近年,世界的にオープンサイエンス(OS)推進の施策が進められ,研究者への論文や研究データの公開要請が強まっている.研究者のOS参加を促すには,OS活動が広く貢献として認められるような新しい研究評価が求められる.欧州のOpenAIREと英国のCOREは,公開された多様な研究成果物を集約し,OSモニタリング指標に基づいた透明性や公平性を備えた研究評価を支援する,大学や研究機関向けのダッシュボードを提供し始めている.本研究ではOpenAIREとCORE,大学等で研究評価に利用されてきたInCitesとSciValを対象として,主に公開資料を元に,提供指標を「提供」,「資金」,「成果」,「OS」,「共著・共同」,「引用」,「影響力」,「その他」に分類して,それぞれの提供数を調査し,比較した.結果,複数の分類区分に複数のダッシュボードからの提供指標群が見られ,ダッシュボードに共通部分があることがわかった.また,OpenAIREとCOREでは,永続識別子付与率等のFAIR原則遵守を示すOSモニタリング指標が観察され,InCitesとSciValとの違いが見られた.さらにOpenAIREでは,引用や協働に関する研究評価指標を準備中であり,今後共通部分が増すことが示唆された.
研究活動におけるChatGPTの有効な活用方法として,比較的短い文章の集合から研究データを作成する方法を提案した.事例研究として,4つの学会が発行する学術雑誌に掲載された239編の論文のタイトルを対象とし,各論文のタイトルから内容を推定するためのプロンプトをChatGPTに与え,得られた回答を整理した.ただし,研究データには高い再現性が求められることから,同一のプロンプトをChatGPTに10回繰り返し与え,回答を積算して集計することで誤判定の影響を低減させる工夫を施した.その結果,同じ手法で作成した2つの研究データを比較すると,データ全体の97%が同じ結果となり,高い再現性を確認することができた.一方,ChatGPTに与えるプロンプトの僅かな表現の違いに応じて,得られる回答も変わり得ることが明らかになった.ChatGPTから目的に相応しい研究データを作成するための最適なプロンプトの表現について,さらに検証する必要がある.
シラキュース大学,メディア教育開発センター,および放送大学でのオンライン授業の開発・実施経験を踏まえて,日本の大学におけるオンライン教育の動向と高等教育のデジタル・トランスフォーメーション(DX)の実態をとらえ,今後の方向を展望する.内外の高等教育機関におけるオンライン教育の歴史を展望し,コロナ禍における日本の大学のオンライン教育導入のインパクトを概観したうえで,DXのさなかにある日本の高等教育機関にオンライン教育が定着するかを考察する.