本研究の目的は,地域在住高齢者における頻尿・尿失禁の可能性と背景条件との関連を明らかにすることである.対象はA町老人クラブ主催による介護予防講習会に参加し,調査協力の同意が得られ調査票に記入できた320人である.方法は自記式質問紙法とし,主な質問項目は背景条件と頻尿・尿失禁の症状の自覚の有無である,結果,夜間2回以hの頻尿は39.4%,切迫性尿失禁の可能性は約20.0%,腹圧性尿失禁の可能性は30.0%にみられた.便秘のある者や水分摂取が少ない者,体重が重い者は頻尿・尿失禁の可能性が有意に高かった.ロジスティック回帰分析の結果,生活に支障を及ぼす症状として,尿がだらだら常に漏れる(溢流性尿失禁の可能性),昼間8回以上トイレに行く(昼間頻尿),尿意を感じたらトイレまで間に合わず漏れそうになる(切迫性尿失禁の可能性),咳・くしゃみ・笑い・運動時に尿が漏れそうになる(腹圧性尿失禁の可能性),夜間2回以ヒトイレに行く(夜間頻尿)が有意な因子として明確になった.
以上より,講習会で自己評価を取り入れて頻尿・尿失禁の可能性をスクリーニングできることが示唆された.地域在住高齢者に対しても背景条件を考慮した,頻尿・尿失禁予防および対処方法の指導・相談とフォローアップを行っていくことが必要であると考える.
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