日本森林学会大会発表データベース
第128回日本森林学会大会
選択された号の論文の839件中1~50を表示しています
学術講演集原稿
  • 内山 愉太, 香坂 玲, 梶間 周一郎, Jinlong Liu, Yeo-Chang Youn, MiSun Park
    セッションID: A1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    In this research, transmission of knowledge related to ecosystem services based on pollination is analyzed. Specifically, case studies and literature review of beekeeping in East Asian countries are conducted. Pollination is not only related to provisioning services of agricultural products, but also strongly related to other ecosystem services including cultural services. In this regard, beekeeping can contribute to management of ecosystem located in various lands including mountainous areas, agricultural fields, and urban areas. In East Asian countries, surrounding social conditions of beekeeping have differences, however, they have similarity in natural environment. Therefore, knowledge sharing for ecosystem management based on sustainable beekeeping can contribute to environmental management in the wider Asian region. This paper provides the results of literature review of transmission of knowledge related to beekeeping focusing on socio-cultural factors, and case studies in Japan.

  • 香坂 玲, 長坂 健司, 梶間 周一郎, 内山 愉太
    セッションID: A2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    The role of science policy interface in forest and biodiversity conservation is reviewed. Historically, the role of scientific knowledge was limited by the politics or the national-interests-driven international negotiation process such as the United Nations Conference on Environment and Development or the Convention of Biological Diversity (CBD) (Kohsaka, 2008; Koetz, 2008). To overcome such difficulties, intergovernmental science-policy platform on biodiversity and ecosystem services (IPBES) was established, similar to the structure of the (Intergovernmental Panel on Climate Change (IPCC). It is identified that IPBES differs from IPCC in that it reflects the nature of scale dependent nature of biodiversity and different knowledge systems including indigenous and local knowledges (ILK). Access and Benefiting Sharing (ABS) from the genetic resources is the key in sustainability.

  • 中川 ゆりや, 井上 真
    セッションID: A3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    本研究では、ランプン州のワイ・カンバス国立公園(WKNP)のゾウによる獣害を扱う。WKNP設立の1982年以降、周辺地域ではゾウによる農地の踏み荒らし等が頻発しており、人々はゾウ被害は大きな問題であるとしがらも、現地での暮らしの継続を望んでいる。本発表では、こうした状況下での住民による被害対策の実態を明らかにする。本稿の調査対象村では、個人による対策と、住民グループ(PG)による対策が存在した。特に、PGによる対策では、①専門家や行政の関与が緩やかであること、②活動内容は各PGに任され、楽しみを見出す余地のある対策となっていること、③PGという枠組みの存在が外部支援の受け入れや他PGとの交流を容易にし、対策手法の試行錯誤が促進されていること、が示唆され、順応的ガバナンスや試行錯誤の保証が一部取り入れられながら定着しつつあるといえる。対策の実態から、村人らはゾウ被害を自分たちが対処すべき問題として捉え、自ら思考・実践し、外部から独立して活動していることが示唆された。特にPGメンバーらはゾウに対し好意的な認識を持つ傾向にあり、今後のゾウとの関係性において重要なアクターになりうるだろう。

  • 神前 佳毅
    セッションID: A4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    ブータンでは、憲法において国土の60%以上を森林として維持・管理することを規定しており、厳格な森林管理に取り組んでいる。また、チベット仏教を国教として掲げており、人々の生活信条や価値観の中に森林保全に対する大切な要素があるのではないかと、当初は推測していた。しかし、歴史を振り返ると、必ずしも永続的に厳格かつ適切な森林保全が行われてきたわけではないことが判明した。本研究では、過去の大規模な森林伐採から如何なる過程によって森林面積を回復し、現在から未来に向けて如何なる方法によって厳格な森林保全を達成しようとしているか、明らかにすることを目的とする。そのために、第一に森林保全を巡る法規制を調査したうえで、第二に森林保全を巡る最初の法律である1969年の森林法制定前後の衛星画像を比較してその変化について識別・分析を行い、第三に国民の森林保全に対する意識を高めるために行われるSocial Forestry Day(社会植樹の日)における実地調査を行うこととする。調査対象地域として、7世紀より国内最古の寺院や名刹が多く建立されており、水に所縁のある名所が存在する中央部のブムタン県ジャカル地方を採択した。

  • 王 瀚陽
    セッションID: A5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    Forest Transition(FT) 仮説は近代化に伴う森林面積変化を説明する代表的な理論であり、Mather et al.(1998)の農地調整モデルや、農地調整モデルに加え木材価格に注目したRudel et al.(2005)の理論等が知られる。しかしこれらは欧米のFTをモデルとしており、途上国への応用が難しいとされる。実際、途上国のFTに関する実証研究では、FT仮説で重視される経済的要因以外に、政策的要因を評価するものが多い。小論では1)農業部門と工業部門間の労働力移動とそれに伴う資本蓄積を論じる二部門モデル(Lanis et al. 1961)に注目し、これに森林部門を組み込むことで森林開発への政府と住民の誘因を分析する。また、2)自己管理下での伐採行動を動学ゲーム的に分析したLee(2015)を応用し、森林開発による伝統的焼き畑農民の変容について分析する。3)政府の意思決定がFTに与える影響を考察する。農業部門に余剰労働力が存在する時、政府は資本蓄積のために森林開発への誘因を持つ。これは工業部門の生産性向上に伴って減少し、余剰労働力がなくなると消滅する。また、余剰労働力による森林開発と伝統的焼き畑農民が競合すると、後者の行動が変容することが分かった。

  • 平野 悠一郎
    セッションID: A6
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    本報告では、最近の中国で展開しつつある森林関連の諸政策が、どのような社会背景を反映し、どのような方向性を持っているのかを明らかにする。具体的には、2010年以降において、第2期を迎えた天然林資源保護政策、退耕還林政策の実施内容に加えて、新たに立案された国有林改革、国内伐採量の削減政策、「三権分離」を前提とした集団所有林の権利改革、及び、現時点で議論の進んでいる「森林法」改正、年森林伐採限度量制度の改革を分析対象として取り上げる。これらの諸政策の動向と変化は、一面において、「国内の森林の諸機能を維持・向上させる」という従来の森林政策の基軸を反映したものである。同時に、特に2000年代以降における市場化・民営化を志向した改革・開放路線の一層の深化と、経済発展に伴う社会の多様化といった、森林と人間との関わりの範疇を超えた社会変革をも背景としている。すなわち、都市先行型の急速な経済成長を経た近年の中国の国家運営は、より一層の規制緩和、都市―農村格差の解消、自然資源の効果的な管理、法体系整備の必要性等の様々な方向性を持ちつつあり、これらが森林政策を「複雑」に規定する構造が生まれている。

  • 柴崎 茂光
    セッションID: A8
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     1993年に山岳地域が世界自然遺産に登録された屋久島には、縄文杉などを一目見ようと、多くの観光客がやってくる。ただし半世紀前には九州国有林内における一大林業生産基地であった。そして一部の林業遺産(荒川口、小杉谷集落跡など)は、屋久杉生産の場として観光資源としても活用されてきた。 しかし屋久島の林業は、用材生産のみがあったではなく、エネルギー革命以前は薪炭生産なども盛んに行われていた。屋久島国有林内に関する統計資料をみても、広葉樹の伐採量が針葉樹の伐採量を上回っている。しかし行政やメディアによる情報の純化(simplification)によって、屋久島の薪炭生産に関わる歴史は十分知られていない。 本報告では、写真・動画資料も含めつつ、屋久島における薪炭生産の歴史・現状について報告する。 なお本研究はJSPS科研費16H04940の助成を受けている。

  • 藤掛 一郎
    セッションID: A9
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    近年、国内でFAOの世界農業遺産の認定を受ける地域が増え、現在8つを数える。このうち、宮崎県高千穂郷・椎葉山地域はその山間地農林複合システムが2015年に認定を受けた。しかし、この地域の農林複合経営がいかに特色のあるものなのかとなると、それを示すエビデンスに乏しい。そこで、本研究は2010年農林業センサス農林業経営体調査の結果を用い、全国における市町村単位での農業と林業を併せて行う経営体(農林複合経営体)割合や農業経営体でありかつ林業経営体である経営体(農林並立経営体)割合などを検討し、我が国における農林複合経営等が顕著に見られる地域の抽出を試みた。その結果、東北から九州の山間部に、複合・並立経営体割合が高い地域的まとまりが8つ確認された。さらに、各地の森林樹種構成を検討すると、地域差が見られ、農林複合経営の中身も一様ではないと推測された。例えば、高千穂郷・椎葉山地域はスギ林業とクヌギ人工林&シイタケ生産に特徴を持つ複合経営が営まれ、またそれゆえに独特の景観を持つ地域であると考えられた。

  • 高野 涼, 伊藤 幸男, 山本 信次
    セッションID: A10
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    近年は地方消滅論の登場や地方創生が政府の重要課題となるなど、地方再生論がブームになっていると言える。こうした動きの中で、地域住民がどのように暮らし、どのように感じているのかという点の把握が不足しているのではないかという批判がある。あるいは同じことだが、研究者や政策担当者が認識している農山村像や住民像と実態が乖離しているのではないかという指摘である。地域・地方に関する様々な言説が飛び交う現代だからこそ、地域の実態をもう一度しっかりと捉えなおす必要がある。 このような問題意識の下、本研究では農山村における子育て世代を対象として、生活実態や定住経歴、地域に対する意識等を把握するためアンケート調査を行った。子育て世代を対象とした理由は、地域で暮らし、子どもを育てている中若年層の生活実態や経歴、意識を把握することが、今後の人口減少社会における農山村社会を展望する上で重要であると考えたためである。アンケートの質問項目には、世帯構成、経済状況、定住経歴、職業等に加えて、都市への印象や価値観、地域に対して望むこと等を設定した。

  • 相原 隆貴, 立花 敏, 興梠 克久
    セッションID: A11
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    竹林拡大の問題が全国的に指摘されている。しかし、竹林拡大が周辺住民へ与える影響あるいは竹林周辺に住む住民が竹林をどう認識しているのかに関する研究は十分にはなされていない。そこで、森林湖沼環境税を用いた竹林整備事業が行われている茨城県つくば市茎崎地区大舟戸を事例に、住民の竹林に対するイメージ、竹林の現況に対する認識、現在の竹林の生活への影響、「荒れている」と認識させる視覚的な因子、行政の事業に対する認知度、今後の竹林利用のありよう等を区長への聞き取り調査及び大舟戸居住全36世帯へのアンケート調査により把握・分析した。その結果、竹林に対してタケノコ生産の場や地盤を強くするという認識を持つ回答者が多く、竹林は「荒廃している」と捉えられていた。しかし、竹林が「拡大している」という意識は確認できず、行政の事業の認知度も低かった。一方、竹林の荒廃・拡大の悪い影響として、「農地に侵入」など多様な要素が挙がり、今後も景観として残すために整備を望む声が多いこと等が明らかになった。行政の事業の周知を一層徹底することで竹林整備が進展し、また竹林を「タケノコ生産の場」として管理することが重要であると考えられる。

  • 伊東 啓太郎, 須藤 朋美, 花田 有里絵, 仲松 孝洋, 池尻 絵美, Shwe Yee Lin
    セッションID: A12
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    福津市は、九州北部に位置する人口約60,000人の都市である。福岡市のベッドタウンとして開発が進み、人口は2010年以来増加傾向にある。玄界灘に面し、津屋崎干潟、里地里山、河川、総延長約8.5kmの松林が存在する。航空写真の解析から1963年から2012年にかけて、2,255ha から1,435ha、36.3%(約820ha)の森林が減少している。その一部は、玄海国定公園として国定公園区域の特別地域に指定されており、里山環境として重要な場所であるが、管理放棄、竹林の拡大などの課題がある。また、海岸林は、防風林、燃料の採取場所として人々の生活とともに存在してきたが、この機能も失われつつある。九州工業大学環境デザイン研究室では、市からの依頼を受け2014年から「福津市環境基本計画」、「生物多様性地域戦略策定」のプロジェクトを、市民、地域の環境保全グループ、県立水産高校、県立光陵高校と連携し、生態系学習、情報共有を進めながら現場での実践を行っている。市の環境政策と連動し、地域の生態系サービスを持続しながら、協働で森林マネジメントを行っていくプロセス及びその課題について考察し、議論したい。

  • 岩田 健吾
    セッションID: A13
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    今日、適切で持続可能な森林管理を行うことを可能とするため、受益者負担原則の考えに基づいた費用負担メカニズムである森林環境税が制度化されている。しかし費用負担のあるべきシステムとして、現行の制度は完全とはいえない。それは費用負担の規模や地理的範囲の妥当性に起因する。熊崎は森林の生態系サービスについて「地域化されたものであり、差別化された公共財の性格をになって」いると主張した(熊崎、1977)。そして現行の森林環境税も受益の範囲を府県レベルに規定している。もし熊崎の主張が正しければ、環境財からの距離に応じて支払意志額が減衰する距離減衰が観察されるはずである。そこで、 CVM及び選択型実験を用いて支払意志額を推定し、距離減衰の有無を実証した。 研究対象地は滋賀県の森林で、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県の市町村のうち琵琶湖の水を利用している地域の20代から60代にアンケート調査を実施した。検証の結果、CVMと選択型実験共に距離減衰は生じず、森林の生態系サービスは、地域化された公共財ではなく純粋公共財としての性質を持ち、受益者が広範囲に広がっている可能性があることが明らかとなった。

  • 福嶋 崇
    セッションID: A14
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    J-VER制度、国内クレジット制度が発展的に統合される形で開始されたJ-クレジット制度(JC)の特徴の1つは、森林をGHG削減のスコープとしていることである。JCは16年12月現在で全555件の事業が登録され、うち森林案件は74件(13.3%)を占める。一方前身のJ-VERでは、15年5月現在の全251件のうち森林案件は137件(54.6%)と大きな比重を占めた。引き継ぎに伴い森林案件の比重が下がった要因は、J-VERで森林案件の大半を占めていた間伐促進型の事業がJCでは認められていないことが大きい。J-VERでは制度側による方法論の開発やクレジットの期限の撤廃など様々な点でルールの簡易化・改善がなされているものの、投資者の多くがクレジット購入の動機をCSR目的とし、購入量は必ずしも大きくはなかった。このように、J-VER事業のみでのビジネス展開は不可能であったことから、J-VERは「山のための制度」としての特徴を持っていた。J-VERを引き継いだJCが案件の大半を占めた間伐促進型の事業を認めていないことは、「山のための制度」としての森林案件の特徴を大きく低減させるものとなっている。

  • 松下 幸司, 吉田 嘉雄, 仙田 徹志, 山口 幸三
    セッションID: A15
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    我が国の山林所有者数については、世界農林業センサス(以下、センサス)の数値が使われてきた。1960年センサスによる保有山林0.1ha以上の世帯数は2,705,269、2015年センサスによる保有山林1ha以上の世帯数は828,973である。さて、我が国の山林所有者の総数とその世帯構成はどのようになっているのであろうか。本報告では、総務省統計局が5年ごとに実施している住宅・土地統計調査の再集計により、山林所有者数の分析を試みるものである。1998年以降の同調査の調査票乙(約50万世帯)に「現住居以外の住宅・土地の所有について」という調査項目がある。また、2013年の調査票甲(約300万世帯)には「現住居以外の土地の所有について」という調査項目がある。両項目を使って、農地・山林所有者を「農地のみ所有」「山林のみ所有」「農地・山林の両方を所有」に分け再集計を行った。本報告では再集計結果の概要を示す。本報告は統計数理研究所「日本における所得・資産分布の計測史と再集計分析」(28-共研-2029)及び京都大学農林水産統計デジタルアーカイブ講座におけるプロジェクト研究の一部である。

  • 大塚 生美
    セッションID: A16
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    今日のわが国林業は、木材価格の低迷により森林所有者は経営意欲を喪失し、立木を販売する際、林地そのものまで売却したり、林地は手離さないまでも、跡地造林や施業を放棄するといった動きがある。しかし同時に、素材生産業・原木市場・木材加工業などの原木を必要とする事業体の一部は、事業規模を拡大するとともに、立木の購入のみならず、林地を積極的に購入し、林業経営までをも行うようになってきている。本論では、こうした林地集積を行う事業体の中でも、大規模加工工場によるいわゆる垂直的統合林産会社の産業備林としての位置づけとは異なる動きにもみえる事例を検討するとともに、立木販売・施業委託から所有山林の一部は自伐に転じた大規模山林所有者がさらに林地を購入し、規模を拡大させたことの意味について報告する。

  • 佐藤 宣子
    セッションID: A17
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    林家が保有山林を対象に自家労働を中心として素材生産を担う自伐林家(狭義の自伐林業)だけではなく、近年、山林を有しないIターン者が自営で間伐を行う「自伐型林業」が各地で見られるようになっている。技術習得や木材の販売先、初期投資の確保などの課題もあるが、どのように施業地を確保するのかが大きな課題である。Iターン者がどのように林地を入手しているのか、あるいは「自伐型林業」と一人親方の施業請負との相違点など、森林の所有や利用を巡る論点が多数あり、実証的な研究が求められている。そこで、本報告では、2014年度以降に実施した「自伐型林業」地の聞き取り調査事例を取りまとめ、Iターン者の施業地確保の方法と条件について考察する。①土地付きの人工林をIターン者が購入する(高知県四万十市)、②自治体が町有林や財産区有林をIターン者に貸す(鳥取県智頭町)、③私有林地を長期に借りる(高知県本山町)など多様な施業地確保の方法がみられ、Iターン者が山村地域でどのような社会関係を構築しているのかという側面から各事例地を位置づけるとともに、「立木代ゼロ」と所有者の世代交代期にあたる現段階の林地の所有・利用関係の諸相を論じる。

  • 嶌田 栄樹, 三谷 羊平
    セッションID: A18
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    森林が持つ様々な機能を維持・発展させるため、多くの国々で私有林を対象とした森林管理プログラムが展開されてきた。これらのプログラムでは、森林所有者の自発的な参加が不可欠であることが多く、その自発的参加行動に影響を与える様々な要因が先行研究で明らかにされている。しかし、他者の行動が当該個人の意思決定に与える影響に言及している先行研究はない。こういった他者の影響は社会的相互作用と呼ばれ、近隣住民とのつながりが強い山村部では、所有者の意思決定に影響することが行動経済学的観点から予想される。本研究では、所有者の意思決定モデルに社会的相互作用を含め、森林管理プログラムへの自発的参加行動を定量的に分析する。社会的相互作用を表す変数には、近隣住民の参加割合を用いる。この変数には内生性の存在が懸念されるため、操作変数を用いることで対応する。プログラムの事例としては、久万林業活性化プロジェクトを取り上げる。計量分析の結果、近隣住民の参加割合が高いほど、当該個人の参加割合が高まることが分かった。この結果より、社会的ネットワークを活用することで、効率的に所有者の参加を促進することが可能となることが示唆される。

  • 梶間 周一郎, 織田 佑規, 内山 愉太, 香坂 玲
    セッションID: A19
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    本研究は、地方都市における森林管理の実態と今後の管理に着目し、森林を所有するすべての住民に悉皆調査を行った。森林の持続可能な管理を行う上で重要な森林所有者の管理行動を規定している属性を特定することを目的とする。石川県小松市に森林を所有者から得られたデータを利用し、森林所有者を「職業の有無」、「在村不在村」、「森林組合加入の有無」「後継者の有無」を応答変数としてクロス集計表を用いた分析を行った。分析の結果、第一に有職の場合に森林の状態への認知が低くなることが認められた。第二に「在村不在村」は、森林への認知、管理行動の要因にならなかった。第三に、「森林組合加入の有無」においては、加入者は森林境界の認知が高い可能性があり、また今後の森林管理を業者への委託で行う傾向が認められた。最後に、「後継者の有無」においては、後継者の存在が、境界や面積などの認知について高める傾向があり、森林管理は自己で施行しており、今後も管理をしていくことを高める傾向が認められた。本研究では、森林所有者への悉皆調査により、森林の状態認知、維持管理、今後の管理に対して森林組合と後継者の存在の重要性が確認された。

  • 坂野上 なお, 山本 博一
    セッションID: A20
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     前報(第124回森林学会口頭発表)において,檜皮採取木(剥皮木)が伐採され原木市場に出荷された際の評価について報告したが,採取木の出荷がみられた市1回分のデータのみの分析であったため,はっきりした傾向が認められなかった。今回採取木が出荷された複数の市日における価格データを用いて,檜皮採取木と非採取木との価格差について分析を行った。前回と同じく,京都府丹波地方の古くからの檜皮生産地に立地する原木市場のデータを用いた。檜皮採取木は樹齢80年生以上の大径木であるため元玉は直径30cmを超える丸太が多いが,直径が40cmを超えると希少材として値段が跳ね上がる傾向がある。市場価格への檜皮採取の影響をより明らかにするために,本報告では元玉,一本椪,直径40cm未満の丸太の価格データを使用した。また,檜皮採取を実施したことのあるヒノキ林所有者への聞き取り調査を行い,檜皮採取に対する認識や要望,採取林の今後の取り扱いなど所有者の動向について検討を行った。

  • 小菅 良豪, 伊藤 勝久
    セッションID: A21
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    林業事業体(森林組合・民間事業体)は、高度経済成長等により長年に亘り需要過多の状況が続き、労働強度は高いが収益性は良い時期が長く、事業体経営は比較的競争に晒されずにきた。しかし近年の林業事業体経営は、70年代後半以降の国産木材価格の低下や林業労働者の減少などの影響で、年々厳しさを増している。このような経営環境の中で、林業事業体はマネジメント能力を駆使しなければ、生き残れない時代が到来している。そこで本報告では、日本の製造業を中心に活用され、現在海外からも注目されている持続可能なシステムとしての日本型経営の林業事業体への適用について検討した。日本型経営とは、日本の経営慣行全般を表す言葉で、企業と従業員との関係を律する人事・雇用制度などを中心とした企業経営システムである。特に日本型経営の特徴である現場主義、家族主義、集団主義(ミニ・プロフィット制:小規模な組織単位を独立採算方式で運営・管理する手法)の3つの側面から、林業事業体の経営課題を抽出し、経営改善の応用可能性について考察する。

  • 山本 伸幸
    セッションID: A22
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    萩野敏雄が日本林政の「虚構性」と批判するように、戦前期日本林政は、本州以南の内地林政を所掌する山林局だけでなく、御料林、北海道国有林、さらには、大陸や南洋の林業を包含した。1945年以前、大日本帝国版図の森林を管理するため、多くの「日本人」森林技術者が大陸等へと渡った。また、殖民地においても、森林技術者養成の教育制度が整えられ、新たな現地森林技術者が生まれた。敗戦の領土喪失によって、多くの人びとが従来の生活基盤からの移動を余儀なくされたが、森林技術者も例外ではなかった。戦後日本林政・林業の展開過程において、こうした戦前・戦中期の大陸等における森林技術者の現地経験が何らかの影響を及ぼした可能性がある。本報告では、「人の移動」研究によって蓄積された方法論、学会等の名簿などの史料、などを手掛かりとして、以上述べてきた問題に接近するための、序論的考察を述べたい。

  • 峰尾 恵人, 松下 幸司
    セッションID: A23
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    中央集権的で、補助金偏重型の林業政策のあり方が、イノベーションの健全な発生を阻害し、結果として林業部門に非効率をもたらしている可能性が、伊藤・馬奈木(2009)や石崎(2010)等によって指摘されている。本報告では、そのような特徴を持つ林業政策の戦後から現在にかけての展開を、イノベーションやイノベーションシステムのあり方と関わらせながら検討することを通じて、日本の林業イノベーションシステムの特徴を分析する。具体的には、技術革新の指導的役割が期待されていた国有林における技術開発、森林資源と林業のあり方に影響を与えてきた造林補助政策、基本法林政に特徴的な事業である林業構造改善事業の三点に主眼を置いて検討を行う。以上の三点は、日本の戦後の林業政策を特徴づける要因である。これらの存在を前提として林業事業体は現実にどのようなイノベーションを実現しており、その上でどのような政策を望んでいるのか、ということが今後の研究課題となる。

  • 安村 直樹
    セッションID: A24
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    林業の採算性の向上には低コスト化が有効であり、その一手段として低密度植栽がある。低密度植栽には材質や林分材積の面での不利性(保育試験研究班2000、津島ら2006、佐々木ら2009、福地ら2011)、収益面での有利性(太田ら2013、八坂ら2013)が報告されている一方で、低密度植栽の現状に関する報告は限られている。そこで本報告では人工造林の施業基準に2004年度より2千本/haを加えたほか、低密度植栽も含めた「新たな森林再生モデル」を2008年度に策定している島根県における植栽密度の現状を、とくに地域差に注目しながら明らかにし、その背景について考察した。植栽密度の現状は業務資料「樹種別造林実績」より把握した。民有林人工造林のうち補助造林について2009年度から2014年度の育成単層林針葉樹を対象とした。6年間の造林面積は633haで、植栽密度別には2千本/haが167ha(26%)、3千本/haが459ha(73%)であった。地域別の2千本/ha面積割合は松江出雲56%、雲南14%、県央17%、浜田72%、益田12%、隠岐63%であった。地域別相違は森林所有者の意向、林業労働者数、合板需要の有無、苗木生産量、地利などの相違によって生じると考えられる。

  • 原田 大貴, 大地 俊介, 藤掛 一郎
    セッションID: A25
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    本研究は主伐・再造林期における生森の経営状況を明らかにするため、宮崎県で近年主伐を実施している7組合を抽出し、その経営動向を分析した。その結果、第一に、ほとんどの生森では短伐期で主伐を行っていた。第二に、経営状況は次の3タイプに分類できた。①持続的自立経営タイプ:今後も持続的な経営が可能で、自立的に再造林を行える生森。②条件付き持続的経営タイプ:持続的な経営を行うには、投資や組織運営の面で何かしらの問題が存在する生森。③経営縮小・解散タイプ:組合員への分配を重視し、経営の縮小や別組織への移転を考えている生森。また、持続的自立経営タイプが成立するのに必要な条件は、直営スギ人工林資源が100ha程存在していること、戸数が80以上の継続集落であることが挙げられた。第三に、持続的自立経営タイプでは、主伐による資本の回収により経営指標の改善がなされており、計画的な主伐・再造林を行っていこうというという状況にあった。加えて、個人有林や他の共有林との集約化の核になる事例も観察された。以上のことから、必要な条件が揃えば、生森は集団的経営組織として企業的に林地経営できる可能性が示唆された。

  • 大地 俊介, 久保 爽真, 五郎畑 翔平, 藤掛 一郎
    セッションID: A26
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     本研究では、表記のことを明らかにする目的で、全国に先行して主伐・再造林が拡大している宮崎県で造林事業体の労働組織とその運用実態を2015年から16年にかけて調査・分析した。 その結果、造林労働力については、縁故を通じた新規採用や再雇用で人数規模が維持される一方、植林・下刈に従事する期間を延ばすことで追加的な労働力を確保していることがわかった。 また、造林労働については、地元縁故に強みを有する請負的作業班の調整作用によって森林組合がほぼ唯一の担い手たる地位を維持している流域がある一方、森林組合の他に素材生産業者等やIターン起業者の新規参入がみられ、大きなシェアを握っている流域があることがわかった。ただ、その素材生産業者は、林産班と造林班とを連携させて地拵えの省力化を図るなどの改善を行っていたが、それに伴う経営者への管理業務負担が大きいため、自社伐採跡地以外への進出には消極的であった。 宮崎県では造林労働力の需要増に対してこのように供給拡大が為され、一定の成果を上げているが、すでに労働者1人当たりの肉体的負担は限界に近づきつつあり、さらなる需要増には対応しきれない恐れがある。

  • 林 宇一, 有賀 一広
    セッションID: A27
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    近年、緑の雇用制度の定着とともにハローワークなどを通じた新規採用が進み、林業は一般求職者からの新規労働力確保が進みつつある。このような背景から、林業を一般労働市場の視点から捉えることの必要性が生じており、一般労働市場における分析では労働経済学に研究蓄積がある。労働経済学では、賃金だけでなく離職に関しての研究にも蓄積が見られ(例えば、(小葉 2007)や(勇上 2005))、林業労働においても離職への関心は高く、研究に蓄積が見られる(例えば、(藤原・垂水 2006)や(興梠 2015))。このため、本研究では離職要因についての分析を実施する。本研究では定量的分析を試みることとし、分析方法としては、在職期間への各要因の影響度を探る生存時間分析を選択する。使用するデータとしては、在職期間について算出可能な緑の雇用研修生データを用いる。林業が盛んな栃木県を対象とする。

  • 田中 亘, 山田 茂樹
    セッションID: A28
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    沖縄県では主に本島北部地域において林業が行われてきた。本研究ではそこにおける労働組織に着目し、その再編過程を把握するとともに現下の課題を明らかにする。上記目的のため、国頭村森林組合および沖縄北部森林組合を対象として文献および聞き取り調査を行った。国頭村森林組合では、集落単位で地縁を元に形成された作業班に造林などの作業を請け負わせてきた。しかし、近年は担い手の減少から集落単位を超えて編成される5つの請負作業班と直営班という組織体制へと移行してきた。11市町村を管轄する沖縄北部森林組合では、名護市、大宜味村、東村の公有林における事業を中心として各地域の作業班に作業を請け負わせてきた。しかし、近年は9つの請負作業班へと再編が進み、市町村域をまたいでの活動も見られるように変化してきた。2つの森林組合ともに労働組織が地縁による結びつきや地域性が薄れていく方向で再編されてきたという点において共通する。しかし、労働力の再生産という点に関して、直営班を組織する国頭村森林組合では「緑の雇用」事業を活用しながら取り組む一方、沖縄北部森林組合では請負作業班に任せており、対応が分かれている。

  • 岡 裕泰
    セッションID: A29
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    FAOの林産物統計をもとに1990年から2014年までの国別の所得水準と木材消費量の関係を分析した。横断面で見ると、一人あたりGDPが1万ドル以下の国では所得水準と木材消費水準の関係が強く、GDP1万ドルあたり、製材品と木質パネルの合計でおおむね0.2m3の木材消費量となっていることが分かった。一人あたりGDPが1万ドル以上になると所得水準と木材消費水準の関係が弱まり、1万ドル増加あたり0.06m3程度の消費増加で、ばらつきも大きい。動態的にみると5年ごとの地域別の木材消費増加率はGDP成長率に依存しており、5年ごとのGDP成長率から10%ポイント程度差し引いた大きさとなる傾向があった。一方、製材等の加工をせずに使用するその他産業用丸太(杭など)の消費量は、所得水準との関係がほとんどなく、世界全体では製材品と木質パネルの消費量合計の1/3~1/4程度だが、アフリカではその他産業用丸太の生産量(ほぼ消費量に等しい)の方が大きい傾向にあることが確認された。

  • 窪江 優美, 宮林 茂幸
    セッションID: A31
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    近年、木材利用において、素材や製品に高付加価値を付与し、ブランド化を推進しようとする動きがある。報告者らは、このような動向を素材販売の流通戦略の1つと捉え、県産材や地域材のブランド形成とその方向性に関する研究を行ってきた。 その結果、川上では県産材認証等の品格認証による高付加価値化を推進し、産地形成を進め、木材利用の高度化や効率化など川下における木材流通の変革に繋がってはいるものの、これらが持続的な森林整備には繋がっていないことを明らかにした。 本報告では、森林保全の最終目標が、林業や林産業にとって、あるいは国民経済からも、持続的かつ循環型の森林整備であると既定したとき、「都道府県レベルではなく、特定地域における木材ブランド(地域材ブランド)の形成が、木材流通構造において森林整備の問題が内部化することによって、持続的かつ循環型の森林整備につながる」と仮説を立て、地域材および森林整備の現状と課題を明らかにするため、47都道府県を対象に意識調査を行った。その結果を基に、地域材ブランドと森林整備の関係性について若干の考察を行いたい。

  • 大田 伊久雄, 鎌倉 真澄, 木島 真志
    セッションID: A32
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    筆者らは既報において、ヒノキまな板という日用品に関してFSC認証木材製品に価格プレミアムが存在する(5%および10%価格が高くても購入する消費者が存在する)ことを実証的に示した。 本研究では、さらに価格差を広げて数種類の認証製品(ヒノキまな板)と非認証製品とを実験的に販売した。その結果、20%以上の価格差があっても認証製品が購入されることがわかった。さらに、重厚で高級志向のまな板と薄型でカジュアルなまな板との販売状況を比較分析したところ、高級志向の製品の方がカジュアルな製品よりも有意に高い割合で認証製品が選択される(非認証製品に対する認証製品の販売比率が高い)という結果が得られた。 このことから、FSC森林認証には環境ブランドとしての価値があり、その結果として高級志向の製品ほど認証製品が選択的に購入される比率が高くなったと考えることができる。本研究で得られた結果は、今後の認証木材製品の販売戦略を考えるとき、そのブランドとしての付加価値を追求するうえで参考になる研究成果といえる。

  • 早舩 真智, 立花 敏
    セッションID: A33
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    戦後日本の製紙産業には常に原料の安定調達という課題が存在し、木材チップの調達依存先は時代とともに変化してきた。本研究では、輸入チップが過半を占める1990~2015年の調達地域別依存度に注目し、産地別広葉樹チップ価格の関係について文献・統計資料分析及び総合商社への訪問調査より把握する。産地別広葉樹チップ価格について相関係数を見ると、国産広葉樹チップと輸入チップの相関は弱く、輸入チップに関しては①米国、②豪州・南米・南アフリカ、③東南アジアの三つに大別できることが明らかになった。調達依存度が高い産地は時期的に概ね①、②、③の順で移行してきた。①は天然林広葉樹チップ、②と③は人工林広葉樹チップの産地である。②と③のCIF価格では、各々の国どうしに比較的強い相関が見られたが、②と③の間では相関が比較的弱く、実態としても近年は③の方が1~2割程度廉価となっている。聞き取り調査より近年の価格交渉の頻度は③の方が高いという違いもみられ、国内に立地するパルプ工場の②と③への依存度は各地域・企業毎に異なっている。その差異が長期的には国産広葉樹チップ価格に地域差を生じさせる要因となっている可能性がある。

  • 遠藤 元治, 伊藤 幸男, 佐竹 望, 高野 涼
    セッションID: A34
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    岩手県には平成28年度末で全国で最も多い50台強の民生用チップボイラーが導入されている。ボイラー運用側(事業者/運用者/ボイラー規模/メーカー/用途/利用補助金)と燃料チップ供給生産側(製紙用チップ製造業者/製材業者/木材加工業者/森林組合等)の組み合わせは多岐にわたっている。本報告ではそれらの関係性とボイラー運用および燃料チップ供給の課題を整理した。運用側では・サイロでのハンドリング性、・最適負荷運転の確立、・チップ品質急変時制御システムの不備等が、チップ供給生産側では・品質安定性の確保、・価格の分散(不透明性)、・季節間需要変動対応、・小ロットの生産と搬送等々が課題であることが明らかとなった。その課題に対する対応を総括した。チップボイラーは当初、自治体による公共施設への導入が主であったが、近年は、特養老人ホーム(住田町)、総合病院(西和賀町)、地域熱供給(紫波町と久慈市)など新しい使われ方が出現している。この実現の経緯を解析し、チップボイラーの新しい使われ方が成立する要諦や課題を明らかにした。

  • 森井 拓哉
    セッションID: A35
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     災害時に被災者に供与される応急仮設住宅は、これまで都道府県がプレハブ建築協会(プレ協)と災害協定を結ぶことにより、軽量鉄骨プレハブ構造を中心とした調達・供給体制が整えられてきた。しかし、東日本大震災での膨大な仮設住宅需要に対して木造でも多く建設されたことを機に、木造応急仮設住宅が住環境や地域材利用等の側面から注目されてきている。特に、2011年に設立された全国木造建設事業協会(全木協)はプレ協と同様に都道府県と災害協定を結ぶ取り組みを進めており、2016年現在22都県と締結している。しかし、この締結数は同協会が目標としていた「2014年12月までに7割」よりも低く留まっている。 本研究では、1)まず、これまでに木造応急仮設住宅が建設された事例で、木造が選択された背景を調査報告・報道等から整理した。これを踏まえて、2)都道府県へのアンケートにより、木造応急仮設住宅供給及び災害協定に対する意識調査を行った。また、3)全木協への聞き取りにより、災害協定の運用方法、特に都道府県と全木協傘下の工務店の役割について詳細を明らかにした。以上の結果から、現状の木造応急仮設住宅供給における課題について考察した。

  • 康 尼, 納富 信
    セッションID: B1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    かつて食料や木材の供給源であった里山は、産業構造の変化、住民の高齢化などにより利用が減少しつつある。その結果、伝統技術の伝承に対する懸念だけでなく、水土保全等森林の公益的機能が充分に発揮できなくなり、長期的にはさらに荒廃することが危惧されている。里山の利用を促進するためには、里山における森林の多面的機能を定量化し、それを総合的な価値として示し、世間に幅広く理解を得て向上させることが重要となる。 そこで本研究では、多面的機能の中の“文化機能”に含まれる“景観・風致”を中心に、埼玉県本庄市にある里山地域“本庄早稲田の杜”を対象として機能評価を実施し、景観と利用者の嗜好との関係を明らかにすることを目的とする。 対象地の特徴に応じて、5つの森林景観を構成する物理要素(下草高、道路幅、樹幹形、緑量、立木密度)を定め、その要素割合が異なる林内の6地点における景観写真に対してフォトモンタージュ法による特定の物理要素を改変し、それらについて好みと9種の形容詞対で5段階SD法による印象評価をアンケート法により実施した。本報では、この印象評価と森林の物理要素との関係の考察について報告する。

  • 石灰 希, 深町 加津枝, 奥 敬一
    セッションID: B2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    富山県砺波平野には、個々の民家が散在して形成される国内でも有数の散村景観が広がっている。しかし、昭和30年代後半以降、散村を構成する屋敷林は、高度経済成長やエネルギー革命に伴う生活様式の変化、少子高齢化による労力・費用の増大、強風による倒木被害などが重なり、減少傾向にある。防風雪や環境問題への貢献等さまざまな機能を持つ屋敷林は生業と関わって形成された歴史的景観であり、自然との共生により成り立つ生活環境としても非常に価値があることから、今後も保全されることが望まれる。屋敷林を維持するためには、現状を正確に把握し、現在の減少要因や地域の特性に応じた対策を行っていくことが重要である。本研究では、約15年前に砺波平野全域で行われた屋敷林調査を踏まえた上で、砺波平野内で地理的条件の異なる4つの集落を選定し、屋敷林の外観調査および集落内での住民へのヒアリング・アンケート調査を行った。これらの結果を踏まえ、現在の屋敷林の分布状況や地域特性、2000年以降の屋敷林の減少要因、屋敷林に対する住民意識を明らかにし、長期的視点での保全に向けた方策の検討を行った。

  • 川端 篤志
    セッションID: B3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     各都道府県が条例により管理している自然環境保全地域は,1970年代にその多くが市街地とその周辺に残された雑木林や鎮守の杜のような自然地域を指定している。近年,それらの残された自然地域を里山と呼び,人によって攪乱されて生じる多様な環境を維持しようとするNPOなどの市民団体が全国に存在している。本研究では、市民団体が保全しようと活動する地域を都道府県が自然環境保全地域へ指定する可能性を検討した。 まず、都道府県自然環境保全地域の現状を知るために実地調査を行った。その結果、区域内には,文化財が存在し,保安林や鳥獣保護区,都市公園などと指定の区域が重なり,さらに長距離自然歩道が通っているなどの重複が見られ、管理を複雑なものにしていた。

  • 齋藤 和彦
    セッションID: B4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    2016年9月に沖縄県国頭村、大宜味村、東村にまたがる「やんばる国立公園」が誕生した。この国立公園では、自然保護だけでなく、自然の背後にある地域文化の継承を意識している。本研究では、森林に関わる埋もれた地域文化を掘り起こすために、国頭村内の保安林の配置、立地、所有区分の特長を分析した。分析には、1978~2013年の林班図と2013年の森林簿を用いた。分析の結果、国頭村の保安林は、海岸沿いに潮害防備保安林、集落の周囲に防風保安林、集落の背後の山に土砂流出防備保安林、土砂崩壊防備保安林、水源かん養保安林が配置されていた。特に、集落の周囲あるいは地形的突出部に防風保安林が配置されているのが特徴で、字辺土名の上島集落はその典型だった。集落周囲の保安林は、字有が多かった。こうした特徴は、近世琉球の「抱護」の伝統を受け継いでいると考えられた。ただ、「抱護」的な林分の全てが保安林になっている訳ではなく、また、失われた箇所も多かった。国頭村の保安林は、地域の文化的景観として整備することが望まれるが、マツ枯れの影響で昔のとおりの林帯を再生しにくい点が課題と考えられた。

  • 深町 加津枝, 柴崎 茂光, 奥山 洋一郎, 八巻 一成, 奥 敬
    セッションID: B5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    林業は、山との関わりを持ちながら、木材、薪炭材、動植物、楽しみ、畏れといった山からの様々な恵みを受ける活動、山地災害を軽減させるために行う活動ととらえることができる。そうした活動の中で、地域における森林・林業史の上で何らかの意味を持っており、先人たちが遺した遺構があるものが林業遺産である。近年、日本森林学会による選定制度が始まるなど、林業遺産の保存、持続的な活用にむけた新たな動きがみられるようになった。一方、林業遺産の中には、存在すら気づかれないまま野外で風雨に晒されたり、博物館や民家で保管されていても劣化が進むものも数多く存在すると考えられる。本報告では、林業遺産を、(1)林業跡地や構造物、(2)道具類・資料群、(3)林業技術、(4)林業関連の信仰習俗、(5)林業発祥地・林業記念地、(6)林業景観、という6つに区分した。そして、2016年9月に全国の行政、博物館、大学などの林業関係者を対象にアンケート調査票を送り、林業遺産の名称、所在地、所有者、法指定、参考資料などに関する情報を収集、分析し、それらの特徴や今後の課題などについて検討した。なお本研究はJSPS科研費16H04940の助成を受けている。​

  • 伊藤 太一, 鞠 佳岐
    セッションID: B6
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    IUCN(国際自然保護連合)は1962年より2014年まで14回にわたって世界各国の保護地域リストを公表している。1978年のIUCN保護地域管理カテゴリ導入後、1982年からそれぞれの保護地域の名称や面積に加えて、カテゴリもリストに記載されるようになった。2003年から1,000 ha以上という面積条件がなくなり、各国の担当者が直接データを保護地域データベースに送ることが可能になった。さらに2008年にはIUCN保護地域の定義が見直され、新カテゴリ適用ガイドラインで、私有地など国以外のガバナンスも認めるようになり、急速に登録件数も面積も増加した。1982年のリストに掲載された日本の保護地域は原生自然環境保全地域、国立公園、国指定鳥獣保護区など51箇所であったが、2014年のリストでは都道府県の自然公園や自然環境保全地域、鳥獣保護区や大学演習林もを含めて4,758箇所に達している。しかし、保護地域データベースへのデータを提供する担当者が国内の保護地域カテゴリをガイドラインに記された管理目的を考慮しないで当てはめていることや保護地域の重複などが課題となっている。日本版の保護地域適用ガイドライン作りが必要となっている。

  • 井上 昭夫, 島 弘幸
    セッションID: C1
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     十分に混み合った林分における断面積平均直径(胸高直径の幾何平均)は,樹種や立地条件の違いとは無関係に,林分密度の-1.6乗に比例して変化する(Reineke式)。それでは,なぜ,Reineke式のべき指数は-1.6になるのだろうか? 樹幹内部での心材化のため,辺材面積は胸高直径の2乗ではなく1.6乗に比例して増加する。このアロメトリ関係は,樹種の違いとは無関係に,単木スケールでも林分スケールでも成立する。また,胸高直径の幾何平均と算術平均との関係はアイソメトリである。これらの関係から,十分に混み合った林分では,単位土地面積あたり辺材面積合計について保存則の成り立つことが示唆される。以上より,Reineke式のべき指数は,(1) 直径の1.6乗に比例した辺材面積の増加,ならびに (2) 辺材面積の保存則による制約という2つの要因によって-1.6になっているものと考える。

  • 光田 靖, 北原 文章
    セッションID: C2
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    日本全国を対象としてスギ、ヒノキおよびカラマツの地位指数推定モデルを開発し、地位指数分布図を作成した。地位指数は土地の生産力ポテンシャルに関する指標として最も広く使われているものであり、今後予想される皆伐の増加に伴う再造林に際して重要な情報である。そこで森林資源モニタリング調査(現・森林生態系多様性基礎調査)のデータを用いて、我が国の主要造林樹種3樹種について地位指数推定モデルを開発した。開発したモデルは1 km解像度の気象要因と50 m解像度の地形要因を説明変数とする。まず、気象値を入力とする炭素収支にもとづく林分成長モデルを用いて成長シミュレーションを行い、1 km解像度の森林純生産(NPP)分布を推定した。次に、これまでの研究で地位指数に影響を与えるとされる凹凸度および地理座標、傾斜および斜面方位から計算される日射係数を国土地理院発行の50 m解像度DEMから計算した。これらを説明変数として、地位指数推定モデルを開発した。地位指数と地形との関係は、スギとカラマツについては明らかであったが、ヒノキについては不明瞭であった。開発したモデルを用いて、50 m解像度の地位指数分布図を各樹種について作成した。

  • 平田 泰雅, 古家 直行, 尾張 敏章, 坂上 大翼, 鎌田 直人
    セッションID: C3
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    天然林は我が国の国土面積の35.5%を占めており、生物多様性保全機能や水源涵養機能など多面的な機能を発揮することが期待されている。一方で、持続的管理に必要となる天然林資源の正確な情報が人工林に比べて大きく不足している。天然林を持続的に管理するためには、林分・景観レベルでの林相や資源量、成長量などの情報の把握が重要である。本研究は、デジタル空中写真、航空機レーザスキャナデータから得られる天然林の林相および資源量をもとに林分の成長量を予測する手法を開発することを目的とする。本研究の研究対象地は東京大学北海道演習林の天然林である。デジタル空中写真および航空機レーザスキャナデータから得られる反射スペクトル特性および構造特性から、施業の違いを表わす林相区分手法を開発した。さらに、各林相において、航空機レーザスキャナで得られる平均林冠高などの変数と固定プロットデータから算出される林分材積との回帰分析から材積推定モデルを作成し、天然林の資源量を推定した。この林相別の材積と地上でのプロットデータから得られた材積の成長量から、リモートセンシングデータから得られる変数を説明変数とした成長予測モデルを作成した。

  • 粟屋 善雄
    セッションID: C4
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     近年、人工林が成熟して伐期に達したことや森林簿情報の信頼性が低いことから、広域で材積を正確に把握することが求められている。リモートセンシングは広域での森林資源の把握には有力な手段であるが、実利用を考えるとニーズに応えられる精度が得られない場合が多い。その原因はリモートセンシングに由来する場合と森林の多様性に由来する場合がある。例えば、光学センサではスペクトル(色)から間接的に樹種や葉量などを推定すること、季節によりスペクトルが変化することなどが誤差の要因であり、解析精度を向上させるために工夫が必要である。航空レーザスキャナでは計測結果は直接測定の値と言って良いほど精度が高いが、様々な樹冠閉鎖率や樹冠の形状の違いなどが材積推定の誤差要因となる。数平方キロメートル程度のエリアを対象に、チャンピオンデータと呼ばれる理想的な条件で観測されたデータで解析した場合に高精度の結果が得られることが多いが、対象エリアを百平方キロメートル以上に広げると大きなエラーが散見されるようになる。本講演では講演者の経験に基づいて材積推定の手順と誤差の要因、および精度向上への課題について述べる。

  • 林 真智, 渡邉 知弘, 金子 豊, 渡邉 学, 小山 クリスティアン, 島田 政信, 小川 崇, 石井 景子, 東上床 智彦, 三浦 真理 ...
    セッションID: C5
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    森林減少は地球温暖化へ大きく影響していることから、REDD+などの対策が講じられつつある。森林減少は主に熱帯域で発生しており、その要因の一つとして違法伐採が挙げられる。しかし、広大な森林の監視には多大な労力を要するため、衛星観測の活用が実用的である。そこで、JICAとJAXAは協力して『JICA-JAXA熱帯林早期警戒システム(JJ-FAST)』を開発し、2016年11月に試行版の運用を開始した。これは、ALOS-2/PALSAR-2による広域観測(ScanSAR)モードの観測画像を利用し、熱帯林のほぼ全域をカバーする60ヶ国以上を対象として伐採地を検出し位置情報を提供するものである。本事業では、その検出精度を検証するため、2016年11~12月にペルーのアマゾン川流域にあるUcayali州・Pasco州において現地調査を行った。その結果、8ヶ所のうち5ヶ所の伐採地検出が正しいものであることが分かった(ユーザ精度=62.5%)。農地の季節変化が主な誤検出要因であったことから、森林地図を利用したスクリーニング等による精度向上を検討していく予定である。今後、本システムが熱帯林での違法伐採の低減へ貢献することが期待される。

  • 竹中 悠輝, 加藤 正人, Deng Songqiu
    セッションID: C6
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     長野県松本市では松枯れ被害が拡大しており、薬剤散布や伐倒燻蒸処理等を行うための被害状態の把握が求められている。しかし、被害面積が広く、分散しており、全ての現地調査を行うのは膨大な費用がかかるため不可能である。そこで、2015年度にSkySat-2データから松本市東北部の松枯れ被害の把握を行った。健全なアカマツと被害を受けたアカマツに分類することが可能であったが、被害の詳細を細かく分類することは不可能であった。 本研究では、2016年夏と秋の二時期のWorldviewデータと航空レーザデータを用いることによって、松枯れ被害進展箇所で、より詳細な松本市の松枯れ被害把握を試みた。2016年夏の被害木の樹冠抽出結果では、被害を受けたアカマツを、黄色葉を持つ感染木、茶色葉を持つ枯死木、葉が落ちて枯損した枯損木に分類することが可能であった。現在、2016年秋の被害木の樹冠抽出、および2016年夏と秋の二時期の経時変化から被害の進展を解析している。

  • 中島 義明, 王 権, 楢本 正明, 薗部 礼
    セッションID: C7
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

    長期にわたる水ストレスは樹木の生育・生長を阻害し,生産量に影響を及ぼす。よって森林管理において水ストレス早期検出の重要性は高い。キャノピースケールでの水ストレスの評価において,蒸散量との関連性が高い樹液流速が広く用いられているが従来の測定方法は林分,流域単位へとアップスケーリングを図ることが難しい。一方ハイパースペクトルリモートセンシングは非破壊で定期的に植物の生理学的な特性をとらえる有効な手段である。そこで,本研究では2つのアプローチから分光反射特性に基づくヒノキ苗のキャノピースケールにおける水ストレスの評価を試みた。第1のアプローチは実験室においてハロゲン光源を用いて分光反射率と光源の熱に由来した水ストレスの関係を評価した。第2のアプローチは屋外で実施し,分光反射率と日中の蒸散による水ストレスの日変化を評価した。それぞれの実験では、分光反射率の他に、樹液流速、水ポテンシャル、葉温、温湿度、個体重量の測定を行った。そして,分光反射特性と植物体に関するパラメータの関係を解析し,水ストレスを評価する上で有効な波長における反射率を明らかにすることによって,新たな分光反射指数を提案する。

  • 齋藤 和人, 平岡 裕一郎, 増田 宏, 松下 通也, 高橋 誠
    セッションID: C8
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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    近年普及が進んでいる地上型レーザスキャナによって,森林の高密度点群データが取得できるようになった.しかしながら,広域の森林を計測して得られる点群データは膨大であるため,従来手法では,樹木の詳細な3次元情報の解析に人手を用いたデータ編集が必要となることが多かった.本研究では,森林の大規模点群を自動かつ高速で処理し、樹木個体を抽出する手法を開発した。点群から樹幹の断面形状と中心軸を算出し,幹形状を一般化円柱として算出した.幹形状の計算では,限られたメモリを搭載したPCを用いて大量の点群を一括処理し,樹木の詳細な幹形状を自動検出した.我々の評価実験では,約70億点の点群から,約1300本の樹木の幹形状を20分程度で算出できた.さらに得られた幹モデルから算出された胸高直径,樹高,幹曲りに関するパラメータを実測と比較し,本手法によって高精度な幹モデルが構築できた.また反射強度を利用した葉点群の抽出を行うことにより,葉の分布や樹冠形状に関するパラメータを算出する手法についても示す.

  • 田村 太壱, 加藤 顕
    セッションID: C9
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     森林管理や生息地の多様性を示す指標として、森林構造の把握は重要な課題である。従来の植生調査では、目視による主観的な調査でしか森林の構造が把握されておらず、データの正確性や客観性に限界があった。本研究では、目視に依存していた植被率と階層構造を地上レーザー測量による3次元点群データから客観的かつ正確に評価する手法を確立した。また、レーザー測量よりも簡易的データ取得手法であるSfM技術を用い、森林内で撮影した画像から3次元データを作成し、その結果を検証した。東京都立野山北・六道山公園及び千葉県山武市日向の森において、地上レーザーとSfMによって得られた3次元点群データをボクセルに変換し、水平面におけるボクセルの占有率から植被率を、垂直分布から階層構造を把握した。その結果、植被率の計測にはボクセルサイズや、計測範囲、データ結合の有無が影響していた。階層構造はボクセルの垂直分布におけるパーセンタイル値を用い、自動的に計測する手法を開発した。さらに、SfMによって作成された3次元データを用いて、植被率と階層構造を自動で計測できたため、どの3次元データにも適用できる汎用性の高い手法を確立できた。

  • 市川 栞, 加藤 正人
    セッションID: C11
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
    会議録・要旨集 フリー

     今日に至り、森林調査を安全かつ効率的に行うためのRS利用研究数多くなされてきた。写真測量から航空レーザ(ALS)に始まり、近年では無人航空機(UAV)にも関心が高まっている。UAVの利点としては、機体が安価で入手しやすい、機動性に優れるなどが挙げられる。本研究ではこの特徴を活かしたSfM技術の応用で森林調査の応用を試みた。研究対象地は長野県南箕輪村有林であり、2012年秋に間伐施業を行っている。加えて間伐以前の2008年ALSデータと2012年春UAVデータ、間伐以後の2013年ALSデータと2016年UAVデータ(撮影飛行高度:50m、75m、100m)を入手している。これによって2時期DCHMデータ差分の間伐木と残存木を2手法ごとに抽出した。ITDのWatershed法を用い個別樹冠抽出を行った上で樹冠半径、樹冠面積、位置座標、樹高データなどを計算した。さらにDBH・材積データを回帰式により推定した。2手法ごとの間伐木と残存木の解析結果を比較した結果、UAVは検出本数と樹高において優れているという結果を得た。森林の経年変化抽出においてSfM技術利用のUAVデータはALSと差支えなく利用できると考えられる。

  • 米 康充, 高橋 絵里奈
    セッションID: C12
    発行日: 2017/05/26
    公開日: 2017/06/20
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     全国で壮齢スギ人工林が増加し伐期が延長されてきているが、壮齢スギ人工林において有用な間伐選木の指針は明確でない。これに対し、髙橋(2015)は一般的な過密壮齢林でも陽樹冠直径と胸高直径成長量との間には正の相関があることを明らかにし、陽樹冠直径から胸高直径成長量を推定することで間伐の可否を判別できる可能性があるとしている。したがって、今後の間伐選木研究に陽樹冠直径計測が有用であることが示唆される。しかし通常、陽樹冠直径は正確に計測することが困難で、たとえば天望鏡(2012, 髙橋)の様な樹冠測定具を使えば正確に計測はできるものの、広範囲での計測はそれでも困難を伴う。このような状況は、陽樹冠研究のデータ取得に大きな障害となると共に、陽樹冠を用いた間伐選木指針ができたとしてもその普及を妨げる要因となる。そこで本研究では、林分の広範囲を短時間で計測可能なUAVを用いた陽樹冠計測手法を開発すると共に、胸高直径成長量との相関を調べることで、今後の間伐指針への利用について考察することを目的とする。

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