労働の効率化に有益とされる午後の短時間仮眠への香り付加に着目して,香りが仮眠後の心理生理指標や作業効率に及ぼす影響を明らかにすることを目的に実験した。香り発生なしと,嗜好度の高低から選定した2精油を発生させた計3条件に設定した仮眠室で,9名の実験参加者が同曜日同時間帯の異なる3日間に15分間仮眠し, 仮眠中の脳波と仮眠前後に従事した心理評価,および知的作業成績の差異について香り条件間で比較した。脳波の周波数含有率は入眠時と以降とで傾向が異なったものの,香り条件間に差異は見られなかった。寝やすさと起きやすさ,仮眠の質に関する心理評価の香り条件間比較でも有意差は見られなかったが,クローブバッド条件は他よりもわずかに寝にくい側,起きやすい側評価で,オレンジビター条件はわずかに起きにくい側評価だった。知的作業はd2テストと単語作成作業を行い,作業処理量指標としてのd2達成率・単語回答数と,作業正確性指標としてのd2ミス率を設定した。3指標とも仮眠前後間で有意差が見られなかった。仮眠前後の値の差異に関する香り条件間比較でも,3指標に有意差は見られなかったが,オレンジビター条件でd2達成率がわずかに高く,d2ミス率ではわずかに他より低い傾向にあった。単語回答数はばらつきが非常に大きく比較が困難だった。
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