日本調理科学会大会研究発表要旨集
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ポスター発表
  • 木村 秀喜
    セッションID: 1P-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】明治に入り,洋食が提供されるようになってきた。しかし,その普及の過程は不明な点が多い。毛利元敏は長府藩(下関)最後の藩主で最初の豊浦藩知事である。廃藩置県により免官され長府から東京に移住した。イギリス留学などを経験し,長府にもどる。下関は海外の玄関口であり,輸入食品も流通していた。「旧長府藩士を自邸に招いて振舞った洋食の献立」を再現することにより,当時の洋食技術を推測することを目的とした。

    【方法】下関市立歴史博物館所蔵「自製洋食品目 三澤家文書」を再現する献立とした。 使用した食品を推測するため同館所蔵「外国食品費受払簿」の提供前購入品を参考にした。当時の調理技術の参考にするため文献調査を実施した。文献は国立国会図書館デジタルコレクションオンラインで,出版年月日を1868年(明治元年)から1910年,料理をキーワードとして検索し,「西洋料理指南上・下」「西洋料理通」他を参考にした。また,山口家政女学校発行「割烹の栞」(1923年)を地域の料理書として参考にした。レシピの検討,調理は食育ボランティア団体唐戸魚食塾の協力により実施した。下関市歴史博物館所蔵の文書は崩し字が多く,同館学芸員の協力を得た。

    【結果】再現した料理は技術的に現在のものに近い。いくつか疑問点があるが,現代の料理名にすると次のとおりである。「人参入りとり肝スープ」「海老フライ,クレソン,カット橙」「鶏のカツレツ,松茸入ソース」「蒸しカリフラワー,鶏卵ソース」「牛肉のピカタ風」「蒸しジャガイモ,キャベツの牛乳煮」「印度カレーライス」「蒸し鶏付きサラダ」「菓子,干柿製プリン(柿と牛乳のプリン),カステラ(竹を使用した),パイナップル(缶詰)」

  • 新澤 祥惠, 川村 昭子, 中村 喜代美
    セッションID: 1P-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】いわしは大衆魚として焼魚,煮魚,刺身等に調理されるが,石川県では,塩煎或いは湯煮と称し,いわしや小いわしを塩ゆでし,生姜を添えて酢醤油で食べる料理が広く普及していた。また,当県は,いわしの漁獲量が多く,また,消費量も他地域に比べ多いことから,いわし料理の地域性や位置づけについて検討した。

    【方法】「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の地域性-」,「伝え継ぐ 日本の家庭料理」 の調査,公的統計資料,料理本,市町史等の文献調査,若年者と高齢者対象のアンケート調査を用いた。

    【結果】1)まいわしの漁獲量では,1950年代上位(10位以内)にあり,2010年代も上位にある年が多い。また,消費量については北陸地区の中でも高く,直近の3年間,47都道府県中2~7位である。2)1984年~2004年に刊行された料理書に掲載されたいわし料理には,ゆで調理はみられなかった。3)平成15~16年「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の地域性」の,東海北陸地区の比較では,いわしの利用世帯率やいわし料理の出現数は7県中最も多く,また,本県でみられたいわしのゆで調理も他県では殆どみられなかった。3)1976~2001年にかけて発刊された市町史には生業や食生活で,いわしに関する記述が多くみられた。4)地域の料理書や生活書等にいわしのゆで調理が取り上げられていた。また,聞き書調査でもいわしのゆで調理が上げられた。5)高齢者を対象としたアンケート調査では,多くが子どもの頃から現在も塩煎り(または湯煮)を喫食しているが,若い世代では殆ど喫食経験がなかった。以上,当県においていわしの位置づけは高く,またゆで調理は地域特有の料理であると考えた。

  • 山口 智子, 二瓶 真衣, 阿部 未侑, 新国 万寿美, 紙谷 智彦
    セッションID: 1P-38
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】豪雪地の山間地集落が有する旧薪炭林には,現在,有効に利用されていない豊富な広葉樹が生育する。演者らは広葉樹の葉を食資源として捉え,これまでに健康機能を有する茶への利用を検討してきた。本研究は,アブラチャン,キブシ,クロモジ,ブナの自然乾燥葉を用いた樹木茶について,抗酸化活性と呈味の評価を行うことを目的とした。

    【方法】2022年6月に福島県只見町において,アブラチャン,キブシ,クロモジ,ブナの4種類の樹木葉を採集した。各自然乾燥葉の熱水浸出液および4種を混合して熱水浸出したブレンド茶について,抗酸化活性,総ポリフェノール量,色調を測定するとともに,味覚センサーによる呈味評価を行った。また,19~23歳の学生を対象に,水色,香り,うま味,渋み,後味,総合評価の6項目について官能評価を行った。

    【結果】樹木茶の抗酸化活性は,キブシ>アブラチャン・クロモジ>ブナの順に高く,総ポリフェノール量も同様の傾向を示した。配合の異なる2種類のブレンド茶では,抗酸化活性と総ポリフェノール量は同程度であった。味覚センサー評価ではいずれの樹木茶もすべての呈味を示し,特にクロモジ茶では苦味雑味と苦味が,アブラチャン茶では渋味刺激が,キブシ茶では後味の旨味コクが強かった。ブレンド茶では苦味雑味や苦味が低減し,旨味コクの増加がみられた。官能評価ではクロモジ茶は香りの評価が高かったが,渋みや後味の評価が低く,総合評価は最も低かった。一方,キブシ茶は水色とうま味の評価が高く,総合評価で最も好まれた。ブレンド茶では全体的に高評価となり,嗜好性が高くなった。配合割合により,抗酸化性は同等で嗜好性の高いブレンド茶に調製できることが明らかになった。

  • 鴨下 澄子, 井筒 彩香, 鈴木 彩音, 樂満 光咲
    セッションID: 1P-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】若年層(10歳代~20歳代)はライフスタイルが大きく変化する時期であり,ストレスを感じることが多くなる。強いストレスは心身を不安定にさせ,様々な疾患を引き起こす一因となると考えられている。コーヒーの香りにはリラックス効果が期待できる成分が含まれているとされているため,コーヒーがストレス緩和に役立つと考えられる。しかしながら,若年女性のコーヒー喫飲率は同年代の男性よりも低い。本研究では若年女性に好まれやすいコーヒーの飲み方のひとつについて考察した。

    【方法】コーヒーが苦手な若年女性を被験者とし,喫飲状況調査と嗜好調査を実施した。試験食として,4種類のコーヒー(浅煎りコーヒーのブラックとミルクポーションおよび砂糖を添加したもの,深煎りコーヒーのブラックとミルクポーションおよび砂糖を添加したもの)を用いた。

    【結果・考察】喫飲状況調査では,被験者の約8割がコーヒーを飲めるようになりたいと回答した。嗜好調査では,浅煎りの場合は酸味,深煎りの場合は苦味や後味の悪さを強く感じたコーヒーを苦手とする傾向が見られた。浅煎りと深煎りの嗜好性を見ると,ブラックでも,ミルクポーションおよび砂糖を添加したものでも,深煎りのほうが好ましいと回答した被験者が多かった。

     若年女性には,深煎りコーヒーのほうが浅煎りコーヒーより好まれやすい傾向があることが示唆された。また,苦手要素別に,酸味の場合はアイスコーヒーとして,苦味の場合はカフェラテ等にすると飲みやすくなる可能性がある。コーヒーの飲みやすい飲み方を知ることで少しでもストレスを緩和させ,精神的QOL向上の一助となることを期待する。

  • 井野 睦美, 大富 あき子
    セッションID: 1P-40
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】筆者らは,健康効果への期待から日本でも消費が拡大しているオリーブオイルに着目し,特に和食への活用を検討してきた。中でも天ぷら油としての活用において,予備調査からオリーブオイルで調理した天ぷらは,最初は評価が厳しいものの,食べ慣れるにつれ次第に好転する可能性が示唆された。そこで本研究では食経験を積むことによって各種油が天ぷらの嗜好性に与える影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】キャノーラ油,オリーブオイル,太白ごま油,ごま油の4種の油を用いて,サツマイモ,レンコン,シソ,鶏ササミ,シイタケの5種の天ぷらを調製した。管理栄養士養成課程の女子学生及び同養成課程の職員の合計9人に対して,キャノーラ油で揚げた天ぷらを基準とした評点法で官能評価を実施した(評価1回目)。その後,同じ対象者に同様の試料を3回にわたり喫食させた後,再度官能評価を実施し(評価2回目),2回の試験の評価の違いを検討した。

    【結果】官能評価1回目,2回目ともにキャノーラ油と各種油間に有意な差は認められなかった。食材との組み合わせについては,香りや味に特徴のあるオリーブオイルやごま油は,味が淡白な鶏ササミとの組み合わせが比較的評価が良かった。各種油における1回目と2回目の評価の変化についても有意な差は認められなかったが,香りの嗜好性については1回目と2回目で評価を大きく変化させたパネリストが複数人いた。今後は,天ぷら油の評価で特徴の出やすい香りや色の項目を中心に,食材を変えて調理した天ぷらの食べ慣れによる影響も検討したい。また食べ慣れることによる,オリーブオイルを用いた和食料理,特に天ぷらへの活用に対する意識への影響も検討したい。

  • 小出 あつみ, 間宮 貴代子, 阪野 朋子
    セッションID: 1P-41
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】陶磁器の国内最大の生産地である岐阜県多治見市は美濃焼で有名である。近年,国内では食文化や生活様式の変化から食器に対する価値観に変化が見られる。さらに,外国からの輸入食器が増加したことで,岐阜県内の食器出荷額や事業所数は,ピーク時の約4分の1に減少した。本研究では多治見市にあるブランド名「寿山」の丸仙化学工業所と協働してレトロスタイルの個性的で市場で販売可能な食器の制作を行った。さらに,制作した食器を使用して料理とテーブルコーディネートの提案を行った。

    【方法】レトロスタイルの食器は,食器を使うターゲットおよび空間と料理のイメージコンセプトからデザイン画5種類を作成し,これに基づき紙粘土で試作したものを用いて丸仙化学工業所と協議して2種類を選んだ。食器の制作は丸仙化学工業所で行い,タタラ製法を用いた。食器のデザイン修正と決定,食器の試作を経て食器を完成させた。完成した食器に合う料理とテーブルコーディネートを提案した。

    【結果】食器の制作で決定したデザインのダブルフェイスは,直径180 mm×高さ36 mmの白色で凹(表)面と凸(裏)面の両面に料理が盛れるデザインが特徴であった。また,地色が白であるため料理の色を選ばず,両面には異なる量と形態(汁けの有る無しなど)の料理を盛ることができる食器であった。決定したデザインのレンガは食器の淵に茶系のモザイクタイルを描いた地色がアイボリーの直系260 mm×高さ20 mmのやや深さの有る丸皿であり,パスタやメインディッシュを盛れる食器であった。作陶においては,技術や予算の面からデザインどおりの食器を作ることが難しい点があったが,ほぼ予定通りにデザインした食器が制作できた。

  • 間宮 貴代子, 小出 あつみ, 阪野 朋子
    セッションID: 1P-42
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】岐阜県の多治見地域は古くからタイルや陶器産業が盛んな地であるが,現在は消費者の陶器の購入量が減少し,衰退傾向を示している。本研究では多治見地域にあるブランド名「寿山」の丸仙化学工業所と協働して,陶器の新たな可能性を広げ,若者にも手に取りやすいカジュアルスタイルの食器の制作を行った。さらに,制作した食器を使用して料理とテーブルコーディネートの提案を行った。

    【方法】カジュアルスタイルの食器の制作のため,ターゲットと使う場所や盛る料理のコンセプトを設定し,5種類のデザインを提示した。粘土と紙で食器の試作をし,企業と話し合いと修正を繰り返し,新たに別のデザインを加え2種類のデザインを決定した。決定したデザインの設計図を作成し,丸仙化学工業所で,タタラ製法を用いて試作し,食器を完成させた。さらに完成した食器に合う料理とテーブルコーディネートを提案した。

    【結果】制作した食器のひとつは,パスタやサラダ等のボリュームがある料理に使用できる大きさで,汁気がある料理を盛り付けられる深さにした。直径290 mm,内径170 mm,深さ26 mmで,ふちの色は濃い黄色にして,カジュアルな雰囲気を出すため花と葉の柄を入れた。もうひとつの食器は,縦150 mm×横265 mmの長方形の平皿で,皿の右上を三角に折りまげ,手で持ちやすいように工夫した。色はベージュで,麻の布目模様をつけ,ひとつ目の食器と同じ花と葉の柄の模様を入れた。作陶では,予算や,製法技術の面から食器の重さや,デザインなどで希望通りにはできなかった面はあったが,用途幅の広い食器を完成することができた。各食器の色と形に合わせた料理を調製して盛り付け,食器に合わせたテーブルコーディネートを提案した。

  • 持丸 由香, 宮園 結衣
    セッションID: 1P-43
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】ヒトは,「おいしさ」を味覚だけではなく,五感を通して味わっており,視覚は料理を見て「おいしい」と判断するために最初に働く感覚である。本研究では視覚情報の中でも特に色に着目し,色による味覚への影響の一つとして味の識別に影響があるかどうか調べることとし,色という視覚情報がないと味の識別が不可能であろうという仮説を検証した。

    【方法】調査1では,被験者に鼻栓を装着させ,りんご,ぶどう,みかんの3種類の果汁100%ジュースを試料として,何の果物のジュースであるかという官能評価を行った。全て正解した被験者に調査2を行ってもらった。調査2では,鼻栓と目隠しを装着させ,調査1で使用した3試料を乱数表で無作為に組み合わせ,3点を1セットとし,試料の種類を回答する官能評価を行った。嗅覚情報と味覚情報の取り違えを考慮し,全ての調査は嗅覚からの情報の影響を受けないよう被験者には鼻栓をして行ってもらった。調査2は視覚からの情報も遮断するために鼻栓に加え目隠しもして行ってもらった。調査1,調査2と2段階に官能評価を行った理由は,調査1において視覚情報がある状態で味の識別ができることが確認された被験者によって,調査2を実施することにより,視覚情報の有無の違いを比較することが可能であると考えたからである。

    【結果・考察】調査2において全体の正答率は77%であった。果物の種類別の正答率は,りんごが76%,ぶどうが60%,みかんが96%であった。色という視覚情報がないと味の識別は不可能であるという仮説は覆された。みかんの味の特徴である酸味や苦味は閾値が低いために色という視覚情報がなくとも味覚情報だけで識別することが容易であることが推察された。

  • 下山 亜美, 関 道子, 橋口 美智留, 羽深 太郎, 吉川 秀樹
    セッションID: 1P-44
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】高齢者施設向けに菓子の宅配事業を行っている企業(A社)が扱う米菓類について物性評価を行い,若年女性の官能評価と比較した。

    【方法】A社が扱う菓子類の中で米菓は約40品を占める。そのうち米菓ジャンル毎に無作為に抽出した試料(新潟型(以下R1,R2),揚げせん(R3),おかき(R4),あられ(R5))を用いた。クリープメーターを用い,圧縮速度1 mm/秒,歪率70%まで圧縮し,最大荷重の平均値を硬さの指標とした。唾液浸潤を想定して水分塗布による物性の変化も測定した。官能評価は,若年女性10名を対象に無記名自記式で行った。基準の試料(R1)を「0」としR2,R3,R4,R5を評価する評価尺度法を用い,結果をスコアの平均値で示した。またMS舌圧測定器を用い,最大舌圧の平均値により嚥下機能を評価した。

    【結果】最大荷重は,R1,2が12.4~13.5 N,R3:14.1 N,R4:12.1 N,R5:12.2 Nであった。水分塗布によりR1~3の硬さは0.6~1.1 Nまで減少したが,R4,R5は水分塗布による硬さの減少に有意差はみられなかった。破断歪率は,R4<R1,2<R5<R3の順であった。R3は水分塗布によりやわらかくなるが,噛みきりにくいと考えられる。対象者の最大舌圧は33 kPa,そのうち1人は矯正(有)であったが,成人女性の目安値内であった。R1を基準として官能評価を実施した結果,総合評価はR4<R2<R3が+のスコア,R5は8項目すべてで-のスコアであった。最も好まれたR3は基準試料と同じ原料で,物性評価ではR1よりやや高値を示したが,水分塗布による硬さや歪率の減少は近似傾向を示した。一方原料の異なるR10は最も好まれず,物性測定値ともほぼ一致した結果であった。

  • 藤野 加奈子, 佐藤 崇雄
    セッションID: 1P-45
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】野菜や肉,魚などをピューレ状にして,ゲル化剤などで再成形した食品は,介護食やユニバーサルデザインフードとして広く利用されている。再成形後のゲル化食品の物性は,喫食者が安全に飲み込むことできることが前提であると同時に,食品としておいしいと感じられる食感を有していることが求められ,目的とする物性のゲルを得るに至るまでの試作回数が多くなる傾向にある。そこで,本研究では原料配合量から惣菜を模したゲル状食品のテクスチャー特性を予測することを目的に,統計的手法の一つである応答曲面法の有用性について検討を行った。

    【方法】RO水にホウレンソウピューレ,ネイティブジェランガム,脱アシルジェランガム,調味のため食塩を添加して調製したゲルをモデル試料とした。試料は中心複合計画に基づいて各原料の配合量を決定して調製し,物性値としてかたさ(応力),凝集性,付着性,瞬間弾力性をテクスチャー試験で測定した。モデル試料を-30℃で18時間冷凍後,室温下で解凍したゲルについても同様に測定を行った。解析は原料の添加量を因子,物性測定値を応答とし,交互作用を含む2次の回帰式を当てはめて行った。

    【結果】応答曲面法により得られた予測式で統計的に有意性が認められたのはモデル試料のかたさ,付着性および冷凍後ゲルの付着性であった。解凍後ゲルのかたさの予測式は,Luck of Fit検定においてあてはまりの悪さが見られたが,自由度調整R2乗値は0.88以上,分散分析のp値は0.001未満であり,検証試験の実測値と予測値の差異が小さかったことから,惣菜を模したゲル状食品のかたさと付着性の特性は,原料配合量から傾向把握が可能であることが示唆された。

  • 平島 円, 河原崎 泉水, 高橋 亮, 西成 勝好
    セッションID: 1P-46
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】こんにゃく粉を増粘剤として食品に使用する際,糖類が共存している場合が多い。これまでの研究より,こんにゃく粉にショ糖などの糖を添加すると,ある濃度までは粘弾性が高くなるが,ある濃度を超えると粘弾性は低下することがわかっている。これは類がこんにゃく粉の膨潤に影響するためと考えられる。そこで本研究では,糖アルコールによるこんにゃく粉への作用について調べるために,糖アルコール添加こんにゃく粉水懸濁液の粘弾性について検討した。

    【方法】こんにゃく粉には優良こんにゃく粉((株)丸山商店)を用い,その濃度は0.5 wt%とした。糖アルコールにはソルビトール(和光純薬工業(株))とエリスリトール(寿物産(株))を用い,添加濃度は0~70 wt%とした。試料の粘弾性は,定常ずり粘度のずり速度依存性,貯蔵弾性率と損失弾性率の周波数依存性測定により検討した。

    【結果】糖アルコール添加こんにゃく粉水懸濁液の粘度は,糖アルコール濃度20 wt%までは,糖アルコール濃度が高くなるほど高くなり,それ以上の濃度では低下した。糖の添加はこんにゃく粉が膨潤するための水を奪うことで,こんにゃく粉の増粘効果を阻害した。糖アルコールにおいても過剰な添加はこんにゃく粉の膨潤を妨げることがわかった。また,糖無添加の試料は分子鎖の絡み合いがない液体的な挙動だったが,ソルビトールを添加すると,添加濃度20 wt%程度までは,分子鎖の絡まり合いが支配的な溶液型の粘弾性挙動であった。一方,エリスリトールの添加によっては分子鎖の絡まり合いは多くならなかった。したがって,ソルビトールを20 wt%以下で添加すると,こんにゃく粉の絡まり合いが増やすように作用することがわかった。

  • 秋山 聡子, 池田 昌代, 鈴野 弘子
    セッションID: 1P-47
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】現在,高齢者はたんぱく質や食物繊維の摂取量不足が問題となっている。演者らはこれまでに,それらを同時に摂取できる高齢者向け介護食品の開発と地域特産物の消費拡大を目的に,いわしのすり身に茨城県阿見町産のレンコンおよびヤーコン粉末を添加したつみれを考案した。つみれはUDF区分2や嚥下食ピラミッドL4に該当したが,料理に展開した際のテクスチャー特性値は未確認である。そこで本研究では,つみれを用いた高齢者施設向け料理を開発し,そのテクスチャーを検討した。

    【方法】高齢者施設給食の献立を調査し,提供頻度が高い主菜,副菜,汁物計5品を調製した。調理後のつみれはレオナーを用い,「えん下困難者用食品」の規格基準に準じて,かたさ・凝集性・付着性を測定し,既存のそしゃく・えん下食の規格と比較した。さらに,リン酸緩衝液とα-アミラーゼで調製した人口唾液を添加したつみれの10回圧縮測定と,つみれに人口唾液を加え,ホモジナイザーで破砕して調製した食塊のテクスチャー測定を行った。

    【結果】ヤーコン粉末入りつみれは,トマト煮,ハンバーグ,だし煮,味噌汁,中華スープに展開後もつみれと同じ規格に該当した。レンコン粉末入りつみれは,だし煮にするとかたくなり,いずれのそしゃく・えん下食の規格に該当しなかった。ハンバーグでは,レンコン粉末入りつみれをフライパンやスチームコンベクションオーブンで焼くとかたくなるが,茹でたり蒸したりした後,焼き目をつけるとつみれと同じ規格に該当した。レンコン粉末入りつみれは加熱時間が長い料理や焼き料理に用いるとかたくなった。一方,人口唾液を添加した測定では,粉末無添加に比べやわらかかった。

  • 樋口 かよ, 橋本 卓也, 長沼 孝多, 有泉 直子
    セッションID: 2P-1
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】近年,健康志向や地産地消への関心の高まりから,本県の小麦奨励品種である“ゆめかおり”を原料とした小麦粉や全粒粉を使用したパンの開発が積極的に行われている。一方で,全粒粉を使用して試作したパンについて,比容積が小さく,独特の風味となるため,商品化や製造が難しいという相談が寄せられていた。そこで,県産小麦のふすまや全粒粉の成分分析を行うとともに,製パン適性について確認した。

    【方法】小麦原麦について製粉試験を行い,水分,たんぱく質,脂質,食物繊維総量,灰分,水溶性ビタミンB群量の測定を行った。製パン試験では,市販の県産ゆめかおり粉と全粒粉を使用し,ストレート法による山食パンおよび発酵種法によるバゲットを焼成した。山食パンは,全粒粉をゆめかおり粉に対して0,10,30,50,70,100%まで混合した粉を使用した6種類,バゲットは,ゆめかおり粉を生地種として,本生地をゆめかおり粉または全粒粉とした2種類を試作した。山食パンは,外観の評価,菜種置換法による比容積の測定,ノギスによる高さ測定,クラムの評価を行った。バゲットについては外観およびクラムの評価を行った。

    【結果】県産小麦ゆめかおりについても,ふすまおよび小麦原麦に食物繊維総量および水溶性ビタミンB群量が多く含まれていたため,全粒粉は機能性の高い食品素材として活用できることがわかった。製パン試験の結果,山食パンでは,全粒粉の混合割合が増えるほど,比容積,高さ,クラムの評価が低くなる傾向が見られ,バゲットでは,全粒粉を使用したパンでクラムの気泡が小さくなった。したがって,全粒粉を使用したパンの製造については,種類毎に適切な製造方法を検討する必要があることがわかった。

  • 藤井 久美子
    セッションID: 2P-2
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】グルテンフリー米粉パンについての先行研究では,小麦グルテンの代わりに米粥を用いる方法がある。精白米に比べてビタミンやミネラル,食物繊維が豊富な玄米やもち性大麦粉を用いることによって,米粉パンの付加価値を高めることができると考える。そこで本研究では,玄米粥ともち性大麦粉を使用して付加価値を高めたグルテンフリー米粉パンの製パン性を検討することを目的とした。

    【方法】材料は,米粉 ,玄米,きらりもち粉,ドライイースト,グラニュ糖,食塩,スキムミルク,食塩不使用バターおよび水を使用した。まず,玄米で粥を作り,玄米粥入り米粉パン(以下,米粉のみと表記)の配合を検討し,ホームベーカリーで試作した。その後,米粉の一部をもち性大麦粉に置換した玄米粥入り米粉パン(以下,もち性大麦粉置換と表記)の配合を検討し,試作した。パンの比容積の算出,外観および断面の観察,食味評価を行い,製パン性の検討を行った。

    【結果】比容積は米粉のみは1.51,もち性大麦粉置換は1.49であり,米粉のみが危険率5%で有意に大きかった。パンの断面では,もち性大麦粉置換は全体に気泡が発生したことにより,小麦グルテンを含む市販の食パンに近い断面になった。食味評価では米粉のみともち性大麦粉置換の評価平均値を比較すると,総合評価は全く同じ数値となった。栄養価では玄米粥の使用によりカルシウムや亜鉛など不足傾向のミネラル量が増大し,またもち性大麦粉置換によりパン生地50 g当たりの食物繊維量が米粉のみの約2.8倍となった。この結果から作成したホームベーカリーを使用しない手づくりレシピでは,付加価値の高いグルテンフリー米粉パンを手軽に摂取できると考える。

  • 片山 佳子, 川緑 みつき
    セッションID: 2P-3
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】ホワイトソルガムは,グルテンを含まないことから小麦アレルギーの人々には小麦代替品として利用されている。しかし,ソルガム粉を用いたパンは,風味が無く,焼くと硬くなりパサつきがあるという問題があり,それらの改善が求められている。本年度はシトラスファイバーを添加することで弾力性を付与し食物繊維を補ったグルテンフリーパンを製造することを目的とした。

    【方法】試料調製はホワイトソルガム粉を主原料に,米粉,ヒドロキシプロピル化タピオカデンプン,うるち種のコーンスターチを副原料に適宜配合したものに,1~3%シトラスファイバーを添加し製パンを行った。 パンの体積,長径,短径,高さ,中心高,重量,比容積はレーザー体積計で物性測定はテクスチャーアナライザーを使用して圧縮試験と貫通試験を行い,ヤング率,破壊エネルギー,最大強度時の歪率,最大破壊応力を求めた。

    【結果】比容積ではシトラスファイバー3%添加の④が最も膨らみ,次に小麦粉パンの①,シトラスファイバー2%添加の③,シトラスファイバー1%添加の②という順であったが,③と②では大きな差は見られなかった。貫通試験の結果から物性測定では,最大強度時の歪率において②と③ではあまり差は見られなかったが①と④は同等の値となり,最大破壊応力では①が最も高く,次に④,③,②の順であった。この結果より,シトラスファイバーを添加することにより,パサつきのあるホワイトソルガム粉パンに保水性が付与され④は①と同等に粘り強く,固さにおいては①よりも④がやわらかいパンとなり,シトラスファイバー3%添加有効であることが示唆された。

  • 大草 千晴, 西尾 珠生, 村上 芽生, 高田 麻衣, 西岡 美優, 庄野 久美子, 渡邉 幾子, 岡崎 貴世
    セッションID: 2P-4
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】阿波すず香は,スダチとユズの交配で得られた新品種の香酸柑橘である。スダチとユズの中間の大きさと香りを有し,まろやかな酸味と,皮に苦み等がない特徴を持つ。近年,地産地消の推奨やSDGsの観点から地域特産品の利用が進められていることから,阿波すず香から分離した酵母を用いた製パンを試み,徳島県産香酸柑橘利用の可能性を検討した。

    【方法】製パンは中種法で行った。YM寒天培地で35℃,72時間培養して得られた酵母を滅菌水に懸濁し,小麦粉,水と混捏して培養を行い,中種を得た。試作食パン(阿波すず香パン)は,比容積,水分量,色調(L*a*b*値),GCによる匂い分析,クリープメーター((株)山電)による物性の測定を行った。比較として白神こだま酵母で調製した食パン(白神こだまパン)を用いた。

    【結果・考察】製パン方法は,①中種の調製:小麦粉210 g,水195 mL,酵母懸濁液15 mLを混捏後,35℃,5時間,②一次発酵:25℃,18時間,③ベンチタイム:20分,④成型,⑤二次発酵:40℃,2時間,⑥焼成:190℃,15分に決定した。阿波すず香パンは,白神こだまパンより比容積が小さく,水分量は43.40±0.45%であり,一般的な食パンより高い値を示した。パンの色調は,内相(クラム)に有意な差は認められず,外相は白神こだまパンに比べL*値が小さく暗い色調と評価された。クラムの匂いは,エタノールが多くを占め,次に3-メチルブタノールと考えられる物質が検出され,白神こだまパンと異なっていた。阿波すず香パンは,かたさ荷重と付着性が有意に高く,噛み応えがあり,モッチリとした食感のパンであることがわかった。

  • 松浦 葵, 芝野 勇人, 岡崎 貴世
    セッションID: 2P-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】全国には様々な種類の麺(そば,ラーメンなど)が生産され,地域独特の食文化を築いている。中でもうどんは幅広い年齢層の人々に好まれ日常的に食されている。うどんの基本材料は,小麦粉,食塩,水だけであるにもかかわらず,製造方法,麺の太さ・コシの強さなどは地域により非常に変化に富んでいる。そこで身近な食品であるうどんに注目し,パン酵母(ドライイースト)を加えてアルコール発酵させたうどん(発酵うどん)を調製し,麺の特性に及ぼす影響について検討した。

    【方法】パン酵母は赤サフ,スーパーカメリヤ,白神こだま酵母など5種類を使用した。うどん材料は⼩⻨粉(日清製粉ウェルナ,手打ちうどんの小麦粉)300 g,塩9 g,⽔150 mLを基本とし,ホームベーカリーで15分間捏ねた後,所定の条件で発酵させた。圧延・複合を繰り返して麺線(幅8 mm,長さ50 mm)とし,沸騰水で茹で上げた。うどんの水分量は電子式水分計((株)島津製作所)で,破断はクリープメーター((株)山電)で測定歪率100%,くさび型(No.49)のプランジャーで測定した。

    【結果・考察】うどん生地の発酵状態を培養前後の体積の比で評価した結果,パン酵母:赤サフ,添加量:小麦粉重量の0.5%,培養温度・時間:30℃,2時間に決定した。沸騰水で10分間茹でた発酵うどんの水分量は44.75%で,未発酵うどん(パン酵母無添加)より有意に低い値を示した(p<0.05)。発酵うどんは茹で時間とともに破断応力が有意に減少し,茹で時間10分の未発酵うどんと同値を示すのは8.6分と推定された。このことから発酵うどんは未発酵うどんより短時間で茹で上がることが確認された。

  • 村上 芽生, 岡崎 貴世
    セッションID: 2P-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】徳島県で伝統的な製法で作られている阿波晩茶は,乳酸菌で発酵させる後発酵茶である。近年,乳酸菌の持つ機能性が注目されているが,阿波晩茶由来乳酸菌もプロバイオティクスとしての効果が期待されている。これまで当研究室では阿波晩茶乳酸菌を用いて発酵漬物,ヨーグルト及びライ麦パン(サワーパン)の開発を試みてきた。そこで本研究ではサワー種を用いたライ麦蒸しパンの調整を検討した。

    【方法】供試菌として阿波晩茶分離菌のLactobacillus pentosusを用いた。サワー種はライ麦粉(全粒粉・細挽)120g,乳酸菌懸濁液(OD660=1.0)1.2 mL,水120 mLを混合後,30℃で24時間培養して調整した。このサワー種を薄力粉またはライ麦粉と混合し(ライ麦粉配合割合25〜100%),さらにベーキングパウダー,砂糖,サラダ油を添加して20分間蒸して,ライ麦蒸しパンを調整した。各蒸しパンの重さ,高さ,水分量,色調(L*a*b*値),物性(クリープメーター,(株)山電)を測定し,評価を行った。また粒度の異なるライ麦粉(細挽,中挽,粗挽)による影響も測定した。

    【結果・考察】蒸しパンはライ麦粉配合割合が多いほど高く膨張した。ライ麦粉はグルテンを形成しないため蒸しパンの表面が割れやすくなることが高さに影響したと考えられた。配合割合は蒸しパンの水分量に影響せず,色調(L*値)はライ麦粉の割合が多いほど低値となり暗い色を示した。物性はライ麦粉が多いと凝集性が低く,付着性の高い蒸しパンになった。また,粗挽ライ麦粉の蒸しパンは,他の粒度に比較して色調が暗く,凝集性及び付着性は有意に低くなることがわかった。

  • 高橋 真美
    セッションID: 2P-7
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】国産小麦の新品種の育成において,「麦新品種緊急開発プロジェクト」をはじめ,ニーズを踏まえて高品質化,早生化,安定かつ大量供給などが可能な地域で盛んに推進されている。製パン用小麦でも国産小麦に注目され,多くの新品種が育成されている。また,パン製造では,酵母は生地の膨張,熟成,芳香性などに関与し,ガス発生,パンの膨化,おいしさなどに影響を及ぼすことが知られている。本研究では,国産小麦の活用を目的に,生地物性に及ぼす水分量,温度などの条件の検討を加えた。

    【方法】パン材料の強力粉は,北海道産小麦粉を実験に供した。生地の膨化力は,45分間隔で測定し,発酵温度の違いによる測定を行った。水分量の測定は,加水量を調製し,生地の膨化力を測定した。

    【結果】生地の膨化における発酵温度の影響では,測定90分では温度30℃および38℃の比較において,発酵30℃の方が高い値を示した。測定90分から270分間は,いずれの測定においても30℃が高い値となった。カメリヤと国産小麦粉との比較では,温度30℃での比較では,国産小麦粉の方が測定225分から360分間において差が認められた。水分量を段階的に加減した結果,生地の膨化力に差が認められた。国産小麦粉は水分量として基準よりも添加を多少増やすことで生地の膨化が高まることが認められた。これは,本実験で用いた国産小麦粉は,カメリヤよりも加水量の影響を受けやすい小麦粉であることが確認された。これらの結果から,国産小麦粉を用いてパン製造を行う場合,発酵温度,水分量を調製することで良好な条件が得られると推察された。

  • 相良 剛史, 原田 香, 森口 裕子, 橋本 多美子, 西堀 尚良
    セッションID: 2P-8
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】蓮根は節の部分など廃棄率が高い作物であるため,その廃棄部位を有効利用するべく節蓮根粉末などの製品が市場に出回っている。しかしながら,節蓮根粉末およびそれを利用した加工製品の栄養特性などに関する知見が少ないため,本研究では節蓮根粉末および節蓮根粉末添加パンの特性について検討を行った。

    【方法】蓮根粉末および節蓮根粉末は生の試料から調製したものおよび市販の製品を用い,一般成分,アミノ酸量およびポリフェノール量の測定を行った。また,蓮根粉末および節蓮根粉末添加パンはホームベーカリー(YAMAZEN)を用いて,それぞれ強力粉重量の10%を市販の蓮根粉末または節蓮根粉末に置換した食パンを調製した。焼成後,直ちに型から網の上に取り出して室温で2時間冷却し,ラップフイルムに包んで24時間保存した後に,色調,比容積,物性の測定および嗜好性に関する官能評価を行うとともに,同一の試料を用いてアミノ酸量の測定を行った。

    【結果】蓮根粉末および節蓮根粉末は生の試料から調製したものおよび市販の製品ともに粗たんぱく質,粗脂肪,灰分およびポリフェノール量において節蓮根粉末の方が高い値を示していた。また,アミノ酸組成によるたんぱく質量も節蓮根の方が多かったが,アミノ酸組成に大きな差異は認められなかった。蓮根粉末および節蓮根粉末は必須アミノ酸であるSAAの含有割合が著しく低かったが,蓮根粉末および節蓮根粉末添加パンにおける制限アミノ酸はLysのみとなっていた。他方,官能評価では節蓮根粉末添加パンは蓮根粉末添加パンと比較し有意に低い評価であったことから,節蓮根粉末を添加した食パンを調製する際には,添加量や添加方法など,更なる検討が必要になるものと思われた。

  • 竹内 薫
    セッションID: 2P-9
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】とうもろこし子実を粉砕したコーングリッツは,超強力小麦粉に配合して製パンすることで,鮮やかな黄色と歯切れのよさを付与でき,小麦粉のパンと異なるテクスチャーを示す。既報では,コーングリッツの熱湯処理とモルト添加(前処理)により,小麦粉のパンに近いテクスチャーとなることを示したが,その官能特性や嗜好性は明らかになっていない。本研究では,調製方法の異なるコーングリッツ食パンの官能特性と嗜好性の差異,および両者の関係を明らかにした。

    【方法】超強力小麦「ゆめちから」の小麦粉とコーングリッツ(粒径0.25~0.5 mm)8:2の割合で配合して調製した角型食パンを対照試料とし,モルトパウダーを添加したパン,前処理をしたコーングリッツを添加したパンと比較した。一口量に切り出したクラムを42名の社内一般パネルに提示し,Check-All-That-Apply(CATA法)により表面のテクスチャー,咀嚼時のテクスチャー,風味を評価した後,0~100までの数値で嗜好性を評価した。

    【結果】コレスポンデンス分析の結果,対照試料は「弾力がある」「もそもそ」「かぼちゃ様の風味」が特徴的で,前処理パンでは「甘み」「もちもち」「しっとり」「ふわふわ」が特徴的であった。嗜好性の評点は前処理パンが有意に高かった。評価用語の選択の有無によって嗜好性の評点を比較すると「甘味」「もちもち」「しっとり」「歯切れがよい」「バターの風味」が選択された場合に嗜好性の評点が有意に高かった。反対に「ざらざら」「もそもそ」「くちゃつく」が選択されると嗜好性の評点が低かった。以上のようにコーングリッツ食パンの官能特性と嗜好性,および両者の関係性が明らかになった。

  • 菅野 友美, 浅井 紀之, 小竹 久仁彦, 山田 禎賀, 西村 篤寿
    セッションID: 2P-10
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】日本の伝統的発酵食品である味噌には,発酵によって生じる代謝産物が豊富に含まれ,それらが味噌の機能性にも深くかかわっている。なかでも酵母は近年,整腸作用などの様々な機能があることが確認されている。本研究ではイチビキ株式会社が発見した味噌由来の耐塩性酵母(蔵華)を用い,ストレス負荷時における下痢改善効果を確認すると共に,その麹を添加した製パンの製造を試みた。

    【方法】酵母は蔵華酵母(Y1株)を用い,下痢改善効果は副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)で下痢誘導した下痢モデルラットを使用した。ラット供試飼料は,市販飼料F-2固形飼料を通常食とし,試験試料として市販飼料にY1株を0.20%の割合で混合した飼料を調製した。比較として5種類の酵母(Y3株,Y6株,Y4株,市販のビール酵母,酵母エキス)を同様に調製した。またβグルカンを0.02%の割合で混合した飼料も使用した。それぞれの飼料を3週間投与した後下痢誘導を行い,20分間隔で100分間の糞便を採取し,糞便重量を測定および便の形態的特徴(便性状スコア)を記録した。解剖後心採血し,血清中のコルチコステロン量(ng/mL)と腸管内の環状アデノシン3',5'-リン酸(cAMP)値(pmol/mL)をELISA kitを用いて測定した。味噌用麹を用いてホームベーカリーで食パンを調製した。

    【結果】Y1株を摂取することにより,ラットモデルにおけるCRF誘発性下痢を有意に改善した。この効果は今回確認した他の耐塩性酵母や市販の酵母および酵母に含まれるβグルカンでは同様の効果が認められなかった。このことからY1株は胃腸の生理機能において重要な役割を果たしていることが示唆された。麹を添加した食パンは添加量の増大にともない比容積が低下した。

  • —そば粉を使用した成形パンの製法開発—
    山田 夏代, 大橋 かすみ, 高木 明奈
    セッションID: 2P-11
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】そば粉は炭水化物を豊富に含むことから,製パンに用いることで,小麦に匹敵する食品として活用することが期待できるが,グルテンを含まないため製パンにはいくつかの課題があり,中でも成形が困難であることが汎用性を低下させる一因と考えられる。 本研究では添加物(サイリウム)を加えるこことで,成形を目指すとともに,添加物(サイリウム)の添加濃度の違いが生地および,製品に及ぼす影響について調査,検討した。 また,原材料が簡素であることからパンの種類はベーグルを選定した。

    【方法】そば粉,サイリウム(そば粉比3%),砂糖,塩を混合したものに,植物油脂,予備発酵済のドライイースト,ぬるま湯(30℃)を加え,混捏,成形,発酵,湯煮し,焙焼,放冷し常温にしたものを対照とした。次にサイリウム添加量をそば粉比2%,4%で調製した生地についても同様に焙焼,放冷し試料とした。品質評価として外観(膨化)観察,物性測定,写真撮影,試食を行った。また,成形のしやすさについても併せて評価した。

    【結果】全ての検体において成形することができたが,成形の容易さにおいては,サイリウムの添加濃度が上がるほど向上した。 外観(膨化)についてもサイリウムの添加濃度が上がるほど安定した膨化が得られ,好ましい形状が保たれる結果で,対照と4%添加試料の外観が良好であった。 試食の結果からは対照と4%が好まれる結果となった。 以上の結果からそば粉ベーグルに対するサイリウム添加において,最適な条件は3%濃度以上であることが示唆された。 今後は他種のそば粉製パンへの添加を課題とし,検討したい。

  • 松原 叶夏, 島田 良子, 江口 智美, 桑野 稔子, 吉村 美紀
    セッションID: 2P-12
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】高齢になると,咀嚼・嚥下機能が低下し,低栄養のリスクが高まる。そのため,咀嚼・嚥下機能に適した栄養摂取と方法が重要となる。大豆たんぱく質はアミノ酸価が高く,大豆多糖類は骨粗鬆症予防に効果のあるイソフラボンを多く含む水溶性食物繊維である。摂取頻度の高い食パンに大豆たんぱく質および大豆多糖類を添加することで,不足するたんぱく質,食物繊維およびイソフラボンを手軽に補うことができると考えられる。本研究室の先行研究では,大豆たんぱく質・大豆多糖類を混合した食パンは,通常の食パンに比べ,膨化率が低く硬い食パンとなった。しかしながら,官能評価では噛みやすさ,飲み込みやすさ,味,食感の項目で通常の食パンと同様の評価を示した。そこで,本研究では大豆たんぱく質・大豆多糖類混合食パンの物性と嗜好性との関連から食べやすさの検討を行った。

    【方法】試料には,強力粉250 gを用いた食パン(C,コントロール)と,そのうちの30 gを大豆たんぱく質(SPI),10 gを大豆多糖類(SPS)に置き換えた食パン(SP)を用いた。食パンの測定項目は,膨化率,水分率測定,外相・内相の表面色測定,テクスチャー測定,貫入試験,摩擦測定および食味試験とした。

    【結果】Cと比較し,SPは膨化率が低く,水分率は同程度であった。外相色はL値が高く明度が低下し,内相色はb値が高く黄みが強くなった。また,Cに比べSPはテクスチャー測定においてかたさ(応力)が高く,最大貫入歪0.80における荷重が大きい傾向にあり,咀嚼に力が必要であると示唆された。一方で,初期摩擦係数および平均摩擦係数は小さい傾向にあることから,大豆たんぱく質・大豆多糖類混合食パンの嗜好性に影響を与えている可能性があると考えられた。

  • 櫻井 瞳, 取替 恵
    セッションID: 2P-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】スポンジケーキの一般的な材料は卵,砂糖,薄力粉であり,各材料の特性がスポンジケーキの膨らみ,きめの細かさ,硬さ,外観などに影響する。また,主に風味付けのためバターを使用する配合もある。本研究では,材料の配合割合がスポンジケーキの食味および性状に与える影響について,検討を行った。

    【方法】はじめにスポンジケーキの好みに関するアンケートを行い,やわらかい生地,食感の軽い生地,しっとり感の強い生地が好まれることが分かった。この結果を元にやわらかい生地 (A),食感の軽い生地(B),しっとり感の強い生地(C)の配合の検討を行った。基本配合を卵120 g,グラニュー糖90 g,薄力粉90 g,バター24 gとして,Aは基本配合からグラニュー糖と薄力粉を減らし,BはAからさらに薄力粉を減らした。Cは薄力粉を減らしバターを増やした配合で調製した。A,B,Cの断面や膨らみについて基本配合との比較を行った。またそれぞれのスポンジケーキを1 cmの厚さで2枚にカットし,間と周りに生クリームを塗ったもので官能評価を行った。官能評価は2点比較法で行い,評価項目は硬さ,食感の軽さ,しっとり感の強さの3項目とした。

    【結果・考察】AとBは,基本配合の生地よりきめが粗く,大きな気泡がみられ,官能評価ではAは基本配合より有意にやわらかく,Bは有意に食感が軽いと評価された。これはグラニュー糖を減らしたことで卵が軽い泡立ちとなったことや,薄力粉を減らしたことでスポンジケーキの弾力が抑えられふんわりと仕上がったことが影響したものと考えられる。Cのしっとり感の強さについては基本配合との有意差は出なかった。最も好まれたのはBのスポンジケーキであり,口どけが良く甘さが控えめでフワフワしていたからなどの理由があった。

  • 坂本 薫, 森井 沙衣子, 加藤 舞子, 山本 絢子, 由井 可奈子, 柴 美佐紀
    セッションID: 2P-14
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】グラニュ糖は,スクロース結晶でありその純度は高いにもかかわらず,加熱熔融特性の異なるものが存在する。また,粉砕によってもその加熱熔融特性は変化する。これまで,加熱熔融特性の異なるグラニュ糖や双目糖およびそれらを粉砕したものを用いてカラメルソースやキャンディを調製し,味や色などに差異が認められることを明らかにした。これらの特性はクッキーなどの焼き菓子にも影響を及ぼしていることが推察される。そこで粉糖が使用されることの多いクッキーを調製し,グラニュ糖の粉砕がクッキーの品質にどのような影響を及ぼすかについて実験を行った。

    【方法】市販グラニュ糖W(粒度0.50±0.06 mm)を用い,ボールミルにより粉砕糖WP(平均粒度40 µm)を調製した。示差走査熱量分析計(DSC, Thermo plus EVO2, (株)Rigaku)によりそれぞれの砂糖の熔融状況を観察した。これらの砂糖を用いてクッキーを調製し,偏光顕微鏡観察,走査電子顕微鏡観察,色差測定,破断強度測定,官能評価を行った。

    【結果】W糖とWP糖ではDSCの吸熱カーブが異なり,加熱熔融特性が異なった。官能評価の結果,WクッキーとWPクッキーは色や外観,苦味,硬さなどで有意差が認められ,色差測定においても感知できる程度に異なることがわかった。これらの差異は,グラニュ糖を単独で焼成してキャンディを調製して行った実験結果とは異なる差異であった。顕微鏡観察では,焼成前のクッキードウにはグラニュ糖の溶け残りが認められたが,焼成後には溶けたグラニュ糖が小麦粉澱粉の粒構造を包み込むように固まっている様子が観察された。これらのことから,クッキーでは,温度の上昇とともに融け残っていた砂糖が砂糖の融点に達する前に少量の水分に溶解したことが推察された。

  • 亀井 文, 望月 晴菜
    セッションID: 2P-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】現在ひよこ豆は日本での生産はほとんど行われておらずメキシコ,米国,カナダ等から輸入されているが,カレー,スープ,サラダ等の食材として利用されることが増えている。ひよこ豆はでんぷんが多く含まれていることから(61.5 g/100 g)レジスタントスターチ(RS)が含まれている可能性は高い。RSは胃や小腸で消化されず大腸に達するでんぷんで,健康に寄与する生理機能を有し,大腸の健康に重要な役割を果たしている。本研究では,薄力粉の代替としてひよこ豆パウダーを用いてスコーンを調製し,簡易で健康的なおやつの可能性について調べることを目的とした。

    【方法】スコーンは薄力粉またはひよこ豆パウダー((有)日本クラシア・フードサプライ)150 g,上白糖2 g,塩1 g,ベーキングパウダー3 g,バター20 g,牛乳85 gを用いてドゥを調製し,厚さ2.0 cmに圧延後直径4.5 cmの丸型に抜き,電気オーブン(HITACHI MRO-BX10)の上段で220℃12分間焼成した。薄力粉の代替はひよこ豆パウダー代替0%,50%,100%の3条件とした。RS量測定はMegazyme社のRS測定キットを使用した。比容積は菜種法を用い,物性測定はレオメーター(CR-100,株式会社サン科学)を用いた。

    【結果】標準スコーン(0%)のRS量は0.76%,ひよこ豆パウダー50%代替スコーンのRS量は1.33%,100%代替スコーンのRS量は1.87%と,ひよこ豆パウダーの代替率が上がるにしたがってスコーンのRS量も有意に増加した。また,薄力粉のRS量は0.21%,ひよこ豆パウダーのRS量は0.34%であったことから,スコーンの焼成によりRS量が生成されたことが示唆された。

  • 竹澤 夏菜, 奈良 一寛, 中村 彰男, 山本 剛優, 伊藤 政喜
    セッションID: 2P-16
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】スナック菓子の原材料としても多く利用されているトウモロコシは食物繊維の豊富な全粒穀物の一つである。ポップコーンの食物繊維について調査したところ,フェルラ酸が結合するアラビノキシランの存在が明らかとなった。発酵性食物繊維であるアラビノキシランを摂取することで腸内細菌叢の多様性が保持されるが,フェルラ酸が結合しているポップコーンのアラビノキシランにおける生理機能は十分に明らかになっていない。そこで本研究では,ポップコーンの発酵性食物繊維における胆汁酸の吸着能について検討した。

    【方法】ポップコーンおよびその外皮を試料とした。粉末化した試料の一定量にコール酸を懸濁し,37℃で1時間保温した。その後,遠心分離し,上清中の総胆汁酸量を定量し,吸着能を評価した。それぞれの試料の一部にα-アミラーゼおよびアミログルコシダーゼを加え,残さをポップコーンおよび外皮におけるアラビノキシラン画分とした。アラビノキシラン画分についてもコール酸の吸着能についても評価した。

    【結果・考察】ポップコーンおよび外皮が胆汁酸吸着に及ぼす影響を調べたところ,コール酸の吸着能は,外皮で大きく,いずれも添加量に伴って大きくなる傾向が確認された。ポップコーンおよびその外皮からアラビノキシラン画分が344 mg/gおよび785 mg/g得られた。どちらの試料でもアラビノキシラン画分の分別前に比べ吸着能が顕著に大きくなり,試料の添加量に伴って増加したが,ポップコーンと外皮での吸着能は同程度であった。ポップコーンの外皮に多いアラビノキシランは,胆汁酸を吸着することが明らかとなったことから,ポップコーンが血中コレステロールの低減に寄与する可能性が示唆された。

  • 中谷 梢, 吉村 美紀, 坂本 薫
    セッションID: 2P-17
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】兵庫県明石市の郷土料理に明石焼があり,元は玉子焼と言われ,たこ焼とよく似た料理である。江戸時代,明石では人工珊瑚を製造する際に卵白を使用し,残った卵黄とじん粉(浮き粉:小麦でん粉),だしで生地を作り,明石で豊富に獲れたタコを入れて銅鍋で焼いたのが明石焼きの始まりとされる。今日の明石焼では卵が多く使われているが,卵黄量については見聞きしない。じん粉は明石市では市販されているが,神戸市より東では販売が珍しく,明石焼も兵庫県南部以外では販売する店舗が少ない。そこで,現在の明石焼の生地の調製方法について調査し,明石焼とよく似た料理であるたこ焼と比較した。

    【方法】材料配合割合は文献やレシピサイトから調査した。明石焼は明石駅周辺の5店舗で,たこ焼は大阪駅周辺の5店舗で購入して,かたさ,色,塩分を測定し,官能評価より比較した。

    【結果】明石市観光協会や明石焼店のレシピでは小麦粉の他にじん粉の使用がみられたが,企業や個人のレシピではじん粉が不使用で,薄力粉に強力粉や片栗粉を加えたレシピがあり,じん粉が入手困難であると推察された。生地の配合割合はレシピによって差がみられたが,卵量は明石焼がたこ焼よりやや多く,だし量は同等かたこ焼がやや多かった。生地の塩分は,明石焼がたこ焼きより高かった。これは明石焼きはだしに漬けて食べ,たこ焼はソースをかけて食べることが多く,食べ方の違いが影響したと考えられた。また,明石焼の生地の塩分量とだしの塩分量の比率は店によって異なり,それぞれ生地に合うだしの塩分を調製していることが推察された。官能評価では,明石焼はたこ焼きよりやわらかく,卵とだしの味が濃く感じると評価された。

  • 熊谷 美智世, 磯野 友理奈, 大田原 美保
    セッションID: 2P-18
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】真空調理の工程の一つに真空包装がある。食材と液体を袋に入れて真空包装を行うと圧力勾配により食材内に液体が浸入するといわれている。そこで ,真空包装を豆の浸漬に利用し,真空包装が吸水および浸漬・加熱後の硬さに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。

    【方法】金時豆を試料とした。試料5粒と試料重量の10倍量の純水を専用袋(MICS化学(株)NY-1)に入れ,卓上チャンバー式真空包装機(真空度:99.9%,時間:60秒 東静電気V-280A)により包装し,そのまま浸漬した場合(真空包装),ポリエチレン袋に入れて浸漬した場合(常圧包装),真空包装後に開封した状態で浸漬した場合(真空後開封)について検討した。浸漬時間は0(包装直後)~90分間とし,浸漬後の吸水率と硬さ(TA-XT plus,英弘精機)を測定した。真空包装と常圧包装については0~60分間浸漬後,15~45 分間加熱し硬さを測定した。

    【結果】 吸水率は,真空包装直後でも常圧包装30分浸漬と同等の値となり,さらに真空包装30分浸漬では,真空包装直後の2倍以上となり常圧包装90分浸漬よりも高値であった。浸漬後の硬さは,真空包装直後でも常圧包装90分浸漬と同程度であった。真空後開封試料は真空包装試料と同様の傾向を示しており,真空包装処理そのものが吸水促進に寄与することが示唆された。加熱後の硬さの値は,いずれの加熱時間でも真空包装直後に加熱した試料の方が 常圧包装60分浸漬後に加熱した試料よりも小さかった。真空包装では浸漬0分でも45分加熱で食せる軟らかさになったのに対し,常圧包装では60分浸漬後に45分間加熱が必要であった。本研究により真空包装を金時豆の浸漬に利用することで吸水が促進され調理時間が短縮できる可能性が示された。

  • 矢崎 遥, 加藤 茉優, 深澤 美優, 郡山 貴子
    セッションID: 2P-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】ムクナ豆はでんぷんやたんぱく質が豊富で,食資源への活躍が期待されるが,調理過程でL-dopaを除去する必要がある。ムクナ豆で味噌を調製した場合,発酵過程でL-dopaは消失し,抗酸化能は向上する。本研究ではムクナ豆が主原料の発酵食品として甘酒に着目し,米麴を用いて甘味度を上げ,機能性にも優れた発酵飲料を開発するために有用な知見を得ることを目的とした。

    【方法】コントロールは米が主原料の甘酒とし,米を粥状に炊き,米麴と混合し,55℃の恒温器で8時間発酵させて調製した。ムクナ豆発酵飲料は,調製過程において,とろみ(①加水量,②米麴添加量),粒の状態(③攪拌条件),色味(④煮熟後の水晒し回数)について検討し,最適な調製方法を決定した。その後,ムクナ豆と米の置換率を0,25,50,75,100%に変えた5種の試料を調製し,L-dopa含有量,pH,糖度,抗酸化能等を評価した。

    【結果】ムクナ豆発酵飲料の最適条件は①豆乾燥重量の2倍,②豆乾燥重量の1倍,③7,500 rpmで15秒,④1分間で1回,であった。この条件でムクナ豆の置換率を0~100 %と変えた試料の調製結果は,8時間後に全試料でpH5.5以下となった。糖度は全試料で時間経過に伴い上昇し,8時間後に高値を示したのはムクナ豆75%>50%>25%>0%>100%の順であった。これにより,ムクナ豆発酵飲料の糖度上昇には適度な米の存在が効果的だと示唆された。また,最低値を示した場合でも市販の甘酒に比べて糖度は高く,十分に糖化することが分かった。抗酸化能は,ムクナ豆の含有量の増加に伴いDPPHラジカル消去活性は高値になった。 これらのことから,ムクナ豆を主原料とした麴発酵飲料は調製可能であり,今後詳細な検討が必要と思われる。

  • Korshunova Iana, 田中 日菜子, 加藤 和樹, 大竹 憲邦, 藤村 忍, 西海 理之, 山口 智子
    セッションID: 2P-20
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】くろさき茶豆は新潟市西区黒埼地区で栽培されている枝豆で,茶豆特有の外観とともに,芳醇な香りと良食味を特徴とする。2017年に地理的表示(GI)保護制度に枝豆として初めて登録され,ブランド化している。8つの指定品種があり,7月上旬から9月上旬に味わうことができる。枝豆の調理ではゆでることが一般的であるが,近年,蒸し器やフライパン,オーブンによる加熱調理も行われている。そこで,本研究では生産量の半数を占める本茶豆について,異なる調理法による呈味成分,抗酸化活性,物性等への影響を評価することを目的とした。

    【方法】2022年8月上旬に収穫したくろさき茶豆(本茶豆)を収穫当日に用いた。調理法はゆで,塩ゆで,蒸し,フライパン焼き,オーブン焼きの5種類とし,いずれも10分間加熱した。水分含量,色調,アミノ酸含量,総ポリフェノール量,抗酸化活性,破断特性を測定するとともに,味覚センサーによる呈味評価を行った。

    【結果】水分含量はゆでと塩ゆでがフライパン・オーブン焼きより約4%高かった。色調はオーブン焼きのL*とb*が有意に高く,a*が低かった。総ポリフェノール量及び抗酸化活性には調理法による相違はみられなかった。主要なアミノ酸はアスパラギン,アラニン,グルタミン酸であり,GABAとアルギニンも比較的多く含有していた。これらのアミノ酸及び総アミノ酸量は塩ゆでで低い傾向がみられ,GABAはオーブン焼きで有意に高かった。物性評価ではオーブン焼きとフライパン焼きの破断応力が有意に高く,他の調理法に比べて硬かった。味覚センサー評価の結果,塩ゆででは苦味雑味と渋味刺激が少なく,旨味はフライパン・オーブン焼きで強いことが明らかになった。

  • 波多野 由美, 吉岡 希, 下畑 陽美, 吉村 由祐子, 上地 利征
    セッションID: 2P-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】家庭で作るポテトサラダのおいしさを工業的製法で再現する方法について,これまでにソース部分の油の乳化状態やデンプンの流出度合いが重要であることを明らかにした。今回は喫食時の温度に着目した。スーパーなどで売られている冷蔵流通しているポテトサラダと異なり,家庭では調理直後のやや温かい状態であることが,よりおいしさを引き出していると考えた。そこで,喫食時温度がおいしさに与える影響を明らかにすることを目的として,温度を変えた時のおいしさや物性,味の変化について評価を実施した。

    【方法】蒸し芋,マヨネーズ,また一般的な配合で試作したポテトサラダのそれぞれについて,約10℃のものと,レンジで温めて約25℃にしたものを用意し,官能評価を実施した。また,市販惣菜のポテトサラダについて,同様に温度条件が異なるものを用意し,味認識装置による測定と,SPME-GC-MSによる香気成分分析を行った。

    【結果】官能評価の結果,蒸し芋,マヨネーズ,ポテトサラダのそれぞれについて,温めた方が香りが強く,食感がなめらかで好ましいとの評価が得られた。また,温めた方が酸味や苦味雑味,渋み刺激センサーの応答が低減した一方で,旨味や旨味コクセンサーの応答が高くなった。さらに,温めた方が各香気成分が増加傾向を示し,特にマヨネーズ由来の香気成分が増加した。 以上から,喫食時温度を冷蔵から常温にすることで,芋及びマヨネーズの香りや物性が変化し,ポテトサラダとしても香りが強く食感がなめらかになり,よりおいしく感じられることが明らかになった。したがって,市販のポテトサラダについてもレンジで温めることで,手作りのようなおいしさを引き出せるため,新たな喫食方法として期待できる。

  • 下畑 陽美, 吉村 由祐子, 波多野 由美, 吉岡 希, 上地 利征
    セッションID: 2P-22
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】じゃがいもはポテトサラダをはじめとした数多くの料理に使用される食材の一つである。その魅力には,じゃがいも特有の甘さや土臭さ,青臭さのような風味がある。一方,調理塩には精製塩のようにほぼNaClで構成されるものから,海水塩や岩塩のように多様なミネラル塩を含むものまで存在する。今回,ミネラル塩のバランスがじゃがいものどのような風味に寄与するのかを確認する検討を行った。

    【方法】蒸し芋に,ミネラル含有量の異なる調理塩5種類を用いて作成した各塩水を混ぜ,冷却したのち,5℃で保管し翌日に風味の差を確認した。塩辛味,甘味,芋の風味,味の奥深さ,好ましさの5項目を,0.5刻みの5点法で評価した。官能評価結果と塩のミネラル成分量の分析結果を合わせて,主成分分析を実施した。

    【結果】官能評価の結果,塩辛味が低く,芋の風味が高い方が好まれることがわかった。また,カリウムとカルシウムは芋の風味及び味の奥深さ,ナトリウムは塩辛味,マグネシウムは甘味に影響することがわかった。一般的に,カリウムは酸味,カルシウムは甘味,マグネシウムは甘味と苦味に関与するといわれている。今回の結果からは,ミネラルバランスによるじゃがいもの風味傾向を知ることができた。これにより,調理塩の使いこなしによって,望むじゃがいもの風味を引き出せることがわかった。

  • —高圧加熱処理における食塩の影響—
    綿貫 仁美, 上薗 薫, 林 一也, 浅野 賢治
    セッションID: 2P-23
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】高付加価値有色馬鈴しょ品種について,既存品種のノーザンルビー(NR),シャドークイーン(SQ)と,新品種のシャイニールビー(SR),ノーブルシャドー(NS)の高圧加熱処理時間の違いによる色調変化についてはすでに報告した。今回は基本的な調味料である食塩を添加し高圧加熱処理を行い,色調およびアントシアニン(AN)残存率について比較検討を行った。

    【方法】試料は北農研で栽培された,赤肉系品種のNR,SR,紫肉系品種のSQ,NSを用いた。1)各馬鈴しょを蒸し,脱皮した後潰してマッシュポテトとした。マッシュポテトに蒸留水,2.5%,5%,15%食塩水を同量ずつ加え,食塩濃度が0%,0.5%,1%,3%になるように試料調製した。食塩添加マッシュポテトをレトルト包装し,120℃4分の条件下で高圧加熱処理を行い,4℃で18時間冷蔵保存した後,色差を測定した。2) 1)で用いた各試料を3%ギ酸でANを抽出し,色素含有量の測定を行った。

    【結果】色差測定では,赤肉系品種で,0%食塩未処理とくらべ,食塩濃度が高くなってもab値ともにあまり変化がみられなかった。NRとSRの品種間の比較でも,色調にあまり変化がみられなかった。紫肉系品種では,120℃4分処理において,食塩濃度が高くなるほど値が低くなる傾向を示した。SQとNSでは,NSの方が色調が濃いが,どちらの品種においても食塩濃度が高くなるほど,くすみは低くなる傾向を示した。AN残存率では,全ての品種において0.5%,1%食塩濃度で,0%食塩濃度よりもANの残存率が高くなる傾向を示した。3%食塩濃度では,NR,SR,NSにおいてAN残存率が下がる傾向を示した。

  • 佐藤 靖子
    セッションID: 2P-24
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】カボチャは,「揚げる」,「蒸す」,「茹でる」など様々な調理法により美味しく食される野菜である。その調理法の1つである「蒸す」を行った際に,表皮の置き方の違いにより甘さが異なった。本研究では,カボチャの表皮を上下方向に置いて蒸した時の組織構造を調べた。

    【方法】材料には,市販の国産カボチャを用いた。カボチャは約3 cm角に切り出し,表皮を下向きおよび上向きに置いて20分間蒸したものと,同様に切り出したものを20分間茹でたものを使用した。加熱後は,5 mmの厚さに切り出しカルノア液で固定後,パラフィンに包埋して6 µmに薄切した。薄切試料は,過ヨウ素酸シッフ液(PAS)を用いて染色し,光学顕微鏡および簡易偏光装置により観察した。

    【結果】加熱したカボチャの表皮部位にデンプンの存在は確認できなかった。内部には糊化したデンプンが存在した。表皮を上にしたカボチャの内部には,糊化した多くのデンプンが存在して,崩壊したものは少なかった。しかし,表皮を下にしたものは,デンプンの多くは溶解しており,膨潤した形状のものはほとんど存在しなかった。一方,茹でたカボチャには,糊化したデンプンが存在したが,その形状は同一ではなく崩壊しているものも多かった。さらにデンプンの存在は,表皮を上にして蒸したものより少なかった。簡易偏光装置を用いた細胞壁の状態は,茹でたものと表皮が上のものでは差がなかったが,表皮を下にしたものは,表皮部位の偏光性が弱く,内部の細胞壁の形状が他と異なっていた。カボチャを蒸す際には,表皮が上なるように配置することで,内部のデンプンが十分に膨潤・糊化してその形状を保ち組織内にとどまるため,表皮を下にしたものより美味しく食することが出来うる。

  • 八木 千鶴, 中本 恵子, 徳永 みな子, 吉村 美紀
    セッションID: 2P-25
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】くわいは塊茎と芽が食され,葉茎に生理活性物質の多くが存在することが報告されている。現在,くわいの葉茎は食用利用されていないが,有効成分の摂取には葉茎の新規食用開発の重要性が考えられる。そこで間引きしたくわいの葉から茶葉の調製を試み,くわい茶として抽出条件によるポリフェノール量を比較した。

    【方法】吹田くわいの軟らかい生葉を使用した。2分間蒸した後冷却し,ホットプレートに紙を敷き,80℃,18分間乾燥させ,さらに38分間手揉みした茶葉をくわい茶とした。くわい茶0.5 gに,水道水100 mlを用いて,90℃の湯3分間(90℃),3分間煮出し(煮出し),7℃の水210分間冷蔵庫内(水出し)で抽出した。抽出液の色彩構成(L*,a*,b*),フォーリン・チオカルト法によりポリフェノール量を測定した。

    【結果・考察】くわい茶は塊茎と同じようなほろ苦さとわずかな甘味が感じられた。色は,煮出しが,a*値(赤味)は最も低く,b*値(青味)は最も高く茶色を呈し,次に90℃,水出しの順で茶色が薄くなった(p<0.01)。L*値(明度)は有意差が認められたが,外観では確認できなかった。ポリフェノール量は,煮出し24.9 mg/ml, 90℃16.4 mg/ml,水出し11.8 mg/mlとなり,煮出しが最も量が多くなった(p<0.01)。以上より煮出しすることで,多くのポリフェノール量摂取が可能となる。緑茶4 gを90℃100 mlの抽出ではポリフェノール量が141.1 mg/mlであったことから,くわい茶も同量の茶葉を使用すると,緑茶と同等のポリフェノール量摂取が期待されるが,苦味が問題となる可能性が考えられた。

  • 楊 淞壬, 飯島 陽子
    セッションID: 2P-26
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】キノコの風味については,シイタケなど一部のキノコについての報告はあるが,キノコの風味比較に関する研究はほとんどなく,特に香気成分に関しては不明な点が多い。本研究では,日本国内で,頻繁に食されているキノコの香りに着目し,5種類のキノコ(エリンギ,エノキタケ,ブナシメジ,シイタケ,マイタケ)の香気組成成分の比較について調べることを目的とした。さらに,調理加熱の影響についても調べる。

    【方法】スーパーで各種キノコを入手し,液体窒素で凍結後,乳鉢で粉状になるまで粉砕し,サンプルとした。バイアル瓶に,サンプル1 g,塩化ナトリウム1.0 g,超純水1 mLを加え,内部標準液4-Octanol(1.25 mg/mL)50 mLを加え,5分間超音波処理した。そのヘッドスベースに対し,揮発性成分をSPME-GC/MS分析を行なった。得られた生データに対し,ピークデコンボリューションとピークアライメントを処理した後,主成分分析を行い,各キノコの特徴的な香気成分をスクリーニングした。

    【結果】GC-MS分析結果,合計91種類揮発性成分が検出された。1-octen-3-olをはじめ,3-octanone,3-octanolなど,キノコ間で共通する香気成分が多く,特に炭素数8の化合物が多く検出された。しかし,種類によりピーク面積が異なっており,エリンギ,シイタケ,ブナシメジでは1-Octen-3-olが多く,3-Octanol,3-Octanoneはエリンギでほどんど見いだされなかった。また,直鎖アルコール,アルデヒド類の組成に大きな違いが見られ,各キノコを特徴づけることができた。また,加熱による影響についても検証した。

  • 大貫 和恵, 目黒 周作, 飯島 健志
    セッションID: 2P-27
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】本研究で使用する茨城県産青パパイヤは,ペーストや千切り加工品として市販されているが,粉末加工品の活用方法が未解明である。この粉末加工品を有効活用するため,青パパイヤに含まれるたんぱく質分解酵素の活性および加熱後に変化する食肉の食感に対して嗜好性を官能評価より明らかにする。

    【方法】試料は,茨城県産青パパイヤより粉末に加工処理されたものを使用し,以下の実験に供した。まず,青パパイヤ粉末加工品より粗酵素液を作製し,プロテアーゼ活性およびリパーゼ活性を測定した。前者は基質としてカゼイン溶液を用いて反応させ,生成物をフォーリン試薬で発色し660 nmにて吸光度を測定した。後者は合成基質であるパルミチン酸p-ニトロフェニルを用いて反応させ,遊離したp-ニトロフェノールについて405 nmにて吸光度を測定した。次に,上記より得た高活性濃度の浸漬液を豚ロース肉に浸漬,加熱処理をして官能評価(順位法,評点法等)により食感の嗜好性を評価した。なお,浸漬液は,蒸留水,しょうが搾汁,青パパイヤ粉末加工品の全3種とした。

    【結果・考察】プロテアーゼ活性について,青パパイヤ粉末加工品は6%の濃度(w/v)で高活性が確認された。同粗酵素液1 ml中に0.6 mgのパパインの含有が確認された(パパイン試薬換算)。リパーゼ活性について,活性はほぼ確認されなかった。次に,官能評価について,青パパイヤ粉末加工品が最もやわらかいと感じられ(p<0.05),しょうが搾汁と同等に好まれていた。今後の課題として,調理への応用を踏まえ,青パパイヤ粉末加工品由来プロテアーゼにおける熱安定性や塩などの影響について,また,より嗜好性を高めるため浸漬液の濃度や浸漬時間等を詳細に検討していく必要があると考える。

  • 芝崎 本実, 野口 律奈, 前田 竜郎, 小林 功
    セッションID: 2P-28
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】食品の加工や調理操作では加熱が多く用いられる。特に食物繊維を含む野菜では,加熱温度(90℃以上で軟化,60℃付近で硬化)や油脂添加後の加熱などの調理条件によって,テクスチャーが変化する。これらは野菜を食べやすくするだけでなく,摂食後の消化性にも影響する。しかし,調理条件が異なる野菜の胃内消化まで考慮した研究は少ない。本研究では,定量的なぜん動運動の駆動や消化プロセスの可視化が可能なヒト胃消化シミュレーター(以下,GDS)を用い,にんじんの調理条件の違いがin vitro消化挙動に及ぼす影響を検討した。

    【方法】にんじん(5 mm角)は生,ゆで(沸騰5,15min),炒め(油脂添加),低温ブランチング(65℃,15 min)の5種類を調理条件とした。人工唾液10 mLと2分間混合後,人工胃液240 mL(pH1.3)を加え,GDS容器に投入した。装置内温度は37 ℃,180分間のin vitro胃内消化試験を行った。ぜん動運動の進行速度と周期はそれぞれ2.5 mm/sと1.5 cycles/minに設定した。消化試験終了後,胃消化物を目開き(d)の異なる篩(d:3.35~0.60 mm)を用いて分級し,各粒子サイズ画分の湿潤重量を測定した。

    【結果・考察】生,ゆで5 min,低温ブランチングでは繊維に沿って裂け,切片になる様子が観察された。一方,ゆで15 minではにんじん同士がぜん動運動によって圧縮され,不規則に微細化した。炒めでは油に溶出したカロテン色素が人工胃液に浸透,拡散され,上面に油脂層を形成していた。さらに,にんじんの表面の油脂が摩擦を減らし,微細化は抑制されていた。調理条件によって,胃内消化挙動が異なり,消化時間や栄養成分の放出・拡散が異なる可能性が示唆された。

  • 岩田 惠美子, 後藤 昌弘, 西村 公雄
    セッションID: 2P-29
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】ランダムセントロイド最適化(RCO)法は,相互に影響をおよぼし合う因子を組み合わせ,反応条件などの最適点を調べるプログラムで,複数の因子の最適値を同時にかつ最小実験回数で求めることができる。そこで,奈良県の伝統野菜の一つである「大和丸なす」で流通経路に乗らないものの有効活用を目指し,食味評価が高く,保存性の高い加工品としてジャムの調製をするため,このRCO法を用いて「大和丸なす」ジャム調製時の砂糖とレモン果汁の最適な配合割合を調べた。

    【方法】官能検査は,評点法により「色の好ましさ」,「甘みの強さ」,「酸味の強さ」,「総合評価」を調べた。大和丸なすは県内の青果商より購入し,皮を除いてみじん切りにした後,水にさらして用いた。RCO法の因子は砂糖とレモン果汁の重量とし,設定範囲は砂糖50~100 g,レモン果汁5~15 gとした。プログラムに入力したところ,初めに9個の組合せが示され各条件でジャムを調製した。官能検査を行いその総合評価を入力すると,さらに2個の組合せが示された。その条件に従って調製したジャムの官能検査の結果を入力したところ,各最適添加量が示された。また,ポケット糖酸度計を用いて糖度と酸度を測定し,砂糖とレモン果汁の添加量,官能検査の結果とともに相関関係を調べた。

    【結果】RCO法を用いて解析した結果,砂糖71.69 g,レモン果汁11.26 gが最適添加量として示された。また,酸度と砂糖の添加量や甘味の強さの間に負の相関があり,総合評価とレモン果汁の添加量や酸度に正の相関があった。酸味の強さと総合評価の間に強い正の相関があったことから,酸味の強いものが好まれることが明らかとなった。 本研究は,畿央大学健康科学研究所プロジェクト研究の助成を受けたものである。

  • 佐藤 幸子, 大石 菜穂, 佐竹 紀香, 浜守 杏奈
    セッションID: 2P-30
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】2022年度大会において「調理教育におけるICT教育およびルーブリックの検討」から,具体的な評価目標を示すルーブリックは,個々の向上心となり主体的な学びに効果的であることを示した。本研究では調理実習授業の中でICT教育を進める中で学習者個人の主体的学びを見える化するために,調理教育におけるルーブリックが自己評価の手段となることを明らかにし,ルーブリックによる学習効果を検討した。

    【方法】調理実習授業はCOVID-19対応授業として指導教材をデジタル化して学内LANにより事前指導教材とした。また,タブレット端末を各実習台に配置し,グループ実習の情報伝達手段として環境整備を行った。ルーブリックの評価目標は,学習者が行う「基礎的知識」,「つながり」,「振り返り・発展」のどの段階に到達できたかとなるよう質的な評価(ICEルーブリック)を作成し,学習者自身の自己評価を検証した。調査は2022年度調理実習授業(基礎調理1・2)にて実施した。

    【結果】ルーブリックの評価目標は,「衛生管理」,「調理台の準備」,「炊飯・混合出汁・胡瓜の小口切り」など授業目標に具体的な評価目標を設定し,1つの評価目標に質的な5つのレベルを設定した。評価目標は,回数を重ねることにより主体的・対話的学びに結びつき個々の発展が認められ,5段階評価のうち概ね約80%以上の到達度を示した。その中で質的な評価項目内容が単純化してしまうと向上心の低下も認められた。以上のことから,評価目標に対する質的な評価項目を的確に設定することが重要であり,ルーブリックにより調理教育のアクティブラーニングが見える化され,学習者の自己分析に活用できることがわかった。

  • 金井 猛徳, 谷岡 由梨, 中野 長久
    セッションID: 2P-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】管理栄養士・栄養士養成課程における調理実習は,週に1回を最大1年かけて行われるが,入学前の調理経験等によるバラツキが大きいため,習熟度は個人差が大きく,実習外での反復練習や教員による個別指導が必須の状況である。これまで我々は,調理実習を記録するシステム(教員によるデモや調理実習中の様子を録画し,実習後に確認可能なシステム)を開発した。しかし,記録映像は膨大な情報量のため,映像を単純に視聴するだけでは,流れ作業で終わってしまうことが懸念される。そこで本研究では,MR技術を用いた反復練習支援システム開発の試みを行った。

    【方法】MR技術を用いた反復練習支援システムは,MR技術が搭載されたスマートデバイスとスマートデバイス上で動作するアプリケーションで構成される。アプリケーションは,Unity,Microsoft Visual Studio.Net C#,MRTKを用いて行い,スマートデバイスに搭載されたシステム上で動作するようにした。また,アプリケーションは空間上に記録映像が自由に表示されるように配置し,その周囲に空間上で操作可能なメニューが表示するようにした。

    【結果】開発したシステムは,MR技術を用いることで操作者が空間上に記録映像の画面を映し出し,リアルタイムで記録映像を確認しながら反復練習が可能にすることができた。また,空間上に映し出すことでデバイス等を直接手に触れる必要もなく,反復練習が可能なものにできた。しかしながら,開発したシステムは試作機であるため,実際の教育環境に導入するためには,より具体的なシステム導入による教育効果の検証,さまざまな条件におけるシステムの検証,システムの教育方法の面などの課題を解決していく必要がある。

  • 秋山 久美子, 山中 健太郎, 永冨 夏奈
    セッションID: 2P-32
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】小学校高学年から高等学校の家庭科授業における調理実習の時間数は減少傾向にある。その中で包丁を用いて食材の皮を丸のまま剥く操作は,危険も大きいが恐怖心も加わることで難易度が高くなっている。そこで包丁を用いる前段階として縦型ピーラーを用いることを考案した。縦型ピーラーは持ち方,手指の動かし方が包丁に近いが,包丁に比べると安全性が高い。このことから,それを習得することによって包丁への以降がスムーズに行われるのではないかと考え研究を行った。

    【方法】まず,包丁の丸むき操作に近い動きで皮を剥くことができる縦型ピーラーの選定を行った。被検者に対して,牛刀を用いてリンゴの丸剥きを行い初期段階の状態を観察した。その後,被検者を半分に分け一方は縦型ピーラーでリンゴの丸剥きの練習を行い。残りの一方は牛刀で練習を行った。最後に両者ともに牛刀で皮むきを実施し,縦型ピーラーを用いたリンゴの丸剥き練習の効果を観察した。

    【結果】7種の縦型ピーラーを使用した結果,包丁に近い感覚の縦型ピーラーを選ぶことができた。その縦型ピーラーを用いて練習を行った。剥き操作途中の状態をビデオの撮影し,それをもとにして3点について観察を行った。(リンゴが丸くむけているか。剥き残しが無いか。手の動きが正確か。)その結果,縦型ピーラーを用いたグループは,手指の使い方の採点が3.6点から4.4点に0.8点上昇していたが,包丁のみで練習したグループは0.5点の上昇にとどまっていた。縦型ピーラーを用いた練習は,手指の動きをマスターするうえで,効果的であると考えられた。

  • —塩味・甘味・うま味の官能評価による—
    深澤 美優, 飯島 久美子, 郡山 貴子
    セッションID: 2P-33
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】中外食により加工食品の利用が増加した近年,管理栄養士として味への感受性を養うことが重要である。本研究では管理栄養士養成大学の学生を対象に,調理学関連の授業(理論および実践:調理学,調理学実習,調理科学実験)の受講前・後で味の感じ方にどのような変化が生じるのか,教育効果について検証することを目的とした。

    【方法】パネルは東洋大学2018年度在籍時1年生94人(教育前)および2022・2023年度在籍時2年生192人(教育後)とした。試料は,食塩溶液(0.6%,0.7%,0.8%),砂糖溶液(1%,8%,12%),だし溶液(かつお節,昆布,煮干し,かつお節と昆布の混合,および風味調味料のだし溶液をそれぞれ濃度2%,塩分濃度0.6%に統一)とし,3オンスカップに入れ配布した。試飲する順は教員が指示し,食塩溶液と砂糖溶液は評価用紙にそれぞれの濃度を記入させ,だし溶液はだしの種類を記入させた。さらに5種類のだし溶液の好ましい順を順位付けさせた。

    【結果】各食塩溶液において,正解に近い濃度1%未満と回答した学生数はいずれも教育後に増加し,教育前に比べて10倍以上であった。砂糖溶液の正答率は,いずれの濃度も教育後は2倍以上増加した。だし溶液については,教育前の正答率は低く10種類以上のだしが回答されていたが,教育後は,かつお,昆布,および煮干しの正答率がいずれも80%以上であった。だしの好ましさについては,教育前後いずれも風味調味料が最も高かった。これらのことより,「知識」のみならず実習や実験を通じて「経験」を結び付けた教育を繰り返し行うことで,調味液の濃度についての感覚やだしの種類についての理解が深まることが確認された。

  • —有機農業に取り組む生産者とのフィールドスタディーの実践—
    井上 愛唯, 佐藤 幸子, 南 綾奈, 佐々木 舞子
    セッションID: 2P-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】調理教育は,これまで学内を中心とした授業を主体としている。2015年9月の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は,2030年までに達成するために掲げた目標のひとつに「12.つくる責任・使う責任」とある。本研究では食の持続可能な消費と生産のパターンを確保するために有機農業の生産者と連携し,「食べ物はどのようにつくられているのか?」について問題解決型学習(Project Based Learning)をフィールドスタディーとして取り組み,調理教育の方向性について検討した。

    【方法】栃木県開拓農業協同組合の組合員として有機農業の普及促進を進め実践している生産者グループの皆さんと地域連携活動を行った。活動は2022年4月から2023年2月までの約1年間行った。内容は,①夏期休校日に「グループみんなの未来」の圃場体験(有機農業についての授業,収穫体験など),②毎月1回収穫できる有機農作物を「グループみんなの未来」から仕入れ,食材を調理・加工した。

    【結果】本研究では,調理教育において生産から消費につながるフードチェーンの視点から実践できるスタイルとしてフィールドスタディーを取り入れ,「12. つくる責任・使う責任」が実践可能な調理教育を検討した。その結果,圃場体験は農業に対する理解に結びつき,新たな食材の興味を掻き立てレシピ開発にも率先して取り組む姿勢が見られ,60品以上の野菜料理レシピが完成した。また,学園祭および学内カフェにて社会連携活動の展示を実践し,学びのアウトプットとなった。今後,継続的な社会連携活動が重要であり,調理教育への導入には教科間の横断的なカリキュラム運営が重要であると考える。なお,本研究は実践女子大学2022年度教育プロジェクト助成事業である。

  • 大富 あき子, 井野 睦美, 大富 潤
    セッションID: 2P-35
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】漁業の現場では,漁獲されても水揚げされることなく海上投棄される未利用の魚介類の存在が問題となっている。美味であっても認知度が低く流通しないためである。「魚離れ」が言われて久しいが,繰り返しの周知が魚介類の認知度向上や興味の喚起に有効なことを筆者らは明らかにしている。そこで,新たなる食材として有望な深海性の低・未利用魚介類に着目した小学生向けの食育媒体を作成し,その教育効果の評価を試みた。

    【方法】将来食育指導者となる立場の管理栄養士養成科の大学生を対象にアンケート調査を行い,食育媒体の事前評価を行った。その後,東京都内及び鹿児島県内の公立小学校の小学生420名を対象に本調査を行った。東京都内の小学生には食育媒体をもとに約10分間の解説を行い,鹿児島県内の小学生には解説は行わず食育媒体を渡して担任から回答方法の説明の後,どちらもその場で回答させた。

    【結果】管理栄養士養成科の大学生対象の事前評価では,食育媒体は未利用魚介類を知るために有効という結果が得られた。また,「媒体の掲載料理を食べたい」と回答したグループで食育指導者としての活用希望が高く,効果は掲載料理の質に左右されると思われた。事前調査をもとに掲載料理写真を改善した食育媒体による本調査の結果,媒体をもとに解説を行ったグループ,行わなかったグループともに未利用魚介類への理解が認められたことから,本食育媒体が見ただけでも有効であることがわかった。また,「肉よりも魚が好き」と答えた小学生が未利用魚介類に強い興味を示したことから,子どもの頃から美味しい魚を食べる経験をさせることが,低・未利用魚介類,ひいては魚介類全体の消費拡大に有効であることが示唆された。

  • 森井 沙衣子, 坂本 薫
    セッションID: 2P-36
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大により,私たちの生活は大きく影響を受けた。子どもたちの生活習慣も変化していると考えられるが,それらの調査報告は多くない。そこで,A市が実施した小・中学生の生活習慣や食意識を調査したアンケート調査を解析し,COVID-19流行中の児童・生徒の食事摂取状況の実態を流行前と比較することとした。

    【方法】対象者はA市の公立小・中学校に在籍する小学3, 5年生,中学2年生とした。COVID-19流行以前(2015年)の調査は質問紙法,COVID-19流行中(2021年)の調査は,インターネットを利用して実施した。

    【結果】中学生で朝食を「必ず毎日食べる」と答えた者は2021年調査において有意に減少し,「食べないこともある」,「ほとんど食べない」の回答割合が増加した(p<0.001)。これは,特に中学生で起床・就寝時間が遅くなったことと関係していることが推察された。また昼食から夕食までの間におやつを食べる頻度は,小学3年生で多くなり(p<0.001),さらに小学生では夜食を「ほとんど毎日食べる」と回答した者が増加した(p<0.001)。共食状況は,いずれの校種においても朝食を「家族そろって食べる」が増加し(p<0.01),小学生では夕食の共食も増加していた(p<0.001)。これらの児童・生徒における食事摂取状況の変化は,COVID-19の流行により登校日が不規則になり,在宅時間が長くなったことが影響している可能性があると考えられ,家族との共食頻度が増えたことも,コロナ禍により保護者の在宅勤務が増加したことと関連しているのではないかと推察された。

  • —「ビンゴでおにぎり」の有益性と朝食摂取状況に関与する因子の検討—
    畦 五月, 有馬 弘之
    セッションID: 2P-37
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】国民栄養調査(2019年)での朝食摂取率は特に20代で低い傾向が,さらに低年齢層でも低傾向が示されている。香川県においても小・中学生の朝食摂取率(2019年調査1))は小学校89.1%,中学校 85%であり,2018年全国学力・学習状況調査の86.7%と同程度であった。本研究では,香川県のモデル校において,5分以内に1人で作成できるおにぎりのメニューを提案し,朝食摂取率を上昇させることを目標とするともに,朝食摂取に影響及ぼす生活習慣の因子等の検討,および本取り組みの有益性を検討することを目的とした。

    【方法】香川大家庭科領域学生とともにビンゴ形式のおにぎりメニューを提案し,小学校2校,中学校2校(モデル校)で夏休み宿題として実施後にアンケートを実施した。

    【結果・考察】実施後の摂取率は,小学生85.9%,中学生85.7%であった。本実践により有意に「時々食べる」者が「毎日食べる」者になり,本企画の有益性が認められた。朝食摂取に影響する生活習慣は,睡眠関連因子,ネット・ゲーム時間,夕食摂取状況,不定愁訴区分であったが,これらの因子相互の関連性は小・中学生で若干違いが認められた。さらに朝食摂取状況と家庭環境因子(共食,家族との会話,家族の朝食摂取状況)が有意に関連した。実践後は,朝食を1人で作る意欲が増したが,その意欲には小学生では実践後も朝食を作成している者,家族との会話が,中学生では小学生の2因子に加えて,性別,ネット・ゲーム時間,不定愁訴区分,共食,料理実施状況の因子が有意に影響した。家庭科の教科の時間に限らない低年齢からの食育の取り組みとして,また,朝食の摂取状況別にプログラムを構築し朝食摂取向上に取り組む必要があると考えられた。

    1) 香川県教育委員会HP

  • 近堂 知子
    セッションID: 2P-38
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/09/09
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    【目的】南三陸町はホヤの生産量が日本一である。しかし,東日本大震災による原発事故の海洋汚染を疑われ,主たる輸出国であった韓国への輸出が停止し,現在もその状況が続いている。南三陸町歌津中学校では,課題解決型学習として,ホヤの国内消費拡大を目指し,ホヤレシピを考案し地元関係者に提供する「1日レストラン」を開催することになり,本学4年生がそのサポートを行った。連携授業は2020年度から始まり,地域連携,課題解決型学習,地域活性化への貢献,SDGs,学生の実践的な教育など様々な目的で行われ3年間継続している。

    【方法】2022年度は本学家政学部食物栄養学科,調理学研究室卒業演習履修者2名,歌津中学校1年生29名が本取り組みに参加した。2022年度はホヤのお弁当をテーマとした。本学学生が「バランスのよい食事とお弁当」という食育動画を作成し中学生が視聴。また海洋食資源の専門家の講義を受けた。中学生が発案したレシピに本学学生がオンライン等でアドバイス,試作などの結果を共有しながらレシピを完成させた。10月歌津中学校にて実習のサポートを行った。プロジェクト前後にアンケート調査を行い,本取り組みについて考察した。

    【結果】ホヤには,鉄分,亜鉛などの栄養素が豊富に含まれているが,独特な酸味や苦味によって苦手に感じる人も少なくはない。どのようにすれば抵抗なく美味しく食べることができるのかを中学生と共に考え,レシピを考案した。取り組み前ではホヤが好きな中学生は18.2%しかいなかったが,取り組み後では71.4%がよい印象になったという結果であった。両校生とも課題解決力の向上が見受けられ,食文化の普及と伝承に貢献できた。

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