日本地球化学会年会要旨集
2009年度日本地球化学会第56回年会講演要旨集
選択された号の論文の348件中51~100を表示しています
放射性廃棄物と地球化学
  • 曽我 匠, 鹿園 直建
    セッションID: 1C09 11-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    わが国では、原子力発電所の再処理工場から出される高レベル放射性廃棄物の処分方法として、地下300m以深における地層処分が考えられている。そのため、放射性核種が地下水へ漏出した場合を想定したとき、地層中の鉱物と地下水の反応は重要である。本研究では、地層中に普遍的に存在している方解石(CaCO3)と、放射性核種であるAm, Cmと化学的類似性を持つ希土類元素に着目して天然の方解石を対象に分析を行った。また、これまでの研究では方解石が地下水から沈殿する際の方解石と地下水間における希土類元素の分配係数は求められているが、方解石表面に対する分配係数は求められていない。そこで本研究では、実際の地層においては方解石表面と希土類元素の分配反応も重要であると考え、方解石表面と希土類元素の分配実験を行った。
  • 西本 昌司, 吉田 英一, 浅原 良浩, 天野 健治, 鶴田 忠彦
    セッションID: 1C10 11-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    日本のような変動帯においては、活断層を除く断裂構造としての断層や割れ目帯などを避けて地層処分場を建設することは不可能と考えられる。このため、断層や割れ目帯の長期的安定性を理解することは極めて重要である。しかし、断層や割れ目帯については、地下水流動に影響を与えることなどが議論されてきたものの、断層内の構造や鉱物の特徴について長期安定性と関連づけて論じた研究はあまりない。そこで、岐阜県や岡山市で掘削されたボーリングコアで見られる断層や割れ目およびその近傍の花崗岩について、割れ目形態の観察と鉱物学的・地球化学的調査に基づいて考察したところ、次のようなことがわかった。まず、割れ目充填鉱物は、イライトや緑泥石で特徴づけられる高温熱水型と、スメクタイトで特徴づけられる低温還元水型、ならびに水酸化鉄とバーミキュライトで特徴づけられる低温酸化水型に分類可能である。また、イライトは開口割れ目に、緑泥石は剪断割れ目に卓越する傾向にある。天水の地表からの浸透を示すと考えられる水酸化鉄は、イライトやスメクタイトを切る割れ目にも見られる。 これらのことを総合すると、花崗岩体の上昇過程においてその中に生じる割れ目には、高温熱水型から低温還元水型を経て低温酸化水型の二次鉱物が充填していくと推測される。つまり、花崗岩中の割れ目充填鉱物は、岩体上昇過程における温度圧力条件を示している可能性が高い。つまり、割れ目の破砕形態や充填鉱物の特徴を用いて割れ目の形成のタイミングを推定することができ、その断層・割れ目帯の長期的挙動予測のアナログとして応用できると思われる。
  • 河田 陽介, 山田 憲和, 高瀬 敏郎, 高沢 真由美, 赤木 洋介
    セッションID: 1C11 11-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    鉄筋コンクリート構造物とベントナイト混合土を使用した,複合的低レベル放射性廃棄物処分システムの開発と,そこにおける地球化学的物質輸送解析の適用事例に関し,検討の必要性から,実適用例,研究的発展と今後の展開に関して紹介する。
安定同位体研究の最先端:地球化学への実験的・計算科学的アプローチ
  • 垣内 正久, 仲山 英之, 野村 雅夫, 小高 正敬
    セッションID: 1C12 07-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    一般に濃厚塩類水溶液では、平衡定数は活量という概念を使用して表す。それは水溶液中ではイオンが水和しているうえ、溶質-溶質間相互作用が無視できないからである。含水鉱物が晶出する際は、第一近似として、このイオンの水和圏内の水分子を取り込んで結晶すると考えられるが、含水鉱物間相互の同位体分別を地球化学的に理解するためには、水蒸気の状態は水素結合が無く単分子なので、水蒸気を基準にした含水鉱物-水蒸気間の同位体分別係数を求めることが有効であると考えている。本講演では含水鉱物として、結晶水和物を取り上げる。
  • 大井 隆夫, 大坪 晃子, 梅村 一樹
    セッションID: 1C13 07-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    イオンに水和した水の換算分配関数比を分子軌道法を用いて計算した。まず、イオンの周りにいくつかの水分子が存在する構造を最適化し、次いで、最適化構造において、振動解析を行い、換算分配関数比を求めた。
    その結果、アルカリ金属イオンの第一水和圏に存在する水の水素同位体換算分配関数比は、バルクの水の場合とほとんど変わりがなく、イオンの存在が水素同位体効果にほとんど影響しないことが示唆された。一方、酸素同位体換算分配関数比は、イオンの影響を受け、バルクの水より、大きくなる場合と小さくなる場合とが存在することがわかった。塩化物イオンの場合には、水素同位体換算分配関数比に大きな影響があらわれ、バルクの場合より小さくなることが示唆された。
  • 武蔵 正明, 小豆川 勝見, 松尾 基之
    セッションID: 1C14 07-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    アンチモン(Sb)の環境動態を知ることを目的として、固-液平衡系Sb同位体分別係数を、化学交換法によって測定した。その結果、この系ではSbの重い同位体 (123-Sb) が液相に、一方、その軽い同位体 (121-Sb) が樹脂相に濃縮することを初めて確認した。この結果は、例えば熱水から析出する硫化物(輝安鉱、Sb2S3)には、Sbの軽い同位体 (121-Sb)が濃縮する事実と矛盾がない。
  • 藤井 俊行
    セッションID: 1C15 07-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    同位体どうしの化学的な性質はわずかながら異なるため化学分配平衡には同位体効果(化学同位体効果)が発現する。同位体は質量が異なるので、同じ分子でも同位体が異なることによって分子振動のエネルギーが異なる。この振動エネルギーの違いが化学同位体効果を起こす主たる原因であるとされてきたが、化学同位体効果の原因はこの質量効果だけではない。分子は分子軌道に応じたエネルギー準位を持っており、このエネルギー準位は同位体が異なることによって変動する。変動の因子は、原子核の質量、体積、核スピンである。軌道電子と原子核の相互作用により、原子核の情報が軌道電子に伝搬し、分子のエネルギー準位に同位体差が生じるのである。この中で、原子核の体積(大きさと形)が同位体交換反応に与える影響が「質量にかかわらない同位体効果」として着目されている。自然界に観測される同位体異常にこの効果が発現するかどうかについて議論したい。
  • 野村 雅夫, 藤井 靖彦
    セッションID: 1C16 07-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    同位体分離実験に現れる同位体分別を、質量依存同位体分別か非質量依存同位体分別かについて、化学交換反応系における各同位体の3アイソトーププロットの傾きを求め議論する。ウランについては既に酸化還元反応系における電子交換反応において、質量効果のみならず、体積効果の存在を見出している。今回Uを含めその他Ca, Fe, Ni, Pbについての傾きを求めた。
  • 阿部 穣里, 鈴木 達也, 藤井 靖彦, 波田 雅彦
    セッションID: 1C17 07-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    約半世紀の間、同位体分別の原因は、アイソトポマー間の分子振動準位の違いのみにあると信じられており、分別係数εは、同位体の質量にのみ依存すると考えられてきた。しかし1996年、核の体積差によってアイソトポマー間で電子状態が異なることに起因する、同位体分別の核の体積効果が主張された。現在では体積効果が、特に重元素における同位体分別の主要な駆動力になっていることが知られている。また核の体積効果は、質量数に非線形の応答を示す場合があり、質量非依存分別の原因になりうる。我々はこの核の体積効果について、理論計算から分別係数を見積もる手法を見出した。当日の発表ではウランの同位体分別を例に説明する。
  • 奈良岡 浩, ポールソン サイモン
    セッションID: 1C18 07-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    【はじめに】近年、地球大気の進化と関連して、イオウの質量に依らない同位体分別 (Mass-independent isotope fractionation of sulfur, MIF-S) が盛んに研究されている。32S, 33S, 34S, 36Sの4つの安定同位体を持つイオウは一般の化学反応では、δ33S=0.515δ34S, δ36S= 1.90δ34Sの関係を満たす。これらからの偏位Δ33S=δ33S-0.515δ34S, Δ36S=δ36S -1.90δ34Sで定義されたΔ33Sが±0.2‰, Δ36Sが±0.5‰以上の値のとき、一般にMIF-Sとみなされる。始生代堆積岩などに観測される大きなΔ33S値は当時の大気が遊離酸素を含んでおらず、短波長UVが地表付近に到達し、SO2がSOとOに分解後、不均化反応により分子イオウと硫酸になり、MIF-Sを生じたと解釈された (Farquhar et al., 2000など)。大きなMIF-Sは実験室内で184.9nmや193.2nmなどの紫外線分解によって得られており、始生代のδ34S-Δ33Sの分布から、UV分解の波長として193nm が強調されてきた(Farquhar et al., 2001)。昨年度、我々は32SO2, 33SO2, 34SO2, 36SO2の吸収断面積(cross section)を測定し、193.2nmにおける各アイソトポマー間のcross sectionの違いが、193.2nmレーザー照射実験におけるδ33S , δ34S , δ36S , Δ33S, Δ36Sの結果と一致しており、S-O結合のイオウの質量に強く依存した同位体分別異常であることを示した。【実験】本研究ではSO2の光反応によるMIF-Sの波長依存性を詳細に理解するために、SO2の酸素同位体の効果を検討した。32S (99.99%) と34S (99.90%) を3種類のO2 (99.7% in 16O, 97.6% in 18O, 52.0% in 18O) で6種類のSO2に変換し、185~330nm領域での吸収スペクトルを0.1nm幅で0.05nmステップで測定した。測定結果から32S16O2, 32S16O18O, 32S18O2, 34S16O2, 34S16O18O, 34S18O2のアイソトポマーのcross sectionをそれぞれ見積もった。【結果と考察】32Sと34S のいずれの場合も200nm付近において、S18O2置換体はS16O2に比較して約1.0nm、S16O18Oは約0.5nm長波長側に同位体シフトすることがわかった。酸素同位体置換体の同位体効果は非常に大きく、32SO2と 34SO2 の間のイオウ同位体の違いによるシフトよりも大きかった。とくにこの傾向は長波長側において顕著であり、220nm付近においてはイオウ同位体置換による同位体効果はほとんど違いが見られないのに対して、酸素同位体置換による長波長側への同位体シフトははっきり観測された。地球上におけるδ18Oは中低緯度の海洋表層水より極域氷床が約50‰まで軽く、生物の呼吸作用によっても大きく変動することが知られている。本研究の結果は地球表層における酸素同位体組成の変化がSO2の光反応を介して、イオウの異常な同位体分別を引き起こす可能性があることを示唆している。
  • ダニエラチェ セバスチアン
    セッションID: 1C19 07-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    Sulfur dioxide is one of the many trace gases present in the atmosphere. The photodissociation reaction by UV light initiates a complicated oxidation process which its final product sulfates and sulfuric acid form aerosols. Since the measurement of absolute absorption cross sections of isotopologues is a complicated task a dual beam spectrometer (DBS) was designed and built for the purpose of measuring ratio of absorption cross-sections of the isotopologues: 32SO2, 33SO2, 34SO2 and 36SO2 with high precision.
社会地球化学:人と安全
  • 中井 俊一, 佐藤 正教, 吉田 邦夫, 宮崎 ゆみ子, 宮腰 哲雄, 神谷 嘉美, 本多 貴之
    セッションID: 1C20 08-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    漆はウルシ属樹木が分泌する樹液を脱水などの処理をして得られ,塗料や接着剤として用いられてきた.現在,日本で使われている漆は大部分が中国,ベトナム産であり産地決定の必要性がある.また,縄文時代の遺跡から漆塗櫛,容器が出土していて,それらの産地を決めることができれば,時代による交易圏の変遷を考える手がかりになりうる.本研究では,市販の漆塗料や採取した漆液を用いて,Sr同位体比を産地決定に使うことができるか検討する.
  • 浅原 良浩, 南 雅代, 丸山 一平, 吉田 英一, 田中 剛
    セッションID: 1C21 08-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    社会基盤を支えるコンクリート構造物は、その長期耐久性が期待されている一方、早期劣化が大きな問題ともなっている。コンクリートの主な劣化要因のうち、中性化はすべてのコンクリート構造物に関わる現象である。中性化は、コンクリートのセメント水和物と大気の二酸化炭素が反応することにより進行することから、コンクリート中の炭素の挙動は組織あるいは物理強度の変化を直接反映すると考えられる。この組織劣化の指標として、その化学的定量性・感度から信頼性が高く、かつ反応時間の指標としても適用可能な放射性炭素14Cに着目する。本研究では、耐震改修工事の進む名古屋大学校舎を利用し、14C法によるコンクリートの約40年間の定量的劣化度評価の可能性を検討した。
  • 松本 恭平, 張 勁, 川本 詩織, 佐竹 洋, 稲村 修, 竹内 章
    セッションID: 1C22 08-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    本研究は、炭素・窒素安定同位体解析によるオオグチボヤの栄養源解明を目的とし、オオグチボヤと動物プランクトンの捕食-被食の関係について考察する。
    潜水艇により富山湾で撮影された映像を解析した。試料は、富山湾内、湾口、海洋深層水取水施設にてそれぞれ採取した動物プランクトン、魚津沖にて採取されたオオグチボヤを用い、炭素・窒素安定同位体比を測定した。
    映像解析により、オオグチボヤの個体レベルの分布やコロニーの分布様態にいくつかの共通点が見出され、地衡流のような海流による、恒久的な給餌作用の存在がオオグチボヤコロニー形成要因のひとつと考えられた。また、δ15N-δ13C分布より、入善や湾内の動物プランクトンの同位体比よりオオグチボヤの同位体比が上位に位置し、捕食-被食の関係にあることが示唆された。発表では、周辺環境と関連させて推察される富山湾オオグチボヤの栄養源について報告する。
  • 後藤 晶子, 高見澤 淳, 武蔵 正明, 中下 留美子, 鈴木 彌生子, 伊永 隆史
    セッションID: 1C23 08-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    生物組織でのδ13C、δ15N、δ18Oの解析は、生態学の分野で食物網の構造解析や食性解析に広く利用されてきた。動物組織中のδ13C、δ15Nは食物の情報を反映し、またδ18Oは、飲み水や生育環境(気温や湿度)に関する情報を有している。本研究では、国産、豪州産、米国産の牛肉に残されたこれらの安定同位体比の情報から、牛の生育地の相違が判別できるかを検討した。その結果、3カ国の牛肉のδ13C、δ15N、δ18Oの特徴からは、異なる国で肥育された牛肉の判別をおこなう際のツールとして、δ13Cとδ18Oが有効であることが明らかになった。また、国内の4地域で肥育された国産牛肉についての安定同位体比からは、δ18Oの相違が国産のブランド牛肉の産地を判別する指標となりうる可能性が示唆された。
宇宙化学:先太陽系史から初期太陽系円盤進化史
  • 大場 康弘, 渡部 直樹, 日高 宏, 香内 晃, ピロネロ バレリオ
    セッションID: 1D01 15-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    二酸化炭素は分子雲中星間塵アイスマントルの主要な構成成分であるが、気相反応によってその存在量を説明することができないため、その生成には塵表面での反応が重要だと考えられている。これまでの研究では、UVなどの外部エネルギーをH2OやCOなどを含む混合氷に照射してCO2生成が確認されてきたが、外部エネルギー無しにCO2が生成するかどうかは明らかにされていなかった。本講演では、100Kに冷却されたOHラジカルとCOの固体表面上での反応でCO2生成が確認されたので、その結果について報告する。
  • 小嶋 稔, 山田 明憲
    セッションID: 1D02 15-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    1973年Clayton等により発見されたCAIの酸素同位体比は、3-アイソトープ・プロット(d17O ミ d18O)上ほぼスロープが1.0の同位体分別直線に載る事で特徴付けられる。この極めて特徴的な同位体比異常の説明として現在最も広く流布している仮説は、一酸化炭素の自己遮蔽効果(CO self shielding,以下SS)である。我々はSS-仮説はスロープ≒1.0を説明出来ない事を示しSS仮説に代わる幾つかのプロセスを議論する。
  • 山田 明憲, 南部 伸孝, 笠井 康子, 小嶋 稔
    セッションID: 1D03 15-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    月表層の金属粒子中から∆17O=+25‰の大きな酸素同位体比異常が報告された[Ireland et al., 2006]が、その起源は不明である。Ozimaら[2008]は、この異常は高度300km程度の地球熱圏起源であると提案した。この仮説は量的には説明されたが、同位体比を検証する必要がある。そこで、紫外線による分子解離の断面積を第一原理計算から求め [Heller, 1978]、月表層の同位体比異常の説明を試みる。 酸素分子の振動励起状態は1200Kのボルツマン分布、セルフシールディングモデルに倣い量子収率を1、太陽は6000Kの黒体と仮定し、熱圏での光解離速度定数を求めた。熱圏の酸素の同位体比をSMOWとし、光解離した酸素原子は∆17O=+3.8‰の同位体比異常を得た。実際の熱圏は非局所平衡にあると考えられ、ボルツマン分布より上位の振動励起状態の密度が高く、同位体比異常はより大きい可能性がある。
  • 伊藤 正一, スティーブン サイモン, ローレンス グロスマン, 圦本 尚義
    セッションID: 1D04 15-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    Allende隕石中のGolfball typeB CAIは、岩石学的研究から、少なくとも2回の溶融イベントを経験していることがいわれている。本研究では、このCAIについて、溶融時期の異なるスピネル結晶及びメリライト結晶の酸素同位体組成とAl-Mg同位体組成を明らかにし、個々の液の形成時期とその酸素同位体組成の変化を評価することを試みた。スピネル結晶の酸素同位体組成は、deltaO-18で-50 から-40perimlに分布した。岩石学的特徴に対応してメリライト結晶の酸素同位体組成は、異なる分布を示し、ゲーレナイト成分に富むコア部は、deltaO-18で-20~-10permilに分布し、リム部で~0permilとなった。Al-Mg同位体組成も岩石学的特徴及び酸素同位体組成に対応して異なる2本のアイソクロンにそれぞれの結晶が分布し、コア部のゲーレナイト成分に富むメリライトは、26Al/27Al初生比で4.9±0.8 x 10-5、リム部のメリライトで1.9±1.2 x 10-5となり、その年代差は、約百万年となった。以上から、このCAIの形成過程について議論する。
  • 伊藤 元雄, メッセンジャー スコット
    セッションID: 1D05 15-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    We report high-precision Mg isotopic measurements in melilite, spinel and fassaite in an Allende CAI by a NanoSIMS 50L with 4 Faraday cups in meltidetection in order to evaluate the chronology and thermal history of CAIs in the early solar system. We found an initial 26Al/27Al ratio of 4.67 (± 0.22, 2σ) x 10-5 and δ26Mg intercept of 0.18 (± 0.05, 2σ) ‰. We calculated an initial cooling rate for the CAI at 1450C using Mg diffusion kinetics in spinel. An initial cooling rate of at least 0.5 to 11C/h at 1450C is required to preserve the original 26Mg* in spinel through the formation process.
  • 山下 勝行, 山川 茜, 丸山 誠史, 牧嶋 昭夫, 中村 栄三
    セッションID: 1D06 15-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    Mn-Cr年代測定法は初期太陽系物質の年代を精度良く求めることのできる手法として注目されている。しかしMn-Cr年代を絶対年代に置き換えるためには絶対年代と53Mn/55Mn初生比の両方が精度良く求められた「基準点(anchor)」が必要である。本研究では正確なU-Pb年代が報告されているCBコンドライトGujbaのコンドリュールとメタルスフェリュールのCr同位体分析を行ったのでその結果について報告する。
  • 横山 哲也, Alexander Conel, Walker Richard
    セッションID: 1D07 15-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    始原的隕石から抽出した耐酸性残渣、および隕石全岩を段階的に酸処理して得られた溶離液に対し、高精度Os同位体分析をTIMSにより行った。また、隕石全岩の同位体分析も行った。隕石全岩はコンドライトの種類によらず、均質かつ地球試料と一致するOs同位体組成を持つことが明らかとなった。一方、ほとんどの耐酸性残渣はプレソーラーSiCに由来する、s-過程で合成されたOsに富む同位体異常を持つ。隕石にはこの他にもs-過程およびp-過程の異常を示す要素があり、赤色巨星またはAGB星起源のプレソーラーケイ酸塩がその担体である可能性が高い。s-過程異常のカウンターパートとして、隕石中にはr-過程Osの異常が存在するが、その担体としては超新星爆発起源のプレソーラーケイ酸塩が示唆される。
惑星・衛星・小惑星の宇宙化学
  • 山内 祐司, 中村 智樹, 𡈽山 明, 野口 高明
    セッションID: 1D08 17-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    南極とっつき岬で回収された宇宙塵の物質科学的特徴を明らかにし、酸素同位体組成を測定することで小惑星や彗星、および隕石との関連を明らかにすることを目的とした。100ミクロン以下のサイズの宇宙塵試料では約1%の存在度で発見される層状ケイ酸塩を含む試料は、本研究で分析した大きなサイズの宇宙塵からは見つからなかった。しかし鉱物組成等から、溶融度の低い試料の多くは層状ケイ酸塩が脱水分解した物質で構成され、含水天体起源であることがわかった。
  • 藤村 彰夫, 安部 正真, 矢田 達, 田中 智, 加藤 學, はやぶさ試料初期 分析チーム
    セッションID: 1D09 17-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    宇宙航空研究開発機構に設置された惑星物質試料受け入れ設備(キュレーション設備)は今後の種々のサンプルリターンに対応したものであるが、直近の2010年6月の小惑星探査機「はやぶさ」によるサンプルリターンに備え、設備の機能性能を確認する試験運用を実施した。今回の試験運用で、はやぶさ試料の受け入れ、試料カプセルの開封、試料の取り出しと保管、秤量や分配の手順確認ができた。現時点でクリーンチャンバー内では取り扱うことができない微小なサイズの試料についてのハンドリングを可能にする対応についても今後検討すると共に、直近に迫っている「はやぶさ」試料帰還に備えて、リハーサル運用を実施する予定である。
  • 岡崎 隆司, 中村 智樹
    セッションID: 1D10 17-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    エンスタタイト(E)コンドライトの始原物質とEコンドライト天体の進化過程を解明するため、EH3, EH4, EL4コンドライト中のマトリックスおよびコンドリュールリムを調べた。その結果、マトリックスおよびコンドリュールリムは20ミクロン以下の細粒のenstatite、troilite、FeNi metal、SiO2、graphite、niningerite から構成されている。これらの物質のサイズや構成鉱物は同一EH3隕石内でも変化に富み、一部は衝突加熱により生成した物質と接している。このことは、母天体集積以前に衝突加熱を経験した物質と始原物質とが再集積しEコンドライト天体を構築した事を示唆している。
  • 森下 和彦, 奈良 雅之, 甘利 幸子, 松田 准一
    セッションID: 1D11 17-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    様々な隕石中には、始源的な重い希ガスの大部分を担っているQと呼ばれる相がある。酸化剤で処理をするとQガスが放出されることから、Qは炭素質物質であることが定説となっている。最近の研究(Marrocchi et al. 2005)ではHF/HCl処理後のOrgueilをピリジン処理することで、Qガスが抜けるという結果を得ているが詳しい構造は謎のままである。本研究では、顕微ラマン分光法を用いて、Orgueil(CI)・Allende(CV3)・Saratov(L4)のスペクトルパラメータを評価した。Qガスを含むサンプルと、酸化剤・ピリジン処理後のQを含まないサンプルを比較して、どのような違いが見られるかを検証した。Orgueilのピリジン処理前と後のデータではほとんど変化が見られない。ピリジン処理によってaromaticな構造が変化していないことを示唆していると考えられる。一方、酸化剤処理前後では大きく違ったところにプロットされる。AllendeとSaratovの変化の共通点として、G-bandとD-bandのピークの位置が酸化処理後に高波数方向に変化するということが挙げられる。
  • 松田 伸太郎, 中嶋 大輔, 長尾 敬介
    セッションID: 1D12 17-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
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    普通コンドライトMoorabie (L3.5 – 3.8) は段階加熱法による希ガス同位体分析により、Qガスと共にQガスとは異なる元素組成を持つ捕獲成分 (sub-Q) を保持していることが報告されている。レーザーを用いた局所的希ガス同位体分析を行い、マトリックス部からsub-Q、黒色包有物から高濃度のQガスを検出した。レーザー抽出法を用いることで、段階加熱や化学処理をすること無しに、異なる捕獲成分希ガスを個別に抽出でき、さらに捕獲部位の特定も可能である。
  • 藤谷 渉, 杉浦 直治, 市村 康治, 高畑 直人, 佐野 有司
    セッションID: 1D13 17-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    炭素質コンドライト中にはマンガン・クロムの年代測定を適用できる炭酸塩が含まれていることがある。先行研究では、イオンプローブによる分析の際に適切な標準試料が用いられてこなかったため、得られた炭酸塩の形成年代が必ずしも他の年代測定で得られた結果と調和ではない。本研究では、マンガンとクロムを添加したカルサイトを合成し、マンガン、クロムの相対感度係数の評価を行った。その結果、先行研究で得られた形成年代よりも約三百万年若い年代が得られた。
  • 寺田 健太郎
    セッションID: 1D14 17-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    太陽系46億年の歴史において、天体と天体の衝突による惑星物質の破砕・角礫化は普遍的かつ頻繁に起こっていた天体現象と考えられている。最近では、始原的隕石中に分化したエイコンドリティック的なクラストが散在するサンプルも多数報告されており、微惑星形成時の複雑なプロセス(衝突・破砕・最集積)を如実に物語っている。本研究では、LLコンドライト角礫岩Adzhi-Bogdo(LL3-LL6)隕石中に含まれる花崗岩質クラストの年代分析の結果について報告する。SHRIMPにより得られたPb-Pbモデル年代は45.3±0.3億年を示し、太陽系創成期に、花崗岩を形成するメカニズムが微惑星上に存在した事を示唆する。
  • 横山 隆臣, 内山 嘉子, 平田 岳史
    セッションID: 1D15 17-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    ハフニウムータングステン(Hf-W)年代測定法を用いてこれまでに様々な隕石、地球化学試料に対してHf-W年代測定の決定が試みられているが、金属相-ケイ酸塩相間でのWの分配係数は圧力や酸素分圧、周囲のケイ酸塩相の組成(nbo値)等によって大きく変動することが知られており、Hf-W年代がどのような宇宙化学的プロセスを反映したものかを判断するのは単純ではない。分析により得られたHf-W年代の信頼性を高め、宇宙化学的意味を明らかにするためには、試料中でのHf、Wの分配挙動を正確に把握する必要がある。本研究では、HfとWの金属相―ケイ酸塩相間での分配挙動を調べる目的で、パラサイト(pallasite)石鉄隕石に注目し、金属相およびオリビン相中での両元素の分布状態(均一性)や分配係数の決定を行った。本研究では、金属質試料中の微量元素分析を行うため、フェムト秒レーザーアブレーション-ICP質量分析法(fs-LA-ICPMS)を用いた。
  • 楠野 葉瑠香, 福岡 孝昭, 小島 秀康, 松崎 浩之
    セッションID: 1D16 17-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    本研究の最終的な目的は、隕石が定常的に落下したか、ある時期に集中して落下したかを知り、隕石の落下数の時間変化をみることである。これまでに落下年代を求めることを目的に、南極やまとHED隕石について26Al含有量を測定した。しかし、隕石は大気圏突入時や地表面に衝突したときにいくつかに壊れることがある。従って、実際に隕石が落下した回数は採集された数よりもずっと少ないと考えられる。本研究では隕石が落下した数の時間変化をみることを最終目的としているので、落下年代を求めた隕石試料についてペアリングを行い、落下した回数を知る必要がある。ペアリングとは、本来一つの隕石として地球に突入したときに複数に壊れたもの同士を同定することである。ここでは47個の南極やまとHED隕石について、26Al含有量と新たに分析した主成分化学組成によるペアリングを行ったので、報告する。
  • ウィー シオン, 山口 亮, 海老原 充
    セッションID: 1D17 17-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    This study aims to characterize three howardites and three polymict eucrites based on rare earth and other trace element abundances. It is also aimed to identify possible carrier phase(s) of siderophile elements in polymict breccias and discuss their origin. Howardites (Y-7308 and Y-791573) and polymict eucrites (Y-75015, Y-74450 and Y792769) show lower siderophile pattern than those for Kapoeta but higher abundance than those in monomict eucrites. Their siderophile elemental ratios are non-chondritic, suggesting non-chondritic materials as projectiles (e.g., iron meteorites). This is consistent with our previous study that polymict eucrites contain a variety of non-chondritic projectiles. The current study implies that the HED parent body experienced multiple impacts of chemically variable projectiles.
  • 日高 義浩, 山口 亮, 海老原 充
    セッションID: 1D18 17-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    Dhofar 1428 隕石は研究例の少ない月高地隕石の一つであり、隕石のタイプや全岩化学組成などの、岩石学的、地球化学的な特徴がはっきりしていない。そのため、今回の研究では、放射化分析によってDhofar 1428 の全岩化学組成を決定し、さらに薄片の観察を行ってクラストの組成を測ることによって、この隕石の岩石学的、地球化学的特徴を明らかにし、隕石を特徴づけることを目的とした。Dhofar 1428 隕石の化学組成からは、FANを主成分とすること、液相濃集元素にFAN以外の物質の混入の影響が見られることがわかり、薄片の観察において、KREEPy な岩石片が見つかったことから、この隕石がKREEPの影響ががあった地域を起源としていることが考えられる。
  • 田中 智, 飯島 祐一, 大嶽 久志, 木村 淳, 倉本 圭, 三谷 烈史, 小川 和律
    セッションID: 1D19 17-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    本年6月に運用を終了した月周回衛星「かぐや」に続く月探査計画として,JAXAでは月惑星への着陸および移動探査技術の獲得を主目的としたSELENE-2 計画を検討している.本計画は 1) 着陸・移動・長期滞在技術の開発と実証,2) その場観測による月表面物質の科学探査と月の利用可能性調査,3) 国際貢献と国際的地位の確保,をコンセプトとし,2010 年代半ばまでの打ち上げを目指す.本講演ではSELENE-2の科学目標や科学搭載機器についての現在の検討状況と,今後の予定について報告する.
  • 橘 省吾, 宮本 英昭, 杉田 精司, 三浦 弥生, 長尾 敬介, 三河内 岳, 岡崎 隆司, 下司 信夫
    セッションID: 1D20 17-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    2010年代後半に日本による火星複合探査の実施が計画されている.MELOS (Mars Exploration with Lander-Orbiter Synergy)とよばれるこの計画では,周回機による気象探査・大気散逸探査や着陸機による固体惑星探査をおこなうことが検討されている.着陸機探査に重点をおいて,MELOS計画の概要,科学的意義,検討状況を紹介する.
  • 三浦 弥生, 橘 省吾, 長尾 敬介, 岡崎 隆司, 三河内 岳, 下司 信夫
    セッションID: 1D21 17-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    2010年後半の打ち上げを目指す火星複合探査の検討がスタートしている。この探査計画では、着陸機や周回機に観測装置を搭載し火星の大気散逸、気象、表層、内部構造に関する様々な問題の解明に取り組む。我々は、地球化学・地質学・鉱物学的研究を行うための質量分析計を着陸機に搭載すること、および次のような科学目標を提案している:(1)火星下層大気の希ガス同位体分析から火星大気進化を明らかにする、(2)大気組成の季節変化からCO2, H2O等の地表物質とのやり取りやその素過程を調べる、(3)火成岩K-Ar年代測定から火山活動や脱ガス史の制約を与える、(4)地表ダスト成分分析・同位体分析により大気-地表相互作用や環境変動を解明する。これらの科学的意義や検討状況について報告を行う。
水圏環境地球化学
  • 五味 伸行, 鹿園 直建
    セッションID: 1E01 06-01
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年ミネラルウォーターへの関心が高まっている。現在ペットボトルによる販売と共に、ポット型やカートリッジ型のミネラル浄水器が多く販売されている。それらの多くは水-岩石反応を用いたものであるが、今回我々はよりミネラルを効果的に水に含ませる水-岩石反応の方法を地球化学の視点から考えることにした。ミネラルウォーターの元は雨水である。雨水が地下に染み込み岩石と反応していくことで岩石にふくまれるミネラルが水に溶け込むと考えられる。ここで風化しやすい長石と雨水との反応で、カオリナイトが生成する反応を考える。この場合、二酸化炭素が過剰にあるとNa+やCa2+といった成分が岩石から溶出し水に多く含まれることがわかる。このことから二酸化炭素圧入下での水-岩石反応を用いることでより効果的にミネラルウォーターの水質を調整することを考えた。
  • 傅 磊, 寺門 靖高
    セッションID: 1E02 06-02
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    炭酸塩鉱物は地球上に多量に存在しており、その中の希土類元素(REE:Rare Earth Elements)は生成時の環境に関する情報を保持している可能性がある。しかし、分配を規定する因子は数多く存在し、多くの研究者が単純な系を用いてそれぞれの因子が分配に与える影響を検討してきたが、従来の方法は天然物の生成条件とかなり異なっていた。 今回蒸発濃縮法(Terakado and Taniguchi, 2006)を用いて、アラゴナイトを生成し、REEの固∙液間での分配を検討した。
  • 久保 薫, 寺門 靖高
    セッションID: 1E03 06-03
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    河川水の溶存成分については古くから研究が行われている。しかし、河川の上流から下流へどのように溶存成分が変化するかについてはあまり研究されていない。過去、Ogata and Terakado(2006)により、武庫川(兵庫県)の河口付近では希土類パターンにおいて軽希土に比べ、重希土が2桁ほど高くなるという特徴的なデータが報告されている。しかし、その原因は解明されていない。そこで本研究では武庫川を対象に溶存成分濃度の変化を調べると共に、武庫川下流で採取した土壌を用いて溶出実験を行い、武庫川における重希土濃縮の成因を考察した。
    武庫川の希土類元素濃度を珪長質岩で規格化した希土類パターンは上流ではほぼフラットだが、下流になるにつれ、重希土濃度が高くなり、重希土の濃縮したパターンとなった。土壌と蒸留水を用いて行った溶出実験の溶出液は武庫川の上流と似たフラットなパターンであった。
  • 田中 佑樹, 鹿園 直建
    セッションID: 1E04 06-04
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    日本の河川水の研究において、岩石及び堆積物と水質の関係について調査を行っている研究例はほぼない。そのため、本研究では、大井川と天竜川を対象として、主として水-岩石反応の点から、大井川・天竜川の水質を比較・検討した。大井川・天竜川は静岡県を流れる大きな河川であり、この大井川・天竜川の間には中央構造線が走っている。中央構造線とは西南日本の北側と南側の境界をなす日本最大級の構造線であり、中央構造線を境界として大きく地質が異なる。このため、大井川・天竜川の地質が大きく異なり、存在する岩石・堆積物も異なり、水質にも違いが出ると考えられる。
  • 丹下 佑芙子, 成田 尚史
    セッションID: 1E05 06-05
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    愛媛県西条市地下水水質および生物化学的プロセスの検討結果を, 地下水の流動との関連で報告する.試料は,家庭の井戸や自噴井, また, 涵養源と考えられる主要河川の河川水を高度別に採取し,水温,電気伝導度, DO,pH,栄養塩,アルカリ度,全炭酸,主要イオンの計測・分析を行った.その結果,加茂川水系渓流水は高度低下に伴い酸素の取り込みと風化による栄養塩等の濃度上昇が見られた.また平野部では風化の影響の地域的な違いが,海岸部では好気呼吸に加え, 嫌気的呼吸の影響を受けた地下水の混合が見られた.また山間部での過剰施肥による地下水の硝酸濃度の増加が風化過程を含めて陸域の二酸化炭素収支にも影響を与える可能性が示唆された.
  • 大橋 克俊, 寺門 靖高
    セッションID: 1E06 06-06
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    西宮にはリン濃度が極めて高く,鉄濃度が低い「宮水」と呼ばれる特徴的な地下水が存在する。宮水は酒造りに適した水とされており地下水の資源としての重要性は高い。宮水の成因は古代入海時代の堆積物中のプランクトン又は海藻の溶解によるものと説明されている(e.g,Sumikawa,1990)。しかし,宮水が局所的に存在することや,各成分の挙動の違いなど未だに理解されていない点がある。神戸市東部は宮水地域と同じように六甲花崗岩に由来する堆積物から成り立っている。そこで神戸市東部の地下水,湧水,河川水中の主成分及び希土類をそれぞれ分析し,それらのデータと西宮地域のデータ(e.g,Otuka and Terakado,2003)の比較により,宮水及びそれ以外の地下水の成因について検討する。
  • 鈴木 庸平, 福田 朱里, 幸塚 麻理子, 石村 豊穂, 天野 由紀, 萩原 大樹, 角皆 潤, 水野 崇
    セッションID: 1E07 06-07
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    地下深部の化学環境とその長期的変遷は,水理地質構造とそれに依存する地下水流動状態,岩石と地下水との反応や微生物による生物化学的反応などにより支配されると考えられる.地下深部を対象とした研究では,高品質の岩石および地下水試料を取得することが難しく,原位置における化学環境を把握することが難しかった.しかし,近年では,試料採取時の品質管理手法が確立されつつあり,高品質の岩石および地下水試料を入手する機会が世界中で増加しており,原位置での化学環境を正確に把握することが可能になりつつある. 我が国の陸域でも深地層の研究施設 (URL) が建設されており, 高品質の岩石および地下水試料を採取する事が可能である. 地下微生物は巨大なバイオマスとして認識されてから日がまだ浅く, 地下深部という極限環境にどのように適応してライフサイクルを営んでいるかについての知見は乏しいのが現状である. 地下空間利用の観点からも, 微生物が地下環境の人為的な擾乱に対して, どのようにレスポンスして生態を変化させるかは, 興味深い研究対象である. また, 微生物の代謝活動はナノスケールの産物を媒体として, 物質循環に影響を及ぼすと幅広く認識されるが, 地下深部での実態は明らかでない. 本研究では, 岐阜県瑞浪市で建設中の瑞浪超深地層研究所において採取された高品質の地下水試料および岩石コアを用いて, 微生物が関与するナノスケールでの現象を理解するための研究を行い, 2008年度は地上から掘削されたボーリング孔(MIZ-1号孔:掘削長約1300m)を対象に,深度約1150メートルの花崗岩体から採取された地下水試料を重点的に調査した. 基本水質測定, 溶存ガス成分の安定同位体組成と濃度測定, 微生物群集構造解析, 微生物代謝活性測定等に加えて, NanoSIMS,原子間力顕微鏡を組み合わせた微生物・ナノ粒子複合体を捉えるための分析および観察を実施した. 結果の概要として, 1)塩化物イオン濃度が海水の10分の1程度の深層地下水は, 電子供与体として約1 mMの生成起源不明のメタン(δ13C = -25.9‰)と溶存有機物を1.2 ppm含み, 二酸化炭素以外の主要な電子受容体に乏しいこと, 2)全菌数は50000細胞/mlでDNAに基づく群集構造解析の結果, 難分解性の芳香族炭化水素をエネルギー源にするThauera属の微生物が優占すること, 3) ナノスケールの鉄・シリカを含有する粒子に微生物細胞が共存していることが明らかになった. 本研究で得られた成果の意義を議論すると共に, 硫酸還元微生物代謝活性を対象とした34S硫酸のラベル実験とNanoSIMS分析を組み合わせた新規手法の開発についても紹介する. なお, 本研究は原子力安全・保安院からの委託業務である「平成20年度地層処分に係る地質情報データの整備」の一環として実施した.
  • 谷 幸則, 宮田 直幸
    セッションID: 1E08 06-08
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    真菌によるマンガン酸化物形成とそれを応用したレアメタルをはじめとした元素回収について演者らの研究結果を中心に概論する。
  • 田中 万也, 谷 幸則, 大貫 敏彦
    セッションID: 1E09 06-09
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    Mn酸化真菌KR21-2株を用いてCe(III)酸化機構に関する研究を行った。KR21-2株により形成したMn酸化物と10 mM NaCl水溶液の間の希土類元素分配実験を行った結果、pHが低い条件では分配係数パターンに大きな正のCe異常が認められMn酸化物によりCe(III)が酸化されることが明らかとなった。しかし、pHが中性付近では分配パターンに負のCe異常が認められ、Ce(III)酸化過程におけるKR21-2株の菌糸体による何らかの寄与が示唆された。
  • 原 直樹, 小豆川 勝見, 松尾 基之
    セッションID: 1E10 06-10
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    東京湾に多く存在する干潟は、生物生産や水質の浄化において大きな役割を果たしているが、物質収支等のメカニズムは非常に複雑であり、要素毎の影響を評価することは容易ではない。よって本研究では、東京湾内の幾つかの干潟について、底質中の元素の定量値に統計的処理を用いることで、元素の挙動の特徴を見出すことを研究の目的とした。
    干潟底質はコアサンプラーで採取したものを深さ方向に3cmごとにカットし、加圧ろ過を行った後、フリーズドライした。得られた乾燥試料について、機器中性子放射化分析と即発γ線分析を用いて多元素の定量分析を行った。定量値はクラスター分析等の統計的手法を用いて解析し、深度別、元素別に分類を行い、酸化還元電位等との相関について考察を行った。その結果、クラスター分析を適用することで、干潟底質について特徴的な元素の挙動を分類できることが示唆された。
  • 岩根 健太, 鹿園 直建
    セッションID: 1E11 06-11
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    千葉県北部に位置する手賀沼は、都市化の進行により水質汚濁が進み、富栄養化が問題となっている。各種施策により、水質は改善されつつあるが、依然として汚濁は著しく、さらなる水質改善が急務である。特に手賀沼のような浅い富栄養湖では底泥からの栄養塩の溶出効果を無視できないという問題がある。本研究では栄養塩のうちリンに特化し、以下の2点を目的とした。1.底泥からの栄養塩溶出・沈殿実験を、リンを多く含む大堀川(手賀沼流入河川の一つ)の水で行い、リンの溶出と吸着・沈殿の挙動を確認すること、2.各種リン化合物の飽和指数や堆積物中のリン化合物の同定により、リンの溶出、吸着、沈殿に関する詳細を知ること。
  • 益田 晴恵, 篠田 圭司, 野口 直樹, 奥平 敬元, セディキ アシュラフ アリ
    セッションID: 1E12 06-12
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    バングラデシュ・ショナルガオ地域のヒ素汚染地下水帯水層堆積物中の黒雲母と緑泥石を,SPring-8においてマイクロビーム蛍光エックス線分析を用いて分析を行った。 黒雲母には,ヒ素はごく微量にしか含まれていなかったが,緑泥石中には普遍的にヒ素が分布していることを確認した。ヒ素を主成分とする硫ヒ鉄鉱などとのX線強度の比較から,濃度は数十~数百ppmと推定される。一方,ヒ素を含む緑泥石にはサブミクロンオーダーの大きさ針鉄鉱が含まれていることが確認された。現段階では,ヒ素の全量が緑泥石中にあるのか,針鉄鉱にも含まれているのかは明らかでない。しかし,定説で原因物質とされている風化生成物であるヒ素を吸着した酸水酸化鉄ではなく,砕屑性の緑泥石がヒ素の担体として重要であることは明らかである。このことは,ヒ素汚染地下水の形成機構を説明する上で,定説の見直しをせまるものである。
  • 石橋 拓也, 板井 啓明, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1E13 06-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    近年天然由来ヒ素による地下水汚染が世界各地で報告されており、水圏における環境問題の一つとして注目されている。ヒ素汚染地域であるバングラデシュでは、国土の半分以上の井戸水のヒ素濃度がWHOの定める(10 μg/L)を超過し、かつ濃度の空間的なばらつきが大きいという特徴がある。我々のグループの調査地域であるバングラデシュ南西部ジョソール県シャムタ村においても1 km2範囲内の地下水ヒ素濃度は< 1 - 1200 μg/Lという大きな濃度幅をもつことが明らかとなった。我々は吸着平衡の重要性に着目し、吸着実験を行い、固液間の亜ヒ酸の見かけの分配係数から、調査地域における大きな濃度幅が吸着平衡と調和的であるかを考察した。
  • 板井 啓明, 石橋 拓也, 高橋 嘉夫
    セッションID: 1E14 06-14
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/09/01
    会議録・要旨集 フリー
    Bangladeshおよびインド西ベンガル地域は、世界最大の地下水ヒ素汚染地域として知られている。この地域の汚染は、ヒ素の明確な人為的供給源が認められず、自然の物質循環プロセスで発生していると考えられている。本講演では、バングラデシュ国内の2地域(ショナルガオ、シャムタ)における研究結果を基に、地下水中のヒ素濃度が同程度であっても異なる汚染機構が存在することを示し、汚染機構の違いが地下水中のヒ素の時空間分布に与える影響について考察する。
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