室内環境
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22 巻, 3 号
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原著論文
  • 鈴木 義史, 浅沼 光吾, 橘 謙太, 丸尾 容子
    2019 年 22 巻 3 号 p. 277-287
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    多孔質ガラスとザルツマン試薬から構成されるNO2分析チップを用いて, 2016年夏季及び冬季に仙台市内一般住宅における室内二酸化窒素(NO2)測定を行った。分析チップは操作が容易であり, パッシブかつ蓄積型であるため任意の場所に任意の時間置くことで平均NO2濃度を測定でき, 分析チップの吸光度が4に達するまで繰り返し使用できる。NO2濃度は, 室内曝露前後における分析チップの525 nmの吸光度差より算出した。測定によって得たNO2濃度とアンケート調査から室内の様子の実態を明らかにし, 居住者自身による空気質改善の可能性について検討した。測定では, 夏季に67世帯, 冬季に95世帯のNO2濃度測定結果とアンケート調査による回答を得た。NO2濃度平均値は8ppb(夏季), 92ppb(冬季)であった。冬季, WHO及び学校環境衛生基準法によるNO2濃度指針値(106ppb及び60ppb)を超えた世帯は95世帯中35.8%及び49.5%であり, 夏季においてそれぞれの指針値を超えた世帯は存在しなかった。24時間換気の効果は, 冬季, 換気ありの平均が64ppb, なしの平均が94ppbであったが, 夏季は明らかではなかった。NO2濃度と換気, 調理器具などの関係は複雑で, 省エネで健康的な生活環境を整備するためには簡易分析チップにより測定を行いながら整備する方策を選定していくことが重要であることが示され, そのためには開発した分析チップは有効なツールであると考えられた。
解説
  • 職場環境における微生物汚染と対策
    石松 維世
    2019 年 22 巻 3 号 p. 289-294
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/12/01
    ジャーナル フリー
    多くの職場は室内にあり, 複数人で共通の時間を過ごすことが多い。職場の微生物汚染において懸念されるのは不調者の集団発生であり, 感染症から建物に起因する健康影響まで様々な問題がある。結核やインフルエンザ, 風疹などはヒトからヒトへと感染するが, レジオネラ症や真菌アレルギーなどは設備機器から環境中へ放出された微生物が原因となる。設備機器からの発生には, 冷却塔や空気調和設備のメンテナンス不良, 加湿器の清掃不備などの人為的な要因もある。対策には, 発生源である設備や機器の清掃や薬剤の継続的投入による殺菌処理があるが, 企業にとってはコストパフォーマンスも重要となる。
    一方, 職場での集団感染の発生は, 企業の経済的基盤や社会的責任にも影響し, 発生源対策以上に感染経路対策を含む感染予防対策が重要視されている。 労働安全衛生法第68条には, 職場における感染拡大を防ぐために「就業の禁止」が定められている。しかし, 季節性インフルエンザや麻疹, 風疹は就業禁止の対象ではないため, 個人だけでなく企業の対応も重要となっている。製造業においては, 水溶性切削油曝露による過敏性肺炎が注目され, 鉱物油や界面活性剤だけでなく, 切削油中で増殖した微生物を含む混合物に曝露されることで発生すると考えられてきている。
    職場における微生物による健康影響の防止において, 良好な職場環境を維持するということは今後さらに重要になると考えられ, 作業環境管理も微生物を含めて考えていくことが求められよう。
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