室内環境
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13 巻, 2 号
室内環境
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著論文
  • 山口 一, 冨岡 一之, 大塚 俊裕, 中山 正樹, 真継 常義, 竹林 芳久
    2010 年 13 巻 2 号 p. 119-129
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    ホルムアルデヒドやVOC等の室内化学物質によるシックハウス症候群や化学物質過敏症が問題となっている。さらに,最近では省エネルギー対策のため,室内CO2濃度や在室人数によって外気導入量を制御する手法が注目されている。しかし,外気導入量の減少によって,室内化学物質が増加することを留意する場合は少ない。現在,これらの室内化学物質を測定するには,ガスクロマトグラフや高速液体クロマトグラフ等を用いる必要があり,短時間で簡便に測定結果を得ることは出来ない。また,精度よく室内の化学物質濃度をモニタリングできるシステムも存在しない。我々は,これらの問題点を解消するために,半導体センサを用いた簡易のTVOC測定法を開発し,その成果を既報1-4)で発表してきた。本報では,2つの実建物に3種類の半導体センサを設置し,各々のセンサの特性を評価し,建物内の化学物質濃度のモニタリングに半導体センサが応用できることを確認し,今後の課題について報告する。
  • 橋本 一浩, 各務 清美, 横山 耕治, 福田 安住, 川上 裕司
    2010 年 13 巻 2 号 p. 131-139
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    静岡県所在のA美術館を対象として,2007年2月~2009年9月まで合計5回の定期的なカビ発生調査を実施した。この際に収蔵作品の表面および収蔵庫内の空気中から「集落の観察や光学顕微鏡レベルの観察では同定困難な複数のカビ(Aspergillus section Restrictus)が分離された。これらの分離株は美術作品の汚染・劣化の原因菌であると考え,10株について,遺伝子解析による同定を行った。遺伝子解析は,26SrRNA遺伝子D1/D2領域の塩基配列を決定して,系統関係を調べる方法を用いた。同定結果を元に数種のカビ用培地を用いて分離株の再培養を行い,集落の形態比較と光学顕微鏡による頂嚢などの微細構造の観察を行い比較した。この結果,約5種の系統に分けられた。このうちの1種は,紙作品や書籍の褐色斑点(foxing)の起因菌として認知されているAspergillus penicillioidesであった。他の4種については,遺伝子学的にも形態的にもA. penicillioidesに近縁であることが判り,紙作品のfoxingや絵画作品のstainの劣化起因菌である可能性が高いことが示唆された。
  • ―吸入曝露ラットにおける体内動態の薬物動力学的解析から―
    吉田 俊明
    2010 年 13 巻 2 号 p. 141-154
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    α-ピネンは,多くの脂肪族及び芳香族炭化水素と同様に日本の住宅内の空気汚染に関与する主要な化学物質である.本研究では,α-ピネンの2つの異性体(+)-及び(-)-α-ピネンのラットにおける体内動態をそれぞれ薬物動力学的に解析し,ヒトにおける経気道吸収量を外挿した.ラットを入れた閉鎖系曝露装置内に一定量のα-ピネンを注入後気化させ,ラットへの吸入による装置内濃度推移を調べ,薬物動力学的に解析した.得られた結果から,一定濃度のα-ピネンに一定時間曝露されたラットにおける吸収量を推定したところ,異性体間で差は認められなかった.ラットにおける炭化水素類の経気道吸収量について過去に我々が得た結果と比較すると,同一の曝露濃度下においてα-ピネンはn-ヘキサン,n-デカン,トルエン,キシレン,エチルベンゼン,スチレンなどよりも吸収されやすく,1,2,4-トリメチルベンゼンと同程度であると推定された.ラットから得た結果及び日本の住宅における各物質の室内濃度に関する過去の調査結果をもとに,居住者(体重60 kg)におけるα-ピネンおよび各炭化水素類の吸収量を推定した.16時間の在宅時間中のα-ピネン吸収量(住宅内濃度中央値4.4 μg/m3において31 μg)は,トルエンに次いで多かった.また,各物質による空気汚染の著しい住宅居住者のα-ピネン吸収量(住宅内濃度1.8 mg/m3において13 mg)は他の物質の吸収量よりもはるかに多く,米国環境保護庁(EPA)の提案するα-ピネンの無毒性量(NOAEL)から算出した耐容一日摂取量(TDI)と同レベルであった.
  • 飯塚 淳, 水越 厚史, 齋藤 京子, 八巻 高子, 野口 美由貴, 柳沢 幸雄
    2010 年 13 巻 2 号 p. 155-161
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    発泡ポリスチレンビーズ及び発泡ポリスチレンビーズを用いた製品からのスチレンの放散フラックスをPassive Flux Sampler(PFS)を用いて測定した。25℃において各試料からのスチレンの放散フラックスは11~220μg/m2/hであり 温度の上昇に伴って増加した。体温を想定した36℃では,スチレンの放散フラックスは32~620μg/m2/hであった。また,50℃では,203~2.23×103μg/m2/hであった。アレニウスプロットから計算された各試料からのスチレン放散の見かけの活性化エネルギーの値は概ね100kJ/mol以下であった。ポリスチレン樹脂の熱分解反応の活性化エネルギーは210kJ/molと報告されている。そこで,試料からのスチレン放散の律速段階は,物質移動過程であると推測された。枕やクッション等の製品は呼吸域の近くで使用され,体温で暖められて放散量が多くなる可能性が高いため,これらの製品の使用によってスチレンへの曝露が生じることが懸念される。
  • 丸尾 容子, 中村 二朗
    2010 年 13 巻 2 号 p. 163-172
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    小型のホルムアルデヒドモニタリング装置を開発し,室内空気のモニタリングを行った。既に開発しているホルムアルデヒド検知素子において,β-ジケトンがホルムアルデヒドと反応して生成する黄色のルチジン誘導体はβ-ジケトンとして1-フェニル-1,3-ブタンジオンを用いた場合,多孔質ガラス中のみで安定である。そこで検知素子のルチジン誘導体による着色の差分を一定時間毎に計測し, 平均ホルムアルデヒド濃度に換算出来る装置を作製した。装置は光源としてLED,検出器としてフォトダイオードを含み,10cm×10cm×4cmの小型サイズであるため住居内の任意の場所への設置が可能であった。また室内空気への暴露時には吸引ポンプを用いないため閉空間でのモニタリングが可能であった。ホルムアルデヒドの検出下限値は1時間暴露で5ppbであった。出力値が測定濃度の90%に達するのに要する時間は1時間以内であることが見積もられた。
    この装置を住空間に設置してホルムアルデヒド濃度の変化を1時間毎にモニタリングしたところ,家具を設置した住環境では高濃度状態が測定され,また換気を行っても再びの部屋の密閉により数時間で高濃度状態に再び戻ることが測定された。開発した装置は小型で使用方法が簡単なため,複数の家庭でホルムアルデヒド濃度の連続測定に成功した。
  • 斎藤 育江, 大貫 文, 瀬戸 博, 保坂 三継, 中江 大
    2010 年 13 巻 2 号 p. 173-179
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/01
    ジャーナル フリー
    アルカリ処理カートリッジを用いた空気中3-エテニルピリジン(3-EP)及びニコチン測定法を検討した。確立した方法で12時間の空気採取を行った結果,3-EP及びニコチンの回収率は80%以上と良好であった。また,空気72L採取時の定量下限値は3-EPが0.08μg/m3,ニコチンが0.10μg/m3であった。喫煙室における測定では,3-EP濃度は0.85~5.4μg/m3,ニコチン濃度は6.0~34.1μg/m3で,3-EP/ニコチン比は0.14±0.03であった。3-EPとニコチンの濃度には高い相関が認められた(r=0.940)。次に3-EP及びニコチンの経時変化を調査するため,副流煙をテドラー®バッグに採取し,4時間後まで調査した。バッグ内の空気を測定した結果,3-EP/ニコチン比は,採取直後で0.13,4時間後で1.02と,時間の経過とともに急増した。空気測定と同時に3-EP及びニコチンのテドラー®バッグフィルムへの吸着量を調べた。空気中存在量とフィルムへの吸着量の合計値について,採取直後と4時間後を比べると,3-EPは2倍に増加したが,ニコチンはほとんど変化がなかった。一方,フィルムへの吸着は3-EPよりもニコチンの方が顕著で,合計値に占める4時間後の吸着量の割合は3-EPが74%,ニコチンが98%であった。したがって,時間経過に伴うテドラー®バッグ内空気の3-EP/ニコチン比の増加は,主として吸着による空気中ニコチンの濃度減少に起因するものと考えられた。
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