,風通しについては,「南北の窓をあける」「部屋の扉を開け放す」習慣があっても,北側開口部がバルコニーや吹き抜けではなく共用廊下に面する場合,相対的に評価は低い.住み手の自然を取り込む住みこなしを保障する開口部の計画が必要である.
  • (その1)横浜市青葉区における居住地及び住宅の移動状況
    石渡 瑞枝, 鈴木 佐代, 沖田 富美子
    セッションID: 2Ga-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的 現在子世帯の転出などにより、居住者が急速に高齢化した住宅地の活力低下が問題視されている。このような背景から、本研究は多様な家族が一定の地域に住み続けることを可能にする仕組みを検討することを目的とする。本報では東京郊外に新しく開発された住宅地を対象とし、居住者世帯の結婚後から現住宅入居に至るまでの居住経験について、居住地の移動状況から分析・考察する。
    方法 神奈川県横浜市青葉区の分譲集合住宅に居住し、世帯主年齢が60歳以上の世帯を対象にアンケート調査を行った。調査期間は2003年1月から3月であり、配布数は162件、回収数159件、有効回答数は153件である。
    結果 対象世帯の結婚時の居住地は、東京都が4割を占め最も多い。その後の移動状況は住み替え理由により異なる。すなわち「転勤等仕事上」の理由で繰り返し住み替えた世帯は、東京圏内外にわたる広範囲の地域で居住している。一方「子どもの出生や成長により前住宅が手狭になった」、「持ち家を取得するため」などの理由により住み替えた場合は、結婚時の居住地内かまたはその周辺地域など限られた地域で移動している。特に本調査対象世帯の場合、東京都から隣接する神奈川県(主として川崎市麻生区・宮前区)に住み替えた後、更にその近接地域である現居住地に移動した世帯が多い。従って仕事による住み替えがない場合は、結婚時に居住した地域内あるいはその周辺で住み続ける志向が強いのが実状と言える。
  • 鈴木 佐代, 沖田 富美子
    セッションID: 2Ga-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:東京圏には、高度経済成長期以降に供給された戸建住宅が大量にあり、今後これら既存住宅を住宅ストックとして活用していくことが必要となっている。本研究では、供給時の住宅規模とその後の居住者変化との関係を明らかにし、個々の住宅・住宅地が将来どのような住宅ストックとなりうるかを予測するための資料を得ることを目的とする。
    方法:調査対象は、1982-84年に建売分譲された横浜市の戸建住宅地(288戸)である。分譲後の1986年から2002年までの住宅地図と住宅販売時の資料を用いて、各住宅の居住者変化を調査した。
    結果:1)転出入による居住者変化は、4LDK住宅(敷地面積180-289m2、延べ床面積100-139m2)と5LDK住宅(敷地面積260-319m2、延べ床面積150-179m2)との違いが大きく、5LDK住宅の居住者入れ変わり率は、4LDK住宅の約1/2である。大規模住宅は定住性が高いが子どもが同居しなければ高齢者のみの世帯となりやすい。2)また居住者の入れ替わり率は、区画によりにばらつきが出ており、今後世代替わりが進む区画と定住性が高く居住者の高齢化が進む区画とに偏りが生じる可能性がある。これは区画ごとに同規模の住宅がまとまって配置されているためであり、供給時の住宅規模の検討は、個々の住宅だけでなく一定のまとまった地域内で行う必要がある。3)家族間での同居・別居による居住者の変化としては、二世帯同居の増加がある。入居後に同居を始めるケースは、5LDK住宅よりもむしろ4LDK住宅で多く、今回対象とした分譲後の経過年数及び住宅規模の範囲では、必ずしも大規模住宅ほど二世帯同居が増加するという傾向はみられないと言える。
  • -奈良県榛原町における-
    伊東 理恵, 今井 範子
    セッションID: 2Ga-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    【目的】郊外住宅地は,高度経済成長期に開発が開始され,人口拡大につれ地価高騰の影響により都心から遠く離れた遠隔地にまで無秩序に住宅地が建設されていった.開発から約30年が経過し,とりわけこのような遠隔郊外住宅地では,今後親世代の高齢化と子世代の就職や結婚,転勤などによる流出により人口の減少が進行することが予測される.さらに日常生活にかかわる問題からひいては居住の継承の問題,コミュニティの不活性化等種々の問題が顕在化してくると考えられる.本報では親子の居住形態に着目し,その動向を明らかにし,この面から遠隔郊外住宅地の抱える問題点を明らかにすることを目的とする.【方法】奈良県内の遠隔郊外住宅地の中から,昭和50年代を中心に開発され団塊世代人口比率および高齢化率,空地・空家率の高い住宅地として榛原町に存在する住宅地を選定し,その居住者を対象に質問紙調査を実施した.有効サンプル数は世帯票349,個人票718である.【結果】居住者は,借家から対象住宅地に転入し初めて住宅を取得した「一次取得者層」が半数を超える.中古住宅の占める割合が2割に満たないこと,住宅地内の空地や空家がそれぞれ約1割と多く存在することから住宅地として停滞している状況が把握できる.「65歳以上の高齢者がいる」家族は4割弱を占める.また単身の6.5割,夫婦のみの半数が高齢世帯であり,居住者の高齢化はかなり進展している.世代同居家族は全体の1割にすぎない.既婚子との居住形態をみると,同居が2割,別居が8割と別居が多くを占める.また別居の場合の時間距離をみると,「徒歩5分以内」は1割未満,「車で30分以上」が7割を占め「遠居」が特徴である.住宅地内には坂が多く,駅から遠く,買い物等の移動には車に頼った生活が中心であり,高齢期への不安が強い.今後,将来にわたって居住地として種々の問題をはらんでいることを明らかにした.
  • 米村 敦子, 千森 督子
    セッションID: 2Ga-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:急速な高齢化が進む過疎山村の住まいと住生活の実態及び長年培われてきた住文化の現状と変容の地域特性について、九州山地と紀伊山地の山村集落調査を通して考察し、風土に根ざした住環境の整備と住文化の保全について検討する。方法:住宅実測調査・住まい方調査・アンケート調査の3手法により、九州地区では宮崎県東臼杵郡西郷村(高齢化率33.7%、平成10年国勢調査)の山瀬集落、同郡南郷村(同32.6%)の水清谷集落、児湯郡西米良村(同34.8%)に点在する作小屋の実態調査を実施した(平成11年_から_13年)。本報では南郷村水清谷集落と西米良村の作小屋について報告する。結果:水清谷集落は約150戸の山間の段状集落で、幾段もの棚田群と築100年を越える伝統的住まいを有す。伝統的間取りは、ドジ(土間)に併列してダイドコ(居間。奥に老人室のナンドを区切る)、2列目にオモテ(神棚・仏壇・床を有す)と一間幅のシタノマ(若夫婦の間、出産の場)があり、オモテとシタノマが原型に近い形で残っている。漆喰壁には各戸に独特なコテ絵が施されるが、価値意識は低く、保全が急がれる。水清谷神社を中心に季節の伝統行事も残され、地域への愛着やコミュニティーも濃密であるが、若者の就業や高齢化問題、医療施設に不安感が強い。西米良村の作小屋は山腹の生産のための住まいで、冬場以外は平地の本家を離れてここで生活し、隠居家や産屋ともなり、山の暮らしの伝統を色濃く残している。間取りは元来、ドジとウチネ1室からなり、ウチネは庭側をシタハラ、棚側をウワデと呼ぶ。後年ウチネの横にデノホが併設される。住まいの原型と併列的発展、特有の一間幅のシタノマの成立を示している。現在も常住型が2棟、通所型が10棟ほど住まれているが、猿と鹿の被害が甚大である。
  • 黒光 貴峰, 小野 陽介, 町田 玲子
    セッションID: 2Ga-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    目的:近年、学校教育において学校と地域社会との連携が求められている。それを受けて教育の現場でも地域コミュニティの育成や地域活動の充実に向けた動きがみられる。本研究では高等学校(以下、高校と略す)が行っている地域への活動の取組みに着目し、高校が活動を取り組むことにより生徒または学校周辺地域にどのような影響を与えているのか明らかにし、今後の高校と地域の連携について検討していくことを目的とする。方法:京都府教育庁高校教育課へのヒアリング調査及び京都府公立の高校のHPを調べ、その中から地域に対して活動を行っている高校2校を選定した。調査期間は2004年11月である。結果:1)アンケート調査結果は、京都府立木津高校:生徒(回収数225票・回収率83.3%)周辺住民(回収数106票・回収率17.7%)、京都府立北嵯峨高校:生徒(回収数152票・回収率100%)周辺住民(回収数162票・回収率27.0%)であった。2)学校周辺の住民は学校の望む活動として、地域貢献系、交流系、ボランティア系が良い印象であった。3)地域活動に参加した生徒の大半が地域活動を必要だと考えている。また、活動に対して、参加したことのある生徒は参加したことのない生徒に比べ、地域や社会への関心を持つ者がやや多いことが分かった。4)地域活動を通じて、住民が高校に対して好印象や関心を持ち、また生徒が地域に対し関心を持つなどの両方で効果が確認された。以上1)_から_4)の結果から高校と地域との連携について考察を加えた。
  • 北浦 かほる, 藤野 淳子
    セッションID: 2Ga-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
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    1.はじめに 親子のコミュニケーションの活性化を図るために居間のあり方が問われている。そこで本研究では、居間の本来の機能をその使われ方から考察するとともに、子どもの成長によって、それがどう変化するのかを明らかにすることが目的である。2.方法 居間を「家族が最もよく集まる部屋」と定義し、小学5・6年生親子、高校生親子計800人を対象として居間での行為についてアンケート調査を行った。得られたデータを用いて因子分析を行い居間の機能を抽出した。さらに因子得点の平均値を求め、小学生親子・高校生親子の居間の機能と成長による機能の変化を分析した。3.結果 居間の機能は、日記を書く・本を読むなどの「個人的行為」、友達と遊ぶ・家族でゲームをする「遊び_I_」、食事や料理に関する行為「調理・食事」、寝転ぶ・テレビを見るなどの「くつろぐ」、談笑する・客をもてなすなどの「談話・雑事」、身繕い着替えをするの「身繕い」、洗濯物をたたむ・アイロンをかけるの「家事」、ペットと遊ぶ・植物を育てるの「飼育・栽培」、歌を歌う・ラジオを聴くなどの「遊び_II_」の9つに集約することができた。居間では家族で一緒に行う行為からひとりでの行為まで、様々な行為が幅広く行われていることがわかった。子どもが小学生時には「遊び_I_」「遊び_II_」「くつろぐ」「身繕い」などが居間で行われているが、高校生になると「身繕い」「くつろぐ」の他にはあまり居間を利用しなくなる。それに伴って、親の「遊び_I_」「遊び_II_」は減少するが、親の「家事」「談話・雑事」「個人的行為」は相変わらず居間で行われている。家族周期の変化とともに、居間は家族でともに遊ぶ場から、ひとりでくつろぐ場へとその機能が変化していることがわかる。
  • 経済学理論のアノマリースは通常
    森 英子
    セッションID: 1Ha-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    発意 郵便局の民営化・分離独立計画策は発案されて久しいが、反対異論続出でむしろ後退している。喫緊性が疑問視される新幹線や空港の公共事業など。経済効率からは考えられない政策・建設が昔から繰り返されている。幾つかの個別例を検証する。私は尊敬、同感するエコノミストの日経新聞紙上の論文を永く保存し続けているが、歳を思い、関心と共にいっさいを清算する記念とする。〈BR〉 方法 空前のバブル崩壊による不況の1992_から_1993年時に日経新・経済教室に載った政府・官僚・審議会委員等(現在も積極的な論者多数)の論説を主に、逐次発表されたそれや、その他の関連発言記事の中から取り上げ、彼等エコノミストの立案や施策が経済理論に基づくものでありながら、実現せず時としては予期せぬ危険な方向に発展してしまった事例をもって現場音痴を検証する。〈BR〉 実例・音痴たらしめる主因・アノマリースの階段 検証 赤字国債の膨張歯止めは至難 高橋是清蔵相ー不況克服に一時的が軍部の圧力で失敗、戦後は福田・太平蔵相ー一年か短期間で均衡財政復帰のつもりが赤字国債発行ゼロにするだけにバブルの恩恵があったにも拘らず十年を要した。経済理論通の各蔵相を実情音痴たらしめたのはレント・シーカー(公的タカリ屋)による拡大圧力を軽視しているからである。逆に官庁エコノミストは統計偏重で実体経済把握に甘く不況に後手であり、積極財政をとのエコノミストの声もある。経済理論からのアノマリースは第一に人の本能の経済合理思考と感情の葛藤が第二に行動経済学となり第三に社会的奸智がさらにアノマリース幅を拡大し恒常化してしまう。
  • 乘本 秀樹
    セッションID: 1Ha-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 大熊信行氏の生活経営理論の成立過程を、「配分原理」の展開とむすびつけながら把握する。それを通して、「配分原理」の意義を検討する。方法 主として、大熊氏の諸論考を比較検討する。結果 1.市場経済から相対的に自律的な存在として生活場が把握されることにより、生活経営学は始まる。大熊氏においては、J.ラスキンと共通する市場忌避的基調を伴いつつ、生活場の自律性が措定されている。2.配分原理は、生産や生活の資源を「按排充当」すべく経済主体を内面から律するルールであり、H.H.ゴッセンの第一法則(限界効用(利用)均等法則)に端的である。3.配分原理の発見は、生活場の自律性の発見である。そこには、意志によって生活資源を配分することができる人間への驚きと励ましの気配が感じられる。4.配分原理は静態的な資源「按排」過程に関するものであるが、動態的な情況に対処する「緩急原理」へと発展させられる。5.「『経済』と『技術』の相互交渉」として経営をとらえるゴットル学説に依るなかで、配分原理が「経済」カテゴリーに位置づけられる。そして、同カテゴリーへの洞察を深めるなかで「経済構成体論」(家庭論や消費論)が展開される。6.4、5の過程で、3に感じられた理念性が薄まる。ただし、配分の原理が指針や仕方として具体化されることはない。7.大熊氏の諸概念は、新しい生活経営(学)の方法を模索するうえで示唆的である。
  • ガンガ 伸子
    セッションID: 1Ha-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 目的は、最近の消費生活構造の特徴を、とりわけ家事労働の外部化の影響を中心に、AIDS(Almost Ideal Demand System)によって明らかにすることである。これまでの分析は、各費目の単一需要方程式の推計からのアプローチが多くなされてきたが、需要体系によって、各消費費目間の代替・補完関係をとらえるものはあまりなかった。消費構造の特徴をとらえるためには、単一方程式に代わる需要体系分析法を用いて、消費構造全体の中で、消費費目間の関連性を検討することが有効であると思われる。
    方法 (1)式に示すように、季節ダミーを取り入れたAIDSモデルを採用した。
    Wii+Σγijlnpjiln(X/P)+ΣdiikDik+ei(1)
    ただし、Wiはi項目の支出比率、pi+はi項目の価格、Xは1人当たりの消費支出総額、PはStone価格指数、Diikは季節ダミー、eiは誤差項である。αiiij,diik, は推定すべきパラメータである。添字i,jは消費費目を示す。この需要体系において、需要理論で要請される一般的な制約条件(収支均等、同次性、対称性)がパラメータの制約式として課せられる。計測期間は、1990から2004年である。また、データは、総務省統計局『家計調査年報』(1990から2004年)の全国・勤労者世帯の1世帯当たり1か月間の支出(四半期平均)と「消費者物価指数」の全国四半期平均10大費目指数を用いた。ただし、食料は食の外部化の影響を考慮し、内食・中食・外食に分類して分析した。
    結果 消費費目間の代替関係・補完関係が確認でき、また、内食・中食・外食と他の費目間との関係の違いも認められた。
  • 深井 尚子, 多邊田 美香, 弦巻 和
    セッションID: 1Ha-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、勤労者世帯では、共働き世帯数が専業主婦世帯数を超えており、この傾向は今後も続くと予測される。04年第56回大会では、子供を持つ共働き世帯は、帰宅後の短時間に家事を集中的に行っており、自動食器洗浄機などの省力化家電の活用、掃除・育児を中心に夫と家事分担するなどの実態を報告した。今回は、必要不可欠な家事であり時間を要する「買い物行動」について「レシートを用いた調査」を行い、共働き世帯の購入日時、購入先、購入品、金額など総括的な買い物実態を明らかにした。【方法】1)レシート調査 2004.4_から_7 首都圏在住核家族39世帯(20・30代:共働き19、専業主婦 12、40・50代:専業主婦8)    2)郵送留め置き式アンケート 2004.10 首都圏在住核家族206世帯(20・30代:共働き73、専業主婦 73、40・50代:専業主婦60)【結果】共働き世帯でも全買い物回数の約9割が妻であり、夫と分担している家庭は少なかった。購入日時および金額比率から、共働き主婦は土・日曜日にまとめ買いし、平日の夕方以降に買い足すという買い物行動が多いことがわかった。買い物先はスーパーが多いものの、食料品をドラッグストアやディスカウントストアで購入したり、生協や通販などの宅配サービスを利用するなど購入先の選択肢も豊富となっている。一方、専業主婦でも夕方あるいは夜間に買い物するケースがあり、買い物時間帯の幅が広がっていると考えられる。今後も流通の変化に伴い、若年共働き世帯では、生活パターンに合わせて購入先・ツール、時間帯など買い物行動が多様化していくものと予測される。
  • 加來 卯子, 八尋 俊子
    セッションID: 1Ha-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】産業の主体が第三次産業へと変化するのに伴って、私たちの日々の生活は消費に偏ったものとなっている。そのような社会の変容は家庭生活の変容を促し、それは「家族の個別化」や「家計の個別化」にも示されてきている。学生はアルバイトの賃金や親からの小遣いを個人の家計として、物資の購入に当てている。個人の消費行動は国民経済の循環の中にあるが、女子学生のライフスタイルに関する研究の一環として購買行動の実態を調査し、社会との関わりにおいて自立した生活者へと導くことを目的として検討を行った。
    【方法】北九州地区の短期大学部に在籍する1年生を対象に2004年1_から_2月および12月に配票留置法による質問紙調査を行った。配布数148票、有効回収数146票、有効回収率98.6%である。調査は連続する7日間について記入を求めた。内容は自由裁量の消費支出、購買行動として購入品目と業態別の購入先、外食の有無、アルバイト従事状況などである。
    【結果】自由に使用できる消費支出が月額3万円以上の学生は44.4%であり、当然のことながら自宅通学生よりも1人暮らしに多い。週15時間以上アルバイトに従事する者は1人暮らしよりも自宅通学生に顕著に多い。支出の内訳はファッション代が最も多く、次いで食費、交際費の順である。業態別の利用率は月曜から木曜は学内売店、コンビニエンス・ストア、金曜から日曜はコンビニエンス・ストア、総合スーパーの順に高い。購入品目としては、弁当・惣菜・パン、飲み物などの食品が顕著に多い。外食の利用率は水・金・土・日曜で40%を超えた。平日では学生食堂が、土・日曜ではファーストフードが多く利用されている傾向にある。
  • -四大生活時間行動分類別三カ国比較-
    中山 節子, 大竹 美登利, 伊藤 セツ
    セッションID: 1Ha-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:生活時間調査は,アンペイドワークや社会のジェンダー格差の問題を読み解くツールとして,国際的規模で注目されてきた.近年ESCAP地域の国々においても,関心が高まり,生活時間調査の取り組みが徐々に行われ始めた.われわれは,ESCAP地域諸国の中で,政府レベルの生活時間調査が,どのような国で,またどのような分類で行われているかすでに一部知見を得ている<SUP>1)2)</SUP>.そのうちタイとカンボジアをとりあげ,日本を加えた三カ国間の比較をジェンダー視点から行うことを目的とする.方法:比較するデータとして,タイにおいては,タイ政府統計局発行『2001年生活時間調査』,カンボジアについては,カンボジア統計局社会経済調査の一部としておこなっている生活時間調査(2004年4月実施)のデータ,日本については,『2001年社会生活基本調査報告』を用いた.また,比較は,UNの生活時間分類を参考にわれわれが独自に開発した分類を用いる. 結果:まず第一に,生活時間調査を収集した結果約20カ国において複数の調査が行われていることが明らかになった.第二に,タイとカンボジアの生活時間行動分類については,国連の分類に依拠していることが明らかになり,日本やEurostatの分類とは配列も異なるものであった.第三に,われわれが新たに開発した四大分類「生理的」,「ペイドワーク」,「アンペイドワーク」,「社会的,文化的,リクレーション」で三カ国の比較をおこなった結果,新たな知見が得られたので報告する. [文献]1)中山節子「ESCAP地域の生活時間調査の動向について」伊藤セツら編著『生活時間と生活福祉』光生館,148-160,2005.3.2)中山節子「ESCAP地域で実施された生活時間調査と生活行動分類(上)」『昭和女子大学大学院生活機構研究科紀要』Vol.14. 61-75 2005.3.
  • 貴志 倫子, 平田 道憲
    セッションID: 1Ha-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】属性別の夫妻それぞれのワーク時間の分析はいくつか行われているが,夫妻の時間使用の相互関係に焦点をあてたものは少ない。本研究は,夫妻のワーク時間を,配偶者のワーク時間階級別に分析することを目的とした。共働きか否か,および家族類型の世帯属性を考慮し,夫妻のペイドワーク時間とアンペイドワーク時間をとらえる。【方法】目的外使用申請により承認を得られた,総務省統計局の2001年「社会生活基本調査」の個票データを再集計することにより,独自の分析を行った。 【結果】(1)共働きの夫妻で,子どものいない世帯の妻のペイドワーク時間は,夫のペイドワーク時間が長くなるにつれ増加する傾向にある。子どものいる世帯では,夫のペイドワークが12時間台以上になると妻のペイドワーク時間は減少傾向を示す。(2)家族類型にかかわらず,妻のペイドワーク時間が長くなるほど,夫のペイドワーク時間は長くなる。夫のペイドワーク時間は,妻に比べて家族類型の影響を受けていない。(3)共働き世帯の妻のアンペイドワークは,夫のペイドワーク時間が4時間台以降長くなっても,平均時間は250分前後で一定である。ただし子どものいない世帯では,妻のアンペイドワークは減少傾向にある。一方,非共働き世帯では,夫のペイドワークが4-6時間から12時間台以上まで変化するとき,約100分,妻のアンペイドワークが増加する。共働き同様,子どものいない世帯では,妻のアンペイドワークは減少するが,子どもがいる世帯では逆に増加傾向を示す。(4)行為者平均時間でみると,夫のアンペイドワーク時間量は,妻のアンペイドワークが長くなると若干増加するが,子どもの有無など家族類型の影響は明確ではない。
  • -長野市鬼無里地域での実践を通して-
    田中 慶子, 角間(土田) 陽子, 角尾 晋, 草野 篤子
    セッションID: 2Ha-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    <目的> 超高齢社会において,児童生徒が高齢者や老化に対して抱く認識や態度は,社会のあり方を決定する大きな影響力となる。その認識や態度は,現在もしくは過去の高齢者との交流によって規定される。核家族化・単独世帯化により家庭内における高齢者との交流は減少しており,学校教育における児童生徒と高齢者との世代間交流活動の重要性はますます増大している。本研究は今後の学校教育における世代間交流活動のあり方にかかわる基礎的要因を明らかにすることを目的として,児童生徒にとって価値のある体験となる世代間交流活動とは何なのかを検討した。<方法> _丸1_ 長野県上水内郡鬼無里村(現:長野市鬼無里地域)で実施されている世代間交流活動を保育園で4回,小学校では2回にわたって参与観察した。観察の時期は2003年9月_から_12月である。_丸2_ 鬼無里小学校2_から_6年生と同中学校1_から_3年生および比較のため県内のN小学校2_から_6年生を対象として,2003年10月に配票調査を行った。高齢者に対する認識や態度,世代間交流に対する積極性などに影響する要因を分析した。<結果・考察> 世代間交流を通して子どもたちは役割意識をもち,意欲的に取り組む姿勢が認められた。保育園での交流活動を体験した小学生は,自主的に交流活動を計画し実践していた。また,祖父母との意識的な共同行動・交流において高齢者に対する認識や態度が肯定的であること,高齢者を肯定的に捉えている児童生徒ほど世代間交流活動に積極的であることが明らかとなった。さらに,学校教育において価値ある体験となる世代間交流活動を実施するための有益な示唆を得た。
  • 重川 純子, 太田 梨恵
    セッションID: 2Ha-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:核家族化、都市化による人と人のつながりの希薄化、共稼ぎの増加などを背景に、育児環境の整備や育児支援の必要性が高まっている。近年、主に育児支援を内容とする住民互助型組織であるファミリー・サポート・センター(以下、FSC)の拡充が子育て支援政策の1つとして挙げられている。本研究では、FSC事業には援助者の協力が不可欠であると考え、援助活動への参加がサービスを提供する側にどのような影響を及ぼしているのか、生活等の変容を中心に定量的に捕捉し、事業の活性化について検討を行う。
     方法:埼玉県内の4カ所のFSCに協力(援助)会員として登録する104名を対象として、2003年に質問紙調査を実施した。調査内容は、基本属性、活動参加の理由、活動実態(内容、頻度等)、活動参加による生活の変化、活動上の問題点、継続意向、FSC事業への要望である。動機、活動実態と生活の変化の関連などの分析を行った。
     結果:協力会員の96%は女性、50歳以上が約6割、6割は自身の子は中学生以上である。活動の契機は、公的なチラシ等6割、口コミ4割である。参加理由として、「子どもに関わる活動をしたい」「育児援助をしたい」「役立ちたい」の貢献意識を持つ者が多い。活動による変化について、4分の3の者が生活のはり、自己内省の機会、家族との会話の増加があったと意識(2_から_3割は強く意識)している。地域の知人、地域への関心等、地域活動としても肯定評価する者が多い。これらの意識には貢献意識の参加理由や活動頻度が影響を及ぼしている。76%が活動に満足している。不満層は満足層に比べ、会員相互の交流、研修機会の増加、ルールの徹底、とりわけ広報の充実を望む度合いが高い。
  • 倉持 清美, 田村 毅, 及川 裕子, 岸田 泰子, 木村 恭子
    セッションID: 2Ha-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 子どもの育ちは、家族システムの影響を受けることが最近の発達心理学の研究で明らかにされつつある。本研究では、家族システムの中で特に夫婦関係に焦点を当て、妊娠期からの夫婦関係の変容を縦断的に調査している。出産後の子どもの育ちと夫婦関係がどのように関連しているのかを探ることが本研究の目的である。方法 主として質問紙調査を行った。妊娠期、生後4ヶ月、生後1年、生後2年にわたる縦断的な調査を、結婚した夫婦を対象に行った。質問項目は、夫婦関係の質を問う項目、子どもに対する感情に関する項目、子どもの気質を問う項目、子育てのストレスや不安を問う項目、家事や育児の負担を問う項目などから構成されている。結果 妊娠期から出産後に、夫婦関係が大きく変容することがわかった。特に、妻は著しく夫に対する満足度が低下している。夫婦関係への満足度が高いほど、夫も妻も、子どもに対する感情は高くなっている。また、夫は妊娠期よりも、生後の方が、子どもに対する感情が高くなっていることがわかった。
  • -国際結婚を考える会の場合-
    竹田 美知
    セッションID: 2Ha-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 海外に住む国際結婚から生まれた子どもは日本の国籍法では、3ヶ月以内に、出生届と国籍留保届けが提出されていることを条件に、日本国籍が留保され二重国籍を持つことができる。本調査は、海外に住む日本人と国際結婚をした家族を対象として親と子に、家族の中で、二つの文化がどのように伝達され、子どものアイデンティー形成がされるかを明らかにする。方法 アンケート調査にさきがけ、海外から帰国した国際結婚から生まれたきょうだい2組に、パイロット調査を行った。その後2003年11月に英文調査票と日本語調査票を用意して国際結婚を考える会の海外会員親子を対象に、郵送調査を行い、子ども票33票、親票58票を回収した。結果 回収票の68%はヨーロッパ諸国から返送され、子どもの母親の出身国であった。1)学校や職場では、現地の言葉を使う子どもが7割近くいるが、2割近くが2カ国語を使っている。しかし家庭では2ヶ国語を使っている子どもが6割近くいる。2)国籍は2つ持っている子どもが76%、3カ国以上持っている子どもが6%いる。22歳までに選択を求めている日本の国籍法を知っている子どもは半数であった。国籍を2つ持つことを望ましいと考える子どもは84%に上っている。3)重回帰分析の結果、海外に住む子どもが「自分のことを好きだ」と自己肯定する場合は、「親による出身国の文化の教育経験があること」と、「両親の教育方針の一致がみられること」が影響要因として考えられる。
  • -長野県千曲市の調査から-
    寺澤 茜, 杉岡 さとる, 草野 篤子
    セッションID: 2Ha-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 女性の社会進出が進む今日、女性は仕事・家事・育児に追われている。その女性の負担を軽減させる役割担当者として男性が挙げられるが、家庭の中の男性、主に父親は依然として「不在」である。この背景のもと、現代の父親像や父親の実態を子どもの父親評価や、先行研究と比較することで検討する。また、父親が「存在」する家庭・社会を築くために、これからの父親に求められるもの、必要なものは何かを考察する。
    方法 先行研究を参考に独自な調査票を作成し、質問紙による配票調査を行った。2004年10月に長野県千曲市内の公立小学校4_から_6年生を対象とした。調査当日に出席した児童全232名から回答を得た。その内、父親のいる児童からの回答は215票であった(有効率92.7%)。分析にはSPSS統計パッケージを用いた。先行研究(総務庁調査,1986年)の集計値と比較し、本調査集計値においてクロス集計、カイ2乗検定等を行うなどして、父親の実態や子どもが抱く父親像とそれに影響を与える要因を探り、考察を加えた。
    結果 (1)父親の子どもと過ごす時間は短い。特に仕事のある平日は30分未満の父親が6割を越す。父親の仕事が子どもとのコミュニケーションを阻害している現状がある。(2)先行研究との比較より、子どもが父親に抱くイメージはより好感的になっている一方、父親が子供をどう思っているかはわからない傾向にある。また、父親の威厳は消失の方向に向かっている。更に子どもは父親に対する思いやりの気持ちが薄くなっている。(3)父親の家事参加が進んできており、父親の家事労働について7割の子どもは「よいことだ」と評価している。また、父親が家事に協力する理由、協力しない理由について、男子の方が父親に対して寛容である。(4)男女間で父親の家庭内の地位に対する評価に違いがみられた。
  • 高橋 久美子
    セッションID: 2Ha-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 携帯電話は手軽で便利な情報通信手段であり、世代や地域を越えて急速に普及し使用されるようになった。しかし、問題点も多く、子どもたちに及ぼす悪影響が指摘されている。高校生の携帯電話の所持率は高く、その功罪や使用のし方について家庭でどのような指導や話し合いがなされているかを明らかにすることは、学校や地域との連携のあり方を考えるうえでも必要である。本研究では、親と子の双方から携帯電話の使用について家庭でのルール作りの実態に焦点をあてて調査し、課題について考えた。 方法 調査は、2003年10月に北九州市内の公立高校1校を選び、2年生全員とその保護者を対象に行った。高校生は学校で実施し、保護者については封をした調査票を生徒に持ち帰ってもらい、記入後に郵送してもらった。回収した保護者の調査票は175部あったが、母親以外の記入者は少数であったので分析から除いた。分析に用いたサンプルは母親141人、男子生徒121人、女子生徒185人である。男子と女子の割合は4対6であり、母親票についても高2の子どもの男女比は同様であった。 結果 携帯電話が2個以上ある家庭が7割、高2の子どもが持っている家庭は8割を超えている。男子の6割と女子の7割が親に使用料金の全額を支払ってもらっている。携帯電話のプラス面よりもマイナス面を数多く意識し、使い方について取り決めを作っているという母親は8割いるのに対し、親と取り決めがあるという男子は2割、女子は5割以下である。高校生に必要な規範意識についても親子の間でずれが大きい反面、先生や親に反抗するのはよくないと考えている者は母親でもそれぞれ4割と2割程度である。
  • -関東地方A市児童・生徒質問紙調査から-
    岩崎 香織, 蟹江 教子, 牧野 カツコ
    セッションID: 2Ha-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 これまでに小・中・高校生という幅広い学年の家庭生活について、同一内容の質問紙を用いて大規模に調査した研究は少ない。お茶の水女子大学JELSでは、青少年の「学力」、家庭的背景、進路形成の相互関係を明らかにすることを目的とし、2003年に関東地方のA市内約半数の小・中・高校生を対象に、_丸1_児童・生徒質問紙調査、_丸2_学力調査、_丸3_担任教員調査を実施した。本研究は、このうち_丸1_児童・生徒質問紙調査から、小・中・高校生の家庭生活の全体像および学年別の特徴を明らかにするために、「父母の学歴」、「家庭生活状況」、「消費生活」、「家庭学習状況」、「家庭の雰囲気」の5点について分析・検討する。方法 対象者は、関東地方A市の小学3年生1118名、6年生1164名、中学3年生1057名、高校3年生1438名、計4777名。調査は、2003年10月~12月に記名自記式で実施した。結果 学年差が大きかったものは、_丸1_教育に関わる内容(自分ひとりの勉強部屋、「勉強しなさい」と言われること、家庭での学習頻度、平日の学習時間)、_丸2_家庭の経済に関連するもの(塾や習い事、こづかい)、_丸3_家庭の楽しさの3点があった。学年差があまりみられなかったのは、_丸1_家庭の文化的な側面(本がたくさんある、博物館等につれて行ってもらった、家の人の起床時間、食事、近所づきあい)や、「あたたかい」、「ほっとする」という家庭の雰囲気であった。家庭の文化的な側面は過半数の対象者、「あたたかい」、「ほっとする」は、約8割の対象者に感じられており、対象者に家庭生活は、概ね良好なものと受け止められていた。なお、本研究は、お茶の水女子大学21世紀COEプログラム「誕生から死までの人間発達科学」および科学研究費(基盤研究(B)(2)16300230)による共同研究の成果の一部である。
  • 蟹江 教子, 岩崎 香織, 牧野 カツコ
    セッションID: 2Ha-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的】 家庭生活は、児童・生徒の学校への適応や価値観の形成などに大きく影響を与える。最近の研究によると、家庭での居心地の良し悪し(家庭の雰囲気)が子どものメンタルヘルスと関連していることが明らかとなり、心理学的な知見による家庭生活の把握についての関心も高まっている。そこで、本研究では、小学生、中学生、高校生の保護者が、家庭の雰囲気をどのように意識しているのか、また、保護者の意識と子どもの意識との関連はどのようになっているのだろうか、記述的に把握することを目的とする。【方法】 お茶の水女子大学JELSでは、小3、小6、中3、高3(2003年10~12月に実施)とその保護者(2004年8月に実施)を対象に、青少年の「学力」、家庭的背景、進路形成の相互関係を明らかにすることを目的に、アンケート調査を実施した。【結果】 保護者調査の回収数は、小学校3年生247票、6年生298票、中学3年生229票、高校3年生146票であった。児童・生徒調査結果をもとに、どのような保護者が回答しているかを検討したところ、親自身の学歴が高く、成績が比較的良い児童・生徒の保護者が回答していた。保護者の意識する家庭の雰囲気(「楽しい」「あたたかい」「ほっとする」について、「そう思う」から「そう思わない」まで5段階で回答)は、児童・生徒の学年が高いほど不良となる。また、児童・生徒の意識と保護者の意識との間に関連はあまり認められず、両者の意識は乖離していることが明らかになった。 なお、本研究は科学研究費(基盤研究(B)(2)16300230)及びお茶の水女子大学21世紀COEプログラム「誕生から死までの人間発達科学」による共同研究の成果の一部である。
  • 吉川 はる奈
    セッションID: 1Ja-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>生後6年間定期的に発達・成長をみてきた子どもたちに対して、12歳になった時点で子どもとその母親に生活実態調査を行った。移行期にあり、親との距離が変化するとされるこの時期の子どもが、学校生活、家庭生活の中でどのような意識を持つのかということについて検討することは、昨今の子どもをめぐる問題への対応を考察する上で重要と思われる。本報告では、12歳時に行なった2000年度の調査を1986年の調査とまた2004年度の調査と比較しながら、子ども像、母親像の変容について考察し、現代の親子関係に対する示唆を得ることを目的とする。<方法>生後6年間経過を追跡した児童が12歳になった2000年に、子どもとその母親102組に生活実態調査を行なった。1986年の調査と2004年の調査との比較検討を行なう。<結果>子どもに関しては1986年から2000年度の間に自主的な行動が低下し、「学校にいきたくない」と答えるものが57%と増加するなどの変化が目立った。また一方で、2004年では、「自分は何でもいろいろなことができる」と81%もが答えつつも、「自分は誰かの役に立っている」という答えは56%に留まるなど役割意識が確立しにくくなっている様子がうかがわれた。母親に関しては1986年から2000年度の間に子どもを自立へと促す働きかけがより目立つ一方、子どもがいないとさびしいという葛藤がみられた。また2004年には子どもの話をよくきき、よく話すことを90%の親が理想像と捉え、実際に85%の親が同様な努力をしていると捉えつつも、「自分は子どもから尊敬されている」というのは55%に留まり、自分に自信がもてない親像がうかがわれた。
  • 3歳未満の第1子をもつ場合
    岡野 雅子, 佐藤 睦恵
    セッションID: 1Ja-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 わが国の少子化は依然として進行中であり、次世代育成支援に向けて従来からの働き方も見直そうという気運にある。子どもを持つ男は「父親」であるが、同時に「仕事」をもち、妻にとっては「夫」でもあるだろう。今日、乳幼児を持つ父親自身は、この3つの役割をどのように位置づけているのだろうか。また、それは「親性」のあり様とどのように関連しているのだろうか。本研究は第1子が3歳未満の父親を対象に検討を試みた。
    方法 質問紙調査法である。長野県内保育所5ヶ所、保健センタ_-_等で0,1,2歳児の父親・母親を対象に配布し(581組)、249組より回収(回収率43%)、そのうちの有効回答120組を対象とした。父親への質問内容は「仕事・夫・父親」の役割意識の割合、親性(感情的、認知的、行動的の3側面の計33問)等から成る。調査時期は2003年10_から_12月である。
    結果と考察 (1)「仕事・夫・父親」の割合について全体を10として尋ねたところ、21通りの回答が出され、最多回答は4:3:3で、平均像は4.4:2.5:3.1であった。最大値(同じ値を含む)を「父親」に置く者28名に対し、「仕事」89名、「夫」12名で、仕事を重視する父親が多い。「仕事」値は「父親」値および「夫」値と負の相関がある(p<.01)が、子の年齢、父の年齢、母の就労状況との関連は見いだせない。(2)父親の親性得点は、「仕事」値と負の相関(p<.05)が、「夫」値と正の相関(p<.05)があるが、「父親」値との関連は認められない。「父親」値により3群に分けると、親性得点は「父親」値の中間群が最も高く、高群、低群の順である。(3)したがって、父親役割の自己査定値の相対的な高低は親性の獲得の多少と必ずしも関連するものではなく、むしろバランスのとれた役割意識が重要であることが示唆される。
  • -食生活に焦点を当てて-
    高畑 彩友美, 冨田 圭子, 饗庭 照美, 大谷 貴美子
    セッションID: 1Ja-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、引きこもりや不登校といった人とうまく関わることができず、社会や学校に適応できない人が増えてきている。このような現象にはコミュニケーション能力を育むもっとも重要な時期(幼児期)の親子のかかわり方にも一因がある。そこで本研究では、食事時間は親と子のコミュニケーションを通して相互理解を深め、子どものコミュニケーション能力、自己表現力を養う上でもっとも良い機会であると考え、幼稚園の年長児を対象に調査を行った。【方法】兵庫県の私立幼稚園連盟の協力を得て、県下9園において年長児(総数687名)とその保護者、幼稚園の教諭を対象に調査を行った。アンケートの回答者及び食事作りの担当者がほとんど母親であったため、母親が回答した子ども(603名)を分析に供した。今回は母親の回答より、子どもとのコミュニケーション頻度が少ないと判断された群(62名:NC群)を中心に分析し、頻度が多い群(365名:C群)を対照として分析した結果を報告する。分析にはSPSSを用いた。【結果】NC群は、C群に比べて、食べることや料理作りへの興味が有意に低く、母親の“食卓での団らんや食事作りなどに対する意識”の違いと関連が認められた。またNC群の親は親自身の生活充実度も低く、過去の食経験が好ましくないことが示された。さらに幼稚園の先生の評価においても「友達の嫌がることをする」などの傾向が認められた。食事時間は最も自然体で話ができる機会である。従って子どものコミュニケーション能力を育てる上で、家庭での食事は非常に重要な役割を担っている。親子のコミュニケーションを通じて子どもの人間性を育むためには母親自身の生活の充実を図ることも重要であることが示唆された。
  • 姫 茹, 中山 徹, 上野 勝代, 室崎 生子
    セッションID: 1Ja-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 中国の一人子政策は親が子供を過保護にする傾向があり、子供の自立性、創造性及び人との相互関係などに影響し、問題があると思う。一人っ子が健全に発達するには子供の遊び環境が重要であると考えるが、建築・都市計画分野における子供の遊び環境に関する研究はあまり進んでいない。中国・内モンゴルでは、都市化が急速に進むにつれて、住宅区も大きく変化し、新住宅区はすべて物業管理の方式になった。古い住宅区には、遊具が設置された遊び場はなかったが、新住宅区には遊具のある遊び場を含め公共施設が整備されるようになった。しかし、まだ子供の遊び場に関して、充分考慮されているとは言えない。本研究では、新旧の住宅区において子供の遊び実態を調査し、新旧住宅区における子供の遊び実態の差を明らかにし、住宅区における子供の遊び場計画はどうあるべきかについて考察することを目的とする。[方法] 典型的な新、旧住宅区を対象に2004年9月11、12日、遊んでいる子供を見つけて観察記録(集団構成、遊び内容、遊び場所)と写真をとり、あわせてヒアリングを行った。[結果] _丸1_新住宅区の遊具の遊び場は団地外からも来て幼児に多く利用されている。_丸2_低年齢の子どもは整備された遊び場を要望し、高年齢はスポーツできる場所や自由に遊べる広い空間を要望している。遊具の遊び場だけでは高年齢の子には対応できていない。_丸3_子ども一人の遊びが多い。大人同伴、中でも祖父母同伴が多いのは一人子政策の影響かと考えられる。_丸4_新旧住宅地で遊び実態に差がみられ、居住環境が子供の遊び行動に影響していることがわかる。
  • 高間 由美子, 佐藤 八千子
    セッションID: 1Ja-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:厚生労働省2003年3月「2000年市区町村生命表」の公表で、男性長寿1位が岐阜県郡上市和良町(旧 郡上郡和良村)80.6歳、2位が吉城郡国府町80.4歳であった。山村地帯と田園地帯の環境の違いから地域生活の共通点や相違点を見出し、健康長寿との因果関係を探る。生きがいとともに満足感のある暮らしが、高齢者のQOLの向上につながるからである。方法:65歳以上の高齢者を対象に留置き法による質問紙調査を実施した。和良町は配布数 290、有効回答数268、国府町は配布数1337、有効回答数1225で、調査期間2003年7月_から_2004年1月である。結果:調査結果から両町とも「自然の豊かさ」や「生まれ育った環境」には満足していた。「医療機関(診療所)」や「保健活動」に対しては満足感が高かったものの、その理由には差異がみられた。また、「医療にかかわる項目」では和良町は満足であったが、国府町では不満が多く特徴が表れた。「健康法」は男性長寿の要因として相応しい結果であった。生きがいの第1位は双方とも「働くこと」であり、「人との交流」においては和良町が閉鎖的な結果となった。「福祉サービス」や「日常生活の困りごと」からも地域性が顕著に表れた。このように2町の比較から長寿でありながら生活状況や生活意識に相違がみられ、その要因が今後の豊かな高齢社会の構築に重要な手がかりになると確信する。
  • 塚田 三香子, 伊藤 淳子, 山谷 昭美
    セッションID: 1Ja-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    (目的)秋田県は平成16年における老年人口の割合が26%を超え、国内でも高齢化の進んだ県として知られている。様々な介護予防支援事業が行われている中で、今回は厚生労働省の市町村支援事業である、「介護予防・地域支え合い事業」における「食の自立支援事業」の実施状況と食支援に対する住民の要望について調査した。この調査を通じ、地域、世帯状況、介護度の違いによるきめ細かな食サービスの実施がどのような基準にもとづいて選択されるべきかを検討することを目的とした。(方法)1.秋田市内16箇所すべての在宅介護支援センターに配食サービス登録者に関する質問用紙を送付し、回答結果を得た。2.秋田市を除く秋田県内68市町村役場の状況について、同様な方法で情報を得た。3.秋田県W町における住民の会食会に参加した住民から食支援に対する要望について調査した。4.秋田市内2箇所の町内で、民生委員を通じて質問用紙を配布後回収し、食支援に対する要望を調査した。(結果)1.秋田市においては、食の自立支援事業として配食サービスのみを実施している。それに対し、秋田市以外の市町村では回答のあった44市町村のうち、全体の68%は「食事会の開催」「高齢者を対象とした食生活相談」「高齢者を対象にした料理教室」の配食サービス以外の事業も合わせて行っていた。2.秋田市とそれ以外の町村では配食サービス登録者の性別、年齢別構成は同様であったが、要介護者の割合が秋田市では89.8%、それ以外では25.8%と大きく異なった。3.秋田市では食支援サービスとして配食を希望する割合が高いが、W町の調査では食材配達サービスの要望が高く、地域ごとに希望するサービスは異なる可能性がある。4.秋田市における調査では世帯状況によって料理頻度、買い物頻度に差が検出され、希望サービスの違いは地域の特質だけではなく、世帯状況の差にもよるものと推察された。
  • -居宅介護実習のための家政学教育における事前実習の効果-
    桂木 奈巳, 百田 裕子, 蔦木 チエ子, 中川 英子, 松田 佳奈
    セッションID: 1Ja-8
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的:これまで筆者らは、介護福祉士養成における家政系科目の充実を図るための一連の報告を行ってきた。ホームヘルパーの現場での業務内容の調査や居宅介護実習を経験した学生に対するアンケート調査等から、より現場に即した授業内容の必要性を実感した。平成14年度から居宅現場で重要と思われる業務内容のうち、家政系科目に関する内容について事前学習を実施してきた。今回は自立支援を想定した実習の効果について報告する。方法:本学の介護福祉専攻2年生に対し、居宅介護実習前の2回の事前学習を実施した。平成14年度の事前学習の結果を踏まえ、7月の居宅介護実習前の6月に講義と演習を行った。講義ではホームヘルパーの居宅での業務内容とその実態を、演習では買い物と車椅子生活者の自立支援のための洗濯を想定したロールプレイングを行った。これらの事前学習の前後2回と、居宅介護実習後にアンケート調査(調理、掃除、マナーに関する事柄等)を行い、その効果を検討した。結果・考察:事前学習の有効性について、事前学習および自立支援を想定した授業の有効性が示唆された。現行ではこのような授業内容は示されていない。従来の家政系科目の授業内容に加え、居宅現場の利用者の自立を目指し、それぞれの生活の場での援助のための演習が必要であることが考えられた。
  • -痴呆性高齢者を対象とした事例-
    湯川 夏子, 前田 佐江子, 大垣 まり子, 平嶺 富美子
    セッションID: 1Ja-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在、福祉の現場では、料理活動をアクティビティケアとして導入する機運が高まっている。料理活動を介して心身の障害の機能回復・症状の改善や、情緒の安定、豊かな人間関係の構築と生活の質(QOL)の向上が期待される。本研究ではこのように料理を療法的に活用する方法論の確立を目指している。今回は、介護老人保健施設における認知症(痴呆性)高齢者を対象とした料理クラブの活動の介入調査し、参加者に対する料理活動の効用を明らかにした。
    【方法】調査期間は平成16年1月からの1年間、介護老人保健施設痴呆専門棟入所者を対象とした料理クラブの様子を介入調査した。月1回から2回、合計13回昼食時に実施した。参加者は1回につき4名から5名、援助者は、介護職2名、管理栄養士1名、ボランテイア1名であった。援助者による参加者の個別評価、及び全体の観察評価を行った。
    【結果】参加者の「痴呆性老人の日常生活自立度」はIIbからIVで痴呆緩和を目的とするグループである。低・中程度の痴呆の人では、包丁の使用が可能であった。重度の人は、包丁の認知がむずかしく、調理が困難であったが、情緒の安定がみられた。同じメンバーで継続して実施することで、少人数のなじみの関係が築かれ、コミュニケーションが深まり、共同作業をスムーズにおこなえるようになった。また、料理の作業内容や会話に、自発性がみられるようになった。また、メニューではちらしずしなどのなじみのあるメニューで作業や会話が活発になった。以上のことから、痴呆性高齢者に対して、料理活動が様々な効用をもつことが明らかとなった。
  • 加藤 佐千子, 貴田 康乃
    セッションID: 1Ja-10
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的高齢化の著しいわが国では、高齢者介護の問題をはじめ、健康な高齢者をどのように支援いくかが、大きな課題である。介護の必要性の有無にかかわりなく、どこで、誰から、どのような支援を受けるかによって高齢者の生活の質に与える影響は異なる。高齢者が、生活に満足し、幸福感を感じながら過ごせる支援こそが、生活の質を向上させるものと考える。そこで、高齢者の生活の質を高める支援のあり方を考えるために、ここ数年、在所者数の増加傾向にあるE有料老人ホーム入居者を対象に、高齢者の生活満足や幸福感と食生活・身体状況・活動状況・生活意識との関連を検討した。
    方法 調査対象;終身利用権方式の介護付有料老人ホームに居住の高齢者138名。調査期間;2004年9月。調査方法;調査用紙を施設内戸別配布、質問紙留置法、回収率47.9%。調査内容;食生活に関する要因(食品摂取、食方法、食生活に関する自己効力など)、身体状況に関連する要因(休養、睡眠、通院治療、嚥下、食欲など)、活動状況に関する要因(運動、文化活動の程度)、および生活満足、幸福感、属性などに関する質問。分析;生活満足および幸福感と他の質問との関係をクロス集計し、χ2検定で有意差をみた。
    結果生活満足度、幸福感のいずれとも関連がみられたのは、食生活に関する事柄では、食品摂取と食生活に関する自己効力、及び生活意識(生きがい、孤独感・心配なこと、健康自己評価)、嚥下の状態などであった。以上のほかに、生活満足度と関連のみられたのは、睡眠、食欲、日常生活動作などであった。
  • 八幡(谷口) 彩子
    セッションID: 2Ja-1
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 筆者はこれまでに,家政学の成立過程に関する研究の一環として,明治初期に刊行された翻訳家政書の原典解明と19世紀中葉における英米の家政教育との関係の検討,明治10年代に刊行された「家事経済」教科書との比較研究を行ってきた.本研究では,明治初期の翻訳家政書と明治中・後期に刊行された高等女学校等「家事」教科書との比較のもと,翻訳家政書によって日本に移入された英米の家政理念や内容が,明治中・後期の「家事」教科書にどのような影響を及ぼしたのかについて検討することを目的とする.
     方法 明治初期の代表的な翻訳家政書7種類と,明治中期の家政関係書8種類,明治後期の高等女学校等「家事」教科書5種類を資料とし,家政に関する語彙,刊行の意図,家政目標などの家政理念,扱われる内容と範囲,などの観点から比較検討を行った.
     結果 1)明治中期から後期に至って,英米の家政書や翻訳家政書の直接的な影響が強いものから,日本独自の家事教育の内容を意識したものへと変化がみられる.2)「家事」教科書で扱われる内容や領域は,家庭生活全般に及ぶ広範囲なものとなっており,衣食住や経済などとあわせて,看護,衛生,育児などの比重が高まっている.3)女子における家政に関する教育の重要性が認識され,自然科学的記述も平易な形で採用された.4)このように,明治初期の翻訳家政書と明治10年代の「家事経済」教科書との間にみられた断絶面が,明治後期の高等女学校等「家事」教科書では再び復活している.
  • -日本家政学会会員属性の分析-
    木本 尚美
    セッションID: 2Ja-2
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 家政学における教育研究の可能性を考える際の基礎的研究として,学会の会員数の推移,学知の動向,会員の成層等から,家政学の知識構造の一側面を明らかにする. [方法] 日本家政学会会員名簿の,1994年,1998年,2004年に登録された正会員の出身,所属,専門領域,取得学位等を分析し,近年の家政学の知識構造の動向を考察した.[結果] 学会の規模は,これまで成長・充実・安定期を経緯してきたが,1990年代後半から減少に転じている.これは家政系短大の衰退にともない,短大所属会員の減少が,要因の1つであることが明らかにされた.又近年会員の中に博士学位(学術)の取得者が増加している一方で,それ以外の学位取得会員の減少が明らかになった.こうした知識構造の変化は,家政学が自立し始めていることを示唆しており,単なる寄せ集めの学から学際的領域としての意味合いを強める構造になってきているといえる.しかし,会員の専門領域には著しい偏りがあり,いびつな構造であることが示唆された.すなわち家政学の知識構造は,自然科学,社会科学,人文科学の諸学のバランスが悪く,そのことが家政学に曖昧な印象を与えているといえる.さらに,会員ならびに学位取得者を多数輩出する少数大学が学会の成層を形成していることが明らかにされた.このことから学会内には家政学の教育研究のリーダー的大学群が認められた反面,寡頭支配を生みだす可能性も存在しているといえる.
  • 増田 勝己, 島田 貢明, 岸松 静代, 谷 洋子
    セッションID: 2Ja-3
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    目的 私達は発想法を用いて授業を展開することにより、学生参画の授業が容易に実施でき授業態度にも積極性がみられるなどの教育効果が得られることを明らかにした。しかし、同じ発想法を何回も繰り返すと、基本となる連想過程の条件である名詞や形容詞で考えることや文章をつくるなどの制約が学生には足かせとなり、自由に連想ができずに内容が類似した授業改革案しか提案されなくなった。そこで、制約を設けずに数回の連想を行なった後にテーマにあった解決法を探る方法(連想結合法)で学生に提案を求めたところ、新たな授業実施案を得ることができた。それに従い授業を行なった結果、前回と同様な教育効果が得ることができたので報告する。
    方法 「授業を遊ぶ」というテーマを設定して、日頃学生達が行なっている遊びを30項目あげさせて、それから数回の連想を行なわせた。最後の連想内容とテーマを結びつけた解決法を探り、授業案をつくらせた。そのなかの4案を用いて授業を行ない、アンケート調査から授業を評価し比較検討した。
    結果 実施した授業内容は(1)質問カード交換による相互学習(2)親子クリスマスケーキづくりの実習指導(3)シャッフルクイズ(4)問題交換試験の4法であった。(1)では他のコース学生とのコミュニケーションがとれていたという項目や授業を始める前に十分予習をしたという項目で有意の効果を示した。(2)は授業の内容はわかりやすく、まとまりがあったという項目や授業に対して熱意があり、刺激されることが多かったという項目などで効果があった。また、授業の積極的な参加を促した。
  • 楠木 伊津美, 石井 よう子, 松坂 裕子, 飯村 しのぶ, 高瀬 淳, 佐藤 祝, 高橋 カツ子, 中村 涼, 川中 信
    セッションID: 2Ja-4
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本報は、大学における家政学教育のあり方を見出そうとする研究の一部である。これまで、家政学教育の内容・方法や北海道内の高等学校家庭科教員のカリキュラムの総合化における意識・実態などにについて報告してきたが、本報では生活系大学学生の高校家庭科の既習内容に関する認識について調べた結果を報告する。【方法】藤女子大学の人間生活学科、食物栄養学科、保育学科の1年生を対象に、高校での家庭科の履修状況や学習内容についてアンケートを行った。学習内容は3学科の専門科目との関連性から食生活領域を取り上げ、高校教科書の索引から抽出した語句について、学習の有無を質問した。調査は2004年12月に集合調査法により行い、230名から回答を得た。【結果】調査対象者の77%が家庭科学習は大学入学後の専門教科を学ぶための基礎として役立つと捉えていることがわかった。しかし、家庭科における食生活学習は自分の健康管理や食生活には役立っていないと答えた者が41%であった。食生活関連の語句に関する学習では、5大栄養素については70_から_90%、食品群別摂取量の目安82%、調理器具の扱い方などについては74%が学習したと答えた。しかし、加工食品関連の語句や環境汚染と食物、輸入食品の安全性、ポストハーベスト、食料自給率など現代の食生活問題に関わる語句については、学習した印象が薄い傾向が見られた。
  • 藤木 香苗, 長谷部 清, 飯村 しのぶ, 高瀬 淳
    セッションID: 2Ja-5
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】学習指導要領における高校家庭科の教科目標には「人間の健全な発達と生活の営みを総合的にとらえ」ることが掲げられている。しかし、家庭科教育においてこの目標がどのように実践されているかは甚だ疑問である。そこで総合化のあり方として、衣食住それぞれに関する内容の知見の一つ一つを直接に結びつけていくことが重要であるとの認識に基づき、本報では高等学校「家庭総合」を構成する「生活の科学と文化」を取り上げ、衣食住に関する教科書の記述内容の分析を通して、生活の営みを総合的にとらえる方法を考察した。【方法】高等学校「家庭総合」の教科書(7社8冊)を対象として、学習指導要領解説をもとに食に関する記述内容を分類整理した。次にこの分類を柱として、食と衣と住に関する内容のうち、直接的に結びつけることのできる箇所(キーワード)を抽出した。【結果】衣食住に関する内容の総合化をはかる際に重要なことは次の2点である。(1)衣食住の各内容においては固有の学習内容があり、その中での体系的な学習を前提として、家庭科における総合的な学習を考える必要がある。(2)食に関する内容と衣または住に関する内容を直接的に結びつける箇所(キーワード)としては、「資源・環境」「選び方・安全」「文化」が抽出された。しかし演者らが2004年に北海道内全高等学校を対象として実施した食に関する家庭科教育の実態調査では、「文化」はさほど重視されておらず、「資源・環境」「選び方・安全」は指導を割愛しているという結果が得られている。よって「資源・環境」「選び方・安全」「文化」のキーワードを利用して、衣食住を結びつけた家庭科教育の実践がどのように可能かを考える必要がある。
  • 桑畑 美紗子, 簑田 諭美
    セッションID: 2Ja-6
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    日本家庭科教育学会誌(以下,学会誌)に掲載された研究論文および資料(以下,報文)において,子どもの「生活現実」がどのようにとらえられているかを明らかにする.
    【方法】
    学会誌の創刊号(1960年度)から47巻4号(2004年度)における報文のタイトルから,生活現実に関わる記述があると思われるものを選び出し,それらを精読して対象報文を確定した.確定の視角は,生活現実が記載されているか,それが幼児・児童・生徒に関わるものであるかの2点である.対象報文の中から読み取った生活現実に関わるキーワードを類型化することで,報文の著者らがとらえている子どもの生活現実の内実を明らかにした.なお,本研究における「生活現実」とは,子どもの暮らしている日々のありさまに関する記述や統計値を意味している.
    【結果】
    1.対象報文は,研究論文179編,資料5編,計184編で,学会誌に掲載された研究論文の18.3%,資料の7.1%,計17.6%を占めていた.
    2.対象報文における子どもたちの校種は,幼児3.8%,小学生46.7%,中学生46.2%,高校生38.0%であった.
    3.きびしい状況で暮らす子どもに着目した報文は少なかった.以上のことから,学会誌では子どもの生活現実にふれた報文が少なく,そこでの生活現実は多数を占める子どもたちについてであると考察した.
  • 藤田 昌子, 藤田 智子
    セッションID: 2Ja-7
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/12/08
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】「保育所保育指針」や「幼稚園教育要領」において、遊びは自発的・主体的活動であり、心身の調和のとれた発達に必要な体験としてその意義が述べられている。本研究では子どもの遊びの手がかりとなる児童文化財として「布の絵本」をとりあげる。「布の絵本」はストーリーのおもしろさだけでなく、アップリケを触ったり、ボタン・スナップ・マジックテープなどをつけたり、はずしたりして楽しめ、多様な遊びができることで注目されている。よって、保育・幼児教育教材における布の絵本の意義について考察することを本研究の目的とする。
    【方法】布の絵本に関する文献分析、福岡県内の短大生及び専門学校生を対象とした質問紙調査、及び学生の作品製作後のレポート分析
    【結果】(1)布の絵本の特性は、「保育所保育指針」「幼稚園教育要領」の「ねらい」及び「内容」における「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域を満たすことのできる要素をもっていた。布の絵本は子どもの働きかけによって遊び方が多様にあり、遊びを発展させるものであった。また、手作りであるため、子どもの発達レベルや生活内容に合わせて、遊びに変化をもたせることができ、子どもの心身の発達にふさわしい児童文化財といえた。(2)学生は、布の絵本の製作を通して、児童文化財をつくる重要性や楽しさを認識でき、子どもの発達内容への関心も深まっていた。(3)多くの学生が布の絵本のもつ多面的な意義を認識していた。布の絵本は心身の発達だけでなく、障害を持つ子も持たない子も遊べるというユニバーサルデザインの理念も含むものとして認識されており、保育・幼児教育を学ぶための教材として意義深いものといえた。以上より、布の絵本を教材として用いることは学生にとっても、子どもにとっても意義があるといえ、今後、保育・幼児教育において布の絵本はより重要な教材になると考えられた。
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