室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
23 巻, 1 号
選択された号の論文の2件中1~2を表示しています
原著論文
  • 松村 年郎, 生田 実香, 森田 孝節, 山下 洋一, 今中 努志, 一條 佑介, 松延 邦明
    2020 年 23 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究においては, 壁紙などから放散するVOCsをSPME-GC/MSで測定する方法を検討した。具体的には簡易チャンバー(容量640 mL)に壁紙サンプル(7 cm × 7 cm, 49 cm2)をセットし, チャンバーを28 ℃の恒温槽に30分間放置し, 放散してくるVOCsをSPME(ファイバー)で捕集する。その後, SPMEをGCの注入口に差し込み, 加熱脱着-GC/MS分析を行う。本法の繰り返し精度は相対標準偏差で23.3 %以下, 定量下限値(放散量として)は26.8 μg/m2・h以下である。 本法は溶媒による抽出操作もなく, SPMEは繰り返し使用も可能で経済的, かつ, 高感度測定が可能である。なお, 本法の評価はJIS A 1903と同様, チャンバーに対象成分の標準液を添加・気化し, その回収率から実用性を評価した。その結果, 本法は良好な再現性が得られたことにより, 簡易放散量試験法として有用性が示唆された。
解説
  • 災害時住環境における真菌汚染の実態と対策
    渡辺 麻衣子
    2020 年 23 巻 1 号 p. 11-19
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/01
    ジャーナル フリー
    災害時には, 住環境の温度・湿度がコントロール不能に陥る, または清掃が行き届かない等住環境衛生に問題が生じやすいことから, 真菌の異常発育の状態に陥りやすい。2011年3月11日に発生した東日本大震災では, 被害規模が甚大かつ広範囲に及んだこと, 津波被害が顕著だったこと, 特徴的な原子力発電所事故が発生したこと等から, 避難施設, 仮設住宅, 津波浸水家屋, 原発周辺警戒区域内の居住者不在の家屋について, 室内環境の真菌汚染程度の悪化が懸念された。著者らは, 2011年から2014年にかけて, 様々な微生物学的調査を行った。その結果, それぞれの住環境において, 重篤な真菌汚染が発生していたことが明らかとなった。さらに, 一部住環境では, 呼吸器アレルギー疾患や住環境の真菌毒汚染による健康リスクがあることが示唆された。 大規模災害時の住環境は, 質的・量的に真菌叢が変化しやすい環境であることを認識し, 衛生状態に留意しなくてはならない。本解説では, 東日本大震災被災地の複数タイプの住環境を取り上げ, それらの真菌汚染の実態とそこからもたらされる居住者の具体的な健康リスク, および真菌汚染対策に関して, これまで得られている知見について紹介したい。
feedback
Top