日本調理科学会大会研究発表要旨集
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口頭発表
  • 大津 亜衣, 内藤 宙大, 早川 浩紀, 市川 貴子, 和泉 秀彦
    セッションID: 2C-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】オボムコイド(OM)を除く卵白タンパク質は,加熱により凝集・不溶化することが明らかとなっているが,市販の水煮鶏卵の塩溶性タンパク質組成は明らかではない。そこで,本研究では水煮鶏卵の卵白タンパク質の組成及び溶解性を解析し,生卵及びゆで卵の卵白タンパク質と比較することを目的とした。

    【方法】試料には,生卵,ゆで卵(10,20分加熱),及び水煮鶏卵を用い,それぞれの卵白部分を凍結乾燥し使用した。また,水煮鶏卵とともに充填されている1.1% 食塩水(注液)も試料に用いた。各試料から,PBS及び還元剤を含むSDS+urea溶液を用いて溶解性ごとにタンパク質を抽出した。塩溶性画分のタンパク質量はLowry法にて定量した。塩溶性画分と不溶性画分のタンパク質組成は,SDS-PAGE(CBB染色及びPAS染色)及びイムノブロット(オボアルブミン:OVA及びOM)にて解析した。

    【結果】Lowry法の結果,水煮鶏卵は,生卵白,ゆで卵白と比較して有意に低い値となった。また,SDS-PAGE(CBB染色)及びイムノブロットの結果,ゆで卵の塩溶性画分からはOMのみが検出され,不溶性画分からはOVAを含む卵白タンパク質が検出された。一方で,水煮鶏卵の塩溶性画分からはいずれの卵白タンパク質も検出されなかった。さらに,不溶性画分からはOVAが検出されたもののOMは検出されなかった。次に,注液中のタンパク質量を測定した結果,5.27 mg/mLであり,CBB染色及びPAS染色によりOMと推定されるタンパク質が検出された。一方で,OM特異的抗体では検出されなかった。以上の結果から,水煮鶏卵中のOMは注液中に溶出したと考えられるが,そのOMも抗原性が低い可能性が示唆された。

  • 淺井 智子, 外岡 和菜, 佐藤 音於, 齋藤 公美子, 髙村 仁知
    セッションID: 2C-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】鶏卵は優れた起泡性を有することから,スポンジケーキやスフレオムレツなど起泡性を利用して嗜好性を向上させた食品が広く流通している。気泡を含有させた卵白または卵黄の卵液特性や加熱ゲルに関する報告はあるが,卵白と卵黄を混合させ全卵液とした場合の報告はない。本研究では,オムレツを試料として全卵液,卵白・卵黄のみに気泡を含有させた場合の卵液特性,加熱ゲルのテクスチャー・嗜好特性について検討した。

    【方法】ハンドミキサー(HM-006,(株)ヒロ・コーポレーション)を用いて卵白,卵黄,全卵いずれかに気泡を含有させ,各卵液の起泡性,気泡安定性を評価した。全卵液は200℃に予熱したフライパンで「攪拌加熱」または蓋をした「蒸し加熱」にて加熱ゲルを調製した。さらに加熱ゲルにおいて体積測定,テクスチャー測定,官能評価,SDS-PAGEを行った。

    【結果】気泡安定性は全卵泡立て>卵白泡立て>卵黄泡立ての順で高かった。テクスチャー測定の結果,撹拌加熱を行ったコントロールと卵黄泡立ての加熱ゲルでは有意な差が見られなかった。一方,蒸し加熱を行った卵白泡立てと全卵泡立ての加熱ゲルにおいては,かたさ,破断応力,弾力性において卵白泡立ての方が有意に高かった。官能評価の結果,卵白泡立てはふわふわ感が強く,総合評価では卵白泡立て>全卵泡立ての順に好まれた。これらの結果から,気泡含有により卵液の特性および加熱ゲルのテクスチャー・嗜好特性が異なることが示された。

  • 宇田川 心優, 石尾 梨紗, 沖原 孝衣, 渡壁 奈央, 杉山 寿美
    セッションID: 2C-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】卵はその調理特性から多くの料理に副材料として配合される。本研究では,鶏つくねを試料として,ミオシンの溶解性と結着性で構築される内部構造に起因するテクスチャー特性等に,つなぎとして配合される卵が及ぼす影響を検討した。

    【方法】鶏むね肉のひき肉(純輝鶏:イオン)150 gに,食塩1%,片栗粉5%,卵(全卵,卵黄,卵白)10%を加え,フードプロセッサーで30秒間撹拌した。その25 gを円形(φ45 mm)に成形し,220℃で8分間焼成した。テクスチャー測定は,試料中央部を2.5×2.5×1 cmに成形し,くさび型あるいは円型のプランジャーを装着したテクスチャーアナライザー(島津)を用いて行った。官能評価は,ほぐれやすさ等について行った。微細構造観察は,脱脂脱水処理後,金蒸着を行い,走査電子顕微鏡(JSM-5800LM,JEOL)を用いて高真空条件下で行った(15 kV,1,000倍)。レオロジー測定は,動的粘弾性装置(MARS40,HAAKE)を用いて,応力・周波数依存測定(25℃),温度依存測定(10~70℃)を行った。

    【結果】テクスチャー測定の結果,卵の配合により軟らかいテクスチャーとなることが示された。また,官能評価では,卵黄配合により,ほぐれやすく,保水性があり,好ましいテクスチャーとなることが示された。微細構造観察では,卵黄を添加した試料では細かな網目構造,卵白を添加した試料では粗い網目構造が観察された。動的粘弾性測定では,25℃での応力依存特性,周波数依存特性に著しい差は認められなかったが,温度依存測定において卵黄の有無により55℃付近の挙動が異なっていた。これらの結果から,卵(全卵,卵黄,卵白)の配合は鶏つくねへの最終的な仕上がりに異なる影響を与えることが示された。

  • 中川 裕子, 裾分 希, 正木 直子, 高橋 智子, 大越 ひろ
    セッションID: 2D-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】高齢者の低栄養状態を改善するためには良質なたんぱく質源の摂取が望まれるが,食肉は硬く,嚥下後の口腔内の残渣も問題となる。本研究では,食べやすさおよび美味しさを考慮した豚肉加工品の調製を行うことを目的に,豚肉の一部を大豆ペーストで置換した試料を調製し,力学的特性および主観的特性,味認識装置による測定を行った。

    【方法】1)試料:国産豚ロース肉をミンチ肉にし,大豆ペースト(全体量の30%,40%,50%),マッシュポテトおよび食塩をフードプロセッサで混合した。混合した試料を真空加工し加熱した。大豆ペーストを添加しないものを基準試料(CP)とし,30%,40%,50%添加したものをそれぞれCPS30,CPS40,CPS50とした。

    2)実験項目:加熱後試料肉の重量変化率,水分含有率,テクスチャー特性,実体顕微鏡での試料表面の観察,官能評価および味認識装置およびを行った。

    【結果・考察】テクスチャー特性の硬さは,大豆ペーストを添加するほど軟らかく,付着性は高値を示した。凝集性はCPS30,CPS40と比較し,CPS50が高値を示した。試料表面はCPが最も凹凸が大きく,大豆ペーストを添加した試料は添加割合が大きくなるほどきめ細かく組織が密であった。 若年者を被験者とした官能評価では,大豆ペーストの添加割合が大きくなるほどやわらかく,残留感が低下する傾向であった。また,味認識装置の結果,大豆ペーストを添加することで先味において「うま味」が上昇し,後味では「渋味」や「苦味・雑味」が上昇した。 豚肉の一部を大豆ペーストに置換することで,食べやすさの改善および嗜好性の向上に有効であることが示唆された。

  • 野村 知未, 古谷 規行
    セッションID: 2D-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】和菓子は,日本の歴史や季節感から生まれた伝統文化であり,日本の年中行事にも密接な関わりをもつ。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されて以降わが国の食文化の保護・継承は喫緊の課題とされ,和菓子についても例外ではない。本研究では,食文化伝承の一助とするべく,和菓子の種類ならびに関東圏と関西圏における食味特性の違いを明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料は餡を使用した生菓子および半生菓子とし,蒸し物の「蒸し饅頭」,焼き物の「饅頭」,おか物の「最中」3種とした。これらを,東京を中心とした関東圏と京都を中心とした関西圏の老舗和菓子店から購入し試料とした。各々の試料は,重量を測定した後に餡と餡を包む外皮に分け,色彩色差計により餡の色彩構成(L*値,a*値,b*値)を,Brix糖度計により糖度を,卓上物性測定器を用いて,硬さ,凝集性,付着性を測定した。

    【結果】焼き物の饅頭および最中では,全重量に対する餡の割合は関東圏(以下,東)と関西圏(以下,西)で有意な差は認められなかった。一方で,餡のBrix値は最中では東の方が有意に(p<0.05)高く,色彩構成にも差が認められた。また,東の方が硬さ,付着性,凝集性が高く,硬くて粘りがありまとまりのある餡であると示唆された。また,菓子の種類による餡の特性を比較すると,東西ともに最中は他の菓子に比べて最も付着性が高く,蒸し饅頭は最も凝集性,付着性が低かった。色彩構成は,L*,b*が有意に異なり最中の餡が最も色鮮やかであった。

     以上のように,同種の和菓子においても地域差が生じる可能性が示唆され,菓子の特性にあわせて餡が用いられることが明らかになった。

    本研究の一部は,R4年度豆類振興事業助成(4C9)により行った。

  • 新谷 さくら, 山崎 真優, 神田 純奈, 渡壁 奈央, 高木 萌衣, 杉山 寿美
    セッションID: 2D-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】餡は餡粒子の集合体であり,口中でほぐれ,なめらかなテクスチャーを示す。一方,フルーツ大福は餡に含まれる砂糖により果物から水分が浸出し,餡の水分量を増加させる。本研究では,餡の水分量変化がなめらかさに影響すると考え,餡の特性変化を検討した。

    【方法】練り餡は乾燥白餡・赤餡から調製した。乾燥餡40 gから砂糖30%,40%,50%を含む練り餡を,練り白餡は140 g,練り赤餡は170 g調製した。砂糖40%を含む練り餡は練りを途中中断した餡および練り後に加水した餡も調製した(147 g,178.5 g)。餡の粒子径は顕微鏡観察,粒度分布計で測定した。テクスチャー測定はφ30 mmに成形した餡をφ20 mmの円形プランジャーで圧縮した。官能評価は餡のみの評価とフルーツと一緒に食した時の評価を行った。レオロジー測定は動的粘弾性装置(パラレルプレート:φ35 mm)で応力依存性,周波数依存性を行った。

    【結果】白餡の結果を示す。餡の粒子径に差は認められず,砂糖が少ないほど軟らかい餡であった。また,練りを途中中断した餡よりも練り後に加水した餡がわずかに軟らかかった。官能評価では餡のみの評価,フルーツと共に食した時の評価ともに40%練り餡が好ましいとされ,フルーツとの一体感でも高く評価され,練り後に加水した餡の評価は低かった。また,口中で餡が感じられる時間は,40%,50%練り餡で長いとされた。レオロジー測定では40%,50%練り餡の線形領域が広く,練りを途中中断した餡よりも練り後に加水した餡の線形領域が広かった。G”の周波数依存性は40%,50%練り餡は直線状,他は弓なりの挙動であった。以上から,増加した水分は餡粒子間に保持され,餡粒子表面のタンパク質や細胞壁等が餡の特性に影響することが示唆された。

  • 西成 勝好
    セッションID: 2D-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】肥満と痩せ,過食と拒食は健康障害を引き起こす重要な問題であり,食欲の調節に関する研究が進展している。咀嚼嚥下能力が低下した場合にも,おいしい食事はQOLの維持向上に不可欠である。この問題は総合的な観点から取り組むことが必要と考えられる。

    【方法】 低脂肪食・減塩食と関連して「おいしいものは健康に悪い」という思い込みに関する調査,鼻先香と口中香,気導音と骨導音,fMRIなどの研究成果と,テクスチャ―・味・香りの相互作用に関する研究成果の総合的な理解をめざす。

    【結果・考察】国の境界を越えた移動が盛んになっても歴史的に認められた国民的・地域的特徴はある程度維持されている。嗜好性は主観的なもので個人により異なるために科学的な解明のメスを入れることは不可能であるという考えも強いが,脳科学の非侵襲的実験の成果が積み重ねられ,部分的ではあるが,理解が進んでいる。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚の異なる感覚の間の相互作用に関する研究も進展しているが,一部のモデル実験的な場合についての結果しか得られていない場合が多く,実際の多様な食品についての系統的な理解には達していない。官能評価における口腔内の初期化の方法についても,確立した方法が認められていない。生理学・心理学実験ではモデル食品の特性評価がおろそかである場合が多く,物理・化学測定を主とする場合はモデル食品が実際の食品とは異なる場合が多い。このギャップを埋める必要があるが,境界を超えることを恐れない共同研究が必要である(スコットブレア)。

  • 稲垣 瑠奈, 中野 優子, 平野 啓太, 風見 由香利, 望月 寛子, 平垣内 一子, 富 研一, 佐藤 亮太郎, 齋藤 努, 佐藤 瑶子, ...
    セッションID: 2D-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】濃厚感は複合的な感覚であるため,様々な要因によって変動しうる。さらに,濃厚感の判断基準には個人差があると予想される。本研究では,とんこつラーメンスープを試料として濃厚感の変動要因の抽出を目的とした。

    【方法】動物性・植物性のとんこつラーメンスープ33試料について分析型官能評価に慣れたパネル5~7名の言葉出しによる官能評価用語の収集を行った。コレスポンデンス分析,クラスター分析により評価用語および試料を分類した。これらと用語の出現頻度に基づき,33語,12試料を選定し,分析型パネル7名による官能評価を行った。また,嗜好型パネル34名に対して4試料の嗜好型官能評価と生活習慣や食嗜好等に関するアンケート調査を行った。結果に対して相関分析,応答曲面モデルを用いたマッピング,クラスター分析,フィッシャーの直接確率検定を行い,濃厚感の変動要因を抽出した。

    【結果】分析型官能評価の結果を用いて濃厚感の応答曲面モデルを作成し,試料と官能特性との関係をマッピングした。その結果,とんこつラーメンスープの濃厚感は豚肉の風味,獣臭,油脂感等の動物性原材料由来の官能特性によって主に決定づけられること,香味野菜の香りや風味も濃厚感を変動させることが示唆された。 嗜好型官能評価における濃厚感の評価傾向からパネルを4つのクラスターに分け,アンケート調査の結果と合わせて各クラスターの特徴を解釈した。こってりしたラーメンを好む人が多いクラスターでは動物性,植物性によらず,クリーミーな試料の濃厚感を高く評価することが示された。さらに,日常的に強い甘味を好む人は,甘味が弱い試料の濃厚感を低く評価したことから,甘味への嗜好が濃厚感の評価に関与することが推察された。

  • 村上 紗希, 村井 尚子, 佐藤 友紀, 三浦 進司, 桑野 稔子, 吉村 美紀, 江口 智美
    セッションID: 2D-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】超高齢社会の我が国において,高齢者の低栄養が問題となっている。水分量の多い食品は食べやすい一方,摂取量あたりの栄養素量に限りがあり低栄養を招きうる。水分量を増やさずに,水分勾配により食べやすさを制御できれば,栄養摂取に有利で安全な食品への応用展開が期待できる。本研究では,水分量が同程度だが水分勾配が異なるうどんの物性と咀嚼・嚥下特性を検討した。

    【方法】小麦粉を主材料としたうどんを用い,10分間ゆでた直後のもの(10 min,0 h),10分間ゆでた後1.5時間保存したもの(10 min,1.5 h),20分間ゆでた後1.5時間保存し,60℃のオーブンで5分間焼成したもの(20 min,60℃ 5 min)を試料とした。試料の水分量,破断特性を測定し,高齢者(10名,74.8 ± 1.2歳)および若年者(13名,22.0 ± 0.5歳)における試料摂取時の咀嚼筋筋電位測定を行った。

    【結果】水分量は,試料間に差異は認められなかった。筋電位測定では,両世代で舌骨上筋群,咬筋ともに咀嚼時間,総筋活動時間,総筋活動量が10 min, 0 hおよび10 min, 1.5 hより20 min, 60℃ 5 minで有意に低値だった。これは破断歪および破断エネルギーが10 min,0 hより20 min, 60℃ 5 minで有意に低値だった結果と一致した。咬筋の振幅は,若年者においてのみ,10 min, 0 hより10 min, 1.5 hおよび20 min, 60℃ 5 minで有意に低値であり,破断歪と試料間の関係が一致した。水分勾配が試料の物性や咀嚼・嚥下特性に影響を及ぼすことが示された。

  • 齊藤 博則, 福本 陽, 井辺 恵, 宮沢 紀雄, 石崎 享
    セッションID: 2E-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】ベルモットソースはフランス料理の代表的なソースであり,フレーバードワインのベルモットと生クリームを主材としてつくられる。その風味はクリーミー,ハーバル,酸味といった複雑さを有している。この複雑な風味は他のクリームソースにはみられない特徴的なものであるが,その匂いに寄与する成分は不明である。そこで,本研究ではベルモットソースの香気分析を行い,香りに寄与する成分の解明を試みた。

    【方法】調理後の試料について減圧蒸留を行い,溶媒抽出および濃縮を経て香気濃縮物を調製した。得られた香気濃縮物を用い,GC-MS分析およびGCにおいかぎにより重要香気成分の絞り込みを行った。

    【結果】GC-MS分析の結果,主要成分として生クリームに由来する2-Heptanone等のケトン類やOctanoic acid等の酸類,ベルモットに由来する2-Phenylethyl alcohol,Diethyl malate,Monoethyl succinate等が検出された。GCにおいかぎの結果,香気貢献度の高い成分は,trans-4,5-Epoxy-2(E)-decenal(メタリック),4-Hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanone(スイート),12-Methyltridecanal(ワキシー),2-Phenylethyl alcohol(ハネー)であった。これらの成分は生クリーム,ベルモットに加え,材料に使用しているエシャロットに由来する成分も含まれていた。また,強い調理感を感知した不明成分について詳細分析を行った結果,調理感に寄与する成分として3-Mercapto-2-methylpentanolを同定した。

  • 服部 祥, 末原 憲一郎, 亀岡 孝治, 羽田 和広, 宍倉 たける, 大引 伸昭, 橋本 篤
    セッションID: 2E-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】水浴中で食材を加熱する家庭用低温調理器の普及により,食中毒の危険性が懸念されている。そこで,食材の加熱特性と物理的・化学的・食品衛生学的な品質特性を考慮するとともに,調理科学的な観点から加熱条件を確立することが求められている。本研究では,低温加熱調理過程における加熱・品質特性を同時に把握し,食品衛生学的な安全性と物理・科学的品質を担保可能な加熱調理条件を決定するための基礎的知見を得ることを目的とした。

    【方法】試料には平板状のアメリカ合衆国産牛肉のサーロインとモモ肉を用いた。ポリ袋に入れた試料を55,60,65℃に設定した低温調理器(BONIQ Pro,葉山社中製)の温水内に設置した。牛肉内の温度を5 mm間隔で経時的に測定し,中心温度および温度分布の経時変化を取得した。また,加熱前後の重量,含水率,体積,表面および断面の色彩画像,牛肉と肉汁の中赤外吸収スペクトル,テクスチャーの測定を行った。

    【結果・考察】低温加熱過程における牛肉の経時変化は,その形状や部位,筋線維方向などの特性により大きく異なった。また,各種計測情報を用いて部分最小二乗回帰分析による官能評価値の予測を試みた。その結果,は官能評価値(総合評価)の予測結果は実測値と良好に一致した。つまり,低温加熱調理過程における加熱特性と品質特性を定量的かつ同時に把握できることが示唆された。さらに,牛肉の特性を考慮した計算により求めた中心温度の経時変化に基づき,代表的な食中毒菌の殺菌効果を予測することができた。これらの結果は,科学的視点に基づいた加熱条件を定量的に提示できる可能性を示唆している。

  • 山中 由実, 内藤 宙大, 和泉 秀彦, 加藤 邦人, 小川 宣子
    セッションID: 2E-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】料理の出来上がりをコントロールするため,調理過程中に温度や時間の計測を行うが,同時に五感を働かせている。そこで,本研究は五感の一つである視覚に注目し,視覚情報(調理中の様子)から出来上がりを推定できる可能性を揚げ調理から検討した。

    【方法】さつまいもに衣をつけ,160℃,180℃,200℃の油で4分揚げ,揚げ過程の視覚情報を求めた。視覚情報は油面の様子を高速度カメラで撮影し,画像からcontrast値を求めた。並行して水分蒸発量を測定した。また,種と衣の水分挙動について,衣の水を重水(H218O)に置き換えて調理し,種と衣それぞれのH216OとH218OをGCMSで測定した。出来上がりは種は硬さ(クリープメーター),水分量(常圧乾燥法),糊化度(グルコアミラーゼ法),走査電子顕微鏡像,衣は破断強度(クリープメーター),総合評価として官能評価(順位法)を用いた。

    【結果】contrast値は160℃ではさつまいも投入直後から小さく,180℃は投入直後と17秒後で大きく,200℃は投入直後に大きくなった。水分蒸発量も同様の結果で,contrast値から水分蒸発量の推定が可能であった。水分挙動は各温度とも投入直後に主として衣から水分が蒸発し,その後,衣の水分の一部がさつまいもへ移動した。次いで,さつまいもからの水分蒸発が見られたが,160℃ではこれが他の温度に比べ遅かった。160℃で揚げたさつまいもの硬さは他に比べて柔らかく,糊化度は大きく,好ましいと評価された。この評価は水分挙動から説明ができ,水分蒸発量はcontrast値と関連していたことから油面の様子から料理の品質の推定が可能であると考えられた。

  • 梅林 良, 村上 崇幸, 平尾 凌, 小泉 晴比古, 上野 聡
    セッションID: 2E-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】近年の気候変動によるカカオ産地の減少や,世界的なチョコレート消費量の急増により,カカオ豆は供給不足となっている。そこでカカオ豆代替素材として着目したものがごぼうである。ごぼうは食物繊維やポリフェノール類を多く含み,野菜の中でも高い抗酸化能を示すことに加え,焙煎することでチョコレートの様な風味を呈する。一方,チョコレートの成分であるココアバターは,融点が体温直下であるⅤ型で結晶化させることが口溶けの観点から重要である。これらを踏まえ,焙煎ごぼうとココアバター代用脂(CBE)を利用しチョコレート様油脂加工食品(試料A)を開発した。本実験では,試料Aと市販のチョコレートを用い,相転移現象や結晶構造の観察をすることで,口溶けの類似性を比較した。この「試料A」とは,カカオ原料を全く使わず,焙煎ごぼうと油脂を混合して製造するチョコレート様食品素材のことです。

    【方法】 5℃で保存した試料Aと,市販のチョコレートを用い,示差走査熱量測定(DSC測定)と偏光顕微鏡観察を行った。DSC測定は,試料A原料のCBEと焙煎ごぼうパウダーも行った。DSC測定では吸熱や発熱のピークを解析することにより,融解挙動を観察した。偏光顕微鏡観察ではリンカムステージを用い,DSC測定と同様の温度プログラム下での,結晶量や結晶構造の違いを各温度帯での顕微鏡画像により比較した。

    【結果】DSC測定の結果,試料Aは市販のチョコレートと類似した吸熱ピークを示すことから,同様な融解挙動,口溶けを呈すことが確認された。偏光顕微鏡観察では,試料Aにおいて,市販のチョコレートよりも砂糖のサイズが小さくなったことが確認できた。よって,口溶けの観点において試料Aはチョコレート同様の物性を有していた。

  • 森山 三千江, 山本 淳子, 大森 有希乃, 熊崎 稔子
    セッションID: 2E-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】人は五感を通して美味しさを感じると言われており,視覚である食品の見た目は食べる前に食欲をそそる最も重要な要素とも言える。食品の色は暖色系が食欲を増進させると言われているが,近年はSNSの発達により食品の色も鮮やかなものもあり,その盛り付けや食器など様々な工夫を凝らして美味しそうに見せるようになってきている。そこで,同じ食品でも食品の色と器の色によって食欲が増進あるいは減退するのかを調査し,食欲をそそる食品と食器の色の組合せを検討することを目的とした。

    【方法】赤,青,緑,黄,紫,茶,白,黒の食用色素で色をつけたカップケーキを用意し,それぞれを白色と黒色の皿に載せて,どの組み合わせのものが好まれるか学生52名をパネラーとして最も好まれる組み合わせについて官能評価を行なった。同時にカップケーキと皿の色調を測定し,カップケーキと皿の色差を計算した。色調は簡易色差計BP-1を使用し,U.C.S表色系のハンター表色法を用いて,L*値(明るさ),a*値(プラス方向に赤,マイナス方向に緑),b*値(プラス方向に黄,マイナス方向に青)で表した。

    【結果・考察】カップケーキの色は最も一般的である白色がどちらの皿を使用していても好まれたが,白皿との組み合わせを好む割合が高かった。全ての組み合わせのうち白皿との組み合わせを選んだ者は63%,黒皿との組合せを選んだ者が37%と白皿を用いた組み合わせの方が好まれる傾向にあった。カップケーキの色が白色以外の組み合わせではカップケーキと皿との色差が小さいものが好まれる傾向にあった。これは皿の上に載せたカップケーキの色が際立って色彩が強調されると,毒々しいイメージとなり食欲が減退するのではないかと考えられた。

  • 後藤 咲季, 永松 千怜, 松村 優, 升井 洋至
    セッションID: 2E-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】玄米の糠層には,食物繊維やビタミン類,ミネラル類など,栄養成分が豊富に含まれている。しかし,糠層は,玄米から精白米への搗精時,重量で約1割程度が廃棄されている。本研究では,精米時に不要とされ,栄養価が高い糠層を食糧源として有効活用することを目的とし,玄米搗精時に生じる不味な糠より栄養価と良食味を両立し得る玄米部位を選択的に採集し得られる,亜糊紛層,胚芽の胚盤及び破砕細胞群から成る玄米由来新規素材(東洋ライス(株)製,玄米エッセンス)(以下,玄粉)の調理への利用性について検討を行った。

    【方法】ホットケーキやスコーン等の焼き菓子やスムージー,みそ汁等の飲料類,ディップソース等,21種類の調理品を対象とした。玄粉0%を対照とし,調理品の主原料に対して玄粉を5%添加または置換した試料を作製し,官能評価による比較を行った。高評価を得たホットケーキおよびディップソースについて,玄粉割合を10%または20%の試料を作製した。試料は,①クリープメータ(山電製,RE2-3305B)による物性測定②測色色差計(日本電色工業製,NE4000)による色差測定,③水分計(島津製作所製,MOC63u)による水分測定,④におい識別装置(島津製,FF-1A)によるにおい分析,⑤官能評価を行った。

    【結果】官能評価において,玄粉の置換により,焼き菓子およびディップソースでは高い評価を得た。一方,粘性のない飲料やスープ類では粉っぽさや後味の点で,嗜好性が低下した。玄粉置換のホットケーキは,対照と比較してL*値およびb*値が増加し,かたさは低下した。また,玄粉添加のディップソースでは,L*値の低下,a*値・b*値の増加,付着性の増加が確認された。におい分析では,玄粉添加による大きな影響はみられなかった。

ポスター発表
  • 大田原 美保, 福原 美鶴
    セッションID: 1P-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】演者らは飯一粒を厚さ0.1 mmに圧縮した米飯粒プレパラートを一定条件下の顕微鏡で撮影し,画像解析によって粒内部性状の可視化と定量化を行う一連の手法(圧縮米飯粒法)を先に考案した1)。本研究ではこの手法を適用して炊飯過程の米の粒内変化を視覚的・定量的に把握し,画像解析で得た特徴値と糊化度の対応性を検討した。

    【方法】コシヒカリの精白米に米重量比1.0,1.5,1.9となるよう加水して浸漬した後に炊飯し,沸騰後0,3,5分および消火後0,15分後に釜から取り出して試料米飯とした。試料米飯の水分含量(常圧加熱乾燥法),糊化度(BAP法)を測定した。次に試料米飯を1粒ずつ機器で荷重をかけて0.1 mmに圧縮したプレパラート(圧縮米飯粒)を作製し,色測定(L)および顕微鏡(BZ-X700,KEYENCE)撮影画像を解析した。

    【結果】水分含量は一般的な炊飯方法(加水比1.5消火後15分蒸らし)の飯では61.7%で,加水比1.9の場合は沸騰後3分でそれと近い値を示し,加水比1.0消火後15分は低かった。一方,糊化度は加水比1.9沸騰3分よりも加水比1.0消火後15分の方が10%以上高かった。圧縮米飯粒画像に対して複数の輝度区分で多値化処理した結果,沸騰後3分ではいずれの加水比でも粒内は不均一で中央に輝度の低い部分が集まっていることが示され,飯中心部まで糊化が進んでいないと推察された。消火後15分では画像輝度の分布傾向に粒内部位による違いは少なく,加水量が多い方が全体的な輝度値は高かった。画像の輝度130以下の面積率および圧縮米飯粒のL値と糊化度との相関係数は高く,これらの指標によって飯の糊化度を推定できる可能性が示された。

    1)大田原ら(2018),日食科工誌,65,170-182

  • 外岡 和菜, 川村 愛李, 石川 伸一
    セッションID: 1P-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】米飯の嗜好性には食感が大きく関与し,やわらかくて粘りの強い,「粒立ちの良いお米」が好まれる傾向がある。米飯の粒立ちは,炊飯時の温度,時間,吸水量等の条件が複合的に影響し,粒立った米飯は米粒同士が接着せず独立した炊きあがりになる。そのため「米飯の食感」と「釜内部の米粒と空間の配置」には何等かの関係があると考えた。釜内部の米粒と空間の配置を観察した事例は無く,食感との関係は明らかではない。そこで本研究では,炊飯方法ごとの釜内部の米粒と空間の配置の違いを観察し,米粒と空間の配置と食感の関係を明らかにすることを目的とした。

    【方法】炊飯方法ごとの米粒と空間の配置を観察するため,電気炊飯器2種類,羽釜(ガス加熱),土鍋(IH)2種類で炊飯を行い,X線CTスキャンで内部を撮影した。画像観察の結果,部位により米粒と空間の配置に差が見られた土鍋炊飯を鍋内部の中心・上,中心・中,中心・下,鍋肌・下の4部位に分け,炊飯時の温度変化測定,水分含量測定, テクスチャー測定(硬さ・粘り),空隙率計測および官能評価をそれぞれ行った。

    【結果】電気炊飯器と羽釜では全体的に同程度の大きさの空隙が存在していたのに対し,土鍋では空隙の大きさ・数に部位的な差が見られた。土鍋炊飯の部位ごとにおけるテクスチャー測定では,鍋肌・下が中心・上よりも有意に硬かった。空隙率は,中心・上が中心・下よりも有意に高かった。分析型官能評価では鍋肌・下が他の部位よりも硬いと評価され,嗜好型官能評価では中心・上と中心・中が鍋肌・下よりも高いと評価された。これらのことより,米粒間の空間を釜全体で存在させることが「全体を好ましい食感に仕上げる炊飯方法」に繋がると考えられた。

  • 池田 倫子, 山中 なつみ
    セッションID: 1P-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】粉砕や加圧加熱は,玄米の糊化を促し消化を良くするためレジスタントスターチ(以下RS)量に影響を及ぼす可能性がある。そこで,本研究は玄米と玄米粉を用いて加熱時の形状の違いがRS量に与える影響を調べるとともに加熱方法の違いや冷蔵保存がRS量に及ぼす影響について検討した。

    【方法】玄米(新潟県産コシヒカリ)は食品ミル(Iwatani社製,IFM-C20G)で粉砕し,目開き250 µmのふるいに通したものを玄米粉とした。玄米または玄米粉3 gと蒸留水3.6 ml(加水量1.2倍)を各々真空パックフィルムで密封し(7 cm×4 cm),25 ℃恒温器内で16時間吸水させた。25 ℃の水1 Lとともに鍋(直径20 cm,深さ7 cm)に入れ,蓋をして沸騰まで強火で4.5分,その後弱火で40分微沸を保ちながら加熱し,消火後10分放置した(通常加熱)。2時間吸水させた試料を25 ℃の水1 Lとともに圧力鍋(直径20cm,深さ7 cm,80 kPa)に入れ,強火で4.5分,加圧下にて弱火で20分加熱した後10分放置した(加圧加熱)。2種類の加熱方法で調製した試料は,加熱当日と4℃で2日間保存後にAOAC公定法2002. 02を用いてRS量を定量した。

    【結果】玄米のRS量は通常加熱0.33%,加圧加熱0.33%であり,玄米粉では通常加熱0.29 %,加圧加熱0.25%であった。冷蔵保存後は,玄米の通常加熱は0.38%,加圧加熱で0.43%に対し,玄米粉の通常加熱は0.28%,加圧加熱で0.36%であった。玄米のRS量は加熱方法での違いは認められなかったが,玄米粉では加圧加熱することで有意に低下した。冷蔵保存に伴うRS量の変化は,加圧加熱で顕著に増加した。

  • —大豆発酵食品テンペの利用—
    西川 章江, 岡部 将仁
    セッションID: 1P-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】古米の炊飯米は,水分が少なく,かたく,あまりおいしくないとされている。古米の食味改善のために,食酢,みりん,清酒等の調味料や柑橘果汁,竹炭を加えた方法等が挙げられる。大豆発酵食品のテンペは,炊飯時に添加すると「ふっくらツヤツヤ」「甘くておいしい」等の情報があり,古米の食味改善の可能性があると考えられる。しかしながら,テンペのこのような効果については情報だけで,それを裏付けるデータはない。そこで,本研究では,テンペの古米の食味改善に及ぼす影響について検討する。

    【方法】米は島根産きぬむすめ(精白米)を用い,令和2年産(古米),令和3年産,令和4年産(新米)をとした。古米の食味改善に影響を及ぼすと考えられる試料として,テンペの他に本みりん,米酢,清酒,オリーブ油,竹炭,水煮大豆を用いた。米75 gを300 mlの水で3回水洗し,1.5倍量の水(約20℃)に60分間浸漬後炊飯した。テンペおよび水煮大豆は,炊飯後ににおいや味を感じない程度の量(2 g)をみじん切りにして用いた。その他試料の添加量は,先行研究を参考にした。各条件の吸水率,浸漬液のpH, 炊飯米の水分含有率を測定した。おにぎり(米飯360 g)を調製し,10分後と30分後のかたさ(応力)をレオテスターにより測定した。

    【結果】米の浸漬60分後の吸水率において,古米より高かったのは,米酢,竹炭,テンペ,水煮大豆を添加した場合であった。古米より高い水分含有率を示したのは,オリーブ油,米酢,みりん,水煮大豆を添加した米飯であった。おにぎり調製10分後と30分後のかたさにおいて,テンペ,水煮大豆,清酒,本みりん,オリーブ油を添加したものは変化が小さかった。テンペも古米の食味を改善させる可能性が示唆された。

  • —ドウとバッター調製時における卵添加の影響—
    中本 恵子, 徳永 みな子, 中谷 梢, 野口 聡子, 八木 千鶴, 山本 悦子, 米田 泰子
    セッションID: 1P-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】微細米粉を用いたケーキ類やパイクラストの調製条件と製菓特性を明らかにする過程で,米粉における換水値や副材料の影響を知るために,本報では米粉(米)のドウとバッターに水または卵を加え,薄力粉(薄)・強力粉(強)のドウとバッターとの違いを比較した。

    【方法】ドウの配合割合を米:水または卵=1:0.61:0.71:0.8とし,薄または強:水または卵=1:0.51:0.61:0.7として,水分含有率,水分活性,圧縮試験を行った。 バッターの配合割合を粉:水または卵=1:11:1.51:21:2.51:3として,水分含有率,水分活性,粘度,AST値測定を行った。

    【結果】ドウについて,水分活性は配合割合,水または卵の違い,粉の違いによる差は小さかった。応力とエネルギーは水or卵の増加により低くなった。水と卵の差は卵ドウ>水ドウだが,1:0.6では差がなかった。粉の違いでは米>強>薄であった。 バッターについて,水分活性は配合割合,水または卵の違い,粉の違いによる差は小さかった。粘度は水or卵の増加により低くなった。水と卵の差は卵バッター>水バッターであった。粉の違いでは米<薄<強であった。米卵バッター1:2は薄水バッター1:1.5と強水バッター1:2.5に,米卵バッター1:2.5は薄水バッター1:2と強水バッター1:3と近似値であった。AST値は卵の増加により高くなる傾向で,水と卵の差は卵バッター<水バッターであった。粉の違いでは米>薄>強であった。米卵バッター1:1.5は薄卵バッター1:1.5と強水バッター1:1.5に,米卵バッター1:3は薄水バッター1:1.5と強水バッター1:2と近似値であった。

  • —ドウとバッター調製時における砂糖添加の影響—
    徳永 みな子, 中谷 梢, 中本 恵子, 野口 聡子, 八木 千鶴, 山本 悦子, 米田 泰子
    セッションID: 1P-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】微細米粉を用いたケーキ類やパイクラストの調製条件と製菓特性を明らかにする過程で,米粉における換水値や副材料の影響を知るために,本報では米粉(米)のドウとバッターに砂糖を加え,薄力粉(薄)・強力粉(強)のドウとバッターとの違いを比較した。

    【方法】ドウの配合割合は粉300 gとし,粉:水=1:0.6に砂糖0,30,60,80 g,1:0.7に砂糖30 g,薄または強は1:0.5に砂糖0,30,60,90 gを加え,ホームベーカリーで調製した。水分含有率(Cm),水分活性(Aw),圧縮試験(CT)を行った。 バッターの配合割合は粉:水=1:1に砂糖(G)0,50,100,150,200 gまたはシロップ(S)を加え,ハンディフードプロセッサーで調製した。Cm,Aw,粘度(Vi),AST値測定(AST)を行った。

    【結果】ドウのCmは砂糖が増えると低下し,GとSに差ができSが高くなり,Awは有意差がなかった。荷重・応力・エネルギーは砂糖が増えると低下し,GよりSの方が低くなり,米>強>薄の順になった。歪率80%時の荷重では米1:0.6のG-80 gは米1:0.7の砂糖0 gと強のG-30,60,90 gと近く,米1:0.6のS-60 gは強のS-30,60,90 g,米1:0.6のS-80 gは米1:0.7の砂糖0 g,薄のS-30,60,90 gと近いかたさになった。 バッターのCmは砂糖が増えると低下するが,GとSの差と,粉の差はなかった。Awは有意差がなかった。Viは砂糖50 g以上ではGとSの差がなく,米>強>薄の順になった。ASTは米の砂糖50 gが最も高く,砂糖が増えると低くなり,GとSの差はなく,米>強>薄の順になった。

  • —ドウとバッター調製時における油添加の影響—
    野口 聡子, 徳永 みな子, 中本 恵子, 中谷 梢, 八木 千鶴, 山本 悦子, 米田 泰子
    セッションID: 1P-7
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】微細米粉を用いたケーキ類やパイクラストの調製条件と製菓特性を明らかにする過程で,米粉における換水値や副材料の影響を知るために,本報では米粉(米)のドウとバッターに油を加え,薄力粉(薄)・強力粉(強)のドウとバッターとの違いを比較した。

    【方法】ドウの配合は粉を300 gとし米では,油120,150,180 g(0.40.50.6),薄に油90,120 g(0.30.4),強に油90,120,150 g(0.30.40.5)を加え,ホームベーカリーで調製した。水分含有率(Cm),水分活性(Aw),圧縮試験(CT)を行った。バッターの配合は粉1に対し油を0,150,180,200,214.3,225 g(11.522.53)加え,ハンディフードプロセッサーで調製した。Cm,Aw,粘度(Vi),AST値測定を行った。

    【結果】ドウ・バッターのCm,Awは油添加量が増加すると減少しており,粉の違いによる差はみられなかった。ドウのかたさは,油添加量が増加すると米>薄>強の順にやわらかくなった。歪率80%時の荷重で,米1:0.51:0.6と薄1:0.3と近く,米1:0.4は 薄1:0.4 ,強1:0.3と近いかたさになった。バッターのViは油添加量が増加すると低下し,AST値は高くなった。Viは米>強>薄の順にやわらかく,AST値は米>薄>強の順になり,面積が広がりやすくなった。 以上の結果から,油による影響について,Cm,Awにおいては粉自体のCmと同等であり,油脂の影響は受けない。米はVi,AST値に関して,Viが低くなるが,AST値は高くなった。米は他の粉に比べ,親油性が低いといえた。

  • 寺本 あい, 石原 涼香, 松下 海花, 森田 汐里
    セッションID: 1P-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】市販の小麦粉を使わないアレルギー用の麺は,未だ取り扱い店が限られており,通常の麺に比べて高額なものが多い。そこで,比較的安価で手に入りやすい粉類を用いて,家庭で容易に作ることができる代替麺(うどん)の開発を行うこととした。

    【方法】<試料>①「アレルギーっ子の安心レシピ大百科」(千葉友幸監修,社団法人 家の光協会,2009年5月1日)の餃子の皮,ラーメンのレシピを参考に,材料の分量・割合,調理法(成形の仕方,茹で時間)を改変。②冷凍うどん(「コシのあるうどん」,TOPVALU)<評価>①茹であがった麺を水洗後,麺のみ及びめんつゆをつけて試食し,食感,味などを比較。②クリープメータ(RHEONERⅡ RE2-3305B,YAMADEN)を使用し破断強度解析を行い,圧縮歪率20%,50%,80%の応力を比較。

    【結果・考察】餃子の皮の改変レシピ(じゃがいも又はさつまいもペースト200 g,米粉70 g,葛粉30 g,水10 g)は,茹でる工程で細かくちぎれ,麵の形状を保てなかった。ラーメンの改変レシピ麺(米粉50 g,片栗粉又はタピオカ粉150 g,粥ペースト100 g,じゃがいも又はさつまいもペースト30 g,水30 g)は,比較的良好な製品が得られたため,粉,ペーストの組み合わせ・量,茹で時間の検討を行った。その結果,じゃがいも,粉類は米粉と片栗粉の組み合わせが最も市販冷凍うどんに近かった。また,米粉:片栗粉=75 g:125 gの配合が試食および破断強度解析ともに市販冷凍うどん近いかった。茹で時間は,コシのあるうどんを好む方は15分,乳幼児や高齢者,軟らかいうどんを好む方は20分が適当であった。

  • 佐藤 みず穂, 椎名 美紀, 北島 里瑚, 梶野 涼子
    セッションID: 1P-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】米の消費量が年々減少している中,米の消費拡大に向け米粉の普及が図られている。近年,米粉は小麦粉の代替としての利用が進み,パンや菓子,麺など,様々な加工品が製造されている。しかし,米粉の麺への利用は,パンや菓子に比べ少ない。我々は米粉の麺への利用拡大を目指し,米粉の特性を活かしたうどんの開発に取り組んでいる。米粉は色が白く,くせのない風味であるため,他食材を添加した際に食材の色や風味を引き立て,綺麗な色,良い風味のうどんができると考えた。本研究では,色や香りに特徴のある食材として,ほうじ茶パウダーおよびいちごパウダーを選定し,米粉うどんの品質に及ぼす食品粉末添加の影響を検討した。

    【方法】米粉うどんは,ほうじ茶パウダーまたはいちごパウダーを5%,10%添加した米粉,片栗粉,増粘多糖類としてアルギン酸エステル(キミカ),CMC(日本製紙)を使用して作製した。各生地のpHをpHメーターで測定した。米粉および2種のパウダーの水分含量は常圧加熱乾燥法により求めた。茹で時の麺の切れやすさを測定するため,生麺の長さを20cmに切断し,茹で後の麺の長さと切れた本数を計測した。また,茹でうどんについて破断測定を行った。

    【結果】米粉にほうじ茶パウダーを添加した場合,茹で作業により,ほうじ茶パウダー5%の添加で約1/3の麺が切れ,10%添加では約1/2の麺が切れた。一方,米粉にいちごパウダーを添加した場合,5%添加で約1/4の麺が切れたが,10%添加ではほとんど切れなかった。各種茹でうどんの物性は,コントロールの米粉うどん,ほうじ茶パウダー10%添加うどん,いちごパウダー10%添加うどんの順で有意に破断応力が高かった。

  • 菊田 千景, 髙谷 美衣奈, 川端 康之, 米田 武志
    セッションID: 1P-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】新たなグルテンフリー麺として注目されている黄えんどうのみで作られた麺(以下,黄えんどう麺)の調理特性と食味特性を調べ,品質を評価した。

    【方法】試料は,黄えんどう麺(ZENB NOODLE,株式会社ZENB JAPAN)と,比較対照として小麦粉麺(マ・マー レギュラースパゲティ,株式会社 日清製粉Welna)を用いた。それぞれの麺を商品パッケージの記載通りに茹で,茹であげ後の経時変化について,物性測定(最大荷重)と状態観察(プレパラートで押しつぶした麺の観察)を行った。さらに,茹で後すぐと20分後について官能評価(パネルは21~22歳女子大学生29名)を行った。

    【結果】黄えんどう麺は,物性測定において小麦粉麺に比べ最大荷重が大きく経時変化が少なかったことから,硬くて伸びにくい性質があることが分かった。状態観察では,黄えんどう麺は麺の水分の含有量が少なく麺の表面が凹凸していることが観察された。官能評価において,茹で後すぐと20分後のどちらも,硬い,ざらざらしていると評価された。この結果は,最大荷重や状態観察の結果を支持するものであった。また,パネリスト全体の評価としては小麦粉麺より好まれなかったが,硬い麺が好きな人はやわらかい麺が好きな人より黄えんどう麺を好む傾向がみられた。今後,黄えんどう麺の特徴的な硬さや伸びにくさの要因を明らかにするとともに,これらの特性を活かした調理方法の検討を行う必要があると考えられる。

  • 浜守 杏奈, 石田 雅芳, 福留 奈美
    セッションID: 1P-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】パスタの種類は多種多様であり,特にショートパスタには,マカロニ,ペンネ,フジッリ等,形状そのものが大きく異なる多様なタイプがある。日本で流通するパスタの調査を行いタイプ分類を行ったところ,同じ名称のパスタであっても形状・大きさ等が異なるものがあり,商品によって茹で加熱中の吸水率に差があることが推察された。吸水率の差はパスタ料理の仕上がりや,茹で麺重量当たりのエネルギー量に影響を与える。そこで本研究では,形状・大きさが異なる各種パスタの茹で加熱中の吸水倍率を把握することを目的とした。

    【方法】2022~2023年にかけて東京都内・近郊のスーパーマーケット,輸入食品店で販売されているパスタ約350商品を入手し,その内のショートパスタ全種類の茹で加熱後の吸水率を調べた。茹で時間はパッケージ記載の標準茹で時間(以下,標準),標準-2分,標準+4分の3段階とし,それぞれの吸水倍率(茹で加熱後の重量/乾燥パスタ重量)を算出した。

    【結果】早ゆでタイプのパスタにおいて,茹で時間の差による吸水率への影響が大きかった。また,フジッリ,ペンネはメーカーによって異なり,標準の吸水倍率は1.8~2.6となった。同じ名称のパスタであっても加工方法,形状,大きさ等が異なることで吸水率に差が生じ,重量当たりのエネルギー量,ソースのからみ具合等に影響を与える可能性が示唆された。なお,本研究にて使用したショートパスタの画像と詳細情報についてはwebサイトにて公開し,パスタ調理の際の参考資料として提供する。

  • —キヌア粉で調製したパスタの特徴—
    石井 和美, 森山 朋歩, 山田 穂乃佳
    セッションID: 1P-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】今年は国際雑穀年である。雑穀は気候変動に強く,持続可能な生産は健康的な食生活に大きく寄与できる。本研究では,雑穀粉の用途開発として,キヌア粉でパスタを調製し,材料の配合割合や調製法を検討し,その特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】キヌア粉,鶏卵,オリーブオイル,食塩を主材料として材料の配分を調整し,ゆで時間を検討した。キヌア粉で調製したパスタをコントロールとし,改良のために増粘多糖類を添加し,タピオカスターチでキヌア粉の一部を置換してパスタを調製した。パスタは生地をまとめたあと,製麺機のローラーで段階的に3回伸ばし,6 mm幅に調製した。0.5%濃度の食塩水で3分半茹で,10分以内に破断特性を測定した。測定は山電製のクリープメーター(レオナーRE2-3305B)にて,くさび型プランジャーを用いて圧縮速度1 mm/sで,パスタ試料の厚さの95%まで圧縮して測定した。

    【結果】小麦粉パスタの配合を参考にして調製したところ,キヌア粉パスタは生地がべたつき,製麺機で均一に伸ばすのが困難だった。そこで鶏卵の量を調整して製麺したところ,ゆであがったパスタはちぎれやすく,食感はぼそぼそしていた。パスタのつなぎとして増粘多糖類を粉重量の1%添加して調製すると,コントロールと比較して生地が扱いやすくなった。しかし,ゆで上がったパスタはキヌアの風味が強く,食感も改良が必要と考えられたため,キヌア粉の一部をタピオカスターチで置換して調製した。キヌア粉の20%をタピオカスターチで置換して調製すると,生地は扱いやすくなり,ゆで上がったパスタの食感はもちもちし,キヌア独特の風味が減少して食べやすくなった。

  • 大須賀 彰子, 藤井 恵子
    セッションID: 1P-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】再構成鶏胸肉に油脂を添加すると油脂の状態により食べやすさの評価が異なることを報告した1)。本研究は咀嚼過程における食塊の特性を検討し,その要因を明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料は鶏胸肉を真空包装後,沸騰水中で中心温度85℃で90秒間加熱し,その後20℃になるまで冷却した。冷却した鶏胸肉をフードプロセッサーでほぐし肉とし,油脂を添加し再構成鶏胸肉を調製した。添加油脂は液状油(キャノーラ油)と固形脂(油脂固化剤を用いて調製した固形脂とショートニング)を用いた。食塊は20℃の肉試料5 gを口に入れ,咀嚼して吐き出したものとした。咀嚼回数は5,10,20回及び嚥下できる状態まで自由咀嚼した回数の4条件とし,パネルは20~40代の女性8名とした。測定項目は咀嚼回数,食塊の温度及び食塊中の唾液量,テクスチャー特性,静的粘弾性とした。

    【結果】再構成鶏胸肉の咀嚼回数は試料間に有意差は認められなかった。食塊の温度は咀嚼回数が増加すると高くなり,嚥下直前の温度はいずれも28~29℃となった。食塊中の唾液量は,咀嚼回数が増加すると高値を示したが,試料間に有意差は認められなかった。ショートニング添加試料の付着性と凝集性は高値を示したが,咀嚼回数が増加すると試料間に有意差は認められなくなった。食塊の微小変形領域の弾性率と粘性率は咀嚼回数が増加すると低値を示したが,試料間に有意差は認められなかった。以上より,油脂を添加した再構成鶏胸肉は喫食する前の力学特性が異なっていても,咀嚼過程で唾液と混合することにより,嚥下直前にはほぼ同じ力学特性の食塊を形成することが示された。

    1)日本調理科学会2021年度大会研究発表要旨集,52

  • 伊藤 歩美, 猿舘 那菜, 柳澤 琢也, 石川 敦祥, 平形 清人, 奥田 悠介, 熊谷 信介, 石川 伸一
    セッションID: 1P-14
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】食肉の下ごしらえにマヨネーズやその他のドレッシングを使用して,「焼く」「茹でる」といった調理についての報告はあるが,ドレッシング中での加熱や低温調理を行う研究や報告は少ない。そこで,本研究では,ドレッシング中で食肉を低温調理することで,ドレッシングの新しい調理への応用と食感改良効果(おいしさ)の可視化することを目的とした。

    【方法】実験①ではキユーピー社製のごま油&ガーリックドレッシング,深煎りごまドレッシングおよびマヨネーズを,実験②では植物油,食塩,食酢,砂糖を蒸留水である割合に希釈した調味料液を,コントロールには蒸留水をそれぞれ鶏むね肉100 gあたり10 gの割合で添加した。一定時間漬け込み,60℃,3時間低温加熱した。一定時間冷蔵後,硬さなどを測定し,官能評価および電子顕微鏡などにより内部構造の観察を行った。

    【結果】硬さについて,実験①ではコントロールと比較してマヨネーズを使用した試料で有意に低い値を示し,他ドレッシングを使用した試料でも低下する傾向がみられた。実験②ではコントロールおよび食酢・砂糖を使用した試料と比較して,植物油を使用した試料で有意に低下した。官能評価の結果,実験①ではコントロールと比較して,分離および乳化液状ドレッシングを使用した試料が有意に柔らかく,一噛み目の多汁性が有意に高い評価となった。実験②では食酢を使用した試料は砂糖を使用した試料と比較して有意に柔らかく,一噛み目の多汁性は植物油を使用した試料と比較して食塩を使用した試料が有意に高い評価となった。電子顕微鏡観察の結果,コントロールと比較して各ドレッシングや植物油を使用した試料で異なる筋繊維の様子が観察された。

  • 梁 家楽, 石川 伸一
    セッションID: 1P-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】肉の多汁性(ジューシーさ)は,水分含量(物理化学的特性)および口の潤い程度(官能特性)などによって影響を受け,後者は肉からの水分と唾液の量に依存する。本研究では,さまざまな温度と時間によって低温調理した鶏肉の多汁性を物理化学的特性および官能特性の観点で調べることを目的とした。

    【方法】鶏むね肉を試料とし,温度57,60,63,66,70℃で1,2,3時間それぞれ低温調理し,冷却後にクッキングロスを測定した。圧力濾紙法を用いてジューシーさを測定した。硬さはレオメーターにより平型プローブを用いて測定した。12人のパネラーにより,温度57,63,70℃で3時間調理した鶏むね肉試料を用い,分析型の官能評価を行った。100℃で3時間加熱した鶏肉試料をコントロールとし,多汁性および硬さを咀嚼回数(咀嚼3回,咀嚼10回,飲み込む前)ごとに分けて調べた。

    【結果】調理温度が高くなるほど,調理時間が長くなるほど,クッキングロスの値は大きく,ジューシーさの値は低くなり,硬さの値は大きくなった。ジューシーさとクッキングロスには負の相関が(p<0.01)が,ジューシーさと硬さにも負の相関(p<0.05)が見られ,肉の多汁性には肉の水分含量および硬さに関連していることが示された。一方,官能評価の結果,咀嚼の回数によって,試料間の硬さには差は見られなかったが,ジューシーさは特に噛む回数が10回目の際に試料間に有意な差があったこれらの結果から,肉の多汁性は単に物理化学的な水分含量だけはではなく,パネラーの感覚にも大きく左右されることが明らかとなった。そのため,肉の多汁性をより正確に評価するためには多角的なアプローチが必要であると考えられる。

  • 劉 尭煒, 石川 愛理, 兼井 ほのか, 大島 美桜, 西川 芽衣, 小西 むつ望, 竹嶋 伸之輔, 小林 三智子
    セッションID: 1P-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】現在の日本国内で生産されている約9割以上が黒毛和種牛である。本研究では,高い脂肪交雑を特徴とする黒毛和種牛を用いて,おいしさを表す指標として7項目の食味性を設定し,それぞれの関連性および牛肉の構成成分との関連性を検証した。

    【方法】パネルは20代若年女性とし,官能評価は7段階評価尺度による採点法を用いた。評価項目は外観,牛肉の好ましい香り,味(フレーバー)(うまみの強さ),食感(テクスチャー),多汁性(肉汁の量),脂っこさ及び総合評価の7項目とした。30検体の黒毛和牛リブロース部を用いて,厚さ1 cm ,縦3 cm ,横4 cm に切りそろえた試料を 200 ℃で中心温度60℃になるまで加熱を行った。得られた評価値は二元配置分散分析により解析した。さらに,HPLCにて,イノシン酸と遊離アミノ酸分析を行った。また,味認識装置による分析を試みた。

    【結果】官能評価の結果,「総合評価」の4点台をふつう,それ以上を好まれた,それ以下を好まれなかったとしたとき,すべての試料において5点台が多い傾向がみられた。30種の試料間に有意な差が見られた(p<0.01)。「総合評価」の評点が最も低い試料については,脂肪含有量65%以上で最も多く,脂肪が非常に多い牛肉は好まれないことがわかった。また,評価項目間についても有意な差が見られた(p<0.05)。 牛肉のおいしさに関係すると思われた遊離イノシン酸及び遊離グルタミン酸含量は,本実験では微量しか検出されず,とさつ後の冷凍保存時間が長期になってしまった事が原因ではないかと推察された。現在,味認識装置による測定を実施中であり,今後,3つの指標を同時に測定するための試料の調整方法を検証していく必要性が考えられた。

  • 島田 良子, 冨田 晴雄, 伊佐治 由貴, 加藤 陽二, 吉村 美紀
    セッションID: 1P-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】近年進む高齢化により,素材の形や味を維持した嚥下食(やわらか食)は,その見た目や食べやすさから必要性が高まっている。本研究では,より素材らしいやわらか食の実現に向け,牛肉のやわらか食の物性・嗜好性・咀嚼性を検討した。

    【方法】牛肉は圧力蒸しを30分間行った後フリーズドライ(FD)したものを使用し,次の4種類の試料を調製した。A)酵素処理のみ:酵素液にFD後の牛肉2切れを浸漬し60分間静置後,真空デシケーター内で15分間静置×3回,60℃で30分間加温した。B)酵素処理+とろみ剤添加:試料Aにとろみ剤をかけた。C)酵素処理+レトルト処理:試料Aを120℃の高圧蒸気滅菌器で15分間加熱した。D)対照試料(酵素未処理):酵素を使用せず試料Aと同様の操作を行った。試料A~Dのテクスチャー測定(硬さ,凝集性,付着性),官能評価(見た目,軟らかさ,美味しさ等の8項目について5段階採点法で評価),試料Dは飲み込むことが困難であったため,筋電位測定は試料A~Cのみ行った。

    【結果】テクスチャー測定では,酵素処理により硬さ,凝集性は有意に低下,付着性は低下の傾向を示した。官能評価では,酵素処理により,見た目は素材(牛肉)らしく,軟らかく,噛みやすく,ばらけやすく,飲み込みやすくなると有意に評価された。また,試料Cでは噛みやすさ,飲み込みやすさの評価が試料A,Bより有意に低下した。筋電位測定の開口筋・閉口筋では,試料Cは試料A,Bより咀嚼回数,咀嚼時間,総筋活動時間が有意に増加した。以上の結果より,フリーズドライした牛肉は酵素処理により,素材らしい見た目で食べやすくなるが,酵素処理後にレトルト処理をすると硬く食べにくくになると推察された。

  • 吉村 美紀, 冨田 晴雄, 伊佐治 由貴, 加藤 陽二, 島田 良子
    セッションID: 1P-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】咀嚼・嚥下機能が低下した高齢者の食事として,素材の形や味を維持したやわらか食は,その見た目や食べやすさから必要性が高まっている。加熱により硬くなりやすいタコに酵素を用いたやわらか食の物性・嗜好性について検討した。

    【方法】試料は,フリーズドライしたタコ(FDO)を使用し,次の4種類を調製した。 A)酵素処理:FDOを酵素液に60分間浸漬後,真空デシケーター内で15分間減圧後,大気圧3回繰り返し,60℃で60分間加温により酵素処理をした。B)酵素処理+とろみ剤添加:試料Aにとろみ剤を付与した。C)酵素処理+レトルト処理:試料A調製後,高圧蒸気滅菌器で120℃,15分間加熱した。D)酵素未処理:酵素未処理で試料Aと同様の操作を行った。テクスチャー測定は,硬さ,凝集性,付着性を求めた。官能評価は5段階採点法で,90℃で10分間加熱の酵素失活を確認した試料を用いた。研究倫理承認の上実施した。

    【結果】テクスチャー測定では,D)酵素未処理に比べ,A)とB)酵素処理の硬さは有意に低下したが,C)酵素処理+レトルト処理では,レトルト処理により硬くなった。付着性はとろみ剤添加による変化は見られなかった。官能評価では,A)とB)酵素処理は有意に軟らかく,まとまりやすく,飲み込みやすいが,タコの素材らしさ(味)が低下した。C)酵素処理+レトルト処理は,硬く,べたつきがあると評価された。D)酵素未処理は硬く,まとまりにくく,飲み込みにくいが,最も素材らしいと評価された。Pearsonの積率相関では,硬さとまとまりやすさ,飲み込みやすさに負の相関があり,硬いものほどまとまりにくく,飲み込みにくいことが推察された。タコ(FDO)の酵素処理によるやわらか食は,軟化により食べやすくなることが推察された。

  • 谷口 明日香, 橋本 加奈子, 重村 泰毅, 細川 恵, 世古 卓也, 神山 龍太郎, 石原 賢司, 小林 理恵
    セッションID: 1P-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】未だ続く福島県産水産物に対する風評影響を払拭し,消費者の購買意欲を促すため,福島県で水揚げされるマアナゴのサイズ別調理用途の提案を目指して,サイズごとの特性の解明に取り組んでいる。市場価値が高い300~500 gのマアナゴに加え,これより大型,小型サイズも含め,サイズの相違による調理品の品質への影響を官能評価及び成分分析から追究した。今回は分析型官能評価により,各種調理品における品質の相違点を明らかにすることを目的とした。

    【方法】マアナゴは,体重により小・中・大の3区分に分類し,背開きにして冷凍保存した。加熱方法が異なる調理品として焼き穴子,天ぷら及び煮穴子を調理し評価試料とした。評価項目は言葉だしと予備評価を経て調理品ごとに決定した。評価時には目視からサイズを判別できないようアイマスクを装着し,小・大サイズの品質について中サイズを基準に5段階評点法にて評価した。

    【結果】「小サイズ」は,いずれの調理品も口中で感じる肉厚感,うま味,弾力の項目において中サイズとの有意な差が見られなかった。「大サイズ」は,各調理品に共通して中サイズよりも肉厚であり,うま味とジューシーさが強いと評価された。小・大サイズの調理品において,生臭さや小骨の多さの項目で負の評価はなく,中サイズに劣る点は抽出されなかった。さらに,「小サイズ」では焼き穴子はあっさりした味わいになるものの,天ぷらの味は強いと評価され,「大サイズ」では天ぷらの香ばしさや煮穴子の弾力が特徴として抽出された。このことから,サイズごとにマアナゴの用途を提案できる特徴を持つことが明らかとなった。今後は嗜好型官能評価を実施し,成分分析と併せて適した活用方法の提案につなげたい。

  • —熱凝固性の検討—
    北島 里瑚, 阿部 菫, 梶野 涼子
    セッションID: 1P-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】鶏卵の熱凝固性を利用した加工食品には,ゆで卵,カスタードクリーム,プリンなど,多種多様なものがある。熱凝固性には卵タンパク質の特性が大きく関与している。分類学上,鶏と異なる家禽の卵は,その熱凝固性も異なることが推察され,色々な調理条件を想定した熱凝固性を把握することは,家禽種毎の特性を活かした新規食品の開発につながることが期待できる。低・未利用家禽卵の有効活用に向けて,本研究では熱凝固性を検討することを目的とした。

    【方法】ニワトリ(Chi),アヒル(Duk)およびダチョウ(Ost)の卵を対象とした。様々な調理加工を想定し,各種家禽卵の全卵と卵白について,希釈処理(原液~3倍希釈),pH調整(pH7~9),砂糖添加(5~40%),食塩添加(0.5~3%)の各種処理を行った。各種処理を行った卵白および全卵のゲル特性を把握するため,ドライブロックで90℃,15分加熱した試料について,破断測定,色彩測定,外観観察を行った。また,各種処理を行った全卵および卵白について,昇温に伴う物性の変化を動的粘弾性測定により調べた。

    【結果】全ての希釈段階で,全卵および卵白ゲルは,Duk,Chi,Ostの順で有意に破断応力が高かった。Duk卵の希釈によるゲル形成能は高く,全卵3倍希釈においてChiの約3倍の破断応力を示した。pHによるゲル特性の比較では,ChiおよびDukの全卵ゲルはpH8においてpH7および9よりも破断応力が有意に高かった。一方,Ostの全卵ゲルは,pH7および8に比べ,pH9で有意に破断応力が高かった。その他,各種家禽の熱凝固性に及ぼす砂糖添加および食塩添加の影響についても報告を予定している。

  • —起泡性の検討—
    松岡 瑠里子, 椎名 美紀, 梶野 涼子
    セッションID: 1P-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】スポンジケーキ,ムースなど卵白の起泡性を利用した食品は多い。卵白の起泡性は,卵白を構成しているタンパク質の特性によって示される。分類学上,鶏と異なる家禽の卵は,鶏卵と相同性はあってもアミノ酸配列が異なるため,その起泡性も異なることが推察される。色々な調理条件を想定した起泡性を把握することは,家禽種毎の特性を活かした新規食品の開発につながることが期待できる。本研究では,低・未利用家禽卵の起泡性を検討することを目的とした。

    【方法】ニワトリ(Chi),アヒル(Duk)およびダチョウ(Ost)の卵白を対象とした。起泡性試験に用いる卵白は,保存温度(冷蔵,室温,40℃),pH調整(pH4,7,9),砂糖添加(卵白重量の50%,100%)処理を行った。起泡力の測定は,卵白50 gをスタンドミキサーで各時間(0.5~7分)泡立てた後,容積を計測した。気泡安定性は,泡立て後,経時的に離水量を計測した。また,泡立て後の泡について,テクスチャー測定およびデジタルマイクロスコープによる観察を行った。

    【結果】各種保存温度における起泡性は,Duk卵白の場合,40℃保存で他の保存温度に比べ短時間の撹拌で泡が形成されたが,保存温度による起泡力の差は認められなかった。気泡安定性は冷蔵保存が最も高かった。ChiおよびOst卵白においては,保存温度による起泡性の差は認められなかった。鳥種間を比較すると,Chi卵白は短時間で急激に起泡力が高くなるのに対し,Duk卵白は泡立ち始めるまでに時間を要した。Ost卵白は短時間で泡立ち始めるが緩やかに上昇した。その他,各種家禽の起泡性に及ぼすpHおよび砂糖添加の影響についても報告を予定している。

  • 小泉 昌子, 大 昌代, 峯木 眞知子
    セッションID: 1P-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】カスタードプディングは希釈性と熱凝固性を利用した菓子である。卵黄と卵白の割合は食品成分表により32:68とされるが,プディングのレシピでは,卵黄の割合を高くしたり,卵白を入れなかったりするレシピも多く見られる。そこで本研究では,プディング液中の卵・牛乳の割合を変化させた場合(プリンの黄金比)および,プディング液中の卵の割合は一定にして卵黄・卵白の割合を変化させた。その場合のプディングの特性を捉え好まれる材料配合を探索することを目的にした。

    【方法】材料は,鶏卵・牛乳・砂糖を用いた。実験1では,卵に対する牛乳の割合を,1.75,2.00,2.25,2.5,2.75,3.00倍に設定した。実験2では,牛乳に対する卵の割合を2.50倍に固定し,卵黄:卵白の割合を,卵黄比10%~70%に設定した。プディングの調製方法は,温めた牛乳に上白糖を溶解して,冷めたところに卵液を入れ,撹拌した。それを60 gに分注し,スチームコンベクションオーブンにより90℃で10分間加熱した。冷蔵して翌日測定に供した。測定項目は,外観観察,力学的特性,官能評価とした。

    【結果】実験1では,卵の割合が高いほど破断荷重および破断エネルギーが高く,相関係数は0.99であった。一方テクスチャー特性では,凝集性や付着性に違いがなかった。官能評価における牛乳の割合が高いプディングは,なめらかで,甘味が強いと評価され,嗜好型官能評価でも好まれたが,総合的な好みでは試料間に違いはなかった。実験2では,卵黄比率10%プディングでもなめらかな仕上がりであった。

  • 三宅 紀子, 石井 さくら
    セッションID: 1P-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】ゆばは中国を起源としており,仏教とともに日本に伝来した大豆の加工食品の一つである。現在,京都や日光などがゆばの名産地として知られているが,全国的には日常食する頻度が低い食品となっている。本研究では,江戸時代および昭和初期のゆばを用いた料理の特徴を明らかにし,ゆばがどのように食されてきたかを明らかにすることを目的とした。

    【方法】『翻刻江戸時代料理本集成』(臨川書店)に所収の江戸時代の料理書および昭和初期の食生活の聞き取りをまとめた『日本の食生活全集』都道府県別編纂全50巻(農文協)のCD-ROMを資料として用いた。ゆばの料理は江戸時代の料理書には20件,日本の食生活全集には16件記載されており,その調理法,ゆば以外の材料,ゆばの種類(生あるいは乾燥)などについて調査した。

    【結果】江戸時代では,『精進献立集』と『豆腐百珍』およびその続編にゆばの料理のほとんどが掲載されていた。『日本の食生活全集』では,近畿,北陸,東北地方を中心に掲載されていた。調理法を分類したところ,江戸時代では煮物(全件数の45%),あえ物(同20%)が多かったが,昭和初期では,ご飯物(同38%),煮物(同25%)が多かった。ゆば以外の材料については,江戸時代では油脂類(全件数の30%),豆類(同25%),野菜類(同20%)が多かったが,昭和初期では野菜類(同75%),穀類(同63%)が多かった。ゆばの種類はいずれも約80%の料理に乾燥ゆばが用いられていた。ゆばは,精進料理として寺院の食以外に,家庭でも葬儀・法事・お盆などの行事食として,また日常の食として身近な食材である大豆の加工食品として食されてきたことがわかった。

  • 湯川 寛子, 岡田 雄治, 杉野 茜音
    セッションID: 1P-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】ローメトキシルペクチン(LMペクチン)は低糖度ジャムをはじめとするゲル状食品のテクスチャーデザインに用いられている。LMペクチンはカルボキシル基とカルシウムイオンがイオン結合することによってゲル化するが,Ca反応性の大小によってはプレゲル(pregelation)を生ずることがある。プレゲルは局所的なCa濃度の上昇,温度の低下,ペクチンエステル化度(DE)と可溶性固形分濃度のミスマッチなどによって生ずるが,生成状況に関する分析的知見は乏しいといえる。そこで本研究ではDE,DAの異なるペクチンのプレゲルの結合状態を推定し比較のうえ,Ca反応性との関係を考察した。

    【方法】エステル化度(DE)の異なる市販ペクチンを用いてプレゲルサンプルの作製を行った。LMペクチン2.0%,ショ糖45%,の加熱水溶液に塩化カルシウム溶液最終濃度0.012%分を加えることでプレゲルを作製した。30メッシュパスによってプレゲルを単離定量し,80%(v/v)エタノール水溶液を加えることで糖の除去を行った。これを繰り返した後,100%エタノール水溶液中に一晩浸漬し糖除去済みプレゲルサンプルを得た。これを乾燥し,FT-IR用サンプルとした。さらにCa添加前後でのペクチンの見かけの分子量変化について極限粘度法による分子量測定を行った。

    【結果・考察】ショ糖濃度45%の系においてペクチンのDEの低下とともにプレゲルの生成量が活発化した。さらにFT-IRによる解析ではカルボキシル基と金属イオンが結合した状態でみられるピークが確認された。このときのピーク強度比はペクチンDE低下とともに大きくなり,プレゲル形成性と関係していることが示唆された。

  • 村上 陽子, 石川 茉優
    セッションID: 1P-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】テングサは静岡県の特産品であり,寒天の原料として和菓子材料に用いられる。寒天を使った和菓子の一つに「錦玉」がある。錦玉は,寒天と砂糖を煮溶かして型に入れて固めた生菓子で,透明で清涼感を呈するため,夏の和菓子に用いられる。生菓子の「錦玉」を乾燥させたものは「琥珀糖」と呼ばれ,半透明の半生菓子となる。錦玉や琥珀糖に関する先行研究をみると,錦玉や琥珀糖の物理特性に関する報告は殆どないのが現状である。加えて,材料である糖類が錦玉の物理特性に及ぼす影響に関して殆ど検討されていない。そこで本研究では,糖類の種類を変えて錦玉の物理特性や色彩構成に及ぼす影響について検討することとした。

    【方法】錦玉の調製方法について,材料や配合割合に関して文献調査を行った。調査の結果より,錦玉の材料を寒天,糖類,蒸留水とした。本研究では,寒天として粉寒天,糖類として二糖類を用いた。調製方法として,寒天に水を加えて加熱溶解後,糖類を加えて溶解させた。ザルでこした後,流し缶に流し入れて凝固させ,切り分けたものを試料として実験に供した。錦玉は,食品乾燥機を用いて35℃で乾燥させた。色彩構成,物理特性,重量などの変化を経日的に検討した。色彩構成(L*a*b*値)は色彩色差計,硬さ・凝集性・付着性は卓上物性測定器を用いて測定した。

    【結果】二糖類が錦玉の物理特性に及ぼす影響について検討したところ,スクロースやマルトースを用いた場合,錦玉の水分含量は時間の経過とともに減少した。一方,トレハロースは,水分含量の減少割合が他の糖に比べて小さく,有意な差が見られた。硬さなど物理特性についても,糖の種類による相違が見られた。

  • 森 勝哉, 板井 紀康, 来島 壮
    セッションID: 1P-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】だしに薄口しょうゆやみりんなどを加えた白だしは,様々な料理に用いられる調味料である。しかし,白だしの香りや味に関する研究は少なく,詳細な特性比較も望まれる一方,商品を簡便に評価する手法が求められてきた。ここで,サンプル間の特性の相違を評価できる有効な手段として,プロダクトマップが挙げられる。本研究では,NappingRとCheck-All-That-Apply(CATA)を実施し,白だしプロダクトマップの作成を試みた。

    【方法】市販の10種の白だしを試験に用いた。Nappingは,香りと味の類似性に従って,サンプルを白紙上に配置させて座標データを得た。CATAは,香りや味に関する官能特性を示す24の用語について,サンプルに対して感じた用語を全てチェックさせてサンプル特性を得た。さらにMultiple Factor Analysis(MFA)を用いて,Nappingで得られた座標データにCATAデータを統合することで主成分の解釈を行った。パネルは男女10名で実施した。

    【結果】NappingデータのRV係数は,90%のパネルが0.5を上回っており,グループ全体と個人の評価は一致したとみなした。サンプルが附置されたマップは,第2主成分まででデータ全体の情報のうち60%程度を説明できた。CATAの結果から,サンプル特性はかつお節やしょうゆの香りに関する用語に関係すると考えられた。作成されたプロダクトマップの結果から,今回用いたサンプルは,4つのクラスターから成ると想定された。本研究によって,白だしのプロダクトマップが作成でき,また商品の類似性には香りの影響が大きいとわかった。

  • 真部 真里子, 入江 美樹, 的場 七海, 中原 茅乃, 清水 杏奈, 寺島 あおい, 篠崎 洋平
    セッションID: 1P-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】醤油と鰹だし,みりんを組合わせた試料を用いた和食の煮汁の中で,醤油にみりんを加えた試料の香りに塩味増強効果を見出した。一方,鰹だしの香りが塩味を伴うとうま味を惹起することを確認している。本研究では,和食の煮汁の香りが塩味以外の味の発現に及ぼす影響を検討した。

    【方法】におい試料には,濃口醤油を超純水で25%希釈した未加熱希釈液とこれを10分加熱した加熱希釈液,八方だしをモデルとして,醤油の鰹だし・みりん希釈液ならびにこの液のみりんまたは鰹だしを超純水に置換した鰹だし希釈液,みりん希釈液を調製し,10分加熱して試料とした。これらの試料の香気特性をGC-O分析にて明らかにした上で,各におい試料の香りを後鼻腔経由で,水または0.8%食塩水に付与したときに認識しうる味と香りについてCATA法による官能評価で検討した。

    【結果】香りに関しては,塩味は醤油の香りを強調すること,鰹だしの香りが嗜好性を高めることが確認できた。また,塩味は,鰹節の香りを強調させること,塩味に醤油の香りが加わると鰹節の香りを連想させることが推測された。一方,味に関しては,香りを水に付与した場合は,明確に認識されうる味はないと考えられたが,コレスポンデンス分析では,におい試料が「醤油」は塩味,「みりん」は「甘味」を,だしを含む試料は「うま味」を誘発する傾向にあった。食塩水の場合は,従来通り,鰹だしの香りによって「うま味」が感じられた。香りの結果も考慮すると,醤油の香りと塩味によって,だしを想起し,うま味がすると錯覚をひき起こすと推察された。

    本研究の一部は科学研究費研究助成事業(19K02343)にて実施した。

  • 数野 千恵子, 加藤 麻里, 大栗 弾宏, 宗口 瑛, 横尾 芳明
    セッションID: 1P-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】水の硬度やpHといった性質は料理の味に影響する。そこでミネラルを豊富に含む植物ミネラルエキスをだし汁やみそ汁に利用した時,風味にどのように影響するかを検討した。

    【方法】植物ミネラルエキス:だし汁は植物ミネラルエキスのカリウムが30,60,100 ppmになるように調整し,みそ汁は60 ppmになるように調整した。

    1) だし汁の抽出方法:かつお節と昆布を合わせた重量を水に対して2%とし構成比をかつお節:昆布が2:1と3:1のだしパックを作成した。だしパックを水400 mLに入れ,鍋で5分間加熱したものを試料とした。

    2)みそ汁の調製方法:みそを椀に投入後,水100 mLに対しカリウムが60 ppmになるよう添加し,官能評価の試料とした。なお,みそ汁の塩分は10,30,50%減(OFF)とした。

    3)官能評価項目:(1) だし汁 色の濃さ,香りの強さ,香りの好ましさ,うま味,塩味,雑味,味の強さ,後味の好ましさ,総合評価を7点評価法で評価した。(2) みそ汁 香り,なめらかさ,塩味,うま味,味の濃さ,総合評価を7点評価法で評価した。

    【結果】1)かつお節と昆布2:1と3:1の割合で調整しただし汁にカリウムが30,60,100 ppmになるよう加えると,かつお節と昆布2:1の場合,カリウムが60,100 ppmでは多くの項目で評価が高く,100 ppmの方がわずかであったが評価が高かった。3:1は60 ppm添加したものが全体的に評価が高かった。

    2)みそ汁に植物ミネラルエキスを加えるとオリジナルみそ汁に比較して,10%OFFでは香りがやや少なくなるが,なめらかさ,塩味,味の濃さが良くなり,30%OFFではうま味,塩味,味の濃さを増強し,総合評価がやや良くなった。50%OFFでは全体的に評価が低くなった。

  • 鳥海 滋, 佐々木 多佳
    セッションID: 1P-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】昆布は,和食に欠かせないだし原料の一つである。昆布だしには,うま味成分のグルタミン酸が豊富に含まれる。昆布だしの取り方はいろいろあるが,60℃・1時間抽出はうま味が強く良い方法とされている。本研究では,異なる昆布だしの取り方による風味(においと味)の違いを成分分析により検討した。

    【方法】試料は,市販の昆布乾燥品(真昆布,日高昆布)を用いた。抽出に用いた水は,イオン交換-蒸留水を用いた。だしの抽出は,2%(w/v)の昆布片を水に浸漬し,5℃で12時間(水だし法),室温で1時間静置した後80℃まで加温(煮だし法),および60℃まで加温し60℃を1時間保持(60℃-1h法)の3通りにて行った。におい成分は,固相マイクロ抽出法により捕集し,ガスクロマトグラフ質量分析装置(GC-MS)にて一斉分析した。水溶性成分は,トリメチルシリル誘導体化し,GC-MSにて一斉分析した。

    【結果】異なる試料・抽出法により得られた昆布だしに共通するにおい成分として,ヘキサノール,1-オクテン-3-オール,3-オクタノン等が検出された。におい成分の主成分分析を行い,煮だし法および60℃-1h法は,水だし法とは明確に識別され,1-ドデカノールや1-ウンデカノール等の成分が寄与していることが分かった。一方,昆布だしに共通する水溶性成分としては,マンニトールやグルタミン酸等が検出されたが,主成分分析では抽出法の違いを識別できなかった。なお,2つの試料の違いは,抽出法によらず,におい成分,水溶性成分いずれの主成分分析によっても明確に識別された。以上により,昆布だしの取り方による風味の違いは,味よりもにおいの違いが寄与することが示唆された。

  • 樋口 誉誌子, 岩本 直樹, 細山田 康恵, 山田 正子, 瀬戸 美江
    セッションID: 1P-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】令和元年国民健康・栄養調査の報告では,鉄の摂取量はほとんどの年代で推奨量を満たしていない。そこで本研究は,調理用鉄製品である鉄玉から溶出する鉄を鉄補給源として利用するために,顆粒だしおよび調味料水溶液で鉄玉を加熱した時の鉄溶出量を明らかにすることを目的とした。

    【方法】ガラス鍋に水溶液(顆粒だし:和風,鶏ガラ,コンソメ)(調味料:醤油,醤油+塩,味噌)を500 g入れ加熱した。液温が85℃になったことを確認し鉄玉を鍋に入れた。加熱時間は5,10,15分間とした。各水溶液の鉄量は1,10-フェナントロリン吸光度法で測定した。併せて水溶液のpHと総酸度測定を行った。

    【結果・考察】全ての水溶液で加熱時間と鉄溶出量に強い正の相関が見られた(p<0.01)。顆粒だし水溶液においては,コンソメ水溶液の鉄溶出量が他の顆粒だし水溶液に比べ高い傾向にあった。顆粒だし水溶液の総酸度はコンソメ水溶液が他の水溶液に比べて有意に高かった(p<0.05)。調味料水溶液においては,味噌水溶液の鉄溶出量が他の調味料水溶液に比べて有意に高かった(p<0.05)。調味料水溶液の総酸度は,味噌水溶液が他の水溶液に比べて有意に高かった(p<0.05)。

    味噌およびコンソメ水溶液の鉄溶出量が高かった要因として,味噌には醤油に比べて複数の有機酸が含まれており,またコンソメにも他の顆粒だしよりも複数のエキスや調味料が含まれているため,総酸度が高くなり鉄溶出量が高くなったと考えられた。顆粒だしや醤油・味噌水溶液でも鉄が溶出することが明らかとなったことから,調理に鉄玉を使用することで一定量の鉄摂取ができ,鉄補給源として鉄玉を利用できることが示唆された。

  • 白井 伸生, 戸所 健彦, 石田 博樹, 山本 英作
    セッションID: 1P-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】塩こうじは米麹と食塩を混合し熟成させた日本の伝統的な発酵調味料であり,液体塩こうじ(ESK)はハナマルキ(株)の独自製法により開発した液体タイプの塩こうじである。ESKは畜肉及び魚類の不快臭に対するマスキング効果を有し,その成分である有機酸や糖が関与していると推測していたものの,メカニズムについては詳しく調べられていなかった。近年,麹菌Aspergillus oryzaeが生産する環状ペプチド デフェリフェリクリシン(Dfcy)が畜肉の不快臭原因物質であるヘキサナールの発生を抑制することが示された*1)ことから,本研究ではESKが有する不快臭に対するマスキング効果へのDfcyの関与を検証した。

    【方法】ESKに含まれる塩分濃度の食塩水をcontrolとした。グルコース,クエン酸及びDfcyをESKに含まれる濃度となるようにcontrolに添加したサンプルを調製した。各サンプルを豚挽肉重量に対し10%添加し混ぜ込み,4℃で2時間保管した。その後,スチームコンベクションオーブンを用いて180℃で10分間加熱後,官能評価により畜肉の不快臭を評価した。次に各サンプルで処理した豚挽肉のヘキサナール発生量をGC/MSにて測定を行った。

    【結果】官能評価の結果より,Dfcyサンプルが最も畜肉の不快臭を抑制し,次にグルコースサンプルが効果を示した。一方でクエン酸サンプルには不快臭の抑制効果が見られなかった。また,GC-MS分析でもDfcyサンプル処理によりヘキサナールの発生量を減少させることが確認できた。以上の結果より,ESKが持つ不快臭のマスキング効果にはESKに含まれるDfcyが大きく関与していると推察された。

    *1)戸所らJ. Food Process. Preserv. 2021

  • 鳥居 優理香, 村上 陽子
    セッションID: 1P-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】酒粕は,日本酒を製造する過程で生成される副産物である。酒粕には酒造りの時期に出る搾りたての新粕と,一夏熟成させた踏み粕,または練り粕がある。酒粕の熟成は,本来,蔵元で行われていたもので,約2~6ヶ月間,常温下において熟成される。熟成により,酒粕の風味が変わり,酸味が出るといわれており,熟成した酒粕は奈良漬けや味噌汁などの食品に用いられている。先行研究において,酒粕の熟成により,酒粕のアミノ酸や直接還元糖が増加することが報告されているが,熟成温度が酒粕の熟成に及ぼす影響については詳細な検討が行われていない。これまで,著者らは,酒粕の利用拡大と食文化の継承を目的として研究を行ってきた。本研究では,温度が酒粕の熟成による物理特性に及ぼす影響について検討することとした。

    【方法】酒粕(新粕)を-20℃,4℃,10℃,20℃,30℃で貯蔵した。熟成中の変化は,経日的に計測した。物理特性は,卓上物性測定器を用いて硬さ,凝集性,付着性,色彩構成(L*値,a*値,b*値),糖度を測定した。

    【結果】熟成温度が高いほど,酒粕の硬さと付着性は低下し,色彩構成は赤みや黄みが有意に増加した。糖度も,熟成温度が高いほど,有意に増加した。熟成期間についてみると,熟成期間の長期化に伴い,硬さ・付着性・色彩構成・糖度について同様の傾向が見られた。また,官能評価の結果より,熟成は酒粕の食嗜好性を向上させる傾向が見られた。今後は,種類の異なる酒粕を用いて熟成による物理特性への影響を比較検討していく。加えて,熟成酒粕を松風(蒸し菓子)に添加することによる影響を検討し,食文化教材開発の一助としたい。

  • 伊藤 有紀
    セッションID: 1P-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】素材の風味を生かす日本料理において香辛食品の果たす役割は大きい。現在までの香辛食品の利用の変遷を明らかにすることを目指し,江戸~明治時代の料理書を対象に調査を行った。

    【方法】料理書は,1600年代刊行では「料理物語」「合類日用料理抄」,1700年代では「料理網目調味抄」「料理伊呂波庖丁」,1800年代初頭では「素人庖丁(初編)」,1800年代後半・1900年代初頭では「料理手引草」「和洋家庭料理法」とし,計7冊とした。香辛食品は,しょうが,さんしょう,わさび,みょうが,かんきつ類,からし,しそ,だいこん(おろし),こしょう,たで ,唐辛子,にんにく,ねぎを対象とし,各香辛食品の出現数,使用された料理の種類と主食材を調べた。

    【結果】出現数は香辛食品全体で2,110であった。さんしょう,しょうが,かんきつ類,わさび,こしょう,とうがらし,ねぎ,たで,からし,しそ,みょうが,だいこん,にんにくの順に出現数が多く,さんしょうは19%,しょうがは16%,かんきつ類は14%,わさびは11%を占めた。年代別では,しょうが,さんしょう,わさび,みょうが,からし,たで,ねぎは,各年代で同程度の割合で用いられたのに対して,かんきつ類は,1600年代,1700年代で出現割合がやや高かった。だいこんおろしは,1800年代後半・1900年代初頭での出現割合がやや高かった。唐辛子は1700年代以降に出現した。にんにくは出現数はごくわずかで,1800年代以降は出現しなかった。しょうがは,なますや和え物に,さんしょうは焼き物,煮物,汁物などに,わさびは,なますや煮物などに,かんきつ類は,柚を中心に,汁物の吸い口としてや,煮物などとともに多く用いられた。主材料では各年代で魚介類がもっとも割合が高かった。

  • —明治期~戦後期の外国料理を例に—
    高橋 洋子
    セッションID: 1P-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】明治期から戦後期にかけて刊行された「家庭百科」「生活百科」に類する書籍を資料として,開国や大陸進出といった世相と連動するように,外国の料理が日本の家庭に紹介され,浸透・融合していく様子を概観する。

    【方法】国会図書館オンライン蔵書検索を用いて,タイトルに含まれる全書・宝典・要鑑・大全・事彙などの語を手がかりとして,<明治期~戦後期に刊行された「家庭百科」「生活百科」>に該当する書籍を検索した。検索で選出された書籍の目次等を参照し,記載内容を調査した。

    【結果】(1)女学全書「婦女手芸法」(1893)ほか,明治中期以降に刊行された多数の書籍において,西洋料理各種の作り方が紹介された*。(2)「日本家庭大百科事彙」(1906)ほか,明治末以降に刊行された複数の書籍において,支那料理の作り方が紹介されていた。(3)「日本家庭大百科事彙」(1906)では朝鮮料理,主婦乃友花嫁講座「健康料理」(1940)では満州料理の作り方が紹介されていた。(4)家庭宝典「婦女手芸法」(1906)・「日本実用大全」(1910)ほかで和洋折衷料理が紹介されていた。(5)主婦乃友家庭講座「家庭料理」(1948)・主婦乃友生活叢書「毎日のお惣菜」(1950)ほかで和洋華のバラエティーが提唱されていた。

    *明治期の西洋料理法については,日本調理科学会2022年度大会で報告した(要旨集p67)。

  • —高齢者を対象とした調査を中心に—
    田原 美和, 浅井 玲子
    セッションID: 1P-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】沖縄は戦後27年間,米国統治下にあった歴史的な背景をもつ。本報は,文献,高齢者を対象とした調査等を通して米国統治期における食生活の工夫や思い出,外来の配給食料の食体験などを記録しながら,これまでの食生活や食文化を踏まえつつ外来の食文化の何をどのように受容してきたのか,併せて本土復帰以降の食品流通の変化が沖縄の食生活に与えた影響等を考察するための基礎資料を得る事を目的とした。最終的には,得られた知見をもとに,地域の食文化の継承と創造につなげる食育の教材提案をめざしている。

    【方法】米国統治期の食生活を体験した70代以上の高齢者を対象に,戦後の食生活に関する質問紙・聞取り調査を2022年5月~2023年3月に実施した。調査地域は沖縄本島中部(U市),南部(N市)で,本調査の説明後に同意の得られた37人を研究対象とした(平均年齢79.1±5.4歳)。質問紙調査の分析は,SPSS ver.28.0を用いて単純集計,クロス集計を行った。

    【結果】終戦後の食べ物が少なかった時期は,主に芋(甘藷),野菜,配給のメリケン粉などを工夫しながらの食生活を営んでおり,外来の配給食料の食体験は,生業,近隣に米軍基地の有無などによって異なる事例がみられた。復帰後の食生活については,「大きな変化があった」「少し変化はあった」は48.5%で,その理由として日本本土からの大規模小売店舗の進出等により多様な食品が入手しやすくなった,ファストフード店の増加等の回答があげられた。次世代に伝え継ぎたい地域の食に関する内容(複数回答)は,「料理」(75%),「食べ物を大切にする心」(50%)等の順に多く,現状に合せて柔軟に対応していく事を重視している傾向がみられた。

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