室内環境
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19 巻, 1 号
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原著論文
  • 中川 翔太郎, 橋本 明憲, 高橋 俊樹
    2016 年 19 巻 1 号 p. 1-10
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    窓から室内に侵入したスギ花粉挙動を,数値流体力学と粒子軌道計算の連成シミュレーションにより解析した。シミュレーションには群馬大学で開発した“数値流体力学及び浮遊粒子状物質挙動の特性解析ツール群:CAMPAS”を用いた。本研究では,窓と換気扇を有する室内を想定し,大規模な換気時の室内花粉飛散を定量的に示し,また弱換気時の空気清浄機導入による花粉捕集効果を明らかにすることを目的とした。窓を花粉の侵入源とし,窓のある壁面に対して左側面壁奥上に換気扇がついているものとモデル化した。換気回数8.3回/hの大規模換気時における花粉の室内侵入を調べるため,床面への落下率,換気扇からの排出率,または落下花粉を計算した。窓の対面壁近傍,換気扇の下などに多数の花粉が床面へ落下することがわかった。次に換気回数1回/hの弱換気時に空気清浄機を稼働した際の花粉捕集を調べた。空気清浄機の設置位置は,右側面壁中央下部とした。捕集できる花粉数は落下花粉数の半分程度であることがわかった。また,空気清浄機の生成気流により,窓から侵入した花粉を広く拡散させることも明らかになった。
  • 小野 恭子, 光崎 純, 中村 淳
    2016 年 19 巻 1 号 p. 11-22
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本全国を対象に家庭用防虫剤(パラジクロロベンゼン系(PDCB),ピレスロイド系(PYRE),その他)の使用量をオンラインアンケートにより調査した(N=1715)。アンケート回答者の属性は既存の統計等のそれと大きく異ならず,得られた使用量データは実態を反映していると判断された。世帯ごとの使用量の差異が大きく,調査した全世帯では,世帯あたりPDCB防虫剤使用量の中央値が0 g,95パーセンタイル値(95%ile値)が784 gでありPYREについてはそれぞれ0 g,3.85 gであった。寝室のPDCB防虫剤使用がある世帯に限ると,中央値に対する95%ile値の比は4.6であった。zDCBとPYREともに寝室と居室の使用量に正の相関(r=0.66)が見られ,複数の部屋で濃度が高くなるリスクがある世帯の存在が示唆された。後進ステップワイズ法による重回帰分析を行い,使用量と関連の高い因子を特定した。寝室のPDCB使用量の場合,クローゼットの数,居室のPDCB使用量,年齢が大きくなるにつれ増え,衣装収納の数,寝室のPYRE使用量が大きくなるにつれ減る,というモデルが得られた。定常状態を仮定したボックスモデルにより,使用量から室内濃度を試算した。PDCBでは中央値で実測値の0.2倍,95%ile値で2倍,PYREでは95%ile値で2倍であった。本研究により,室内濃度の実測値の乏しいPYRE等についても比較的簡単な仮定のもとで使用量から曝露レベルを推定できる可能性が示された。
  • 達 晃一, 中井 里史, 松永 和彦, 内藤 敏幸, 佐藤 勝二, 星野 邦広, 曽根 孝, 岩崎 貴普, 臼井 信介
    2016 年 19 巻 1 号 p. 23-36
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    日本自動車工業会(JAMA)は,車室内の揮発性有機化合物(VOC)の低減に対する取り組みを発表した。この自主規制に合致しているかの検証は実車による実測が必要となり,検証結果を得るまでには時間を要する。本研究は,実車検証が不要となるように部品のVOC放散速度を用いて直接車室内VOC濃度を予測する手法の確立を目的とした。研究対象とした小型トラックの実測から,予測対象成分候補としてホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,トルエン,エチルベンゼン,キシレン,パラジクロロベンゼン(p-DCB)を選定した。次に,部品測定からVOC発生源となっている6部品を特定した。しかし,アルデヒド類は車両の塗装からの放散があったため予測対象成分の候補から除外した。次に,部品のVOC放散速度測定に用いるチャンバー法について,表裏を考慮する必要がある部品についての測定方法を検討し,JASO Z125条件下における車室内の部品温度と換気回数測定の結果を基に,チャンバー測定条件を決定した。部品個々のVOC放散速度の合算値から車室内濃度を予測した結果,実測値と予測値の差はトルエンが13%,エチルベンゼンが11%,p-DCBが26%,キシレンは実測値と予測値が同一の値で,車室内VOC濃度の予測が可能であることがわかった。
  • 川上 裕司, 橋本 一浩, 小田 尚幸, 神山 典子, 山崎 史, 西澤 孝士, Toby SAVILLE, 麻野 信弘, 福冨 友馬
    2016 年 19 巻 1 号 p. 37-47
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    東京都および近県に所在する38軒の住宅を対象として,寝室および寝具のハウスダストに含まれるアレルゲン生物(室内塵性ダニ類,チャタテムシ,真菌)の分布状況と春季,夏季,秋季の3シーズンの季節変動を調査した。38軒から分離されたコナヒョウヒダニ(Dermatophagoides farinae)の総数は寝具で8,783頭,床で30,927頭であった。一方,ヤケヒョウヒダニ(D. pteronyssinus)の総数は寝具で428頭,床で505頭であった。ダニ抗原も同様の傾向を示し,Der f 1の方がDer p 1より有意に多かった。近年の本邦住宅では,コナヒョウヒダニの割合が極めて高くなっていることが明らかになった。昆虫では,チャタテムシが多く,総数は寝具で213頭,床で1,628頭であった。コナヒョウヒダニおよびチャタテムシは春季よりも夏季と秋季に増加する傾向が見られた。一方,ダニ抗原とカビは,床では春季より夏季と秋季に増加したが,寝具では有意差が見られなかった。コナヒョウヒダニおよびチャタテムシは絨毯や畳よりもフローリングの方が有意に少なかった。また,コナヒョウヒダニおよびチャタテムシは床の掃除頻度が多いほど,有意に少なくなる傾向を示した。
    真菌については,床と寝具ともにコウジカビ属(Aspergillus),クロカビ属(Cladosporium),コウボ(yeast)の分離頻度が高かった。特に好湿性の真菌の分離数(cfu/total dust:全ハウスダストから分離されたコロニー数)は,床より寝具で有意に多い傾向を示した。
技術資料
  • 関根 嘉香, 太田 栞, 佐藤 博, 野口 美由貴, 中井 里史, 柳沢 幸雄
    2016 年 19 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    生活環境における環境たばこ煙(Environmental Tobacco Smoke, ETS)に対する曝露実態については定量的な知見が不足しており,受動喫煙防止対策の社会的合意形成を図る上で課題となっている。本研究ではETSの「におい」に着目し,ETS曝露イベントをリアルタイムで検出するための高感度かつ携帯が容易なモニター法の開発を目的としている。そこで,喫煙者が居住する集合住宅の1室において,既存のポータブル型半導体式モニター3機種のETSに対する応答特性を調べた。その結果,用いたモニターは1機種を除き,室内空気中のETSの経時変化を検知でき,SPM値のように室内空気の撹拌状態の影響は受けにくいことがわかった。ただし,香水や制汗剤など日用品の使用に伴って発生するガスにも非選択的に応答した。したがって半導体式モニター単独ではETS曝露イベントの同定は難しいと判断された。しかしながら,応答特性の異なるセンサーやデジタル粉じん計との組み合わせにより,ETS由来・非ETS由来の応答を判別できる可能性はある。
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