室内環境
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18 巻, 1 号
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原著論文
  • 水越 厚史, 野口 美由貴, 山本 総一朗, 川上 梨沙, 大塚 俊裕, 山口 一, 柳沢 幸雄
    2015 年 18 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    事務所ビルでは,建築物衛生法により室内CO2濃度1000 ppmを基準として室内空気質の管理がなされている。しかし近年,厚生労働省が定めた室内濃度指針値物質以外の未規制のVOCによる室内空気汚染が問題となり,TVOCによる管理が重要視されている。一方,事務所ビルにおける省エネルギーは喫緊の課題であり,外気導入量の制御による冷暖房の負荷の低減が有効な対策とされている。本研究では,CO2とTVOC濃度を指標とした空調制御による省エネルギーの可能性を検証するため,執務者が不在の既存のオフィス空間においてCO2を定常発生させ,空調制御に伴うCO2とTVOC濃度変化を検証する模擬実験と,実際に稼働している既築ビルの執務中におけるCO2とTVOC濃度の長期測定を行った。その結果,模擬実験では,外気導入量を低減すると室内CO2濃度が理論通り上昇するのに対し,給気風量を低減するとCO2濃度に分布が生じることがわかった。また,執務中の長期測定では,CO2濃度とTVOC濃度の変化は異なる傾向を示したため,これら2つの指標によって室内空気質を管理することの必要性が明らかとなった。そこで,管理基準をCO21000 ppm,TVOC400 μg/m3として空調を制御した場合の外気導入量を推算したところ,現行の設定値に対し43%削減可能と求められた。今回の結果を考慮すれば,VOC発生の少ない既築ビルでは,CO2とTVOCの濃度をモニタリングすることで外気導入量の抑制が可能な場合があり,省エネルギーに寄与できると考えられる。
  • 大貫 文, 菱木 麻佑, 斎藤 育江, 保坂 三継, 中江 大
    2015 年 18 巻 1 号 p. 15-25
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    室内で燃焼させて使用する線香類について,燃焼時に放出される化学物質を分析し,線香類を使用した際に推定される室内空気中化学物質濃度を算出した。方法は,市販の線香類12試料を燃焼させ,その煙を空気採取用バッグに採取し,バッグ内の揮発性有機化合物類,アルデヒド類及び有機酸類の濃度を測定した。その結果から,試料重量当たり及び燃焼時間当たりの物質放出量を求め,室内空気中の有害物質等濃度を推定した。検出されたのは48物質で,アセトアルデヒド,イソプレン,酢酸,アクロレイン及びベンゼン等の放出量が多かった。48物質合計値の6割以上を有機酸類が占めた試料も見られた。同じ銘柄で煙の量が異なる製品の放出量(μg/h)を比較した結果,煙が「ほとんどない」と標榜していた試料における48物質の合計放出量は「ふつう」の試料の約25%で,なかでも,酢酸及びホルムアルデヒドの放出量が少なかった。また,主に室内で使用する9試料を1時間燃焼させた後の空気中有害物質濃度を推定した(室内容積20 m3,換気回数0.5回/時)。主な物質の濃度範囲は,ベンゼンが11~77 μg/m3,1,3-ブタジエンが4.8~14 μg/m3,アセトアルデヒドが22~160 μg/m3で,アセトアルデヒドについては,6試料が厚生労働省による室内空気中濃度の指針値を超過すると推定された。
  • 長岡 優輝, 関根 嘉香, 木村 絵夢
    2015 年 18 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ホルムアルデヒド(HCHO)は,シックハウス症候群を引き起こす有害な物質として知られている。二酸化マンガン(MnO2)は室温においてもHCHOと反応し二酸化炭素(CO2)を生成するため,空気清浄材の主要な成分として実際に用いられている。MnO2には様々な結晶構造があるが,結晶構造の影響については未だ調査されていない。そのため本研究は高効率な空気清浄材のさらなる発展のため,HCHOの酸化分解に及ぼすMnO2試料の物理特性および化学特性を比較することを目的として行った。本研究において,著者らは破過試験と密閉式試験を用いてHCHOの除去性能および分解性能を検討した。その結果,除去性能にMnO2の結晶構造が影響することが示された(γ>α=ε)。一方で,CO2への転化への明確な影響はみられなかった。
  • —石油ファンヒーターからのVOC,NOx,NH3の発生—
    野崎 淳夫, 成田 泰章, 二科 妃里, 一條 佑介, 山下 祐希
    2015 年 18 巻 1 号 p. 33-44
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/06/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本研究では,24時間換気装置が設置された一般住宅において,1)開放型石油暖房器具(石油ファンヒーター)使用時の室内汚染物質濃度を実測調査により明らかにし,次に2)大型チャンバーを用いて,実測調査で使用した石油ファンヒーターの汚染物質発生量を求めた。
    結果として,1)実測調査から器具使用時にはヘプタン,トルエン,オクタン,ノナン,デカン,ノナナール,ウンデカン,デカナール,ドデカン,トリデカン,テトラデカンなどの室内濃度が上昇し,特にデカン類の室内濃度が上昇した。また,NO2濃度は器具使用50分後に395 ppbに達し,大気汚染防止法による大気環境基準の6.6倍の値が測定された。2)実測調査で器具使用時に確認されたエタノール,アセトン,トルエン,ヘプタンは,建材や日用品などに由来する。3)チャンバー実験により,テストした石油ファンヒーターからはオクタン,m, p-キシレン,o-キシレン,ノナン,1,2,4-トリメチルベンゼン,デカン,ウンデカン,ドデカン,トリデカン,テトラデカン,ペンタデカンの発生があり,また器具非使用時においても,オクタン,m, p-キシレン,ノナン,デカン,ウンデカン,ドデカントリデカンなどが発生していた。4)石油ファンヒーターの燃料消費量率は,器具使用開始から10分間が最も大きく,他の時間帯の2.15~2.87倍を示した。5)燃料単位重量当たりの石油ファンヒーターのTVOC発生量は0-10分値と10-20分値で,それぞれ90,317と858,204 μg/kgであった。
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