日本口腔科学会雑誌
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63 巻, 4 号
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症例報告
  • 先川 信, 末次 博, 松田 光悦
    2014 年 63 巻 4 号 p. 301-304
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/28
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    Emphysema of the subcutaneous region and mediastinum is a relatively rare complication associated with dental treatment. We managed a case of emphysema by using three-dimensional computed tomography (3DCT) to observe the volume and reducing process of air. A 57-year-old woman underwent treatment for root surface caries. During the procedure, the patient complained of swelling around the right face area, and her symptoms persisted the day after the procedure. Physical examination revealed significant soft tissue swelling and redness from the right temporal region to the right cervical region. Computed tomography scans of the head, neck and thoracic region showed subcutaneous accumulation of air in the right eye socket region, right cervical region, right supraclavicular fossae, retrophyaryngeal area, peribronchial area and mediastinum. 3DCT imaging clearly illustrated the spread of the air into the soft tissue, and 3DCT analysis revealed that the total air volume was 91.2 ml. Though the swelling of her head and face area was remarkable, the emphysema volume was only 29% of the whole air. Although there was a small amount of emphysema in the cervical area, the rate of absorption was the lowest. The patient had no respiratory symptoms. She was treated with antibiotics, and discharged on day 6. 3DCT imaging revealed the spread and volume of the leaked air and was useful in evaluating the extent of emphysema.
  • 脇田 壮, 丹下 和久, 中島 克仁, 蟹江 一泰, 水野 頌也
    2014 年 63 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/28
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    In recent years, anticancer drug treatment with traditional selective intra-arterial chemotherapy has attracted little attention. We report an advanced case of oral cancer successfully treated by traditional selective intra-arterial chemoradiotherapy with arterial redistribution technique. The patient, a 67-year-old man, complained of tongue pain and eating disorder on initial consultation. An inspection was conducted immediately, and right-sided tongue carcinoma (T4bN2bM0) was diagnosed. Angiography showed that tumor nutrient arteries, facial artery and lingual artery had a common trunk with angiectopia. We expected that insertion of a catheter into the tumor nutrient arteries would prove difficult, so traditional selective intra-arterial injection chemotherapy with arterial redistribution was planned. Intra-arterial chemotherapy was performed for 5 weeks using 5-fluorouracil (100-50 mg/m2/day; total, 8856 mg), docetaxel (15 mg/m2/week; total, 178.2 mg), and nedaplatin (20 mg/m2/week; total, 225.3 mg) combined with radiotherapy (total, 50 Gy). After the completion of treatment, the tumor mass and ulcer disappeared from the oral cavity. As of 18 months after treatment, follow-up has shown no recurrence or metastasis. This treatment was able to achieve an effect comparable to superselective intra-arterial chemoradiotherapy.
第68回NPO法人日本口腔科学会学術集会
特別講演
  • 上田 秀人
    2014 年 63 巻 4 号 p. 315
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/28
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    人類の歴史には多くの謎が残されている。エジプトのピラミッド建設,インカ帝国の滅亡,カッパドギアの奇石群など,この科学が発達した現代でさえ,それぞれの事象に明確な答えを出せていない。
    そこまで大きな話を持ち出さずとも,我が国においてもいろいろな歴史的な謎はある。
    邪馬台国はどこにあるのか,九州なのか大和なのか,はたまた岡山か出雲か,なかには沖縄だという説もある。
    他にも京都近江屋で坂本龍馬を暗殺した犯人は誰か,本能寺に織田信長を襲った明智光秀の動機,江戸城松の廊下で吉良上野介に斬りかかった浅野内匠頭の理由など,少し知れたものだけでもかなりの数に上る。
    これらのうち,わたくしが得意としている戦国から幕末までの期間に限って,いくつかの謎について,明らかとなっている証拠,あるいは伝聞を使い,皆様方と推理してみたいと思う。
教育講演1
  • Jiri Mestecky
    2014 年 63 巻 4 号 p. 316
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/28
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    Studies of molecular and cellular interactions involved in the pathogenesis of IgA nephropathy have revealed the autoimmune nature of this most common primary glomerulonephritis. In patients with this disease, altered glycan structures in the unique hinge region of the heavy chains of IgA1 molecules lead to the exposure of antigenic determinants, which are recognized by naturally occurring anti glycan antibodies of the IgG and/or IgA1 isotype. As a result, nephritogenic immune complexes form in the circulation and deposit in the glomerular mesangium. Deposited immune complexes induce proliferation of resident mesangial cells, increased production of extracellular matrix proteins and cytokines, and ultimately loss of glomerular function. Structural elucidation of the nature of these immune complexes and their biological activity should provide a rational basis for an effective, immunologically mediated inhibition of the formation of nephritogenic immune complexes that could be used as a disease-specific therapeutic approach.
教育講演2
  • 藤嶋 昭
    2014 年 63 巻 4 号 p. 317
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/28
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    酸化チタンを代表とする光触媒は,環境浄化材料としてわれわれの身近に広く応用されてきています。例えば,光触媒フィルターを搭載した空気清浄機は,煙草の煙や空中の浮遊菌を除去できることから,新型の東海道新幹線(N700系)や病院に設置されており,また光触媒を塗布したビルの窓ガラスやタイルは建物の防汚に役立っています。光触媒に関連した製品はこれまで数多く登場し,住宅関連,電化製品,車両,道路関係,農業,水処理,衣料,生活用品,医療分野など市場規模は国内だけでも現在1,000億円ほどにもおよんでいます。
    これほどまでに光触媒が世の中に普及したのは,それが「酸化分解力」と「超親水性」という魅力的な二大機能をもつからといってよいでしょう。酸化分解力は強力であり,ほとんどすべての有機物を分解して,最終的には二酸化炭素と水にすることができます。そのため,消臭や除菌,防汚等に役立ちます。一方,超親水性は,水の接触角が5°以下になる現象であり(光誘起超親水性),防曇機能をもつ鏡・ガラスや,防汚性をもつ住宅の外壁や窓ガラスなどへと応用されています。
    光触媒は,その強い酸化分解力によって大腸菌の殺菌だけでなくインフルエンザウイルスなどの病原性ウイルスを死滅させる効果もあり,感染予防に活用していくことが期待され実用もされ始めています。
    歯科関連でも光触媒に関心が寄せられています。歯の治療中には歯を削ることが多いのですが,歯科の診察室での大きな問題は,患者さんがインフルエンザウイルスなどを保有していると,診察室がそのウイルスで汚染されてしまう可能性が高いことです。また,口の中を診るのに使う小さな鏡が曇らなければ,治療も効率よく進行できることになります。曇らない鏡をつくって,実際に使ってもらったこともあります。
    歯科におけるもうひとつの課題は,歯のホワイトニングです。近年,歯のホワイトニングへの関心が高まっていますが,光触媒でも可能です。光触媒酸化チタンを黄色くなった歯に塗り,同時に過酸化水素をつけて紫外線を当てると,歯を白くできるという効果が発見されたのです。しかし,紫外線を口の中に当てることが,日本ではまだ許可になっていないため,可視光型酸化チタンを用いる方法が実際に利用されつつあるそうです。
指名報告
  • 日比 英晴
    2014 年 63 巻 4 号 p. 318
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/28
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    われわれは骨髄液と末梢血から調製した自己骨髄間質細胞多血小板血漿複合体を「培養骨」として,骨再生医療のトランスレーショナルリサーチにとりくんできた。これは骨髄間質細胞から誘導した骨形成性細胞,血小板中に含まれる成長因子,ゲル化した血漿であるフィブリン網を,組織を再生させるための3要素である細胞,シグナル,足場として機能させるものであり,一定の成果が得られた。
    一方,米国では同種骨髄間葉系幹細胞が臨床用に上市され,本邦でも異種骨由来骨補填材が承認されるに至り,自己由来材料による再生医療のコンセプトは再検討を要する状況になっている。このように背景の変化はあるもののなお最も大きな課題は再生可能な骨量がミリオーダーにとどまることである。
    口腔領域の骨再生で目指すべきは骨移植なしの顎骨再建であろう。現状でそれが可能なのは骨延長法のみであり,われわれは独自の創内型装置により10センチ以上にも及ぶ区域欠損の下顎骨再建も可能にした。これにより外観上の問題は概ね解決されたが,長い治療期間を要することはなおも課題である。そこでこの治療期間の短縮が培養骨の応用により得られないかを検討し,骨切り後の待機期間がなく標準の倍の速度で延長をするような過酷な条件設定でも延長部が骨化することを示した。また延長部の血管化のための条件を整え間接的に骨化を促す試みについても検討し,サイトカインにより血管内皮前駆細胞が骨髄から動員されること,それらにより血管網が構築されること,局所血流が増加すること,その結果として骨化が促進されることなどを示した。さらに特定のサイトカインだけでなく,その集合体である細胞培養上清を延長部に応用する試みや,いったん切除した骨を液体窒素で殺細胞化処理をしたのちに自己細胞をのせて再植する試みでも良い感触を得ている。以上について再生医学的見地から報告する。
宿題報告
  • 丹沢 秀樹
    2014 年 63 巻 4 号 p. 319
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/10/28
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    癌治療における課題のうち,抗癌剤耐性,放射線耐性を克服する薬剤の開発・研究について,本講演でご紹介いたします。
    私は,平成15年から5年間にわたり,21世紀COEプログラムの拠点リーダーとして,遺伝子治療,重粒子線治療,免疫治療など,腫瘍に対する最先端医療の開発とともに,実際に治療を行いました。遺伝子治療に関しては,外来性DNAやRNAは体内では不安定である上に,全身投与できる安全なベクターが開発されていないため局所投与しかできないという欠点があることを経験した。しかも,死亡例や白血病発症などの重篤な副作用が報告され,現在,世界的に遺伝子治療開発は下火になっている。重粒子線治療に関しては,いかに重粒子線であっても,耐性遺伝子があることをわれわれのグループが世界で最初に発見した。あくまでも局所療法であるために転移を有する症例は適応でないという大きな制約がある上に,高価な装置や設備が必要で,なおかつ,月単位の整備期間が必要なために稼働期間が短くなってしまうという運営上の事情もある。免疫療法に関しては,癌抗原の問題や,免疫記憶の問題が残されており,真に有効な治療法が未だ開発されていない。以上のようなことを鑑みて,私は,特別な設備を必要とせず,面倒な手続きも不要で,なおかつ安価な治療法として,薬剤に強く惹かれ,10年近くの間,教室員とともに真摯に研究に励んできた。幸いにも,抗癌剤耐性細胞株を和歌山県立医科大学歯科口腔外科学講座(藤田茂之教授)から提供していただけた。
    研究成果の概略を以下に記す。
    ・新たな抗癌剤耐性遺伝子としてPDE3Bを同定した。PDE3B遺伝子は薬剤を細胞外に汲み出すABCトランスポーターを活性化させることを発見し,さらに,PDE3B遺伝子の阻害剤シロスタゾールを同定した。シロスタゾールはプレタールという名称で血小板凝集抑制剤として,末梢循環不全症の治療や,心筋梗塞予防剤として実臨床で用いられている薬剤である。
    ・新たな抗癌剤耐性機構としてAKR1C遺伝子ファミリーを同定した。AKR1Cファミリーは化学物質が細胞質から核内に侵入する際に脱水・還元を行ない不活化する一種の解毒酵素であることを明らかにした。このAKR1Cファミリーを不活化する薬剤としてメフェナム酸を同定した。メフェナム酸はポンタールという名称で鎮痛薬として常用されている薬剤であり,腫瘍治療の実臨床に使用可能である。現在,臨床試験実施中であるが,抗癌剤併用による有効性が確かめられた。
    ・放射線耐性機構を研究して,FGFR3遺伝子を同定した。FGFのレセプターであるFGFRは非常に種類が多い。しかし,それらの中でFGFR3が多種類の腫瘍で高発現し,放射線耐性と関連があることを明らかにした。残念ながら,そのメカニズムは未だ明らかにできていないが,おそらく,組織の修復機構と関係があるものと見込んでいる。このFGFR3の阻害剤として低分子化合物PD173074(sigma-aldrich社)を見出した。毒性試験を含め,マウスを用いた前臨床試験まで終了している。
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