室内環境
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19 巻, 2 号
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原著論文
  • 石松 維世, 樋上 光雄, 保利 一
    2016 年 19 巻 2 号 p. 99-110
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    大学の講座会議室,実習室,研究室と屋外において,2年半にわたり浮遊真菌・細菌濃度を測定し,季節変動,室内外濃度比(I/O比),グラム陽性球菌の同定,疑われる真菌の発生源調査等をもとにして,大学室内の浮遊微生物の影響について多角的に捉え明らかにすることを目的とした。測定は,衝突法-培養法とろ過捕集法-DNA染色法で行い,毎月1回,定期に行った。室内の真菌生菌数濃度(cfu/m3)は,毎年,外気濃度の上昇に伴い夏季から秋季にかけて日本建築学会維持管理規準(事務所:50 cfu/m3以下)を超過し,空気調和設備を介した屋外真菌の流入が示唆された。また,2012年7月の実習室の濃度上昇では室内に発生源はなく,外気または空気調和設備に起因する一時的なものと推察された。一方,細菌の生菌数濃度は,2年半の間,日本建築学会維持管理規準(事務所:500 cfu/m3以下)を満足していたが,菌数濃度は生菌数濃度より2桁ほど高かった。使用頻度の高い講座会議室と研究室では生菌数の室内外濃度比(I/O比)が1を超える頻度が高かったが,細菌の菌数濃度(cells/m3)から求めたI/O比は,ほとんど1を超えなかった。このことは,室内には屋外より培養可能な新鮮な細菌や培地に適合した細菌が多いことを示し,衝突法-培養法は,発生から数日程度の比較的新しい細菌による影響の把握に有効と考えられた。衝突法-培養法で得られた細菌のグラム染色性に基づく構成比は,室内は屋外より単純な傾向にあり,使用頻度の高い部屋ではStaphylococcus epidermidisS. hominisを含むStaphylococcus属やMicrococcus属などのグラム陽性球菌が多く,発生源が在室者であることが強く示唆された。
技術資料
  • 竹村 明久
    2016 年 19 巻 2 号 p. 111-120
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    室内環境向上の一策として行われてきた,作業空間へのかおりの噴霧について,かおりを作業者が好むか否かの影響が大きいのではないかと仮説を立てた。そこで,予備実験より選定した12名の全被験者が好むグレープフルーツ,全員が嫌うアニスシード,嗜好が約半数に分かれたユーカリブルーガムの3種の精油と水道水のみの計4条件を噴霧した環境下で一位加算作業を実施し,かおりの嗜好と正答数の関係を検討した。また,作業前後に唾液アミラーゼと心拍の測定,心理状態評価を実施して,ストレスや心理状態とかおりの嗜好との関係を検討した。その結果,正答数,心拍変動,ストレスへのかおりの嗜好の影響で有意差は見られなかったが,心拍変動では,グレープフルーツで副交感神経活動がわずかに高い傾向を示した。心理状態評価は,グレープフルーツで総じてポジティブに,アニスシードで総じてネガティブに捉えられ,かおりの嗜好の影響が示唆された。ユーカリブルーガムについては,被験者を2群に分けて「好き群(6名)」と「嫌い群(5名)」の比較も実施したところ,有意差はないが,「好き群」が「嫌い群」よりも正答数がわずかに高く,ストレスがわずかに解消側であり,心拍から推定される副交感神経指標,交感神経指標ともわずかに高かった。心理状態評価では,「好き群」は「嫌い群」よりややネガティブな評価を行う傾向が見られたが,身体的状態の評価でのみ非常にポジティブな評価だった。被験者をより多くした検討が今後必要だが,同一のかおり内での嗜好群の比較から,かおりの嗜好が作業効率やストレス,心理状態に及ぼす影響の可能性の一端が示唆された。
調査資料
  • 鈴木 義史, 橘 謙太, 丸尾 容子, 柳沼 優, 菊池 蓮, 中野 智保
    2016 年 19 巻 2 号 p. 121-130
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    本調査では,仙台市の家庭において冬季室内の二酸化窒素(NO2)濃度を測定した。測定には多孔質ガラスを基板としたセンサを用い,ジアゾカップリング反応による比色反応を用いてNO2濃度の算出をした。測定したNO2濃度とアンケートによる調査から,仙台市の家庭の特徴とNO2濃度の分布を比較し,NO2の発生要因を考察した。
    結果として,全体で99家庭のNO2濃度とアンケート調査による回答を得た。500 ppb以上のデータを例外値として除外し,95家庭のNO2濃度平均値は91.6 ppbであり,環境省のNO2に係る環境基準値(60 ppb)を53.7%の家庭が超えていた。石油ファンヒーターや石油ストーブを用いていた家庭では,NO2濃度の平均値が139.0 ppb,150.9 ppbと環境基準値の2倍を超えており,それぞれ81.8%と80.0%の割合で環境基準値を超えていた家庭が存在した。また,24時間換気設備のある家庭では,NO2濃度の平均値が59.5 ppbと環境基準値を下回っていた。
    調査結果から,室内の換気はNO2濃度を減らす方法として有効であると考えられた。また,NO2は燃焼系の暖房器具から発生し,換気が不十分な室内ではNO2が高濃度で存在することが確認された。冬季において仙台市は他の地域と比べて,NO2が高濃度で室内に存在するという傾向が見られ,室内換気に関する注意が不足していると考えられる。
  • 角田 徳子, 大貫 文, 大久保 智子, 斎藤 育江, 鈴木 俊也, 保坂 三継
    2016 年 19 巻 2 号 p. 131-137
    発行日: 2016年
    公開日: 2016/12/01
    ジャーナル オープンアクセス
    建築物における室内化学物質汚染の現状を把握するため,新築ビルの室内空気中揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds : VOC)調査を行ったところ,これまで室内空気からの検出報告が少ない2-ブタノンオキシムが3,570 g/m3と比較的高濃度で検出された。この室内では調査前日に工事が行われており,この時使用されたシリコンシーラントが2-ブタノンオキシムの発生源であると推察された。当所で行っている空気採取方法で2-ブタノンオキシムが測定可能か確認したところ,吸着剤にTenax TAを用いた加熱脱着法によるガスクロマトグラフ-質量分析計(GC/MS)による分析が,2-ブタノンオキシムの測定に適していた。高湿度条件下(28℃,相対湿度80%)において,2-ブタノンオキシムが通気により分解され減少するか調査したところ,Tenax TAを用いた場合,流速0.1 L/minで2時間まで回収率97.8%と安定して測定できた。また,新築ビル室内で2-ブタノンオキシムの発生源調査を行ったところ,パッシブサンプラーを建材表面に設置し,上からアルミ箔で覆うという簡便な方法で,シリコンシーラント塗布面からの2-ブタノンオキシムと,加水分解生成物である2-ブタノンの放散を確認できた。テドラー®バッグを用いたシリコンシーラントからの2-ブタノンオキシムの放散量測定では,2-ブタノンオキシムの濃度はシリコンシーラント塗布直後から上昇し,6日後に最大値48.0 mg/gを示した後,ゆるやかに低下した。また2-ブタノンの濃度は徐々に増加したが,2-ブタノンオキシム濃度の低下割合に比べると,その増加割合は低かった。
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