室内環境
Online ISSN : 2186-4322
Print ISSN : 1882-0395
ISSN-L : 1882-0395
11 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
  • 村田 真一郎, 関根 嘉香, 佛願 道男
    2008 年 11 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    家庭用冷蔵庫内のガス状物質としてエチレン,臭気物質などについてはこれまでに広く研究されているが,アルデヒド・ケトン類の存在についてはほとんど知られていない。アルデヒド・ケトン類の一部は,人の健康に有害な影響を及ぼすことが知られており,また生鮮食品中の酵素活性に影響を及ぼすことが報告されている。そこで本研究では,実際の家庭で使用されている冷蔵庫内の空気中アルデヒド・ケトン類濃度の実態を把握するため,DNPH含浸カートリッジ-アクティブ・サンプリング法により庫内空気捕集後,高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって定量分析を行った。その結果,測定対象とした冷蔵庫の冷蔵室および野菜室の計15室においてホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アセトン,アクロレイン,プロピオンアルデヒドおよびブチルアルデヒドが検出された。さらに,検出された各成分について庫内濃度と冷蔵庫が設置されている居室の室内濃度を比較したところ,アセトアルデヒド,アセトンおよびアクロレインは庫内濃度の方が有意に高く,庫内に発生源が存在することが示唆された。特にアセトアルデヒドの庫内濃度は高く,平均59μg/m3,最大値が150μg/m3であった。これら庫内濃度に及ぼす要因を考察するため,冷蔵庫の仕様,使用状況および内容物をパラメーターに各試料についてクラスター分析を行い,クラスター毎に濃度レベルを比較した。その結果,冷蔵庫内のアセトアルデヒドおよびアクロレインの濃度は,使用者の世帯構成や内容物によって影響されると考えられた。
  • 溝口 忠, 堀 雅宏
    2008 年 11 巻 2 号 p. 83-92
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    建築基準法改正前後の新築・既存集合住宅においてホルムアルデヒド・VOC・SVOC濃度の経時変化,気候,換気回数,サンプリング条件との関係をみるために実住宅で測定するとともに,実験用住宅における測定結果と合わせて,室内環境改善に資する観点から考察を行った。
    ホルムアルデヒドの温湿度特性,VOCについては化学種別の低減特性と木質材料由来のαピネン,TVOCの評価法などについて考察するとともに,ホルムアルデヒドのサンプリング条件やSVOCの畳防ダニ剤の使用量削減の提案を行った。換気については既存のサニタリー換気装置の有効性と窓開け換気後のサンプリングタイミングが測定値に及ぼす影響について検討した。また,入居後のホルムアルデヒド濃度を非居住住宅と比較するとともに,高層集合住宅のフロアにおける温熱的条件によるホルムアルデヒド濃度への影響を明らかにした。
  • -室外汚染源との関連
    Yuri ISHIBASHI, Jun YOSHINAGA, Atsushi TANAKA, Haruhiko SEYAMA, Yasuyu ...
    2008 年 11 巻 2 号 p. 93-101
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    汚染源が明確になっていないわが国の室内塵中鉛及びカドミウムについて,その汚染源として室外起源を想定して検討した。国内41の家庭から,室内塵,周辺土壌,室外ダスト(窓枠にたまったダスト)の提供を受け,それらに含まれる鉛及びカドミウム濃度を混酸分解-ICP質量分析法により定量した。それぞれの試料の鉛濃度は54.1, 31.7, 153mg/kg,カドミウム濃度は0.932, 0.563, 1.74mg/kgであった(いずれも中央値)。室内塵中鉛,カドミウム濃度は諸外国で行われた既往の研究の結果に比べて低い濃度であり,わが国の室内塵汚染のレベルが低いことが伺われた。室内塵中鉛,カドミウム濃度は,周辺土壌,室外ダスト中濃度とごく弱い正の相関関係があったのみであり,室外汚染源はほとんど寄与していないと解釈できる。これは諸外国で得られている結果と異なるものである。また,これらの濃度は住居・居住者関係の変数(戸建て/集合住宅,喫煙者・ペットの有無,暖房の種類,床材質)との関連も見られなかった。今回検討した以外の住居・居住者関連要因が室内塵中の鉛やカドミウム濃度の決定要因であると考えられた。
  • 中島 大介, 塚原 伸治, 影山 志保, 白石 不二雄, 藤巻 秀和
    2008 年 11 巻 2 号 p. 103-109
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    1997年に採択されたマイアミ宣言や,2006年に採択されたドバイ宣言に見られるように,小児や胎児の健康保健に関する認識が高まり,様々な取り組みが始まっている。室内空気中の代表的な汚染物質のひとつであるトルエンについても,従来から知られている毒性に加え,発達期曝露による脳・神経系への影響が明らかになりつつある。トルエンのような揮発性有機化合物の生体影響研究においては,毒性影響を調べるとともに体内動態も確認する必要があるが,胎仔や新生仔を研究対象とした場合には,微量試料に適用可能かつ簡便な手法が求められる。マイクロ固相抽出法の利用はそのひとつとして有用である。未成熟個体の脆弱性に注目した感受性研究は今後さらに進められる必要がある。
  • 柳 宇
    2008 年 11 巻 2 号 p. 111-116
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    日本国民の1/3が何らかのアレルギーに罹患していることが知られている。アレルギーを引き起こす原因物質であるアレルゲンには様々のものがあり, その1種としてかびが挙げられる。かびに対しては環境基準を基に規制する必要があるが, 殆どのかびに関する“量一反応関係”が把握されていないため, 健康影響を基に室内かびに関する基準を制定することは難しいのが現状である。
    本報では, かびによる人の健康への影響, かびの健康リスクの概念とその概要を紹介した上で, 環境基準の制定方法とかびに関する基準の現状について述べる。
  • 岩田 利枝
    2008 年 11 巻 2 号 p. 117-123
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    本稿では, まず光環境の基礎として, 視覚の成り立ち, 測光量の解説を行い, 照明の歴史について昼光照明と人工光照明に分けて, 簡単に示した。光環境の要件としては, 2007年に制定されたJIS基準「屋内作業場の照明基準」に挙げられた項目(輝度分布, 照度, グレア, 光の指向性, 光の色, 演色性など)を中心に解説した。視野内の輝度分布については, 輝度が高すぎるとグレアを生じ, 輝度対比が大きすぎると, 視覚的疲労感を生じる。照度基準については「作業能率の向上と照明費の採算点」とJISの照度基準に書かれているように, 総合的な判断において定められた値で, 決定根拠となるようなデータはないことなどを述べた。
    さらに筆者の専門である昼光照明について述べた。光源としての利点として変動と分光分布を挙げ, 直射日光の影響や窓の心理効果についても解説した。
    最後に, 室内光環境の現在と今後の方向性として, 低炭素型社会と光環境, 光の健康影響についてまとめた。照明の各種対策によるCO2削減の試算を行い, 例えば「もし, 日本の白熱電球をすべてLEDに換えたら」CO2削減量は4百万t-となり, 計算上はこれで削減目標を達成できてしまうことを示した。光の健康影響については概日リズムの一つであるメラトニン分泌抑制を中心に述べた。
  • 光崎 純, 平野 耕一郎, 白砂 裕一郎, 中井 里史
    2008 年 11 巻 2 号 p. 125-134
    発行日: 2008/12/01
    公開日: 2012/10/29
    ジャーナル フリー
    室内空気質の測定において, アクティブ法, パッシブ法, 検知管法が採取・測定法として挙げられるが, 現場の状況に応じたサンプリング法や分析法を適切に選択することは, 苦労を伴う作業となる。本研究では, 拡散型サンプラーを用いるパッシブ法による室内環境測定や, サンプラーの使用実態の問題点を探り, どのような測定を行うことが望ましいのかについて検討することを目的とし, 特に分析手法やパッシブサンプリングでの定量において重要である捕集速度(以下, SRとする。)等に関する現状や使用実態に関して調査票による調査を行った。調査対象は, 地方自治体の衛生・環境系の研究所(以下, 公的機関とする。), および薬剤師会関係試験検査センター(以下, 薬剤師会とする。)の室内空気質測定担当者とした。調査票を配布した173施設中, 135施設(公的機関95施設, 薬剤師会40施設)より回答を得ることが出来た。調査の結果, アクティブ法を試料採取方法として選択する理由は, 「分析精度」と「信頼性」であり, パッシブ法では, 「作業の容易さ」であった。また, パッシブ法での定量において必要なSRは, 使用しているサンプラーの説明書に記載されている値を使用しており, 値が記載されていない物質は, 分析対象としていないことが明らかとなった。パッシブ法に対する意見として, SRの信頼性や分析精度に関するものが多く, 適切な分析方法やSRの情報提供を行うことが必要である。
feedback
Top