東京都および近県に所在する38軒の住宅を対象として,寝室および寝具のハウスダストに含まれるアレルゲン生物(室内塵性ダニ類,チャタテムシ,真菌)の分布状況と春季,夏季,秋季の3シーズンの季節変動を調査した。38軒から分離されたコナヒョウヒダニ(
Dermatophagoides farinae)の総数は寝具で8,783頭,床で30,927頭であった。一方,ヤケヒョウヒダニ(
D. pteronyssinus)の総数は寝具で428頭,床で505頭であった。ダニ抗原も同様の傾向を示し,
Der f 1の方が
Der p 1より有意に多かった。近年の本邦住宅では,コナヒョウヒダニの割合が極めて高くなっていることが明らかになった。昆虫では,チャタテムシが多く,総数は寝具で213頭,床で1,628頭であった。コナヒョウヒダニおよびチャタテムシは春季よりも夏季と秋季に増加する傾向が見られた。一方,ダニ抗原とカビは,床では春季より夏季と秋季に増加したが,寝具では有意差が見られなかった。コナヒョウヒダニおよびチャタテムシは絨毯や畳よりもフローリングの方が有意に少なかった。また,コナヒョウヒダニおよびチャタテムシは床の掃除頻度が多いほど,有意に少なくなる傾向を示した。
真菌については,床と寝具ともにコウジカビ属(
Aspergillus),クロカビ属(
Cladosporium),コウボ(yeast)の分離頻度が高かった。特に好湿性の真菌の分離数(cfu/total dust:全ハウスダストから分離されたコロニー数)は,床より寝具で有意に多い傾向を示した。
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