以上本報に於ては製造研究其の一として實際に礦化劑を添加し, 工業的方法により試驗煉瓦を製作し, 其の諸性質を檢討した. 其の結果津奈木珪石並に本宿珪石に礦化劑としては蓚酸ソーダ, 鹽化アンモンを單獨に或は兩者併用し, 又比較の爲に鱗珪石を比較的多量に含有せる阿波珪石單味煉瓦を混合し接種の效果の研究を行つた. 蓚酸ソーダは鱗珪石化には頗る效果的であるが荷重軟化點を低下させ, 氣孔率大となり, 強度を減少せしむる等の缺陷がある. 鹽化アンモンは鱗珪石化に對しては其の效果は蓚酸ソーダに劣るが, 製品の強度を増加せしめる. 接種の效果も興味ある問題であるが矢張り強度を低下する.
本報告に於ける試驗煉瓦に就て共通の缺點は何れも燒成破損甚だ多く, 其の原因を考究して見ると毛状龜裂による損傷は白系珪石特有の缺點として周知の事實であるが又一面礦化劑の添加にも起因す水分と共に表面に移動滲出し水分の蒸發によつて其の表面部分に集中し燒成中表面若しくは硝子化し, 冷却の際に龜裂を生ぜしめ, 又津奈木珪石の如く結晶微細で轉移し易いものは硬化劑の存在に於ては轉移は急激に行はれ, 其の爲に一層龜裂を増加したものと考へられる. 要するに本報告中の試驗煉瓦は殆ど總べて大小の龜裂貫入し中には供試體の作製不能のものも少なくなかつたが此等は原料並に其の配合粒度にも起因するが硬化劑の添加による影響も大なるものがある.
次報以下に於ては硬化劑の添加方法並に添加量に就き研究を進めて行く方針である.
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