室内環境
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25 巻, 3 号
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原著論文
  • 田中 浩史, イム ウンス, 川田 博美, 伊藤 一秀
    2022 年 25 巻 3 号 p. 225-239
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    環境中にゴミとして流出した一部のプラスチック類は,海洋中で力学的・光化学的作用により崩壊・微細化し,ミリメートル(mm)からマイクロメートル(μm)スケール以下の粒子となり海洋中に蓄積することが明らかとなっており,所謂,海洋マイクロプラスチック問題として社会的関心事となっている。一方,室内には多くのマイクロプラスチックの発生源となるプラスチック類製品が多様に存在し,室内環境中でのマイクロプラスチック汚染の可能性や健康影響への懸念が完全には否定できないにも関わらず,現時点では十分な議論が行われておらず,全国規模の実態調査の実績も無い。本報を含む一連の研究は,室内環境中(空気中もしくはダスト中)に存在するマイクロプラスチックの調査法(サンプリング法),ならびに定性・定量分析法を確立した上で,全国規模の調査を行うことで室内マイクロプラスチック汚染問題の実態把握を行うことを最終目標とする。特に本報はその第一歩として,既存のハウスダストサンプリング法と海洋マイクロプラスチック成分の分析法を組み合わせることで,室内環境を対象としたマイクロプラスチック調査への適用可能性に関して基礎的な検討を行った結果を報告する。
  • 青木 幸生, 東海 明宏, 花井 荘輔, 伊藤 理彩
    2022 年 25 巻 3 号 p. 241-251
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    暴露評価では,暴露濃度の実測が原則であるが,コストや時間の問題から,すべてのケースでの実測は不可能であり,暴露評価モデルの活用が不可欠となっている。しかし,これまでに発表された準揮発性有機化合物(SVOC)暴露評価モデルの多くが,気相中のガス態と粒子態の濃度割合までは十分に再現できていない。本研究では,SVOC暴露評価モデルにおける気相中の態別濃度割合の推算精度を改善するため,気相中の粒子態濃度に作用するパラメータの内,浮遊粒子径の最適化について検討を加えた。代表的なSVOCであるフタル酸ジ-2-エチルヘキシル(DEHP)と浮遊粒子間の相互作用に関する既往研究の調査から,粒子態濃度に対するPM10の代表粒径を0.375μmと決定した。代表粒径の最適化により,ガス態濃度分率は58%から29%に改善し,実測のガス態の濃度割合10-20%により近くなることがわかった。総気相濃度の推算精度を示すFactor値は2.8から4.6へ,64%安全側へシフトしたものの,十分なスクリーニング精度を有しており,また,沈降ダスト中濃度については,目標精度が得られた。
  • 松村 年郎, 森田 孝節, 下中 洋一, 佐々木 陽典, 瓜田 純久, 吉野 友美, 池田 四郎, 中村 亜衣, 松延 邦明
    2022 年 25 巻 3 号 p. 253-266
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    ペンタフルオロベンジルヒドロキシルアミン(PFBHA)はアルデヒドとの反応でオキシム誘導体を生成することが知られており, この捕集剤を捕集デバイスに搭載することで,化学的に安定で再現性の高い捕集を可能とすることが期待されている。そこで本研究では室内環境測定分野ですでに確立されている捕集管によるアクティブサンプリング法を応用し,呼気中のアルデヒド類を対象とした新規の測定方法の開発を試みた。対象成分には癌のバイオマーカーとして有望視されているホルムアルデヒド,アセトアルデヒド,アクロレイン,プロパナール,ブタナール,ペンタナール,2-メチルペンタナール,ヘキサナール,ヘプタナール,オクタナール,ベンズアルデヒド,ノナナールの12種類を選定し,捕集率,検出下限・定量下限,繰り返し精度,添加回収率,サンプリング後の保存安定性を検討した。その結果,呼気中に想定されるアルデヒド濃度に対し充分な捕集率を備え,各アルデヒドに対し11~37 ng/Lの定量下限を, 5.3%以下の繰り返し精度を有し,90~116%の添加回収率を示す測定手法として確立できた。本研究ではPFBHA含浸シリカゲル捕集管を呼気測定用アクテイブサンプラー(以下, サンプラーと略記)と定義し, 健常者及び前立腺癌患者の呼気測定法として使用した。ここに有益な知見が得られた。
調査資料
  • 石坂 閣啓, 牧野 崇伯, 吉田 良二, 堀尾 郁夫, 川嶋 文人
    2022 年 25 巻 3 号 p. 267-274
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    平成31年1月に,学校環境衛生基準における「室内空気中化学物質の室内濃度指針値について」において,キシレンの指針値が870 μg/m3から200 μg/m3に改定された。本研究では,愛媛県内の32校40箇所の学校施設の室内空気を捕集し,キシレンなどの指針値対象物質やその他の揮発性有機化合物(VOC)の汚染状況を調べた。その結果,いずれの場所においても,室内濃度指針値対象物質の濃度は指針値を大きく下回り,良好な空気環境であった。鉄骨造の建物では今後室内濃度指針値に追加が検討されている2-エチル-1-ヘキサノールの検出率が高く,特に音楽室や体育館器具庫では指針値予定濃度と同等濃度の検出がみられたが,滞在時間の少ない部屋であるため,問題はないと考えられた。
総説
  • 松村 年郎, 森田 孝節, 中村 亜衣, 下中 洋一, 平野 純子
    2022 年 25 巻 3 号 p. 277-298
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    本報告では,燃焼器具,建材・家庭用品等から発生する化学物質による室内汚染の実態について,著者の報告を含めて文献調査を行い,我が国の室内汚染の現状を整理した。その結果,室内ガイドライン制定後,種々の行政対策の進展と相まって室内汚染は一部改善傾向に向かった。しかし,その反面,指針値以外の未規制物質が建材・家庭用品及び教材等に使用され,それによる健康被害が生じているとの報告も出てきている。今後,未規制物質に関する更なる調査研究を図って,未規制物質の指針化に向けて,会員先生方の協力が必要となってくると思われる。
解説
  • 関根 嘉香, 山本 匠, 野﨑 淳夫
    2022 年 25 巻 3 号 p. 299-305
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    開放型燃焼器具とは,燃焼用の空気を室内から取り入れ,排ガスを室内へ排出する燃焼器具のことを指し,住宅では調理,暖房および給湯などに用いられる。特に石油ストーブや石油ファンヒーターは,寒冷地・寒冷時に需要が高い。これら開放型燃焼器具は,熱効率が高いという利点がある一方,その排ガスが室内空気を汚染することがある。本稿では,室内環境学会燃焼器具分科会による特集企画の一環として,住宅用の燃焼器具に利用される気体・液体・固体燃料について概説し,開放型燃焼器具から発生する一酸化炭素(CO),窒素酸化物(NOx)および揮発性有機化合物(VOCs)の生成機構について述べ,“知覚が難しい”燃焼排ガスによる室内空気汚染の事例について紹介する。
総説
  • 東 賢一
    2022 年 25 巻 3 号 p. 307-315
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/01
    ジャーナル フリー
    私たちは日常生活において,主として調理や暖房のために,木材,灯油,石炭,ガス,バイオマスなどを燃料として物を燃やすことを行ってきた。物を燃やすことで排出される室内空気汚染物質による健康影響は,主として低中所得国を中心に極めて深刻であり,国際的にも早急の対策が求められている。世界保健機関(WHO)によると,家庭内での室内空気汚染物質により,2020年に約320万人が死亡し,そのうち5歳未満の小児が23万7千人以上であった推計されている。本報では,代表的な燃焼由来の室内空気汚染物質として,粒子状物質(PM10,PM2.5),一般化炭素,窒素酸化物,二酸化硫黄,多環芳香族炭化水素(主としてベンゾ(a)ピレン),揮発性有機化合物(ベンゼン,ホルムアルデヒド)の特徴,主な排出源と健康影響を述べるとともに,これらの物質の気中濃度に対するWHOの空気質ガイドラインを紹介する。
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