日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
12 巻, 1 号
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目次
第12回日本在宅ケア学会学術集会
学術集会長講演
特別講演
基調講演
シンポジウム I
シンポジウム II
原著
  • 森鍵 祐子, 大竹 まり子, 赤間 明子, 鈴木 育子, 佐藤 千史, 小林 淳子, 叶谷 由佳
    原稿種別: 原著
    2008 年12 巻1 号 p. 26-34
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,特定機能病院で開発された早期退院支援スクリーニング票を一般の急性期病院に導入し,スクリーニングの妥当性を検討することを目的とした.スクリーニング票は6項目からなり,1項目でも該当すれば院外の機関・職種との連携や社会資源を活用する退院支援(以下,院外連携)の必要ありと判定した.入院患者156人を対象とし,入院時と退院時に質問紙調査を行った.

    その結果,①スクリーニング票の敏感度は87.5%,特異度は66.3%であり.院外連携を必要とする対象者の把握漏れはなかった.②院外連携の必要の有無と院外連携の実施の有無の間には有意な関連があった.また,院外連携を実施した群は未実施群に比べ,スクリーニング項目に該当する割合が有意に高く,スクリーニング票は院外連携が必要な患者を予測できることが示された.以上から,急性期病院におけるスクリ一ニングの妥当性について一定の評価ができた.

研究
  • 村田 伸, 大山 美智江, 大田尾 浩, 村田 潤, 豊田 謙二
    原稿種別: 研究
    2008 年12 巻1 号 p. 35-43
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,地域在住高齢者の運動習慣の有無と身体・認知・心理機能との関連について,前期高齢者と後期高齢者別に検討することである.方法は,前期高齢者96人および後期高齢者85人を対象に,評価した身体・認知・心理機能について,年齢を調整した共分散分析で比較した.その結果,前期高齢者では運動習慣あり群がなし群に比べ,下肢筋力や歩行能力などの身体機能,知的機能や注意機能などの認知機能が有意に良好な値を示した.握力および心理機能には有意差は認められなかった.一方,後期高齢者では身体機能や認知機能のみならず,心理機能にも有意差が認められ,運動習慣あり群がなし群より有意に高値を示した.これらの知見から,高齢者が運動を定期的に行うことの効果は後期高齢者で著明に認められ,下肢筋力や歩行能力などの身体機能,および注意機能の老化抑制効果が期待でき,転倒予防につながる可能性が示唆された.さらには,認知症の発現を抑制する効果や精神的健康状態を高める作用も期待できることから,後期高齢者の効果的な介護予防の手段として期待される.

  • 内田 陽子, 上山 真美, 小泉 美佐子
    原稿種別: 研究
    2008 年12 巻1 号 p. 44-52
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,地域在住高齢者における頻尿・尿失禁の可能性と背景条件との関連を明らかにすることである.対象はA町老人クラブ主催による介護予防講習会に参加し,調査協力の同意が得られ調査票に記入できた320人である.方法は自記式質問紙法とし,主な質問項目は背景条件と頻尿・尿失禁の症状の自覚の有無である,結果,夜間2回以hの頻尿は39.4%,切迫性尿失禁の可能性は約20.0%,腹圧性尿失禁の可能性は30.0%にみられた.便秘のある者や水分摂取が少ない者,体重が重い者は頻尿・尿失禁の可能性が有意に高かった.ロジスティック回帰分析の結果,生活に支障を及ぼす症状として,尿がだらだら常に漏れる(溢流性尿失禁の可能性),昼間8回以上トイレに行く(昼間頻尿),尿意を感じたらトイレまで間に合わず漏れそうになる(切迫性尿失禁の可能性),咳・くしゃみ・笑い・運動時に尿が漏れそうになる(腹圧性尿失禁の可能性),夜間2回以ヒトイレに行く(夜間頻尿)が有意な因子として明確になった.

    以上より,講習会で自己評価を取り入れて頻尿・尿失禁の可能性をスクリーニングできることが示唆された.地域在住高齢者に対しても背景条件を考慮した,頻尿・尿失禁予防および対処方法の指導・相談とフォローアップを行っていくことが必要であると考える.

  • 葛西 好美, 四ツ屋 真由美
    原稿種別: 研究
    2008 年12 巻1 号 p. 53-61
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,訪問看護ステーション利用者の訪問看護サービスの総合満足度と特性との関連,利用者の総合満足度と看護師の総合満足度との関連および相違を明らかにすることを目的とした.A訪問看護ステーション利用者101人と担当看護師5人に無記名自記式質問紙調査を行い,回答の得られた利用者74人と5人の看護師を分析対象とした.

    利用者の総合満足度に有意に関連していた特性は,「医療処置」「在宅酸素療法」「他動運動」であり,利用者・看護師両者の総合満足度の間には正の相関がみられた.両者の総合満足度に関連していた項目は,「利用者・家族の不安を受けとめるかかわり」「金額に見合った訪問看護内容」であり,利用者で関連していた項目は,「訪問看護により入院・人侍しなくてすむこと」「必要な在宅サービス機関への調整」,看護師で関連していた項目は,「緊急連絡先の提示」「看護師への安心・信頼」であった.

資料
  • 小林 裕美
    原稿種別: 資料
    2008 年12 巻1 号 p. 62-68
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    予期悲嘆は,「潜在的な死を前に現れる悲嘆反応」としてLindemannが始めて提唱したが,これについて文献を検討し,ターミナルケアにおける予期悲嘆の定義について探求した.予期悲嘆の研究は,当初より死後の悲嘆反応を緩和できるか否かに焦点があてられ,概念構造の分析が不十分なままであった.予期悲嘆は,死別後の悲嘆とは異なることや,心理社会的.社会文化的な視点も重要であることが明らかとなり,最近では「避けられない死に対する喪失だけでなく.過去,現在.未来にわたる喪失反応すべてを含む」という概念の広がりもみせている.ターミナルケアにおける予期悲嘆は,「家族の死が避けられないと認識したときから.死へのプロセスの間に生じる喪失反応に伴う身体的,心理的,社会的そしてスピリチュアルな変化」とやや広い定義としておき,さらに概念構築していくべきだと思われる.

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