硝子の耐水性と化學成分との關係に關する既報研究中アルミナを天然長石 (R
2O・Al
2O
3・6SiO
2) よりもアルミナ及びアルカリの多い鹽基性長石質 (R
2O・Al
2O
3・2SiO
2) としてカオリンから苛性アルカリ, 炭酸アルカリで處理してR
2O・Al
2O
3・2SiO
2・
nH
2Oを生成せしめて之を用ゐ, 之と滑石 (3MgO・4SiO
2・H
2O) とから硝子試製を行つた結果を參照し之を押し廣めて北鮮咸南咸北兩道境附近及び江原道から主産する霞石及び閃長岩を用ゐ, 更に之に滑石を配合して共に既に化合状態になつて居るものを使用することを主旨として研究を行つたもので本報掲載の要點を摘録すると次の通りである.
(1) 霞石と滑石とを原料にして高アルミナ, 高マグネシア質の硝子を試製し, 常壓法及び加壓法に依る耐水性を比較試驗した.
(2) アルミナの%が多くなると曹達分の少いときは熔融が困難となり, 粘度が大きくなるから熔融物を坩堝から取り出すのが困難になる.
(3) 霞石を多量使用すると夫からアルカリが來るので別のアルカリ原料の曹達灰などの使用が少くてよい. 唯霞石閃長岩を用ゐると酸化鐵分が多くなり易いことに留意を要する.
(4) アルミナ, マグネシアの共存は硝子の耐水性を良好ならしめ, 壓力に比して溶出量は増加しない.
(5) 常壓に於てはアルカリ溶出試驗の經過から溶出アルカリの中和滴定硫酸液の量 (
D, cc) とアルカリの%
N), アルミナの% (
A) との間に
D=log
10(
N-1/2
A) の關係があること (アルミナ含有が2-3%以下のものは例外) を確め, 種々の説明考察を加へた.
(6) 5氣壓, 10氣壓等に就ては大體上記常壓の場合を延長した様な結果を得たが15氣壓以上になると不規則な結果を得た. 是等2-3%の關係に就て種々研究推察を加へた.
終に本研究は日本學術振興會第34小 (硝子及び耐火物) 委員會から研究補助費を受けて行つたものであることを茲に銘記して深謝の意を表する次第である.
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