高濃度水系電解液は,広い電位窓と環境負荷が低いなどの観点から,蓄電デバイスへの応用が期待されている。我々は高濃度水系電解液の中でも,電位窓の広い過塩素酸塩水溶液を電解液とする電気二重層キャパシタ(EDLC)について研究している。本稿では,LiClO4とNaClO4の飽和水溶液を電解液とする電気二重層キャパシタにおいて,陽イオンの違いによる電流密度依存性について調べた。その結果,飽和NaClO4水溶液は同条件のLiClO4より良い放電特性を示すことが分かった。これはLi+の水和半径がNa+のそれより大きいことに対応している。つまり,大きな水和イオンの方が動き難く,放電特性が悪いということである。また,高濃度NaClO4水溶液において,NaClO4濃度が10 -17 m(m = mol/kg)と増加すると,放電容量が約5%減少した。このことは,高濃度NaClO4水溶液では,[Na(H2O)n]+ + ClO4- ⇌ [Na(H2O)n-1ClO4] + H2Oの平衡が起こり,無電荷の[Na(H2O)n-1ClO4]が生成すると説明できる。23Naおよび17O-NMR測定の結果,Na+の第一配位圏にClO4-が配位する[Na(H2O)n-1ClO4]の存在が明らかになった。