大気汚染学会誌
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19 巻, 3 号
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  • 藤田 慎一, 中山 稔夫, 矢田部 照夫, 千秋 鋭夫
    1984 年 19 巻 3 号 p. 183-193
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    1982年8~9月, 伊豆諸島・首都圏および関東内陸においてオゾンの観測を実施し, 首都圏のオキシダント濃度に及ぼすパックグラウソドオゾンの影響について検討した。観測データは, 移動平均法を適用して周期と振幅とが異なる三つの成分に分離し, 各成分のモードと気象条件との関係を調べた。
    首都圏における夏期の高濃度オキシダントの発生パタンは,(1) 24時間周期の変動が卓越する場合と (2) 24時間周期の上に数日周期の変動が重畳する場合の二つに分類できる。(1) は光化学反応によるオキシダントの生成と消滅に, また (2) は成層圏に起源を持つノミックグラウンドオゾンの沈降に関係するものと考えられる。バックグラゥンドオゾンの寄与は低気圧性擾乱の後面で顕在化し, その影響は南北200km以上の広い水平スケールに及ぶことがある。
  • 内部境界層による拡散過程の解析
    大倉 光志, 西 亮
    1984 年 19 巻 3 号 p. 194-202
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    海上の高煙源から放出された汚染物質が海風に乗って移流し, 海岸線から発達する内部境界層内に入ると, 急激な上下方向の拡散によって地上に高濃度域を出現させる, いわゆるいぶし現象を起こすことがある。この現象は従来フユーミゲーションモデルによって解明されてきたが, ここでは海上空港の周辺で移動中の航空機から排出される汚染物質を対象とし, また海岸付近の海陸風による非定常な気象条件を考慮してパフモデルで解析する。
    泉州沖の新関西国際空港予定地周辺で実施されたトレーサー実験のうち, 海上の高低両煙源から同時に放出されたトレーサーがともに地上で濃度パターンを示したケースを取り上げ, 前報ではこのうち低煙源からの拡散過程について解析したが, 今回は高煙源の場合に注目する。
    濃度パターンの再現に必要な気象条件に関するパラメータを前報の低煙源に対するものに未知の修正係数を掛けて表現し, これらの係数の値を再び最適化法を適用して推定した。得られた修正係数の値はそれぞれ高低両煙源に対応する気象条件の違いを表しているはずであり, 実測の気象条件と対比して検討した結果, 妥当なものであることがわかった。また推定されたパラメータの値に基づく濃度パターンは実測パターンと極めてよい一致を示した。
  • 小林 禧樹, 渡辺 弘
    1984 年 19 巻 3 号 p. 203-208
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    還元気化・金アマルガム捕集・冷原子吸光法を組合せて, pptレベルの雨水中総水銀を迅速かつ精度よく定量するために, 雨水試料をアルカリ性下で直接還元気化する方法を検討した。
    雨水中の無機水銀のかなりの部分が難還元性であり, 酸性下では還元されないが, 試水を強アルカリ性にすればそれらも充分に還元された。また有機水銀の分析における有機物質の妨害について検討し, 雨水中の有機物質による本法への影響は小さいことを示した。
    本法による水銀の回収率および変動係数は0.24~4.0ng/50mlの水銀添加にたいして, 各々96~98%, 2.0~7.0%であり, 検出限界濃度は試水50mlの場合で1ng/1であった。
    また本法により紫外線照射法に匹敵する良好な結果が得られたことから, 本法を用いて100mlずつ分取した雨水中の総水銀を測定した。
  • 小林 禧樹, 渡辺 弘
    1984 年 19 巻 3 号 p. 209-213
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    ベソゼン, システイン溶液による交互抽出法と金アマルガム捕集, 冷原子吸光法を組合せて, pptレベルの雨水中有機水銀を高感度に分析する方法を検討した。ジチゾンヘキサソ溶液によってシスティソ溶液中の有機水銀を定量的に抽出することができた。また共存物質の影響を検討し・無機水銀が共存ダストに吸着してベンゼン, システイン溶液に混入し分析上の誤差を与えることを明らかにした。
    水銀添加実験の結果, 本法による有機水銀の回収率は84~85%となり, 無機水銀は1000ngが共存しても有機水銀分析に影響しなかった。また本法による検出限界濃度は試水800mlの場合で約0.20ng/lであった。
    本法により雨水中の有機水銀を測定したところ, その濃度は0.2~1.5ng/lとなり, また総水銀にたいする有機水銀の比率は0.5~6.2%となった。
    メチル水銀のヘソリー定数を用いてこれら濃度に平衡する大気中の有機水銀濃度を計算したところ・文献値に比べ1~3オーダー低い値を示した。
  • 大滝 厚, 長沢 伸也, 塩沢 清茂
    1984 年 19 巻 3 号 p. 214-221
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    本論文の目的は, モニタリングネットワークの観測局で観測されたデータに基づいて大気汚染濃度の地域分布の推定方法を提案し, その応用例を示すことにある。
    この方法を東京都のNOxの1時間濃度の推定に応用し, 高濃度の発生し易い地区の解析を行った。更に, 風向と濃度を組合せたベクトルという概念に基づいた因子分析法によって, 高濃度発生の要因について解析した。
    結果を要約すれば次の通りである。
    (1) 高濃度が発生し易い地区が5地区ある。このうちの2地区は, 大規模発生源のある都心部と中小工場のある東部地区である。残りの3地区は, 比較的発生源の少ない中西部地区である。
    (2) 風向と濃度の組合せベクトルを適用して, モニタリングステーション間の相関係数を計算し, 因子分析法によって5因子を抽出した。この結果, 高濃度発生と汚染物質の移流の関係がよく説明できることから, 風向濃度ベクトルの妥当性が裏付けられたものと考える。
  • 石橋 竜吾
    1984 年 19 巻 3 号 p. 222-227
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    アンモニアと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物 (クロラミン様物質) の酸化力を利用したアンモニアの自動測定装置を試作した。
    装置の構成は, ホウ酸吸収液に捕集した大気中のアンモニアを次亜塩素酸ナトリウムと反応させる反応槽部と反応生成物をクーロメトリーで検出する検出回路部からなっている。
    本装置では, 大気中アンモニアの捕集, 次亜塩素酸ナトリウムとの反応, 曝気による反応生成物の検出回路への導入, 反応生成物によるヨウ化物イオンの酸化, 生成した遊離ヨウ素の電解及び電解電流の記録などの測定操作が, あらかじめ測定条件を設定しているプログラムスイッチによって, 自動的に行われる。
    アンモニアの定量下限値および定量範囲は, 採気量10lの時50μg/m3および50~1000μg/m3である。変動係数はアンモニア5μgを含む吸収液で1.82%であった。
    また, 検出回路へ導入されたアンモニアと次亜塩素酸ナトリウムとの反応生成物がクロラミソと類似の反応を示すことを明らかにした。
  • 西村 哲治, 後藤 純雄, 加藤 幸彦, 奥貫 正美, 松下 秀鶴
    1984 年 19 巻 3 号 p. 228-238
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    土砂の変異原活性の簡易測定法, 特に試料調製法に検討を加え, 得られた手法を用いて東京都の各地より採取した土砂の変異原性を測定した。また, 同一試料についてBaPの含量も測定した。
    土砂は, 1982年の春, 東京都の各地の道路近傍51ケ所 (工業地区;17, 商業地区;9, 住宅地区;25) から採取し, 60メッシュのふるいにかけ, 土砂試料とした。この土砂試料に含まれるタール状物質を, エタノール・ベンゼン (1: 3, v/v) を用いて超音波抽出法によって抽出し, 減圧濃縮・乾固して得た。この乾固物を少量のエチルエーテルで溶解し, 更に一定量のDMSOを加えて掩拝した後, 減圧でエチルエーテルを留去してDMSO溶液を得た。
    変異原性試験は, DMSO溶液に対してサルモネラ菌TA100, TA98両菌株を用い, S-9mix添加, 無添加条件下でプレインキュベーション法によって行った。BaP含量は, 同様の方法を用いて調製したタール状物質を用いて二層一次元薄層クロマトグラフィー・分光けい光光度法により定量を行った。
    その結果, 採取した土砂試料のうち, 変異原性が陽性と判定されたものは, TA100株では, S-9mix添加条件下で51試料中25試料であったのに対して, S-9mix無添加条件下では陽性例は認められなかった。また, TA98菌株ではS-9mix添加条件下で51試料中46試料, S-9mix無添加条件下で51試料中44試料が陽性を示した。更に, TA100, TA98両菌株のいずれかに陽性の変異原性を示したものは51試料中49試料であった。また, 採取地区別の変異原比活性は有意の差は認められなかった。
    BaPの含量は, 土砂単位重量当り191~282ng/gであったが, 採取地区別の有意差は認められなかった。また, タール状物質単位重量当たりのBaP含量と変異原性の間には有意の相関がみとめられた。この相関は, 特にS-9mix添加条件下で明瞭であった。
    これらの結果から, 東京都の土砂には, 自動車排出ガスを含む化石燃料の不完全燃焼による変異原性物質が含まれていることが強く示唆された。
  • 前田 信治, 昆 和典, 今泉 和彦, 志賀 健
    1984 年 19 巻 3 号 p. 239-246
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    個体曝露チェンバーを用いて100PPmおよび200PPm一酸化窒素 (NO) に対するラット (Sprague-DawleySPF, 雄;体重320±10g) の急性曝露実験を行った。血中のNO化ヘモグロビン (且b-NO) およびメトヘモグロビン (MetHb) の時間推移を調べ, 簡略化した反応モデルにより計算機シミュレーションを行った。
    (1) 個体曝露チェンバー (内容積, 約1400ml) を作製し, NOと02との気相反応を最小限にとどめ, チェンバー内でエーテル麻酔ができるよう工夫して実験した。(2) 血中Hb-NOおよびMetHb濃度は30~60分後に定常状態となり, MetHb量はHb-NO量の7~15倍であった。引き続き, 新鮮空気に曝露すると, 且b-NO, MetHbともに約20分の半減期で消失した。(3) Hb-NOおよびMetHbの時間的推移を計算機シミュレーションし, 各傷害段階の反応速度定数を半定量的 (多数の不明な過程があるため) に求め, NOのヘモグロビン傷害に及ぼす影響を議論した。(4) 本実験より次の結論を導いた。(i) NOの定常的吸入状態 (100PPm) で形成されるHb-NO量はかなり低値 (~0.4%) を維持する。(ii) MetHb量もMetHb還元酵素系が活性を維持する限りさほど上昇しない (<10%)。(iii) MctHb還元酵素活性は吸入気中のNO濃度に依存し, 高濃度のNO吸入は当酵素活性を抑制すると考えざるを得ない。
  • 松本 光弘, 板野 龍光
    1984 年 19 巻 3 号 p. 247-254
    発行日: 1984/06/20
    公開日: 2011/11/08
    ジャーナル フリー
    雨水中の陰イオン分析には, fast-run分離カラムとfiber-suppressorカラムを組み合せたイオンクロマトグラフィーを用い, 3mM NaHCO3-3mM Na2CO3の溶離液と1.65ml/minの流量で行えば, 6種の陰イオン (F-, Cl-, NO2-, SO32-, NO3-, SO42-) が, 簡便, 迅速, 安定かつ同時に測定できた。更に検出限界においてもイオンクロマトグラフィーは, 比色法による従来法よりもすぐれていた。しかしながら,'雨水中の陽イオン (Na+, K+, Ca2+, Mg2+, NH4+) の分析ではイオンクロマトグラフィーは1価と2価のイオンを別々に行わなければならず, 検出限界も原子吸光法, 炎光法, 比色法による従来法にまさる所がなかった。なお, 雨水中のSO32-とNO2-の酸化に関して, SO32-は光, 温度, 雨水中のFeイオンにより影響を受けて漸次酸化されるが, NO2-はSO32-に比べ比較的安定であった。
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