バイオマスから効率よくエネルギーを回収する方法として,熱分解反応を基礎とした熱化学的変換技術が注目されている。近年,複雑な反応機構を分子レベルで扱う数値シミュレーション手法として,分子動力学に反応力場(ReaxFF)を適用した反応分子動力学シミュレーションが提案されている。本研究では,バイオマスの代表的な成分であるセルロースを対象とした反応分子動力学シミュレーションを行い,初期熱分解により得られる生成物特性を評価した。シミュレーション結果から,グリコシド結合の開裂に基づくグルコピラノース環単位での分解挙動などセルロースの特徴的な初期熱分解挙動を良好に表現できることがわかった。熱分解生成物組成の解析から,主としてグルコピラノース環の開環に伴う,グリオキサールやグリコールアルデヒドなどの生成が観測された。また,ガス生成物の生成挙動から反応初期でのヒドロキシ基の脱離に伴うH2Oの顕著な生成が確認できた。