1983年5月から1993年12月までの10年8か月間に, Hotz床を併用し, 2段階口蓋形成手術で管理され, 硬口蓋閉鎖まで終了した片側唇顎口蓋裂患児36例について, 出生から7歳まで定期的に採取した上顎歯槽模型を用いて, 縦断的に顎発育と歯列弓形態を健常児を対照に比較検討し, 以下の結果を得た。
1.初診から2歳までの上顎歯槽模型計測の結果, large segmentより, minor segmentの前方, 外側方への発育が著明であった。
2.初診から2歳まで, large segment, minor segmentの前方, 外側方への発育によって, 歯槽弓形態は良好な放物線状を呈し, Hotz床による顎発育誘導の効果が明らかに認められた。
3.2歳から7歳までの健常群との比較において, large segmentは前方, 外側方への良好な発育を示し, また, minor segmentの発育経過もUCLP群と健常群との間に差を認めなかった。
4.すべての歯列弓幅径において, UCLP群と健常群との間に差を認めなかった。
5.UCLP群の2歳から7歳までの各年台における歯列弓形態は健常群と大きさ, 形ともに同様で, 良好な放物線形態を示していた。
以上の結果から, Hotz床を併用し2段階法によって, 口蓋形成手術を行った片側唇顎口蓋裂児の混合歯列期前期 (7歳) までの上顎の発育は健常児と差がなく, 顎発育の面から本治療法の有用性が明らかとなった。
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