微生物由来揮発性有機化合物(MVOCs)をカビ汚染の指標物質とする分析方法の開発を試みた。MVOCとしては200以上の物質が報告されており,検出頻度の高い約15物質がカビ汚染の指標として利用できると考えられている。MVOCは広範囲な揮発性物質群で構成されているため,測定は容易ではなく様々な工夫が必要とされる。現在のところ,分析方法をはじめとしてサンプリング方法にも標準的な方法は存在しない。キャニスターサンプリングはサンプリング時間の柔軟性,サンプリング時の静寂性等で固相吸着法よりも優れている。本研究では2-MIB及びジェオスミンを含む典型的な15化合物の分析を試みた。
グラスビーズとテナックスを組み合わせたシステムでは低沸点化合物に対して有効であり,グラスビーズとテナックスを積層したトラップを2連に配したシステムではVVOCからSVOCまでの広範な化合物において満足な結果が得られた。両システムでの15化合物の定量限界は0.0088-0.16 ngであった。
本法は,住居で発生するカビとMVOCによる居住者への健康影響を調べるための手段として開発した。この方法を用いて,いくつかの住居でのMVOC測定によるカビ調査を行なった。その結果,6住居すべてで1-オクテン-3-オールが1.34-10.2 μg/m
3の範囲(平均4.09 μg/m
3)で検出された。その他5物質もわずかに検出され,トータルMVOCとしては2.43-16.4 μg/m
3の範囲(平均6.95 μg/m
3)であった。
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