日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
26 巻, 1 号
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目次
巻頭言
特集「2020~2021年度政策提言検討委員会企画」
総説
  • 岡田 進一, 杉山 京, 小松 亜弥音
    原稿種別: 総説
    2022 年 26 巻 1 号 p. 32-47
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    【目的】システマティックレビューとメタ分析を通じて,在宅認知症高齢者に対するケアマネジメントの有効性に関する評価を行う.

    【方法】和英文献データベースを用いて,2019年2月などに検索を行い,①ランダム化比較試験であること,②対象者が65歳以上の在宅認知症高齢者であること,③ケアマネジメントでは,アセスメント,ケアプランの作成,ケアコーディネーションが行われていることを適格基準として研究の採択を行った.

    【結果】採択された研究は5研究であった.分析の結果,9か月・12か月の5研究では,すべてのアウトカムにおいて有意な差は見られなかったが,18か月の1研究においては,QOLや在宅生活の継続で有意な差が見られた.

    【結論】在宅認知症高齢者に対するケアマネジメントは,長期的には,QOLの向上や在宅生活の継続に有効である可能性はあるが,エビデンスが限定的である.

  • 鈴木 優喜子, 久篠 奈苗, 原田 祐輔, 河田 萌生, 清水 恵, 大橋 由基, 尾﨑 章子, 金盛 琢也, 亀井 智子, 下田 信明
    原稿種別: 総説
    2022 年 26 巻 1 号 p. 48-65
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    【目的】在宅脳卒中高齢者を対象とした訪問リハビリテーションが,これを受けない群と比較して臨床指標が改善するか検討する.

    【方法】PRISMA Statementによる系統的レビューとメタアナリシスを行った(2019年6月13日).適格基準は,①ランダム化比較試験,②65歳以上在宅脳卒中高齢者が対象,③理学療法・作業療法・言語聴覚士いずれかの訪問リハビリテーションによる介入,④アウトカムに下肢筋力・歩行能力・日常生活活動(ADL)能力のいずれかを含む,⑤英・和論文(介入のセッティングは国内外のものを含む)とした.Cochrane Handbook for Systematic Reviews of Interventionsに基づいて,採択した研究の質の評価を行った.量的統合にはメタアナリシスの手法を用い,抽出されたデータをフォレストプロットにより量的に統合した.

    【結果】22研究を採択した.下肢筋力は1研究で報告されたが,改善は認めなかった.歩行能力(I2 = 71.3%),ADL能力(I2 = 91%)の各7研究は,統計学的異質性が高く統合値を提示できなかった.介入期間3か月(SMD = 0.32,95% CI = -0.03-0.68, I2 = 26%,p = 0.07)および9~18か月(SMD = -0.05,95% CI = -0.20-0.11, I2 = 18%,p = 0.57)のサブグループ解析でも,歩行能力には両群間に差を認めなかった.

    【結論】在宅脳卒中高齢者を対象とした訪問リハビリテーションは,現時点で下肢筋力,歩行およびADL能力の改善を示す根拠はない.

原著
  • 小橋 拓真
    原稿種別: 原著
    2022 年 26 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,複数の標的を的確に選んで歩く課題multi-target stepping(Yamada et al., 2013)を参考に,自宅における日常的な動線上に3つの色分けした標的を踏み進める床マーキングトレーニングを実施し,転倒予防効果や簡易に取り組める転倒予防策について検討することを目的とした.対象者は,A地域における要介護認定非該当の健康な高齢者118名(平均年齢77.2±6.5歳)とした.対象者118名中,床マーキングトレーニングを実施する者59名を介入群とし,それ以外の者を非介入群とした.介入群では床マーキングトレーニングを1年間実施し,非介入群では普段通りに過ごしてもらった.介入群は,MMSE(Mini-Mental State Examination)の有意な向上と,TMT-A(Trail making test part A)やST歩行(single-task歩行)とDT歩行(dual-task歩行)の時間差において,有意な減少が認められた.歩行(主課題)と注意課題(副課題)を同時に遂行する床マーキングトレーニングにより注意機能が賦活化し,認知機能向上による転倒予防策につながることが示唆された.また,日常生活上で付帯的に取り組むだけでも転倒予防効果が認められたことから,簡易に取り組める転倒予防策や健康づくりを考察するための一助となると推察された.

  • 堤 千代, 野上 裕子, 田村 眞由美, 山崎 律子
    原稿種別: 原著
    2022 年 26 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅ホスピスボランティア活動において,対人ボランティア経験人数や所属団体への帰属意識が,ボランティア活動に対する認識を通して継続意思を高めるとの仮説を検証することである.在宅ホスピスボランティア6団体の会員196名を対象に質問紙調査を行い,欠損値のない103名のデータを使用して因子分析を行った.その結果,ボランティア活動に対する認識を構成する【団体活動の喜び】,【自己効用感】,【余暇時間による社会貢献】,【自己能力の自信】の4因子を明らかにした.そのうち,対人ボランティア経験人数と帰属意識が有意に関連した【団体活動の喜び】のみが,継続意思に有意に関連していた(標準化β0.52,p<0.001).また,継続意思の低さは信頼できるコーディネーターの存在がいないことや帰属意識と関連し,継続意思には個人的要素より団体活動に対する満足が影響していた.

研究報告
  • 恩幣 宏美, 中西 啓介, 佐名木 勇, 小林 寛子
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 83-92
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    研究目的は中小規模病院における病棟看護師の退院支援の実践内容を明らかにし,課題を明確にすることである.病棟看護師13名に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.実践内容は【患者の強みを活かしたモチベーション向上への働きかけ】【患者・家族と看護師間の良好な関係性の維持に向けた配慮】【退院後の療養行動の安全・維持・実行可能を重視した関わり】【現状と退院後の生活を患者・家族に直視してもらう働きかけ】【退院という生活上の通過点を意識した患者・家族との妥協点の調整】【組織の事情を反映しつつ,患者・家族との一致点を調整】【看護師の専門性を活かして多職種間でリーダーシップを行使する】【多職種間の支援体制の維持・強化にむけたチームマネジメント】であった.看護師は患者・家族の意思決定支援と多職種間のチームマネジメントを実践していたが,自律的な退院支援に向けて看護管理者の実践評価及び承認が重要である.

  • 小林 裕美
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 93-101
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    〔目的〕訪問看護師が行う家族の予期悲嘆支援に活かすための予期悲嘆尺度の使用上の課題を明らかにすることを目的とする.

    〔方法〕A県内の経験3年以上の訪問看護師6名に半構造化面接を行い,質的統合法(KJ法)で分析した.

    〔結果〕訪問看護師は【在宅看取り実現のハードル:家族の受容・介護状況】を捉え,その結果,看護師の【根底にある悲嘆反応への恐怖】により【暗黙の空気感に委ねる関わり】になる反面,【深い心情や関係性への理解】により【予期悲嘆を意識的に確認する関わり】の場合もあった.そのために【尺度使用への看護師の意識】として【積極派と慎重派の双方にある気負い】が課題として明らかとなった.これは【看取る家族と共にする時間】【最期の過ごし方の探求】が影響していた.

    〔結語〕訪問看護師の予期悲嘆支援の実践には,家族の悲嘆反応への恐怖などをチーム内で共有することや悲嘆に対する生涯教育の必要性が示唆された.

  • 小林 れい子, 水戸 美津子
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 102-110
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,介護を必要とし通所リハビリテーションを利用する高齢女性のデイケアでの適応の態様から日々の生活や思い描く生活の捉え方を明らかにしたうえで,満足した生活を営むための新たな支援の有り様を検討することである.研究対象者はデイケアに通う高齢女性8人であり,分析にはM-GTAを用いた.その結果15の概念と概念間の関係の比較から7つのカテゴリーを抽出した.デイケアに通う高齢女性は[自分を問う]ことで[今の自分を引き受ける]ことをしながら[可能性を創る][代わりのものを発見する]過程で[わだかまりを昇華する][有限性を自覚する]ことにより[安寧な日々を得る]ための新たな生活スタイルを生み出していることが明らかになった.

  • 長谷部 美紀, 冨安 眞理
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 111-119
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    高齢ストーマ保有者とその家族が療養生活に順応する過程の訪問看護実践を明らかにするため,訪問看護師9名に半構造化面接を行い質的記述的に分析した.カテゴリーを時間軸で整理した結果,療養生活開始期は【ストーマケアの実施状況と阻害要因を把握する】【家族の担うストーマケアと生活援助の状況を観察する】【家族との距離を推し量り対話を重ね関係性をつくる】【高齢ストーマ保有者と家族との情緒的関係性を把握する】,療養生活継続期は【ストーマケアを続けるための困難に気づき対処を促す】【訪問経過で起こる排泄物の漏れに24時間対処する】【家族の情緒的関係性を柔軟に捉え変化を促す】【家族のストーマケアへの意欲を引き出し対処を促す】【家族の心理的負担を考慮しストーマケアを支える】が導かれた.訪問看護師はストーマケアに伴う困難への対処を促し,心理・経済的負担を考慮し家族の対応能力を高め,生活への順応を支えることが示唆された.

  • 舘向 真紀, 野村 陽子
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 120-128
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,訪問看護ステーション(以下,ステーション)における新卒看護師(以下,新卒)の採用意向とその関連要因を訪問看護管理者(以下,管理者)に対する質問紙調査から明らかにすることを目的とし,A県内94か所の管理者へ郵送による自記式質問紙調査を行った(回収割合47.8%,有効回答数44名).調査内容は新卒の採用経験,採用意向とその理由である.分析はt検定,χ2検定を用いた.

    結果,新卒の採用を「具体的に予定あり」「前向きに検討している」は52.3%であった.採用意向の関連要因として,長い管理者経験年数(p=.001),開設年数の短さ,1か月の利用者数と訪問回数の多さ(各p<.05)が挙げられた.重回帰分析の結果,訪問看護師経験年数も要因であった.

    新卒の採用意向をもつ管理者は経験年数を重ね,ステーションとして地域のニーズが高い特徴があり,持続的な経営戦略として新卒の採用を検討していた.

  • 長内 さゆり, 村松 真澄
    原稿種別: 研究報告
    2022 年 26 巻 1 号 p. 129-136
    発行日: 2022年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:ホームホスピスのスタッフのインタビューからホームホスピスのケアを探求することである。

    方法:ホームホスピスのスタッフ13名を対象に「入居者へのケアに対する思い」のインタビューを実施し、ホームホスピスのケアを質的記述的に分析した。

    結果:スタッフの終末期ケアへの強い関心、働きがいを感じる職場等【ホームホスピスで働く意気込み】を備えていること、スタッフの主体的なケアの実現が可能であることや看護師・介護士のスタッフ間の良好な関係等【安心してケアを提供できる環境】であること等、基盤整備が必要であった。その上で、スタッフが生活者の視点を備え、入居者の生活のペースに合わせる、その人らしさを理解する等の【ケアに向かう真摯な態度】で入居者の穏やかさを醸し出すケアに取り組んでいた。

    結論:ホームホスピスのスタッフは、結果で出された3つを高めることで、入居者の穏やかさを醸し出すケアとなっていた。

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