地域資料の範囲は広いが,自治体が発行している広報誌は全国のほとんどの自治体で発行されており,重要性の高い地域資料と言える.広報誌のデジタル化・オープン化の現状を自治体ホームページ,図書館OPACおよび国立国会図書館WARPなどでの調査により明らかにしてきた.今回,自治体担当部門の広報誌のデジタル化・オープン化についての考えを個別に調査した.広報誌のデジタル化・オープン化についての考え方は自治体により大きく異なることが明らかになった.
公的機関では,ウェブアクセシビリティ方針の策定と試験結果の公開が進んでいる.ウェブアクセシビリティ基盤委員会の調査によると,2019年段階では47都道府県で46団体が方針策定済で,40団体で試験結果が公開されていた.20政令指定都市では,方針策定済が20団体で,19団体で試験結果が公開されていた.この調査は2019年時点が最新であるため,本研究は,2022年段階の状況を調査する.
科学的文書に記載の,物理量間の定量的関係を表す数式とその周辺の文章から,数式中の物理量を示す変数と,変数が何を示しているかを説明する文節を抽出する試みを行った.数式および変数の抽出後,数式の周辺の文章から変数を含む文をプログラムにより抽出し,変数を含む文から変数の説明文節を抽出(相当する文節が無い場合はnullを出力)する試みを,ルールベース,構文解析+ルールベース,深層学習,の3つの方法で行った. 構文解析の有無にかかわらずルールベースでは設定すべきルールが見かけから想像される数より非常に多く,かつ,ルールに合致しても各ルール毎にnullとnotnullの判別機械学習が必要になることが判明した.BERTのfine-tuningを利用した深層学習では,4000~4500個のラベル付き学習データを用意することで,7割を超える正答率で変数の説明文節を抽出することができた.
1879年の建議から36年の歳月を費やし編纂まれた『古事類苑』は今なお日本最大の百科全書の地位を占める.発表者は協力者と共に,当該書の全文データベース化を進めてきたが,同時に『古事類苑』自体を意義ある研究対象とするための分析と工夫も重ねてきた.具体的には,入力・校正方法の効率化,分類体系の利用,引用の原本の同定,データの共有化のために,支援ツールの豊富な青空文庫形式を採用したことなどである.
学生が作ったVR美術館について,まずAIで着色した絵画の生成について,学生と教員の双方の側ででた言い分と閲覧者の意見を述べる.学生は,ソフトAI画伯を扱うことで,絵が得意でない人でも誰が利用しても分かりやすい絵画が描けたようになり,それが相手に伝わりやすくなるという.これに対し,教員は,絵画の評価の観点で,絵画全体のテーマがわからないものがあり,それらは評価できない.これらの意見を組み込んで,VR美術館の制作過程を整理した.
論文や引用等の独自DBを持ち,研究評価指標等の情報を提供するサービスにWeb of Science (WoS)やScopusがある.これらの基盤にオープンアクセスの研究成果物を集約する学術情報基盤を加えた海外主要4基盤のダッシュボードを比較分析した.提供される指標を分類して各基盤の特徴を可視化した結果,商用系は研究IR,学術系はオープンサイエンスに関わる指標に特徴があり,新たな指標を採用する例も観察された.
研究データ共有の活発化や研究評価再検討の動きから,学術情報検索サービスへの需要は高まりつつあるが,その構成要素となる機能は明らかではない.そのため,本研究では,国内外の59の学術情報検索サービスを対象として画面機能に注目,これを抽出・項目化し,比較分析を行った.項目化では31の項目が得られ,該当する機能の有無による0/1ベクトルとして現した.報告では,項目のベクトルに基づく計量的な分析,および各サービスを観察して得られた特徴について述べる.
近年,推し進められている高等教育改革において,学習成果の可視化は重要なキーワードであり,そしてその可視化が多くの高等教育機関において精力的に取り組まれている.しかし,多くの大学で実施されている方法は,ディプロマ・ポリシーに対応するような評価であるとは言い難い.そこで,甲子園短期大学ではディプロマ・ポリシーの内容に基づき,卒業までに学生が身につける12の能力を抽出し,その12の能力をカリキュラムマップと対応させた学習成果の可視化方法について検討を行ったので報告する.
2003 年に「景品表示法」の新設等があり,これに伴って大学等の研究機関を第三者機関としたアカデミックマーケティングが行われることが多くなってきている.ここでは2015 年にスタートした機能性表示食品制度において2022 年3 月時点で届出のある5120 件中,機能性の科学的根拠として「最終製品を用いたヒト試験」が選択された274 件あり,この中で「販売中」となっている171 件の届出情報の根拠論文を予備調査した結果を事例調査とともに報告する.投稿先は上位3誌に70%が集中し,著者所属で大学等研究機関が関係するものは46.8%あった.
物語論では場面展開や人間関係など種々の構造が分析の対象となるが,コンピュータで計量的に取り扱う上では統一的フォーマットで記述されることが望ましい.本研究では,先行研究によって得られた物語の各構造における知見に基づき,物語をストーリー,クエスト,シーンの大きく3層からなる階層的な構造として記述する方式を提案する.3層構造を用いることで物語展開だけではなく,登場人物や物語中のイベントに関しても統一的なフォーマットで記述可能となる.
本研究では全盲の視覚障害者がテレビゲームを楽しむための必要な支援について,スーパーファミコンを用いた実践を通して明らかにした.3つのソフトについて具体的に検討したところ,構成や付加されている音声情報によっては支援がほとんど無くとも,全盲の視覚障害者がプレーできることが分かった.また,晴眼者からの必要最小限の支援によって全盲の視覚障害者と晴眼者が共に楽しめる可能性を見出すことができた.
日本の機関リポジトリによるオープンアクセスを推進するため,図書館は研究者に対して論文の提供依頼をおこなってきたが,そのメリットは不明確であり,提供依頼の成功率は低迷している.こうした現状を踏まえ,本研究では被引用数に着目することにより,日本の機関リポジトリによるオープンアクセスのメリットの存否について検証した.日本の機関リポジトリによるオープンアクセス論文の数は限られるものの,その被引用数と様々なタイプのオープンアクセス論文の被引用数の比較からは,日本の機関リポジトリによるオープンアクセスのメリットは確認できなかった.
本研究は放送番組のシリーズに着目し,番組情報に含まれるURL などより幅広い観点を比較検討し,同定に有効な手法を示す.各フィールドに対する手法や組み合わせを検討し,区切り文字を設定しタイトルから抽出したマスタータイトルが完全一致するか,タイトルに対するジャロ・ウィンクラー距離を加味しつつ番組詳細からURL を抽出し一致するかという2 点のいずれかを満たすことを条件とし,連続シリーズの同定手法を提案した.そして,2021 年9 月から10 月にかけての35 日分の番組情報を対象に正解データを作成し,シリーズ数,放送回ペアの精度と再現率を指標として用い,手法の評価を行った.結果,タイトルから抽出したマスタータイトルを用いる手法の有効性が示された.また,URL による同定の条件について,ジャロ・ウィンクラー距離を加えることで精度向上に有用であることが示唆された.
本研究は効果的なブラウジング探索を通した楽曲の発見を促すことを目的としている. その手法として,楽曲間の関連関係を表現する類似楽曲の提示方法を提案する. これを実現するにあたり, Spotify のAPI が提供する楽曲データの一部を利用してユークリッド距離による類似度計算を行った. 探索の始点となる楽曲と上位の類似楽曲を取り出し, グラフレイアウトの力学モデルによるネットワークの可視化を行った.
これまで物語における「ときめき」を読者に感じさせるメカニズムはほぼ研究されていない.そこで本研究では,物語における「ときめき」を感じさせるメカニズムを重視していると推測される女性向け恋愛ゲームを分析対象とし,「ときめき」に関する特徴を明らかにするために,構造の分析や「ときめき」に関するシーンの抽出を行った.また,男性キャラクターごとの物語構造を比較し,「ときめき」を感じるパターンは大きく3つ存在することを明らかにした.
物語研究は従来,幅広く行われており,物語の一ジャンルである怪談に関する研究も,書籍を対象として実施されてきている.近年,怪談は書籍作品だけではなく,インターネット上に投稿されるWeb作品としても流布されている.そこで本研究では,インターネット上に投稿されている怪談に着目して,物語構造分析を行った.また,先行研究で分析が行われた書籍怪談の物語構造と比較を行うことで,媒体の違いにおける怪談の物語構造の差異を明らかにした.
多くの大学で,プログラミング教育が提供されている.初学者向けに様々なプログラミング学習方法があり,その一つが写経型学習である.和歌山大学システム工学部1年生向け科目では,写経型学習に基づく学習支援システムを提供している.しかし,授業を通じた学習により十分なプログラミング能力が身についたかどうかは分からない.本研究では,プログラミングに関する問題を出題し,学習者に解答してもらうオンラインジャッジシステムをWebアプリケーションとして構築した.解答画面に他のWebサービスの編集画面を埋め込むことで,1画面でプログラム作成,動作確認,答案提出ができるようにした.プログラミング導入科目の最終回において,特定の文字列を10回出力する出題に対し,正答・誤答ともに多様な解答が得られた.また授業の途中回で出題したfor文不要論の賛否との照合を試みた.
二次創作作品に関する物語研究は,原作が同一の作品群を対象に行われることが主だった.そこで本研究では原作が異なる二次創作群に対して,二次創作作品間の特徴の違いや共通する特徴がないか比較分析を試みた.その結果,二つの作品群に共通する『ネガティブ死亡』タイプや『キャラクター間関係変遷』タイプ,『ミーム具現化』タイプなどの二次創作作品の特徴的な物語タイプが発見できた.
これまで日本語エッセイでは,メタファー以外に用いられているレトリックや,文体的な特徴などの計量的分析はほとんど試みられていない.そこで本研究では,筆者の異なるエッセイに使用されているレトリックや,エッセイの各テーマに適したレトリックを明らかにするために,使用されているレトリックのデータ化を行った.また得られたデータに基づき,エッセイで使用されているレトリックの特徴を計量的に抽出した.その結果,各作家の戦略に基づいて使用しているレトリックが明らかとなった.
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