既報の本報告第1及び第2報に引き續くものではあるが本第3報では他の目的をも加味し磁土の苛性アルカリ及びアンモニア液に依る生成物及び磁土と炭酸アルカリとの加熱生成物との濕式及び乾式製法に依つてアルカリ磁土又は其の水和物の生成及び其の性状に關して試料の磁土3種の性状との關係等に就て比較試驗した結果を報告したものである。 其の要點を次に摘録すると
(1) 本報に供試した磁土試料はツェットリッツ磁土 (Z), 獨逸磁土 (K), 香港磁土 (H) の3種で (Z) と (H) とはカオリナイトAl
2O
3・2SiO
2・2H
2Oの分子式によく合致する純良なものであるが (K) は珪酸が多く, 礬土の少いものである。
(2) 是等の磁土を水, 5%のNaOH, KOH, NH
4OH液で常壓の下に煮沸, 加温した生成物を試驗したが水, アンモニア液では殆んど作用がなく, NaOH, KOH液では幾分アルカリ (Na
2O又はK
2O) が置換されて居ることが生成物の分析で知れる。
(3) 更にアルカリ液を濃厚にし10%, 20%にし5時間, 10時間と長くして作用させると其の生成物にはアルカリがよく加はつて其の生成物の分析結果及び夫から得た
xR
2O・Al
2O
8・
ySiO
2・
zH
2Oの示性式を求めて見ると略 (0.4-0.6)R
2O・Al
2O
8・(1.9-2.1)SiO
2・
nH
2Oの式で示される位アルカリが加入されて居ることが認められる。 尚 (Z) 磁土から得たものに對し (K) 磁土から得たものはアルカリは多く加入されるが珪酸の多い (0.8-0.9)R
2O・Al
2O
3・(2.7-2.9)SiO
2・
nH
2Oが生成される。
(4) アンモニア液ではアンモニアが揮發するので作用しないのではないかと考へ濃アンモニア (28%) 液を用ゐ, 而も20, 70氣壓の強加壓の下に行つて見たがアンモニアの加入して居るものは殆んど見られぬ位であつた。 然し此のアンモニア處理磁土が其の諸性状から見て幾分の差が生の儘の磁土に對してあらふことは化學分析以外の諸方法に依らねはならない。
(5) 上述のアルカリ磁土水和物
xR
2O・Al
2O
8・
ySiO
2・
zH
2Oを110℃で加温し水分を除き更に700°, 800℃迄の諸温度に加熱して減量を測定して見たが生の磁土とアンモニア處理磁土とは前者450-550℃, 後者500-600℃で大部分が急に脱水し後者が稍遲れ (約50℃位高く) て脱水するのに對し他のアルカリ磁土は100℃迄にも4-5%が脱水し, 250-350℃迄に大部分脱水して全く異つた脱水状態で之を加熱温度 (横軸), 脱水量 (縱軸) の曲線圖で示すと生の磁土, アンモニア處理磁土とは全く異つて判然と區別し得るものである。
(6) 次に此の700°, 800℃加熱後のアルカリ磁土を普通の可溶分析法で處理して其の不溶部分, 可溶部分, 後者の主成分の溶解礬土と溶解珪酸との分子比を見ると (Z) 磁土, (K) 磁士の何れからのアルカリ磁土加熱物も少しも異ることなく1:2であること, 即ち曩に
xR
2O・Al
2O
8・
ySlO
2・
nH
2Oとして得たものの中 (K) 磁土よりの
y(SiO
2) が2.7-2.9であつたのは元の (K) 磁土中に16%も含まれて居た石英質がそのまゝあつたためで此の大部分は不溶部分となつて居ることが知れる。
(7) 次に磁土と炭酸アルカリとの粉末の等量混合物を950℃に半熔融状態に加熱したものの分析結果と之を更に微粉碎して湯浴上で水で充分加温して遊離過剩のアルカリを洗ひ出した後のものの化學分析結果等とを比較研究し, 殊に後者のアルカリ磁土の水洗物の示性式がNa
2O・Al
2O
8・2SiO
2・H
2Oの形を持つて居ることは第1, 第2報及び上節迄の結果の濕式法でアルカリ溶液に依る磁土處理の主成物のアルカリ磁土水和物と同一物を得て居ることは磁土と炭酸アルカリとに依る乾式加熱に依つて既にアルカリ磁土を生じて居るのか, 或は磁土が加熱に依つて結合水の揮散後礬土と珪酸とが結合を解き別々にアルカリとの間に珪酸アルカリと礬土酸アルカリとになつて混成して居て水と温浴上で加温し過剩遊離アルカリを洗滌除去する際にアルカリ磁土水和物となるのであるか不明ではあるが今迄の種々の試驗の結果から多分後者ではなく前者であるらしく之は後日更に珪酸と礬土と炭酸アルカリとの混合物から同樣の處理を行つたときの生成物及び水洗の洗出物などの試驗研究其の他からも檢討して後考察するやうにしたい
(8) 尚本報の濕式及び乾式兩法に依るアルカリ磁土及び水和物は上述の樣に夫れ自體の試驗ばかりでなく是を他の應用例へば一種の人造
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