日本海は北太平洋と比べて地球温暖化等の人為的影響を敏感に受けやすく、海洋の応答を評価するためのモデル海域として様々な研究が行われている。本研究では、海水循環を調べるトレーサーとして利用されてきたRa同位体の詳細な鉛直分布を用いて、日本海水の循環を解明することとした。
通常、
228Raのγ線測定には大量 (200-1000 L) の海水が必要であるが、低バックグラウンドγ線測定法と放射能汚染を極力除いた化学処理法の確立により、少量 (60 L) の水試料で、
228Ra、
226Raの測定が可能となった。
日本海盆の表層では1.2mBq/Lと高く、深さとともに指数関数的に減少していたものの水深1000m~3500mで0.1mBq/L程度とほぼ均一に分布していた。一方、
226Ra濃度は表層で1.3mBq/Lと低く、深さとともに2.0~2.8mBq/Lと微増していた。本年会では、この結果に、2009年夏季の調査航海で得られる予定の日本海盆海水試料の測定結果を加えることにより、日本海盆のRaの挙動さらには固有水の滞留時間について考察する。
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