日本地球化学会年会要旨集
2013年度日本地球化学会第60回年会講演要旨集
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G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
  • 酒井 遥
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3P05
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    2011年3月、東北地方太平洋沖地震に起因する津波により福島第一原子力発電所で水素爆発が起こり、放射性物質による土壌汚染が深刻な問題となっている。半減期・総放出量の関係から、この放射能汚染の主な原因はセシウムであることが報告されている。山科・福士(2013)では、スメクタイトにおける様々な陽イオンを用いたCs?脱離実験が行われた。その結果、K以外に関しては、それぞれの陽イオン種によるセシウム溶出挙動はシンプルな陽イオン交換モデルの適用により定量的に予測できることが示された。天然水はさまざまな陽イオンのミクスチャーである。したがって、個々の陽イオンから得られた結果を複数の陽イオン混合系への適用できるかどうかは検証される必要がある。本研究では、陽イオン混合溶液による微量のセシウムを保持したスメクタイトからのセシウム溶出挙動を室内実験から検討し、モデルの適用性について議論する。
  • 苅部 甚一, 田中 敦, 柴田 康行
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3P06
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    福島第一原子力発電所事故に由来する放射性ストロンチウムの環境汚染実態の解明はセシウムに比べて遅れている.その原因として,分析法の難しさもあると思われる.そこで本研究では,以前から行われている放射性ストロンチウム分析法(文部科学省 2003)を元に,新たにクラウンエーテル処理等を用いることで,その分析法の簡略化を検討した.その結果,検討した手法を放射性ストロンチウム分析に組み入れることで,従来法に比べて使用する試薬の種類と量,処理工程の数を削減できる可能性があることが分かった.今後は,放射性核種分離の観点からの評価が必要である.
  • 神林 翔太, 張 勁, 成田 尚史
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3P07
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    東京電力福島第一原子力発電所事故により大気中へ飛散した放射性Csの多くは土壌中の粘土鉱物等に強く吸着され,その大部分は脱離が難しく安定な状態で環境中に存在している。そのため,放射性Csは環境中において粒子態として挙動を支配する。陸上に堆積している放射性Csは今後,河川や降雨等の際に流れる地表流等を通じ最終的には海洋へ移行していくと考えられている。そのため,放射性Csの輸送実態を明らかにするためには海洋への流入部である河口-沿岸域における放射性Csの輸送過程を明らかにする必要がある。本研究では放射性Csの輸送実態を把握するため,河口-沿岸域本研究では塩分勾配や潮汐の変動があり,河口-沿岸域のミニチュア版と見なすことが可能である福島県相馬市に位置する松川浦を河口-沿岸のモデル域として,Cs吸脱着過程を把握し,河川-汽水域-海洋の系における放射性物質の輸送実態を明らかにすることを目的としている。
  • 越川 昌美, 伊藤 祥子, 渡邊 未来, 錦織 達啓, 村田 智吉, 高松 武次郎, 林 誠二
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3P08
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    東京電力福島第一原発事故によって放出され沈着した放射性セシウムの森林生態系における動態を把握することを目的として、茨城県筑波山で採取した森林土壌について、交換態の放射性セシウムを分析した。抽出剤として、1M 硝酸アンモニウム、1M 硝酸アンモニウムと0.1M 塩化セシウムの混合溶液、0.1M 硝酸カリウムの3種を選び、土壌中の交換態放射性セシウムをバッチ抽出実験における抽出され易さに基づいて分画することを試みた。
  • 佐藤 志彦, 末木 啓介, 笹 公和, 大竹 良徳, 国分 宏城
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3P09
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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     福島第一原発事故では大量の137Csが放出した.137Csは長期間、周辺環境に放射線被ばくの影響を与えるだけでなく、時間とともに移行することが指摘されており、長年に渡り監視を続ける必要がある.しかしながら移行過程初期における137Csの土壌中の吸着形態に関する情報は、まだ十分とは言えない.そこで本研究では、福島事故由来の137Csで汚染した隣接する水田と畑の土壌に複数の化学処理を行い、処理後の137Cs残留量やオートラジオグラフィー像を比較することで、土壌における吸着形態の解明を試みた.結果、137Csのうち水田では容易に脱着されやすい表面吸着分が少なかった.一方、畑はこれらが多く含まれ陽イオン交換で25%程度が取り除かれた.また最後まで残留した137Csは粒状の大強度集積体である可能性が示唆された.本発表ではより詳細な検証結果を紹介する.
  • 福田 美保, 青野 辰雄, 吉田 聡, 本多 牧生, 川上 創, 才野 敏郎
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3P10
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    2011年3月11日の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により放射性物質が海洋環境へ付加され、北太平洋に拡散した。本研究では、北西部北太平洋における海水中の放射性セシウム(Cs-134及びCs-137)の測定を行い、濃度分布や変化量を明らかにとした。その結果、表層海水中の放射性セシウム濃度は年ごとに減少する傾向にあるが、海域によっては表層から沈み込んだ放射性セシウムが中層に滞留していることが明らかとなった。
  • 熊本 雄一郎, 村田 昌彦, 河野 健, 青山 道夫
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G18 原発事故で放出された放射性核種の環境動態
    セッションID: 3P11
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    2012年1-2月にFNPP1から500km以上離れた北西部太平洋において、海水中の溶存放射性セシウム濃度を測定した。亜寒帯(親潮海域)及び親潮続流と黒潮続流に挟まれた混合海域においては、冬季混合層(表面-深度200m程度)中でCs-134濃度が高く、混合層以深ではその濃度は急速に低下していた。Cs-134の鉛直積算量を比較すると、亜寒帯(親潮海域)のそれは混合海域のそれに比べて20%以下であった。一方で、黒潮続流以南の亜熱帯の観測点では、冬季混合層中のCs-134濃度は低濃度であったが、混合層直下の深度200-300mにおいてCs-134の極大が観測された。
G5 海洋における微量元素・同位体
  • 肆矢 俊浩, 大野 剛, 下田 玄, 後藤 孝介, 村松 康行
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G5 海洋における微量元素・同位体
    セッションID: 3P12
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    新たな環境解析指標を開発することを目標に、模擬海水から無機的に炭酸塩鉱物を生成させ、微量元素濃度や水温の変化が生成物である炭酸塩の結晶構造、微量元素組成、ストロンチウムの同位体分別係数に与える影響を調べた。本研究では模擬海水の化学組成を制御することにより、純粋な結晶を得ることを試みた。1LビーカーにNaHCO3、CaCl2、MgCl2、SrCl2、BaCl2の溶液を用い、それぞれの濃度を変化させた模擬海水を出発物質とした。ストロンチウムの同位体分別係数には、結晶構造による違いが見られなかったが、温度が低いほど同位体分別係数が大きくなる結果が得られた。
  • 石田 大也, 林 誠司, 山本 鋼志
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G5 海洋における微量元素・同位体
    セッションID: 3P13
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    潮間帯には、 海洋生物が生息していると言われており、生物の多様性を維持する上で非常に重要な場である。潮間帯の生態系の保全のためには、潮間帯汚染監視が不可欠です。そこで、長期的かつ安定した海洋汚染監視が可能な手法として、生物濃縮を利用した手法を用いる。本研究では、広範囲に分布するアサリに着目し、アサリと周辺堆積物の有害金属元素に関してどのような関係があるのかを明らかにし、アサリの生物指標としての可能性を検討する。
G13 海洋化学・大気水圏(全般)
  • 江本 真理子, 赤木 右, 高橋 孝三
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 海洋化学・大気水圏(全般)
    セッションID: 3P14
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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     海洋における鉛直方向の物質輸送は粒子状物質の沈降によって行われており、沈降中の粒子-海水間の元素交換が海水中の溶存成分の濃度に大きく影響する。海洋における生物生産の半分以上を占めているケイ藻はそのフラックスが大きいにもかかわらず、物質循環における役割はあまり理解されていない。ベーリング海のセディメントトラップ試料を用いて変質の影響の少ないケイ藻オパールの化学組成を推定した。得られた観測結果をもとに、元素が海水に溶解し水柱から除去されるまでの挙動をアルミノシリケイト、ケイ藻オパール、溶存態、酸化物の四つのボックスからなるボックスモデルを使って解析した。
  • 安中 さやか, 野尻 幸宏, 中岡 慎一郎, 小埜 恒夫, Frank A. Whitney
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 海洋化学・大気水圏(全般)
    セッションID: 3P15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    国立環境研究所とカナダ海洋科学研究所による定期貨物船を利用した栄養塩観測の結果およびPACIFICAに収録されている栄養塩ボトル観測のうち、深度5-15mのものと、海面水温、海面塩分、クロロフィルa濃度、混合層深度から作成した自己組織化マップを用いて、2001年1月から2010年12月の北太平洋表層栄養塩濃度の推定を行った。推定値と観測値のRMSDは、リン酸塩濃度で0.16umol/l、硝酸塩濃度で1.9umol/l、ケイ酸塩濃度で3.5umol/lであった。冬から夏にかけての濃度低下の地域的な違いや要素による違いも、過去の海洋定点での報告結果と一致する特徴を再現していた。一方、栄養塩濃度の年々変動は、北太平洋の気候場において最も卓越する変動である北太平洋10年規模変動(PDO)と関連していることが分かった。
  • 鶴島 修夫, 紀本 英志, 木下 勝元, 江頭 毅, 野尻 幸宏, 磯野 良介, 林 正裕, 山本 雄三, 諏訪 僚太, 播本 孝史, 後藤 ...
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 海洋化学・大気水圏(全般)
    セッションID: 3P16
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    室内環境のモニタリング用に市販されている小型かつ安価なNDIRセンサーモジュールを用いて、小型・可搬型の海洋二酸化炭素分圧測定装置を試作した。NDIRモジュールには、センスエア社のCO2Engine-K30を使用した。気体透過膜気液平衡器には、ゴアテックスチューブ(外径4mm、内径3mm、長さ2m)を使用した。小型CO2計の実海水を使った評価試験として、基準器と同時に同じ海水を測定して比較する並行試験を行った。 各条件で数日間の測定を行った結果、海水温が比較的安定な海域であれば、温度調整なしで間欠運転を行うことで電力消費を抑えながら、長期モニタリングが可能であることが示された。
G16 地球化学の人文科学への応用
J3 炭酸塩の地球化学
  • 甕 聡子, 永井 隆哉, 岨 康輝, 川野 潤, 渡邊 剛
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: J3 炭酸塩の地球化学
    セッションID: 3P18
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    サンゴ礁を形成する造礁サンゴには数百種類あり,その形状は様々である.造礁性サンゴ外骨格はaragoniteから形成される.サンゴの形状の違いは,基本構造である扇状組織(石灰化中心と繊維状組織)の重なり方が異なることに起因すると考えられる.これまで複数種類のサンゴ骨格について光学顕微鏡観察と化学組成分析が報告され,石灰化中心は繊維状組織に比べ,有機物が多いため顕微鏡下で暗い部分であるとされる.塊状サンゴ骨格の結晶組織はTEM観察から,石灰化中心のaragonite結晶は小さく粒状(数十~数百nm)で結晶方位がランダムで,繊維状組織はc軸に方位を揃えた長さ数μmのaragonite針状結晶によって密に構成されていることがわかっている.これら結晶組織の特徴がどのサンゴ種でも同一であるかは,サンゴの形状と石灰化機構の関係性を理解する上で重要である. 本研究では,枝状サンゴ骨格の微小領域における鉱物組織・形態の詳細な観察を行い,塊状サンゴとの比較を行った.
  • 吉村 寿紘, 為則 雄祐, 高橋 修, Nguyen T. Luan, 長谷川 浩, 岩崎 望, 鈴木 淳, 川幡 穂高
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: J3 炭酸塩の地球化学
    セッションID: 3P19
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    SPring8/BL27SUの軟X線吸収分光によって得られたサンゴ、二枚貝、有孔虫などの方解石/アラレ石、ならびに無機炭酸塩(方解石、ドロマイト)のマグネシウムK吸収端X線吸収微細構造スペクトルを測定し、さらに分子軌道計算によって得られた炭酸塩鉱物のスペクトルとの比較を行った。生物起源方解石と無機方解石には各試料のマグネシウム濃度に起因すると考えられる相対ピーク高さのわずかな違いは認められるものの、ピーク位置には明瞭な差異は認められなかった。また、計算スペクトルも実験スペクトルを良く再現しており、方解石中のマグネシウムは主に結晶中のカルシウムを置換している可能性が高い。一方で生物起源アラレ石のホワイトラインは計算結果と同じ1312 eVであるものの、その他の明瞭な吸収ピークが認められなかった。これは生物起源アラレ石中のマグネシウムには、有機物やアモルファスなどとして取り込まれている成分の割合が高い可能性を示唆している。
  • 氷上 愛, 石村 豊穂, 藤田 和彦, 鈴木 淳, 野尻 幸宏, 酒井 一彦, 川幡 穂高
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: J3 炭酸塩の地球化学
    セッションID: 3P20
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    近年の大気中二酸化炭素濃度の増加に伴う海洋酸性化は、海洋生物の炭酸塩の殻や骨格の形成を妨害し、今世紀半ばには海洋生物に対する影響が顕著になる可能性が高いと指摘されている。海洋酸性化に対する生物応答についての研究成果はこれまでに数多く報告されており、そのほとんどは海洋生物の炭酸カルシウム生成量が減少するという報告で占められていが、最近では、影響がない、むしろ生成量が増加するという報告もあり、海洋酸性化に対する生物応答の多様さが明らかになってきた。しかし、種間あるいは個体間で異なる応答を示す要因はよくわかっておらず、依然として海洋酸性化に対する海洋生物への影響評価は不十分である。本研究では、飼育実験により、酸性化海水に対して異なる石灰化応答を示した大型底生有孔虫の炭酸塩殻の炭素同位体比を測定し、種間で異なる応答を示した原因を明らかにすることを目的とした。
  • 山本 栄仁, 相澤 省一
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G13 海洋化学・大気水圏(全般)
    セッションID: 3P21
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    カルシウムイオンと類似したイオン半径を持つ2価金属イオンは石灰岩の生成過程において、炭酸カルシウム中のカルシウムイオンを置換して取り込まれると考えられる。これまでの研究で、石灰岩中のカドミウムは石灰岩の堆積年代によってその含量が変動することが明らかになってきた。しかし石灰岩試料の分析数が少なく、その傾向がはっきりしない地質年代もまだ残されている。我が国では古生代ペルム紀及び石炭紀石灰岩は各地に分布し、すでに多数の分析例がある。しかし、それ以前のデボン紀及びシルル紀の石灰岩は産出地が限られ、いまだ分析例が少なく、同地質時代の石灰岩のカドミウム含量は明らかでない。本研究では、国内4地点から採取したシルル紀石灰岩について化学分析を行い、主成分とともにカドミウムをはじめとする微量重金属元素を定量した。
S2 初期地球と生命起源の地球化学
  • 鈴木 千月香, 古川 善博, 小林 敬道, 関根 利守, 中沢 弘基, 掛川 武
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 3P22
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、地球外物質の衝突反応または隕石により初期地球の海洋に供給されたと考えられる低分子有機物が、隕石重爆撃によってどのような変質を受け、その際に生命を構成する有機物を生成するのかどうかを明らかにするために、ギ酸とアンモニアの混合水溶液に対し、衝撃回収実験を行い、回収物中の有機物を分析した。分析の結果、タンパク質構成アミノ酸である、グリシン、アラニンの生成が確認された。これらの結果は、後期重爆撃が初期地球の低分子有機物を複雑化させ、生物誕生前の地球表層における生物構成有機分子の多様化に貢献したことを示唆する。
  • 薮田 ひかる, 境家 達弘, 近藤 忠, 大野 宗佑, 中林 誠, 門野 敏彦, 重森 啓介, 弘中 陽一郎, 山中 高光
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 3P23
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、後期重爆撃期に起こった小天体衝突を再現するため、高強度レーザー衝撃圧縮法を用いたコンドライト隕石の開放系衝撃実験(100-400 GPa)を行い、試料から生じる揮発性成分をQMSで測定した。その結果、炭素質コンドライトから生じた揮発性成分量は高圧条件ほど多く、主要な生成物はH2、次いでCOであった。その他、400 GPa で炭化水素およびそれらに由来するマスフラグメント(CH4, C2H2, C2H3, C2H5, C6H6)が生じ、200、100 GPaでは炭化水素に加えH2Sを主とする硫黄化合物(他にSO, COS, SO2)が生じた。普通コンドライトから生じた揮発性成分量は炭素質コンドライトに比べて少なかった。本結果から、金属鉄が乏しい酸化的な炭素質コンドライトの衝撃反応では有機炭素と硫黄化合物が還元力を担い、多種の還元的揮発性炭素化合物をより多量に生じることが判明した。
  • 小林 潤平, 薮田 ひかる
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 3P24
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    酵素がまだ存在しなかった初期地球では、簡単な物質が原始的な代謝すなわち酸化還元反応を担い、生命機能に類似した役割を果たしていたと考えられる。その一例として硫化鉄膜表面での自己触媒反応が挙げられる(Wachtershauser, 1988)。しかしこの仮説では自己複製が説明されない問題点も残る。プルシアンブルー(PB)は、水溶液中でコロイド状に分散し、広い表面積を有することで分子の吸着・化学反応の場を提供する。現在よりもFe2+が豊富に存在したであろう初期地球の海洋でPBは普遍的に生成したと考えられ(Orgel, 1974)、特にCold Origin of Life仮説(Bada et al. 1994)との繋がりが期待される。そこで本研究では、PBの代謝機能性を検証するため、室温水溶液中での有機分子との相互作用を調べた。
  • 大西 浩之
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 3P25
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    そこで本研究では,様々な鉱物をアミノ酸と混合し,同一条件下で加熱実験を行い,重合を促進する鉱物の特徴についての評価を行った.アミノ酸としては最も単純な構造を持つグリシン(Gly)を,鉱物としてはAm. silica, Quartz, γ-Al2O3, Corundum, Hematite, Magnetite, Rutile, Anatase, Forsterite(すべて人工合成物)を用いた.まず,『鉱物表面1nm2辺り10個のGly分子が存在する』という比率でGly水溶液と鉱物粉末を混合し,3時間撹拌を行った.その後50℃に保ったオーブンで24時間乾燥させ,さらに90℃のオーブンで10日間の加熱を行った.加熱後の試料は純水に溶解させ,HPLCで測定した.その結果Rutileが最も促進効果が大きいことが見いだせた.
  • 坂田 霞, 薮田 ひかる, 池原 実, 近藤 忠
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 3P26
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    地球誕生後まもなく形成し今日に至り広く分布する海洋地殻は,地球最古の生態系が存在する環境として着目されていると同時に,初期地球,また地球外惑星における生命存在可能性についての示唆を与える(Edwards et al. 2012).海洋地殻では,海底下を循環する海水と岩石との反応で溶出した様々な元素を栄養源とする微生物が存在すると考えられ(Edwards et al. 2005),そのような岩石-水プロセスが観察できる,貧栄養,低温(10-15℃),速い海水循環が特徴的な北大西洋中央海嶺西翼部North Pondでの地下生命圏探査を行った。本研究では,玄武岩掘削試料中の微生物活動の記録を明らかにする目的で有機物の検出と炭素同位体分析を試みた。
  • 唐澤 信司
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: S2 初期地球と生命起源の地球化学
    セッションID: 3P27
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    水のクラスタが回転するように熱運動する動画、あるいはクラスターの熱運動が界面を離れるに従い激しくなる動画を報告し、そのメカニズムを検討します。ちなみに、炭酸ガスは分子の状態で水の分子の立体構造の貫通孔に収まり、水の分子を配列させるので、大きな溶解度をもちエントロピーは小さくなる。ところが60℃以上の温度では、その水の分子の構造が失われて炭酸ガスの溶解度はゼロになる。他方、水に浮上した気泡の膜では熱運動で分子間結合の試行錯誤が行われるとともに、外部からエネルギーを得て化学反応ができる。気泡の膜の分子間結合は気泡の破裂で壊れるが、化学反応で新たな有機分子を加えることができる。変化する状況で分子の組織が生成消滅を繰り返して進化した。
G17 分析化学・物理化学
  • 田中 夕貴, 赤木 右
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    希土類元素は化学的性質が非常に似ており、特に原子番号の近い希土類元素については厳密に区別することができず、同じような元素として振る舞うと考えられる。ある希土類元素の挙動について、原子番号の近い別の元素の存在から受ける影響を「AIMAI効果」とし、これを共沈による沈殿形成時の分配係数のパターンを見ることで評価できると考え、La~Luの14元素を対象に本研究を行った。 希土類元素組成の異なる溶液を4種類用意し、その溶液中でCaCO3, CaSO4, Ca3(PO4)2の沈殿を作る実験をそれぞれ別に行った。そこで各沈殿系の各希土類元素について分配比を求め、これを希土類元素の原子番号順に並べたものを希土類元素の分配パターンとした。これを各沈殿系で比較したところ、CaCO3系の実験では特に軽希土類の多い②Shaleで、またCaSO4系においては重希土類の多い③Uniform+1で存在度の大きさが分配比に影響を与えている可能性があることが分かった。
  • 栗崎 弘輔
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P29
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
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    これまでの研究により、石筍中の炭素安定同位体比は沈殿当時の気温を反映するほか、地表の植生情報に大きく影響を受けることが分かった。しかしながら情報保存の同位体分別定数は不明な部分も多く、特に沈殿生成時の同位体分別定数は理論値とのずれが大きく、古環境情報の解明の障害となっている。本研究は古気温の復元にも有用な炭素同位体比の正確な見積もりのため、実際に洞窟内にて沈殿生成実験を行い、同位体分別定数を決定する要因の探索を行っている。本発表ではラボスケールで行った実験結果と合わせて、洞窟内沈殿生成実験の結果について報告する。
  • 永石 一弥, 谷水 雅治, 石川 剛志
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P30
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    ホウ素(B)の安定同位体比である11B/10B同位体比は地球化学的トレーサーとして注目されている。筆者らは昨年の本学会において多重検出器を装備したICP質量分析計(MC-ICP-MS)を用いて海水や炭酸塩試料のB同位体比を高精度に測定する方法について報告した(永石・谷水, 2012)が、今回その測定法を応用し、火山岩試料のB同位体比を、簡便かつ高精度に測定することが可能となったので報告する。産業技術総合研究所の玄武岩の標準岩石試料JB-2、JB-3についてBを化学分離して測定したところ、±0.25‰(2SD)程度の測定再現性を示し、δ11B値はそれぞれ+7.08‰、+6.81‰が得られた。この値は、最近我々がP-TIMS法で得ている値(JB-2:+6.81±0.21‰、JB-3:+6.72±0.14‰; Yamaoka et al., 2012)と誤差の範囲内でよく一致している。
  • 西原 克, 山下 勝行
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P31
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    始原的隕石中に見られる同位体異常の解析は、初期太陽系物質の起源と進化を考える上で極めて重要である。いくつかの先行研究で、隕石中のTi同位体異常が報告されているが、分析された試料は限られており、Tiと他の元素の同位体の相関に関するデータはさらに少ない。本研究では隕石を始めとする惑星物質から高純度のTiを分離し、さらに比較対象となりうるいくつかの元素の回収をも見据えた化学処理法の開発に着手した。本発表では現時点で得られている結果の一部を報告する。
  • 宮崎 隆, 木村 純一, 常 青
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P32
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    本研究では、MC-ICP-MSによる、ダブルスパイク-サンプルブラケット法を用いた、高精度Ba安定同位体分析法の開発を行った。本方法において、いくつかの、それぞれスパイク/サンプル比が異なるサンプル-スパイク混合試料からサンプルのδ137/134Ba値を求め、その後、いくつか求めたδ137/134Ba値のばらつきが、最少となるように130Ba-135Baダブルスパイクの同位体組成を求めることで、スパイクキャリブレーションを行った。また、オンピークバックグラウンドに加え、質量分析計で実測したXe同位体比から求めた補正係数を用いて妨害元素補正を行うことで、Xeの影響を最小限に抑えた。これらの結果、δ137/134Baにおいて繰返し精度±0.036‰で分析を行うことが可能となった。
  • 山田 紘子, Haibo QIN, 高畑 直人, 佐野 有司, 高橋 嘉夫
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P33
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    近年、室内塵及び保育園土壌は小児の化学物質の曝露源として懸念されているが、日本及び中国の室内塵に含まれる重金属元素に関する系統的な研究はほぼ行われていない。そこで本研究では、化学種を敏感に反映するX線吸収微細構造(XAFS)法及びNanoSIMSを用いて、室内塵及び保育園土壌中の重金属元素の化学形態及び同位体比から起源の解明を目的とした。保育園の土壌のXAFS解析の結果、遊具の塗料片が保育園の土壌中Pbの最も大きな汚染源の一つであることが示唆された。一方、土壌中に存在した塗料片の同位体比マップ測定の結果、塗料片によって同位体比は異なり、さらに一つの塗料片の中でもPb同位体比は大きくばらつくことが明らかになった。このことは、同じ起源(用途)の鉛でも同位体比が異なる可能性があることを意味し、保育園土壌中の鉛の起源をPb同位体で知ることは困難であることを示唆し、Pbの起源解明においてXAFS法は比較的有効な手法であることを示している。
  • 平田 岳史, 高田 航史郎, 坂田 周平, 川﨑 隆広, 岡林 識起, 高田 和子
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P34
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    質量分析法の進歩により、重元素のわずかな同位体組成変化を検出することが可能となった。これにより、安定同位体の研究は、軽元素だけではなく、ウランを含めた周期律表の殆どの元素を活用することが可能となり、その応用範囲が飛躍的に拡大された。講演者らは鉄の同位体組成変化を利用して、生体内での鉄代謝を評価する研究を続けてきた。本研究では、鉄代謝の変化を評価する一つの手法として鉄の安定同位体に注目し、ヒト赤血球中の鉄同位体分析を行った。血液試料から赤血球を分離し、酸による分解処理の後、陰イオン交換法により鉄の回収を行い、多重検出器型ICP質量分析法で鉄同位体分析を行った。分析の結果、血液中の鉄同位体比は分析精度内で一致していた。これは加齢によって鉄の代謝が変化しないことを示唆する。本研究では、鉄同位体の海洋試料への応用についても紹介する。
  • 菅 大暉, 武市 泰男, 井波 暢人, 小野 寛太, 菊池 早希子, 高橋 嘉夫
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G17 分析化学・物理化学
    セッションID: 3P35
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    水酸化鉄沈殿はその多くが微生物関与で生成された鉄沈殿物を含むBacteriogenic Iron Oxides(BIOS)であると考えられている。BIOS内のREEパターンは、HREEに富んだ形状を示す。このようなREEパターンは微生物にREEを吸着させた場合に得られ、原因として微生物表面のリン酸基にREEが結合するためと報告されている。本研究では、BIOSに見られるHREEに富むREEパターンが、BIOS内の微生物や代謝生成された有機物表面のリン酸基へのREE吸着によって起こるか否かの解明を目的としている。BIOS表面のHREE観察には、微小領域を高空間分解能で観察できる走査型透過X線顕微鏡 (STXM)が最も適している。STXMはXRF/XAFS測定が可能で、目的元素の化学種別像の取得が可能な顕微鏡である。BIOSに対してリンのK端とREE M端での分布像の取得のため。現在、KEK-PFで2-5 keVと0.05-2 keVのエネルギー範囲で使用可能なSTXMをそれぞれ開発中である。
G7 地球表層水圏と生態系
  • 浜口 昌巳, 宮島 利宏, 堀 正和, 島袋 寛盛, 吉田 吾郎
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G7 地球表層水圏と生態系
    セッションID: 3P36
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    浅海域の大型底生植物群落の一次生産に由来する有機炭素を追跡するための技術開発の一環として、アマモに対するDNAバイオマーカーを設計し、堆積物から抽出したDNA試料に対するリアルタイムPCRによる定量評価法を開発した。アマモ場における堆積物柱状試料からアマモ由来DNAを本法により感度よく検出することができ、有機炭素濃度や炭素安定同位体比の分析結果とも整合的な分布を得ることができた。一部のDNAは堆積物中に2,000年以上の長期にわたって残留しうる可能性が示唆された。またアマモ場外の沖合表層堆積物に対して本法を適用することにより、アマモ由来有機炭素が高濃度に堆積するシンクとなる海域を特定することに成功した。本法により定量されるDNA量とアマモ由来有機炭素の残留量との間に定量的関係があるかどうかを検証中である。
G4 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
  • 牛山 智樹
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G4 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 3P37
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    Pbはハンダやバッテリーなど日常生活の様々な場面で利用されている物質である。一方、Pbは有害元素としても知られており人体に入ると知能症や神経症を引き起こす。そのため工場跡地やごみ処分場における鉛による土壌・水質汚染は重要な環境問題となっている。水に溶けだしたPbの移動は地球表層に存在する鉱物との相互作用により支配されると考えられる。地球表層には微結晶アルミニウムケイ酸塩が多く存在する。本研究ではナノサイズアルミニウムケイ酸塩(nano-sized aluminum silicate: NAS)を用いてPbの吸着挙動を理解することを目的とした。
  • 井上 美南, 坂口 綾, 高橋 嘉夫, 臼井 朗
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G4 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 3P38
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    深海底化学堆積物である鉄マンガンクラスト(以下クラスト)は、海洋での元素挙動に制限を与える物質の一つとして地球化学分野から注目されている。これまでの研究から、化学的性質が類似しているはずのジルコニウム(Zr)とハフニウム(Hf)、ニオブ(Nb)とタンタル(Ta)のHFS元素ペアにおいて、Hf及びNbがZrやTaよりも選択的にクラストに取り込まれ、海水-クラスト間で大きな分別を起こしていることが分かってきた。そこで本研究では、これらの元素のクラストへの濃集機構及び海水-クラスト間の分配挙動を明らかにするために、XANES(X線吸収微細構造)法により、HFS元素のZr及びTiの化学種を分析することで、クラスト中のZr、Tiの存在形態を明らかにした。結果として、今までクラスト中の砕屑物の指標として用いられていたZrやTiは、実際には砕屑物として存在しておらず、溶存またはコロイド態として海水中に存在していたものが、クラスト形成に伴い、吸着/共沈したということが示唆された。
  • 豊田 和弘, 笠原 翔
    原稿種別: ポスター講演
    専門分野: G4 鉱物境界面の地球化学、水-岩石相互作用
    セッションID: 3P39
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/08/31
    会議録・要旨集 フリー
    マンガン酸化物は水環境中に遍在する物質中では酸素の次に強力な酸化剤であるため、多くの元素の地球化学的循環に影響を与える。本研究では、溶存Mn(Ⅱ)濃度が0.01 mM、NaClが50 mM、HEPESが2 mM、そしてpHが7.6から8.2の間となるように調節した試料溶液1 L中に、マンガン酸化物試料2.0 mgを添加し、褐色容器内で連続曝気しつつ添加後5日間、室温での試料溶液中でのマンガンイオン濃度の低下を測定することで、6種類のマンガン酸化鉱物(クリプトメレン、トドロカイト、ベルナダイト、ハウスマナイト、Na-バーネサイト、Na-ブセライト)表面でのマンガン(II)イオンの吸着および酸化反応速度について調べた。その酸化速度は[OH]の 0.38-0.59 乗の範囲内で比例していた。
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