日本地球化学会年会要旨集
2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
選択された号の論文の348件中201~250を表示しています
沈み込み帯の地球化学
固体地球化学(全般)
  • 長田 雄佑, K.V.K ウィルバート, 和田 秀樹
    セッションID: 2P07 102-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    スリランカ,ハイランド複合岩体は全体的に超高温度のグラニュライト相の変成作用を経験し,さらに,そこに産出する結晶質石灰岩にはカルサイト-ドロマイト-グラファイトの鉱物組み合わせが広く見られるため,高温から超高温の炭素同位体地質温度計の較正を行った。 フォルステライトやスピネルなどに炭酸塩の包有物が見られ、高温時のMg含有量を保存している.ドロマイトの離溶が発達しているカルサイトの包有物は元素移動の高い温度を記録していると考えられ,この包有物が示すソルバス温度が変成温度であるとした.それぞれのサンプルの変成温度を求めた結果,770‐890℃を得ることができた.この結果を基にカルサイト-グラファイト,ドロマイト-グラファイトの炭素同位体分別係数の温度依存性を評価した結果,それぞれ800℃,890℃までの経験的整合性のある炭素同位体地質温度計を求めることができた.
  • 三浦 保範
    セッションID: 2P08 102-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    地球内部岩石にある二酸化炭素の流体間の問題の最新研究成果を報告する。地球惑星鉱物で水素と炭素含有鉱物は種類と含有量で大きく違うのは、炭素含有物が地球内部の高圧でも多様に固体と結合していることを示す。二酸化炭素を地球内部岩石鉱物に動的に吸着させ、X線回析と電子顕微鏡写真から確認することができた。この実験結果は、従来の考えや確認法とは異なり、多量に二酸化炭素が地球内部岩石でも保存されて存在できることを示している。動的な高圧下で、二酸化炭素を地球内部岩石と反応させ、高圧炭酸塩鉱物数種を合成することができ、電子顕微鏡で微粒子組織を確認することができた。この実験結果は、従来の最近炭素の地殻マントル循環ではなく、地球形成初期の巨大衝突で地球内部に蓄えられた二酸化炭素が地球内部でも広く内部物質にまた長く地球惑星内部物質として二酸化炭素が様々な形態で貯留保存できることを示す画期的な研究成果である。
  • 常 青, 木村 純一, 石川 晃
    セッションID: 2P09 102-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    Laser ablation combined with quadrupole- or multiple collector-type ICP-MSs has rapidly become one of the most important tools for in situ analyses of elemental and isotopic compositions of a wide variety of geological materials. This technique features direct solid sampling at high spatial resolution, depth profiling ability, and high data throughput. Newest models of laser ablation system prefer short laser wavelength and short pulse width (e.g. femto-second laser) to minimize ablation induced elemental and isotopic fractionation. Quantitative analysis has usually been carried out by external calibration using NIST synthetic glasses (typically SRM 612 and 610) as reference standards and a naturally-occurring major element with known concentration as internal standard to correct for the ablated mass and instrumental drift. However, recent studies demonstrate that this calibration is affected by matrix effects. Calibration against NIST glasses may cause significant inherent bias because of large difference in major compositions between the NIST glasses and most of geological samples. Using a 193 nm argon fluoride (ArF) excimer laser ablation system, we investigated the validation of NIST SRM 612 and USGS glasses (BHVO-2G and BCR-2G) as calibration standards for determination of incompatible trace elements in MPI-DING reference glasses (Jochum et al 2005) and mineral separates of mantle xenoliths.
  • 仙田 量子, 常 青, 木村 純一
    セッションID: 2P10 102-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    今回、我々は酸分解と岩石融解の手法を組み合わせ、酸難溶性鉱物を含んだ珪長質標準岩石試料の迅速分解微量元素分析を試みたのでその結果を報告する。今回の分解法では岩石分解にかかる時間が約6時間と、旧来の加圧容器を用いた酸分解法や、酸分解・アルカリ融解の組み合わせ法(Awaji et al, 2006)よりも短いメリットがある。この分析法で求めたGSJの標準岩石試料JG-3はZrで149.5ppm、繰り返し測定の標準偏差の割合(RSD)が5.3%(n=18)、USGSのG-2はZrが331.9ppm、RSD3.9%(n=5)と再現性がよく、これら酸性岩に含まれる難溶性Zirconが完全に分解できていることを示している。
  • 上岡 晃, 小笠原 正継, 青木 正博
    セッションID: 2P11 102-P05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    地質調査総合センターでは、調査・研究目的に野外で採取された多量のウラン・トリウム鉱物標本が保管されており、核原料物質として法規制対象となっている。本発表では、それらの法令に則った安全管理および、保管室内のラドン濃度の低減などについて紹介する。
  • 内田 乃, 豊田 新, Tissoux Helene, Felgueres Chistophe, 蜷川 清隆
    セッションID: 2P12 102-P06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    自然放射線によって生成した格子欠陥や不純物に準安定な状態としてとらえられた捕獲電子は,熱的に安定であれば,地質学的時間スケール間に年代と共にその量が増加していく。ESR(電子スピン共鳴)及びルミネッセンス年代測定ではこれらの電子を観測することによって自然放射線による総被曝線量を求め,年間線量率で割ることで年代を求める(Ikeya 1993)。ここで年間線量率は試料中のU,Th,K含有量から,換算係数(Adamiec and Aitken 1998)を用い,含水率,粒径,宇宙線等の補正を行って求められる。よってU,Th,Kの含有量を正確に求めることはESR年代測定法及び同様の原理に基づいて行なわれるルミネッセンス年代測定において重要なことである。本研究は,独立行政法人産業技術総合研究所(産総研)の岩石標準試料を用いてU,Th,Kの定量性の研究室間相互比較を行った。
  • 浅越 光矢, 豊田 新, 鈴木 毅彦, Tissoux Helene, Falgeres Christophe, Voinchet Pier ...
    セッションID: 2P13 102-P07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    テフラはその瞬時性と広域性から、自然及び人文歴史的現象の年代を決めるために重要な指標である。ESR(電子スピン共鳴)年代測定において、年代は総被曝線量を年間線量率で割ることで求められる。総被曝線量の測定において、これまで付加線量法が用いられてきたが、今回信号再生法を試みた。 付加線量法では試料に何段階かのγ線を照射し 、ESR 信号強度を信号強度 0 の点まで外挿して、総被曝線量を推定するが、外挿のため、誤差が大きくなってしまう。信号再生法は加熱により信号を消失させ、γ線を照射して元の信号強度が生成する線量を求める方法である。利点は誤差が小さいことであるが、加熱の際に感度変化が起こる可能性がある。 今回、信号再生法における曲線の感度変化を補正することのできる再生付加線量法を、沼沢-金山テフラの石英に適用した。
堆積物/堆積岩の地球・環境化学
  • 田中 剛, 山本 鋼志, 南 雅代, 三村 耕一, 浅原 良浩, 吉田 英一, 竹内 誠
    セッションID: 2P14 01-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    表記地域から,約2000試料の河床堆積物を採集し,蛍光X線分析と中性子放射化分析により,それらの主/微量成分38元素を分析した。また、同一地点で多数のグループが試料を採集したり、毎年試料を採集し,その変動を調べる等、分析試料の代表性も検討した。そのけっか、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム等の分布は、花崗岩の分布に一致することがわかった。鉄の分布はマグネシウムの分布に一致する所としないところがあり、後者は、ゴルフ場の分布に一致することがわかった。ヒ素の分布は金の分布に一致する所としないところがある。前者は熱水鉱床の存在を示す。
  • 野崎 達生, 鈴木 勝彦, ラヴィッツァ グレゴリー, 木村 純一, 常 青
    セッションID: 2P15 01-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    MC-ICP-MS (NEPTUNE) と気化法を用いて,Re-Os同位体を迅速かつ簡便に測定する方法の開発について議論を行う.OsO4の揮発性を利用して気化法によりOs同位体を測定が行えるようになれば,従来の分析手法の手順を大幅に短縮することが可能であり,多数のサンプルのRe-Os同位体分析も可能になると考えられる.本発表では,MC-ICP-MSと気化法を用いたRe-Os同位体測定の原理の紹介やその長所/短所,Re,Os標準溶液の測定結果・分析精度,アプリケーションなどについて議論・考察する.
  • 坂口 綾, 山本 政儀, 富田 純平, 小藤 久毅, 青田 容明, 熊谷 道夫
    セッションID: 2P16 01-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    これまでバイカル・フブスグル湖底堆積物中ウラン(U)・トリウム(Th)同位体組成変化に着目した研究を行ってきた。その結果、堆積物中のU・Th同位体組成が気候変動の指標となる珪藻や一次生産者由来の色素と同調し、深さ(年代)により大きく変動していることがわかった。本研究では、堆積物中U・Th同位体の“パレオマーカー”としての確立を目指し、そのアナログ研究として1993-2006年の間に琵琶湖水系で採取した河川水、湖水、懸濁物、動・植物プランクトン、湧出水、セジメントトラップ試料を分析・データ解析することで、気候・環境変動にからむU(Th)の詳細な沈降・堆積挙動解明を試みる。
  • 佐藤 寿年, 田畑 美幸, 澤木 佑介, 上野 雄一郎, 小宮 剛, 吉田 尚弘
    セッションID: 2P17 01-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    キップカーボネートは、スノーボールアースイベント後の環境変動を考える上で重要である。これまで炭素同位体を用いて、脱氷河期に二酸化炭素やメタンが関与したことが言われてきた。また、一般的に炭素同位体比の変動は負にシフトし、それは温度や速度論の影響とされてきた。しかし、本研究の南中国キップカーボネートから得られた正のシフトはこれまでのメカニズムでは説明ができない。その解釈として、陸の浸食から栄養が供給され、生物生産が高まりこのような変動を起こしたものと考える。
  • 山田 悠香子, 三上 裕, 南 秀樹, 長尾 誠也, 小畑 元, 谷野 賢二, 加藤 義久
    セッションID: 2P18 01-P05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    堆積物を採取した後,敏速に得られる情報の一つに堆積物の色相がある。堆積物の色の水平的な変化は陸源および海洋物質の運搬・堆積量の変化に対応する粘土鉱物,オパール(生物起源ケイ素),炭酸カルシウム,有機物,鉄,マンガンのような化学成分の相対含有量によって引き起こされている。鉛直的な色相の変化の要因の一つとして酸化還元環境変化に対応した鉄やマンガンの化学形態の違いも色相に大きく関わっていることがわかっている。したがって,堆積物の色相を観察することにより,速やかにその堆積物の酸化還元環境や構成物の変化の情報を入手し,堆積物の色相を地球環境変遷のプロキシーとして活用することを検討し,化学成分と色相の関係をできる限り定量的に明らかにすることを試みた。また,色相観察の手段としては色彩色差計を用いて色をデジタル値として定量する方法を使用した(Nagao and Nakashima,1991)。本研究では表層の生物生産が比較的低い黒潮海域の四国沖と,生物生産の高い東部太平洋ペルー沖について研究を行った。黒潮海域である四国沖は堆積物中の炭酸カルシウムの割合が大陸斜面で多くても10%程度で,四国海盆などはほとんど含まれていない。有機態炭素含有量も低く,堆積物表層では赤褐色の堆積物が多くを占め亜酸化的な環境を呈する海底である。一方,東部太平洋ペルー沖は堆積物中の炭酸カルシウムの割合が50%を超える海域であり,生物生産が極めて高く水平的に生物種の変化もある海域で,水深が比較的深いこともあり赤褐色の酸化層が発達している。そこで本研究ではこれらの堆積物試料を用いて化学分析のデータと色相データ(L*a*b*値)を比較して堆積物の色相と堆積物中における主要元素の挙動および堆積環境との関係を検討することを目的とした。
  • 城森 由佳, 南 雅代, 後藤 晶子, 今井 登
    セッションID: 2P19 01-P06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年、イネなどの植物の産地同定の手段として87Sr/86Sr同位体比が用いられるようになり、さらに、遺跡から出土された人骨の87Sr/86Sr同位体比を測定して、その遺跡に埋葬されている人の出身地を推定することも行われつつある。地質の87Sr/86Sr同位体比は、そこで生育している植物の、最終的には動物の骨中に反映されると考えられ、87Sr/86Sr同位体比の地球化学図は、生育場の同定などを行う際の基礎データとして重要である。我々は、河川堆積物を主として用い、全国の87Sr/86Sr同位体比の地球化学図を作成することを目的としている。昨年の年会では、九州北部・西部地域の87Sr/86Sr同位体比の分布を報告した(後藤ほか、2008)。本講演では、九州の南部・東部を含めた九州全域、ならびに四国地域の87Sr/86Sr同位体比分布を報告する。
宇宙地球有機物とアストロバイオロジー
  • 河口 優子, 楊 印杰, 杉野 朋弘, 藤崎 健太, 横堀 伸一, 吉村 義隆, 辻 尭, 奥平 恭子, 田端 誠, 河合 秀幸, 鳴海 一 ...
    セッションID: 2P20 13-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    たんぽぽ計画では、ISS(国際宇宙ステーション)上での微生物と生命の材料になりうる有機化合物の天体間の移動の可能性の検証と、微小隕石の検出および解析実験を行うことを提案する。低軌道上で超低密度エアロゲルを一定期間曝露することで宇宙空間での微小隕石やその他の微粒子を捕集することを計画している。エアロゲルを回収後地上にて、エアロゲル表面と衝突トラックの顕微鏡観察の後、様々な解析を行う。エアロゲル中に残存した粒子に関して、鉱物学的、有機化学的、および微生物学的な検討を行う。一方、宇宙環境下での微生物の生存可能について検証するため、微生物の宇宙曝露実験も行う。我々は、エアロゲルで捕集された微粒子からの微生物の検出手法について現在検討している。また微生物の宇宙曝露実験について、宇宙の極限環境を模擬した条件下での微生物の生存率等の検討をしている。
地球化学と生理学の融合:生命圏のフィジオロジーの探究
  • 中川内 司, 杉谷 健一郎, 日高 洋, 三村 耕一
    セッションID: 2P21 09-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    西オーストラリア北西部に位置するピルバラクラトンには25-35億年の堆積岩が産出し、その北東部に位置するマウントゴールズワージー地域(マウントグラントも含む)からのチャートは、形態が多様な炭素質の微細構造が見つかっている。しかしながら、この地域における年代学的情報は不明瞭であるため、他地域との地層対比については詳細な結論には至っていない。そこで微化石を含んでいる黒色チャートの堆積年代を明らかにすることを目的に、チャートと互層する火山灰層中に産するジルコンについて、高感度高分解能イオンマイクロプローブ(SHRIMP)を用いた局所U-Pb同位体分析を行い、この地域における地質進化に時間的制約を与えることを試みた。結果はU-Pb系が閉じていないと考えられるディスコーダントなジルコンであること、また3.5Gaに起源を持つジルコンと、3.0-2.8Gaに起源を持つジルコンが混在していることが確認された。
  • 中山 裕輔, 横山 祐介, 山内 敬明
    セッションID: 2P22 09-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    好熱性古細菌の主要な一群Sulfolobus属の膜脂質は極めて特徴的で、イソプレノイド鎖にカルジトールという炭素環構造がエーテル結合した膜脂質GDCTを主要な成分としており、これが本微生物の耐熱耐酸性に寄与していると思われる。カルジトールの生合成、分解過程の存在、あるいは古細菌の代謝進化上の位置づけを行う上での指標としての可能性を探るため、Sulfolobus acidocaldariusから得た無細胞抽出液をHPLCで分析し、中間体の存在を検討した。
  • 山崎 絵里香, 田中 佑樹, 菅 彰信, 田野島 三奈, 永田 雄一, 高田 和子, 篠原 厚子, 千葉 百子, 平田 岳史
    セッションID: 2P23 09-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    カルシウム (Ca) は人体において5番目に多い元素であり、生命活動の維持に不可欠な生体必須元素である。生体反応の多くが金属元素を含む酵素によって制御されることから、金属の代謝を用いて反応や制御機構の解明をめざす生体金属支援機能科学が注目を集めている。本研究ではヒトの体内におけるCa代謝を同位体によって解読することを目的とし、定期的サンプリングが可能な血液を試料とした。最終的に得られたCa同位体分析結果は骨密度等の生化学データ、ヒトの乳汁や乳製品 (Chu et al., 2005)、マウスの体組織(Hirata et al., 2008) のデータを加え、Skulan and DePaolo (1999) が提唱した骨形成時のCa同位体分別機構に基づき議論を行う。
  • 落合 総一郎, 沢田 健, 中村 英人, 塚腰 実, 秋元 信一
    セッションID: 2P24 09-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    昆虫などによって植物体に形成されるゴールの化石の化学的同定を行なうために,化石ゴールから特有のバイオマーカーや化合物の組成分布を探索した。また,化石における指標の保存を検討するため,現生のゴールも分析して比較した。試料は,中期更新統,大阪層群で産出した枝ゴール化石(被子植物のイスノキにアブラムシが形成した)と,化石とほぼ同一種の現生植物の葉,葉ゴール,枝ゴール試料である。化石ゴールの遊離態成分ではn-アルカン,バクテリア由来のホパン,被子植物バイオマーカーのオレアネンなどが検出された。化石ゴールの加水分解成分は,おもに植物の表皮に由来するクチン酸であった。化石と現生の枝ゴールのみに,2種類のクマール酸が見出された。クマール酸は,枝ゴールを同定する候補化合物となることを提示できる。また,化石ゴールの熱分解成分からは,没食子酸に類似するポリフェノール化合物を見出した。
大気水圏地球化学(全般)
土壌・陸域生態系の物質循環
  • 長嶺 篤, 赤木 右
    セッションID: 2P28 02-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    日本列島には毎年大量の黄砂が飛来する。黄砂は地球表層において大量の物質を輸送する現象であるが、その物質循環への寄与について十分な検討がいまだなされていない。我々は、陸上へ飛来した黄砂が植物の影響を受けることで黄砂中のケイ酸塩鉱物が分解しやすい形態へ移行、または溶解後植物に吸収されることをポット実験によって実験的に証明した。本研究では、土壌の化学形態別分画の結果を解析し、植物の風化に与える影響の総合的理解を目指した。ポット実験で使用した土壌に化学形態別分画抽出処理を行い、主要金属元素をICP-AESで定量分析した。その結果、植物を栽培していない場合と栽培した場合とで各画分の存在量に変化があり、これらの変化は、ケイ酸塩鉱物が植物により風化された後の元素の移動性に影響するものと考えられる。
  • 山中 康平, 長谷川 徹, 冬野 正史, 益田 晴恵, 中口 譲, 滝川 真矢, 宇根山 綾香, 山崎 恵美子, 中條 武司
    セッションID: 2P29 02-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    【目的】化学成分の種類及び濃度は、生態系に多大な影響を及ぼすと推察される。そこで本研究では淀川および、神崎川水系、琵琶湖への流入河川を対象に、2007から2009年にかけての一般水質項目の広域分布と季節ごとの濃度変化について調査した。【実験方法】河川試料は原則的に河川の流心において、バケツにより採取し、ポリビンに保存した。陰イオン成分はイオンクロマトグラフ法にて分析した。アルカリ度は滴定法により分析した。Na+およびK+はフレーム原子吸光分析法にて分析した。Ca2+およびMg2+はEDTA(エチレンジアミン四酢酸)を用いたキレート滴定法にて分析した。【結果】各イオン濃度の経年変化については、降水量の少ない冬季では比較的濃度が高く、逆に降水量の多い5月では濃度が低い傾向を示した。Cl-,Na+は生活排水や下水処理水の含まれる地域で高い濃度を示した。【考察】各イオン濃度は、降水量の増減による雨水の希釈によって濃度が変化したと考える。Cl-,Na+が生活排水や下水処理水の含まれる地域で高い濃度を示したのは、生活排水に含まれる食塩や化学調味料によるものと考える。
  • 伊藤 絵理佳, 村松 康行, 松崎 浩之
    セッションID: 2P30 02-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    土壌の母材となる岩石中のヨウ素濃度は通常数十ppb程度と非常に低いが、土壌中にはその100倍から1000倍以上のヨウ素が含まれている。これは、海洋から揮発したヨウ素が降雨などを通じて土壌中に加わり濃度が増加したと考えられる。しかし、土壌への蓄積のメカニズムについてはあまり良く知られていない。またヨウ素の放射性同位体の一つであるI-129は半減期が1600万年と長く、核燃料再処理や核実験に伴い微量ながらも大気へ放出されていることから、環境への蓄積や人への影響が懸念されている。この核種は土壌中に蓄積し、その後安定同位体であるI-127と似た挙動をとると予想される。よってI-127やI-129の土壌中での濃度や挙動を調査することは重要である。そこで本研究ではI-127とI-129の土壌中での深度分布を求めることと、バッチ実験より土壌へのヨウ素の吸着メカニズムを調べることを目的とする。
  • ロンバード ロイック, 山田 桂大, 服部 祥平, 佐々木 雄治, 眞壁 明子, 木庭 啓介, 吉田 尚弘
    セッションID: 2P31 02-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    湖におけるメタン生成が大気メタンにあたえる影響は近年その寄与が再認識されつつある。そこで筆者らは、メタンは成層湖木崎湖(長野県)におけるメタンの動態解析を、溶存メタンの炭素および水素同位体比を観測することによってメタンの生成・消滅過程を解析した。観測は2008年の5月から12月にかけて行われた。
  • 酒井 顕子, 楊 宗興, 木庭 啓介, 宮本 侑, 竹林 佑
    セッションID: 2P32 02-P05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    【はじめに】窒素沈着の増加は酸性化や富栄養化をもたらすため、その起源や大気環境における動態を明らかにすることは重要である。中央アルプス千畳敷において降水中NO3-濃度とnss-(非海塩性)SO42-濃度との比(N/S比)、δ15N値の特徴について調べ、大気輸送が高地山岳地帯の窒素循環に及ぼす影響を明らかにする上での基礎的情報を得ることを目的とした。【実験方法】長野県中央アルプス千畳敷にて4月の積雪、4月~6月のバルク降水、11月の積雪を採取し、イオン濃度、pH及びEC、硝酸の窒素及び酸素の安定同位体比を測定した。【結果と考察】中国で活発である大規模石炭燃焼により放出されるSOxはNOxに対して多いため、大陸由来の気塊の影響が大きい降水のN/S比は低くなる (Fukuzaki et al., 1999)。積雪中δ15N-NO3-値平均値は-3.3‰で、他研究と比較すると大陸起源物質の影響を受けやすい条件の方がδ15N-NO3-値が高かった。よって、N/S比とδ15N-NO3-値は負の相関を示すと思われたが、サンプルの値は正の相関を示し、逆の結果となった。大陸由来のδ15N-NO3-値が輸送の過程で低下することが原因として考えられる。
海洋における微量元素・同位体の分布と循環
  • 川村 紀子, YK07ー12 乗船研究者一同
    セッションID: 2P33 04-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    オホーツク海中央部の堆積物直上海水中の全可溶マンガンや鉄濃度を調査する目的で, 8本のマルチプルコア試料が採取された.堆積物直上海水のpH, 溶存酸素濃度,全可溶マンガンおよび鉄量の測定を行なった.溶存酸素と全可溶鉄濃度には,強い負の相関が認められた.また,これまでの研究にて報告された結果と比べて,いくつかの地点では本研究で示された全可溶鉄量が比較的高いことが明らかとなった.以上から,これらの地点の海水−堆積物境界では比較的還元的な状態にあり,鉄が堆積物からが溶出していることが示唆される.
  • 吉田 圭佑, 皆川 昌幸, 井上 睦夫, 中野 佑介, 浜島 靖典, 山本 政義
    セッションID: 2P34 04-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    日本海は北太平洋と比べて地球温暖化等の人為的影響を敏感に受けやすく、海洋の応答を評価するためのモデル海域として様々な研究が行われている。本研究では、海水循環を調べるトレーサーとして利用されてきたRa同位体の詳細な鉛直分布を用いて、日本海水の循環を解明することとした。
    通常、228Raのγ線測定には大量 (200-1000 L) の海水が必要であるが、低バックグラウンドγ線測定法と放射能汚染を極力除いた化学処理法の確立により、少量 (60 L) の水試料で、228Ra、226Raの測定が可能となった。
    日本海盆の表層では1.2mBq/Lと高く、深さとともに指数関数的に減少していたものの水深1000m~3500mで0.1mBq/L程度とほぼ均一に分布していた。一方、226Ra濃度は表層で1.3mBq/Lと低く、深さとともに2.0~2.8mBq/Lと微増していた。本年会では、この結果に、2009年夏季の調査航海で得られる予定の日本海盆海水試料の測定結果を加えることにより、日本海盆のRaの挙動さらには固有水の滞留時間について考察する。
  • 亀田 綾乃, 高畑 直人, 北島 宏輝, 藤尾 伸三, 田中 潔, 佐野 有司
    セッションID: 2P35 04-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    天然のヘリウム-3が流入することのない三陸沖深海に人工的に純度の高いヘリウム-3を投下することにより任意の場所にヘリウム-3ソースをつくり、その広がりから深層海水の流れを推定することを試みた。三陸沖の深さ4000mに散布したヘリウム-3は、その後高い同位体比として検出することができた。また、散布してから採水までの時間が短いほどヘリウム同位体比は高かった。ヘリウム-3散布後の同位体の時空間変化から移流拡散速度を推定する。
  • 高畑 直人, 佐野 有司, 白井 厚太朗, 百島 則幸
    セッションID: 2P36 04-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    海水中のトリチウムは放射壊変してヘリウム-3になる。ヘリウムの散逸が無視できるような閉鎖系を考えた場合、海水中のトリチウム濃度と同時にその娘核種であるヘリウム-3の濃度を測定すれば、海水の絶対年代を求めることができる。これまでにヘリウムのマントル起源成分の寄与が無視できる日本海においてはトリチウムーヘリウム-3年代を求めることに成功しているが、今回南太平洋において中層海水のトリチウムーヘリウム-3年代測定を試みた。その結果、ヘリウム-3の過飽和分がすべてトリチウム起源であると仮定してトリチウムーヘリウム-3年代を求めたところ、南極中層水が沈み込んでいると考えられる場所の水深500mでは約20年という年代で、他の場所に比べて若い年代を示した。
大気圏・水圏とそれらの相互作用、気候変化
  • 柴田 裕樹, 山田 桂大, 服部 良太, 豊田 栄, 吉田 尚弘
    セッションID: 2P37 18-P01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    揮発性有機化合物(VOCs)、特にイソプレン、アセトアルデヒド、メタノールなどに対して、ヘッドスペースマイクロ固相抽出-ガスクロマトグラフィー同位体比質量分析法を構築し、炭素安定同位体比の分析を行った。本研究では生物由来VOCsの中でも放出量寄与が非常に大きい植物から放出されるVOCsを対象としている。これらのVOCsは大気中でオゾンなどの活性酸素濃度と関わりが大きく、また有機エアロゾルの核となることもある。さらに温室効果ガスの前駆物質でもあるためその挙動解析は非常に重要である。
  • 井上 麻夕里, 横山 祐典, 谷水 雅治, 鈴木 淳, 川幡 穂高
    セッションID: 2P38 18-P02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    IODP Exp.310では、ターミネーションIにおける、より正確な海水準変動と環境変遷の復元を目的としてタヒチ周辺海域においてサンゴ礁の掘削が行われた。本研究では、その掘削コア試料中のハマサンゴ属(Porites spp.)の骨格に含まれる鉛同位体比を用いて最終融氷期の海洋環境復元を試みた。測定の結果、サンゴ試料中の鉛同位体比はアンデス中部の地殻に含まれる鉛同位体比と整合的な値を示しており、南アメリカ西縁部から南東貿易風により風送塵がタヒチ周辺海域まで輸送されていることが示唆された。また、melt water pulse 1A前後において同位体比に有意な変動が見られ、この期間、南東貿易風の変動が大きかった可能性が示唆された。
  • 東 将之, 高橋 嘉夫, 清水 洋
    セッションID: 2P39 18-P03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    北太平洋のFeの主要な供給源は、アジア大陸から巻き上げられる鉱物エアロゾルであるが、供給されたFeが全て海水に溶解し、プランクトンに利用可能となる訳ではなく、Feの溶解性はその化学種に依存する。口頭発表では、エアロゾル中のFeのスペシエーション法としてXANESを用いてFeの化学種変化を示すが、本ポスター発表では、さらにEXAFS及びCEY-XANESを用いてFe化学種解析の精密化を試みた。その結果、XANESの最小2乗フィッティングで求めたFe化学種の割合とEXAFSのk空間のフィッティングから得られた割合はほぼ一致した。また、バルク分析と表面分析(CEY-XANES)を用いることで、中国東部のQingdaoのエアロゾル試料においてchloriteが選択的に変質し、表面から二次的にferrihydriteが沈殿することが明らかとなった。
  • 安藤 達哉, 林 えれな, 吉田 磨
    セッションID: 2P40 18-P04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    湖はメタンの自然放出量の6-16%とされており、海洋放出よりも高く見積もられている。しかし、その見積もり幅には誤差が見られ、不確実性が高い。本研究ではメタンが、貧栄養塩湖とされる洞爺湖においてどのような挙動を示すのか、濃度を測定し、湖から大気へのフラックスを求め、温暖化への寄与の度合い見積もることを目的とした。観測結果はメタン濃度と溶存酸素の鉛直分布は同等な傾向を示した。また、近年分布を拡大している外来生物のウチダザリガニがメタン生成に影響している可能性も示唆される。メタン生成過程そして放出過程について栄養塩等の観測結果を用いて議論する。
  • 大類 壮央, 窪田 千穂, 河島 弘幸, 土屋 愛, 吉田 磨
    セッションID: 2P41 18-P05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    海洋はメタンの供給源の一つであり、全球的な大気海洋間のメタン収支は、沿岸域を含めた場合では11-18 Tg yr-1 [Bange et al., 1994] とされている。本研究では、酪農由来物質が河川・河口・沿岸にどう影響しているのかを物質循環の面からとらえ、メタンの挙動および海洋-大気フラックスを見積もり、その空間的特徴を明らかにすることを目的とした。河川から沿岸までの硝酸塩、亜硝酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩の結果は、それぞれ0-7.50 μM、0-1.21 μM、0.06-2.71 μM、3.32-2.71×103 μMであった。これは、河口域・沿岸域が生物活動の盛んな場所であるため、栄養塩が消費されている可能性を示している。 メタン濃度は、3.7-3.0×103 nmol kg–1であり、河川-河口から離れ、深さが増すほどメタン濃度は小さくなる傾向にあった。メタン濃度と塩分との間には逆相関関係があり (図2、相関係数R2 = 0.625)、メタンは河川から沿岸へと供給され、表面での気体交換や希釈効果によりメタン濃度は小さくなると考えられる。
大気微量成分の地球化学
口頭発表(第三日)
土壌・陸域生態系の物質循環
  • 梁 乃申, 中根 周歩, 角張 嘉孝, 高木 健太郎, 石田 祐宣, 高木 正博
    セッションID: 3A01 02-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    北海道手塩から宮崎県綾瀬に至る、6ヶ所の森林で、2007~2008年から呼吸測定チャンバーを設置し、赤外線ヒーターで土壌温度を約3℃上昇させ、土壌(微生物)呼吸速度を1時間単位で測定した。また、オープントップチャンバーを用いて高CO2濃度、高温環境下で、植栽したアラカシ群落の土壌炭素のフローを2007~2008年に測定した。土壌温度に対する微生物の反応(Q10)は従来のモデルに使用されている最高値(2.2)より高かった。オープントップチャンバーでの実験結果から、土壌の炭素収支は現環境区を基準とした場合、高温・高CO2濃度区では大きなマイナスとなり、予測される温暖化環境下では、森林の土壌炭素収支が大きく放出に転換することが示唆された。
  • 太田 雅和, 山澤 弘実
    セッションID: 3A02 02-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    地球温暖化予測には森林地表面CO2フラックス(以下フラックス)の正確な測定が重要である。そこで本研究は環境に対する少ない擾乱で簡便に連続測定が可能な土壌中CO2・Rn濃度からフラックスを推定する手法を考案し、観測で手法の有用性を評価した。土壌中拡散方程式の定常解を用い、Rn濃度から実効拡散係数を、CO2濃度から地表面CO2濃度勾配を決定する。フラックスは上記2項の積で算出する。名古屋市内の森林で土壌中CO2・Rn濃度、比較対照のフラックスを31日間連続観測した。土壌中Rn濃度は地温勾配による土壌空気の混合に起因した日内変動を示した。期間中は土壌水分量の変動が小さかったので実効拡散係数を一定と仮定し、Rn濃度の平均値から実効拡散係数を決定した。フラックスの推定値は、比較対照値の日内変動、及び長期的な平均値を良好に再現した。
  • 蜂谷 真史, 山澤 弘実, 森泉 純
    セッションID: 3A03 02-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、安定炭素同位体比を用いた土壌中CO2輸送のボックスモデルにより根呼吸量を計算する手法を考案し、観測により評価した。
    愛知県豊田市のカラマツ林で土壌呼吸CO2及び土壌中CO2の測定を行い、室内実験により土壌有機物分解起源CO2の生成率及び炭素同位体比を測定した。
    12CO2及び13CO2の生成・輸送の1次元ボックスモデルを考案し、二つの収支式を連立させ逐次計算を行い単位乾燥土壌質量当りの根呼吸のCO2生成率の土壌深さ分布の計算を行った。
    計算結果より、根呼吸のCO2生成率は土壌深さ方向に減少傾向を示し、季節変動の再現を含め概ね一致した。根呼吸量は土壌深さ0.1mまでで全根呼吸量の約8割を閉める結果となった。根呼吸のCO2フラックスの推定値は実測値と概ね一致した。
  • 守屋 耕一, 森泉 純, 山澤 弘実, 小嵐 淳, 安藤 麻里子
    セッションID: 3A04 02-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    土壌有機物とその分解により生成した二酸化炭素の炭素同位体比は、等しいと仮定されることが多い。本研究では、森林土壌を用いた室内実験により、土壌有機物分解により生成した二酸化炭素の炭素同位体比を測定し、仮定の検証を行った。また土壌を培養することで、土壌有機物分解生成二酸化炭素の炭素同位体比に変化が生じるか実験を行った。
  • 赤木 右
    セッションID: 3A05 02-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    一般に、土壌の様な複雑な系においては炭素の同位体比の解釈はさまざまな要因が関係し、困難である。一つの単純系として、定常状態における地球化学的リザーバーを定義し、放射性炭素同位体比と安定炭素同位体比について理論的な解析を行い、その系が示す同位体的特徴を計算により考察した。さらに実際の報告データを用いてそのデータの解析を行った。この計算は、今後地球化学において放射性炭素同位体比の解析の一つの基本的かつ有益なプロセスとなり得る。
  • 岩永 百合, 小島 知子, 宮崎 あかね
    セッションID: 3A06 02-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    リンは植物の成長に必須な元素である。今回、アーバスキュラー菌根菌(以下AM菌と記載)とミミズを用いて、土壌に天然に存在するリンを植物に対して高効率に供給することができないかと考えた。本研究では、第一段階として、AM菌とミミズの相乗効果の可能性について調べた。実験は、アルファアルファ、AM菌、ミミズを用いたポット試験を行なった。以下では、これらをそれぞれ、α、AM、EWと表記する。実験の結果、AM菌共存系において約30%のAM菌の感染が確認され、根のリン濃度の増加も確認された。一方で、シュート乾燥重量は、αのみ、α+AM、α+EW、α+AM+EWの順で増加した。また、シュート中のリン濃度はAM菌とミミズの共存系が最も高い値を示した。以上より、AM菌とミミズの共存系は、AM菌単独およびミミズ単独よりも植物の生育促進効果があり、植物への土壌中可給態リン供給に関する相乗効果があることが示唆された。
  • 小野寺 真一
    セッションID: 3A07 02-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    山地流域の多くは水源地域となっており,将来にわたり質的に保全していくことは重要である。ただし、瀬戸内海流域では、森林伐採、酸性雨、山火事など様々な時間スケールの撹乱要因が複合的に作用してきた。江戸時代から森林の需要が高くはげ山であった地域が広く分布し、土壌は受食土に分類される。また、気候的に乾燥傾向にあるため人為起源の山火事が多く、広島県では数年に1度の周期で100ha規模の山火事が発生している。また、酸性雨の強度も広島県、岡山県ともに高いレベルである。これらの土壌-水源水質に対する複合的な影響は大きかったと考えられるが、十分に解明されたとはいえない。今回は、瀬戸内海沿岸の山地源流域における土壌-水源水質についての調査事例を紹介するとともに、特に、山火事や酸性雨などによる土壌劣化、及び酸性化過程を紹介したい。具体的には、1)2000年8月に山火事のあった広島県生口島試験地における、土壌侵食量及び回復植生による養分吸収量の計測事例、2)1999年5月に山火事のあった広島県大野町試験地における、土壌化学性のモニター事例、3)1994年に山火事の起きた竹原試験地などにおける洪水流出及び渓流水質変動の事例などである。
  • ウー チェン, 山田 桂太, 豊田 栄, 吉田 尚弘, 河野 里名, 村山 康樹
    セッションID: 3A08 02-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    下水処理過程において標準的な活性汚泥過程とAO(anaerobic digestionーoxic reaction)過程でのメタンの生成・消滅・放出の違いについて解析した。両過程において、メタン放出量に大きな違いが見られたが、メタンの安定炭素同位体特徴に違いが無いことから生成・消滅経路に違いがないことが示唆された。
  • 藤原 沙弥香, 吉田 磨, 牛山 克己
    セッションID: 3A09 02-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    水田は温室効果気体であるメタンの大きな人為的発生源である。水田からの発生は土壌中が還元的で有機物量が多いほど増大する。近年、冬期湛水水田が注目されているが、冬期湛水によりメタン発生量を増大させると考えられる。しかしメタン放出の定量化は進んでおらず、そのため本研究では冬期湛水水田から放出されるメタンの定量的な観測を行った。場所は2008年7月から10月にラムサール条約登録湿地である宮島沼に隣接する冬期湛水水田(実際には早期湛水・有機栽培水田)と慣行の無機栽培水田(以下、慣行田)を用いて観測を行った。結果は冬期湛水水田の大気中メタン濃度は湛水時に慣行田よりも一桁ほど高い値が観測された。冬期湛水水田では高いメタン濃度が測定されたため、温室効果への寄与は慣行田よりも大きいことが定量的に判明した。水鳥の生息地確保の利点に加え、温室効果への寄与も考慮にいれた冬期湛水水田の活用が期待される。
  • 楊 宗興, 磯貝 ゆりか, Fang Yunting, Mo Jiangming
    セッションID: 3A10 02-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    湿潤熱帯地域は土壌塩基成分の流亡のために、土壌は酸性を示すことが知られている。一方、寒冷で比較的乾燥した地域では土壌中にカルシウム等の沈積が見られる。大気沈着物によってもたらされる生態系の酸性化現象にとって、このような気候帯による土壌の違いは重要な要因となると考えられるが、これまで生態系の感受性の違いを土壌生成学的要因の点から明確に実証した研究は世界的にもきわめて乏しい。そこで、本研究では中国の亜熱帯域と亜寒帯域、わが国の温帯域を含む計6地域で最深部までの土壌の化学性、渓流河川水質等の比較調査を行った。土壌の塩基成分含量および酸性度には、気候系列に沿って大きく系統的な変化が存在すること、中国亜熱帯の一部では自然要因に人為要因(酸性原因物質の負荷)が加わったことにより、顕著な土壌塩基流亡ならびに流域全体の酸性化が生じていることが明らかになった。
  • 倉本 宏之, 川上 純子, 栗崎 弘輔, 天日 美薫, 廣瀬 孝, 井倉 洋二, 高相 徳志郎, 吉村 和久
    セッションID: 3A11 02-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    現在世界各地で酸性雨の影響による土壌の酸性化と、それに伴う河川や湖沼の酸性化が報告されている。西表島は豊かな自然を持つが地質が主としてケイ質砂岩から成ることから、将来的な土壌の酸性化が危惧されている。そこで、西表島における酸性降下物量と土壌の酸緩衝能の見積りを行った。雨水は降雨ごとに、土壌は西表島10域35地点で採取した。西表島の2005年~2008年の降雨の加重平均値はpH 4.93であり、年間を通じて降雨が酸性化していることが分かった。西表島の土壌の平均ECECは6.63 ceq(+) kg-1、BSは31%であり、環境省によって行われた日本各地の平均値である6.19 ceq(+) kg-1、31%とほぼ等しかった。しかし、浦内川流域や古見岳山頂部においてBSは十数%と低い値を示した。浦内川流域において現在の規模の酸性物質が降り続いた場合、土壌による酸の緩衝は残り約200年しか続かないことが分かった。
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