日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
17 巻, 2 号
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目次
巻頭言
特集:「地域包括ケア体制」はいかにして創られたか
研究
  • 横尾 誠一, 大町 いづみ
    原稿種別: 研究
    2014 年17 巻2 号 p. 29-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,訪問看護師の死生観と個人背景の関連を明確にすることである.A 県内52 か所の訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師354 人を対象に調査を行い,221 人を分析対象とした.

    死生観尺度各因子と個人背景の関連を一元配置分散分析,Tukey の HDS 検定,t 検定で分析した結果,「 解放としての死」と,年齢(p = 0.010),臨床経験年数(p = 0.002), 内科系の臨床経験年数(p = 0.033)との間に有意な関連があった.「死への恐怖・不安」と年齢(p = 0.037),「死からの回避」と訪問看護経験年数(p = 0.024)との間に有意な関連があった.「人生における目的意識」は,これまでの看取りに満足感があるほうが高かった(p < 0.001).在宅ターミナルケアの質の向上には,肯定的に死を受容しながらその人らしい人生を全うできるように最期まで,死を回避せず療養者・家族を側面から支えるという目的意識を明確にもち,訪問看護経験を積んでいくことが,看取りの質(満足感)を高め,死生観を高めていくことにつながることが示唆された.

  • 片山 陽子, 長江 弘子, 齋藤 信也, 酒井 昌子
    原稿種別: 研究
    2014 年17 巻2 号 p. 37-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,がんを含む慢性疾患を3 群に分類し,疾患類型別の訪問看護師の予後予測の的中率と予測時点に出現していた利用者の症状との関連を明らかにすることである.訪問看護師を対象に質問紙調査を実施し61 施設から138 票の回答を得た.130 票を分析対象として,判断と実際の差についてχ2検定を実施,終末期2 時点の症状との関連は,各項目種別により一元配置分散分析,Paired t-test,二元配置分散分析を実施した.その結果,訪問看護師の予後予測は3 類型ともに約5 割の的中率であることが明らかとなった.出現していた症状はA 型が疼痛,全身倦怠感,便秘・下痢および浮腫と不安の5 症状,B 型は全身倦怠感,浮腫,呼吸困難と抑うつ気分,C 型は便秘・下痢と全身倦怠感であり,3 類型共通に悪化期にかけての呼吸困難の増強があった.今後は訪問看護師がどのような現象をとらえて,何を指標に判断しているか参加観察等の前向き調査による明確化が課題である.

  • 彦 聖美, 鈴木 祐恵
    原稿種別: 研究
    2014 年17 巻2 号 p. 45-52
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,自宅で家族を介護する者のストレス対処能力といくつかの基本属性との関連を性差からの視点で明らかにする.そのうえで,その特徴を基に支援の方向性を探ることである.2012 年9 月14 日〜10 月30 日に,郵送法自記式質問紙調査を実施した.石川県内の地域包括支援センターと居宅介護支援事業所の合計326 施設に対して,男女の介護者に対する質問紙の配付を依頼した.SOC スケールは,日本語版7 件法13 項目スケールを使用した.男性介護者633 人中414 人から(回収率65.4%),女性介護者727 人中658 人から(回収率90.5%)の回答を得た.その結果,処理可能感が男性介護者のほうが高かった.有意味感は,65 歳未満と健康状態のよい群で,女性の得点が高かった.SOC の性差からみた特徴を踏まえて,SOC の高い部分は「強み」としてその強化に向けた支援,逆にSOC が低い部分は「弱い」部分として,予測的な支援が求められる.

  • 桜井 志保美, 河野 由美子, 平井 真理
    原稿種別: 研究
    2014 年17 巻2 号 p. 53-59
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    【目的】要介護高齢者と同居する家族介護者における慢性ストレスと睡眠障害との関連を明らかにすることとした.

    【方法・結果】対象は,家族介護者36 人とし,自記式質問紙調査と唾液検査を実施した.睡眠評価はピッツバーグ睡眠質問票(PSQI),慢性ストレス指標には主観的ストレス,唾液中コーチゾル,唾液分泌型免疫グロブリンA(唾液s-IgA)を用いた.ストレススコアは,PSQI スコアが増加するほど有意に高くなった(β=0.434,p = 0.014).log s-IgA は,PSQI スコアが増加するほど有意に低下した(β=− 0.411, p = 0.031).

    【結論】要介護高齢者と同居する家族介護者の睡眠障害は,主観的ストレスの増大,唾液s-IgA の低下との有意な関連を認めた.家族介護者の睡眠が障害されるほど,慢性ストレスが高くなった.睡眠の改善は,家族介護者における慢性ストレスの軽減につながることが示唆された.

資料
  • 福島 昌子, 飯田 苗恵, 鈴木 美雪, 牛久保 美津子
    原稿種別: 資料
    2014 年17 巻2 号 p. 60-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,群馬県の訪問看護ステーションにおける東日本大震災前の災害対策と発生後の対応を明らかにし,課題を検討することである.県内92 施設の管理者を対象とし,郵送法による自記式質問紙調査を実施し,記述統計および質的帰納的に分析した.有効回答は34 人(37.0%),職員数は常勤換算にて平均4.9 人,災害研修会の参加は約5 割であった.発災前,災害マニュアル作成は約6 割,利用者・家族への指導は5 割以下,災害対策の視点からの連携は2 割以下であった.発災後,職員の安否確認は約7 割,利用者の安否確認は約5 割実施できていた.計画停電への対応は約6 割,交通手段の確保困難が約9 割,連携は約8 割であった.課題として,①医療機器使用者への災害対策指導の強化,②災害発生時の指揮系統や役割分担表等の活用できる災害マニュアルの作成,③災害マニュアル作成過程での利用者・家族,他機関との連携,④優先車両としてガソリンが確保できる制度の浸透等であった.

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