コンピュータ&エデュケーション
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43 巻
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
特集「学習への動機づけとICT利用教育」
  • -小学校英語授業を例に-
    安達 理恵
    2017 年 43 巻 p. 12-17
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     日本の小学校において2020年から英語が教科として開始となるが,日本では,ほとんど英語を日常的に接する機会がないため,英語習得には動機づけが肝要となる。それには,小学生のうちに,具体的かつ明確な目的意識を育成することが重要で,それには国際交流活動などICTを利用した教育が望まれる。近年,多様なICT機器を活用する国も増え,筆者が見学したアジア諸国では教育に相当な予算を投資し,効果的にICT教育を実践していた。またイタリアのCLIL授業でも,ICTをさまざまな教育実践に活用していた。日本でも小学校外国語学習ではより豊かなICTの活用が求められるだろう。

  • -ゲーム要素による学習態度の変容-
    山内 真理
    2017 年 43 巻 p. 18-23
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿では,ゲーム型授業応答システムであるKahoot!を紹介し,授業実践での観察にもとづき,そのゲーム要素による強力な参加促進効果を論じる。習熟度の低い英語学習者の多くは学習活動に対して否定的な態度でのぞみ,そのことが言語学習を妨げてきたと想定されるが,2017年の習熟度の低い学生向けの授業では,受講生の英語学習に対する態度がより積極的なものに変化し,受講生自身もスキルの向上を実感していた。学習活動への積極的参加がスキル向上に寄与したと考えられることから,学びへの積極的参加を促すKahoot!は,習熟度の低い学習者の支援に重要な役割を果たすと言える。

  • -学習意欲を高めるための工夫と改善-
    本田 直也
    2017 年 43 巻 p. 24-29
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     講義型授業において,主体的・対話的で深い学びを実施する方法として,授業外にオンライン協働学習を行うための方法を設計し,実践した。実施初年度にはそれなりの学習効果が認められたが,一部の学習者は無断で協働学習から離脱するなど,協働学習の効果を下げる動きも見られた。翌年度の実施においては,学習動機付けの工夫を行い,学習者の意欲を高め,無責任な離脱者を防ぐことに挑んだ。学習者の参加状況やアンケート調査のデータから,年度間の変化と改善の効果を明らかにする。

  • -学修内容の理解と学修への積極的な取り組みを目指した試行の結果-
    田畑 忍, 守屋 誠司, 山口 意友, 魚崎 祐子
    2017 年 43 巻 p. 30-35
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     大学における通信教育課程の指導方法には,「面接授業」「印刷教材等による授業(以下,テキスト学修)」「放送授業」「メディアを利用して行う授業(以下,メディア授業)」の4つがある。このうち本学では,面接授業とテキスト学修による指導を行っている。それぞれの指導方法にはメリットとデメリットがある。本学では今年度,メディア授業と面接授業を組み合わせたブレンディッドラーニング(以下,ブレンディッドスクーリング)を実施した。また,メディア授業の期間中に遠隔でのグループ学修を課した。本稿では,ブレンディッドスクーリングの試行結果について報告する。

事例研究
  • 小松 隆行
    2017 年 43 巻 p. 36-42
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     本稿では,PC上で音楽を制作するDesk Top Music(DTM)のソフトウェアGarageBandによる音楽制作(作曲)のための授業「音楽情報処理」において,音楽的スキルが不十分な学生が楽曲作成する際の困難さの問題点を,独自に考案した楽曲作成の手法を用いた授業を構成することで改善・改良できた事例について述べる。この方法を用いると,本格的な楽曲制作のためにコード理論などの基本を理解し利用しながら演習し,コード進行作りとメロディ作りが容易に実現できる。調性を崩さずにコード進行の響きとそのリズムに合っている破綻していないようなメロディが作りやすい工夫がなされている。

  • -ルーブリック活用が評価の信頼性・妥当性におよぼす効果の検討-
    鈴木 伸子, 石川 奈保子, 向後 千春
    2017 年 43 巻 p. 43-48
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,大学院でのオンライン授業においてルーブリックを活用した相互評価を実施し,信頼性と妥当性を検証した。その結果,ルーブリックを活用した相互評価では,観点の合計点において十分な信頼性は得られなかった。しかし活用しなかった場合に比べ,信頼性と妥当性が向上することが示唆された。また,ルーブリックを活用した相互評価では,観点の評価基準が客観的で,評価者が迷わない表現であれば信頼性・妥当性ともに高くなる傾向があり,反対に主観的な表現の場合は信頼性が低くなる傾向が示唆された。これらのことから,ルーブリックを導入することで相互評価の信頼性と妥当性は向上するが,今回の結果からは十分な信頼性が確保されているとはいえず,学生同士の評価を科目成績に取り入れるには検討の余地が残った。

  • -弱いロボットの中長期的な相互作用による検証-
    小林 渓太, 寺本 洋次郎, 塩田 真吾, 和田 翔太, 小野田 弘士
    2017 年 43 巻 p. 49-54
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     日本の若者の自尊感情は海外諸国と比較すると低い傾向にあり,先行研究からも自尊感情が高ければ高いほど学力が高くなるという報告もあることから,学校教育において子どもたちの自尊感情をどう高めるかが重要な課題である。本研究では,賢くないコミュニケーションロボット(弱いロボット)を活用し,子ども達にロボットの面倒をみてもらいながら中長期的に関わらせることで,子どもたちの自尊感情を高めることができるかどうかを検証した。その結果,時間の経過とともに,子どもたちが「ロボットの話を聞いてあげる」という内容が増加し,ロボットの話に合わせることでコミュニケーションを成立させていくようになるという結果が得られた。また,事前事後のアンケート結果を比較すると,子どもたちの自尊感情が有意に上昇した結果が得られた。

  • ―定性的な分析にもとづいて―
    阿濱 志保里, 阿濱 茂樹, 中田 充
    2017 年 43 巻 p. 55-60
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     情報社会の進展に伴い,携帯電話やスマートフォンなどのメディア端末機器の所持年齢の若年化が進んでいる。児童生徒の適正な情報活用のため,メディア端末機器を提供する家庭教育の役割は大きく,家庭での考えや利用状況などが影響される。そこで,本研究では,保護者のメディア端末機器の利用状況や実態が児童生徒にどのような影響を与えているのかを計量テキスト分析に基づいて解明を試みた。その結果,保護者は学年進行に伴い,情報安全を含めた情報の活用について児童生徒自身が自ら考え,行動することを期待する一方,フィルタリング等の機能に頼る傾向もみられた。また,情報機器の安全な利用に関しては,親子が共にメディア端末機器に触れることでルールやフィルタリングの機能を理解していることが示唆された。

論文
  • -ローマ字教育との関連から-
    佐田 吉隆
    2017 年 43 巻 p. 61-66
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     本研究では,ローマ字教育とローマ字入力の関係に注目した。150名の大学生が,漢字変換なしのローマ字テキスト入力において,どのようにローマ字入力を行うか,ローマ字入力の速度で比較した。その結果,ローマ字入力は,小学校で学ぶ「訓令式」が基礎になっていることがうかがえた。その結果,打鍵数の多くなる綴りを選択していたり,動かしにくい指を使った綴りを選択する傾向がみられた。また,拗音に関する綴りの知識が欠落している可能性が高く,入力速度の劣る学生は,ローマ字の理解も不十分であることがうかがえた。

  • ―若者がPCよりもスマートフォンを好んで使用する理由の一考察―
    長澤 直子
    2017 年 43 巻 p. 67-72
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     大学生がスマートフォンで文字入力をする際,日本語入力では90%以上がフリック入力・トグル入力を利用し,外国語入力ではフリック入力・トグル入力とQWERTY配列での入力がほぼ50%ずつであることがアンケート調査によって明らかになった。そして,PCでのタッチタイピング習熟度とスマートフォンでの外国語入力にQWERTY配列を利用する人との間には有意な関連が見られた。日本の大学生がPCよりもスマートフォンを好む理由のひとつには,日本語入力に五十音との親和性が高く入力技能習得が容易なフリック入力が使えることが考えられる。

  • 高島 真美, 高見 美樹, 高須賀 千惠子, 石垣 恭子
    2017 年 43 巻 p. 73-78
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     インターネットを経由した講義を自施設において集合教育形式で受講する「施設集合型オンデマンド配信研修」の効果を検証した。対象はA法人の9病院に所属する看護管理者とし,研修前後に質問紙調査を実施した。質問は研修テーマに関する知識や行動に関する独自のものと「看護管理者コンピテンシー評価尺度;NACAS」で構成した。研修前後で比較可能なデータは48件(有効回収率研修前59.3%,後63.2%)であった。研修テーマに関する知識及び行動に関する質問の回答について,研修前後で差を検証したところ,「看護管理者として必要な労働基準法の基礎知識を身につけている」についてのみ有意差が認められた。看護管理者コンピテンシーは48名全体では上昇傾向にあるものの一部バラつきが見られた。対象を看護師長以上(33名)に限定すると有意に上昇していることが確認された。また,研修後回答者の86.5%が今後も施設集合型オンデマンド配信研修の受講を希望していた。

  • 安藤 公彦, 柴田 千尋, 稲葉 竹俊
    2017 年 43 巻 p. 79-84
    発行日: 2017/12/01
    公開日: 2018/06/01
    ジャーナル フリー

     コンピュータ支援協調学習研究において,相互作用の活性化のメカニズムを分析し,協調プロセスがうまく進行していないグループを識別する指標を抽出し,適切な足場掛けを行う指針を得ることは,きわめて重要な課題といえる。協調プロセス分析のため,会話データへのコーディングと統計的分析が研究方法としてしばしば採用されるが,本研究では,深層学習技術による高精度のコーディングの自動化の手法を開発し,その精度と有効性を評価した。その結果,開発手法が既存の機械学習のベースラインを凌駕する正解率を実現することが明らかになった。また,大規模な協調学習データを対象にした,リアルタイムでの協調プロセスの解析と教育的介入の実現可能性が示唆された。

編集後記
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