日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
28 巻, 2 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
目次
巻頭言
特集 第29 回日本在宅ケア学会学術集会
学術集会長講演
公開シンポジウム
在宅ケアの効果を評価する
在宅ケアにおけるビッグデータ/ リアルワールドデータの活用:エビデンスに基づく政策形成に向けて
総説
  • 髙橋 晶, 李 錦純
    原稿種別: 総説
    2025 年28 巻2 号 p. 50-61
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル フリー

    [目的]訪問看護実践における心不全療養者に対する再入院予防の定義を明らかにする.

    [方法]Rodgers(2000)の概念分析の手法を用い,30文献を分析した.

    [結果]属性は【ライフスタイルを重視した包括的アセスメント】【生活に密着した早期からの支援】【予後予測が困難な病態を想定した意思決定支援】【他職種や他機関との一体的な連携・協働による疾病管理】【ケアの継続性を保持】の5つ,先行要件は5つ,帰結は4つが抽出された.

    [結論]訪問看護実践における心不全療養者に対する再入院予防は,「ライフスタイルを重視した包括的アセスメントに基づく生活に密着した早期からの支援を,予後予測が困難な病態を想定した意思決定支援と他職種や他機関との一体的な連携・協働による疾病管理を行い,ケアの継続性を保持すること」と定義した.この実践によりセルフケアレベルの向上と習慣化,療養者と家族の積極的な疾病管理につながり,人生や生活の質に反映され,在宅療養の継続に至ると示された.

研究報告
  • 菊地 真一
    原稿種別: 研究報告
    2025 年28 巻2 号 p. 62-70
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル フリー

    本稿は,福祉用具専門相談員(以下,相談員)が携わる福祉用具サービスなどの業務,人材育成や自己研鑽における実態から課題を明らかにすることを目的とする.研究方法は,首都圏の福祉用具貸与事業所に所属する相談員6名に対する半構造化インタビュー調査を実施した.分析の結果,28のコードが生成され,7のカテゴリーに整理された.これらを「相談員が抱く自意識」,「相談員が携わる福祉用具サービスやモニタリングの業務」,「相談員の人材育成や自己研鑽」という3つの局面に分けて分析を行った.その結果,相談員ごとに視点の異なりがあり,業務量の多さから携わる業務にも支障をきたしていた.また,自己研鑽の意識にも差が生じていた.そこで,福祉用具の選定について一定の水準が図れる手法や,リーダー格の相談員がスーパーバイズできる環境を整えることが,どの相談員においても適正な福祉用具を選定する相談員として役割を果たせると考える.

  • 板持 智之, 梶谷 みゆき
    原稿種別: 研究報告
    2025 年28 巻2 号 p. 71-81
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル フリー

    [目的]在宅で生活する心不全高齢者が心不全という病いをどのように受けとめ,生活しているかを明らかにすること.

    [方法]研究参加者は,心不全の診断を受け,在宅で療養する65歳~70歳代の7名であり,半構造化面接を行いデータ収集した.分析は,SCATを用いた.

    [結果]在宅で生活する心不全療養者の病いの受けとめとして,【変調を察知する身体感覚】【心機能に順応した生活の組み立て】【劇的な病状改善への期待】【段階的に低下する心機能の自覚】【死と隣り合わせの恐怖】【療養生活を補完する家族力】【心不全高齢者が求めるやすらぎ】の7つの概念が生成された.

    [考察]心不全高齢者が心不全を増悪させない生活を送るためには,身体感覚を掴み心機能に合わせた生活の工夫を持つことが重要である.生活指導を行う際には,丁寧に話を聞き,心不全高齢者が持っている知識や技術を生活で活かせるように支援する必要がある.

  • 山本 大祐, 髙橋 芙沙子, 李 錦純
    原稿種別: 研究報告
    2025 年28 巻2 号 p. 82-89
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル フリー

    [目的]中山間地域における在宅看取りを支える訪問看護師の看護実践を明らかにする.

    [方法]中山間地域の訪問看護師8名に半構造化面接を実施し,質的帰納的に分析した.

    [結果 ]在宅看取りを支えた看護実践は,【在宅療養の基盤をつくる】【療養者の望みを受け止める】【在宅療養継続に向けた連携体制を構築する】【合併症予防のために働きかける】【状態の変化に合わせたケア方法を工夫する】【苦痛を和らげ安楽に過ごせるように支援する】【療養者の思いを共有できる場をつくる】【介護している家族の心情に寄り添う】【家族が納得してお別れできるように支援する】の9のカテゴリーが抽出された.

    [結論]中山間地域の訪問看護師は,療養者と家族が安心できる在宅看取りを支援する地域の限られた資源の一つとして,その自覚と姿勢をもって看護を実践していることが明らかになった.

  • 日野 徳子, 渡邉 久美, 中垣 紀子
    原稿種別: 研究報告
    2025 年28 巻2 号 p. 90-99
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,医療的ケア児を受け入れている保育園看護師が実践している感染予防および対策を明らかにすることである.東京都内の認可保育園8施設に勤務する看護師11名を対象に半構造的面接を行い,データを質的記述的に分析した.

    看護師の実践は【健康の維持管理に必要な情報の把握】【保育士・他職種との日常的な連携】【看護師の情報提供によって予防・対策行動の浸透】【接触による感染を防ぐ取り組み】【飛沫・空気による感染を防ぐ取り組み】に分類された.看護師は,園内の状況,医療的ケア児の状態,保護者の希望等に応じ,個別・集団保育を使い分けながら,他児との接触や関わりによる成長体験をさせていた.さらに,医療的ケア・生活・保育のバランスを考え,他職種を含め園・地域全体で対応し,医療的ケア児が保育園に継続して通園できるような支援や環境を整えていた.

  • 小泉 亜紀子, 岡本 双美子, 近藤 麻理
    原稿種別: 研究報告
    2025 年28 巻2 号 p. 100-108
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル フリー

    [目的]在宅での看取りで,主家族介護者が認識していた訪問看護師の多職種連携と,訪問看護師が実際に行っていた多職種連携を明らかにする.

    [方法]看取り事例の主家族介護者7名と,その事例を担当した訪問看護師8名に,半構造化面接を行い質的記述的に分析し考察した.

    [結果]主家族介護者は医師へ報告,確認,相談する本人にとって最適な在宅療養支援サービスへつなげる本人の病状について情報提供するの3つを認識していた.訪問看護師の結果は5つであり,そのうち3つは共通していたが,《療養者・家族の意向を明確にし,他職種に今後の方向性について伝える》《ケアの方向性を家族も含めた関係者で決める》の2つは主家族介護者の結果に認められなかった.

    [結論]訪問看護師が多職種連携について家族に事前に内容を伝え説明を行いケアの方向性を共に考えることで,家族はチームで共に療養者を支えていることを実感し満足することができる.

  • 永野 佳世, 神里 みどり
    原稿種別: 研究報告
    2025 年28 巻2 号 p. 109-117
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/03/27
    ジャーナル フリー

    〔目的〕長期在宅補助人工心臓治療(Destination therapy-Ventricular Assist Device:以下DT-VAD)を受ける患者と介護者への医療と介護の連携協働や支援体制の在り方について明らかにする.

    〔方法〕九州・沖縄圏域で補助人工心臓治療の実施・管理施設と,補助人工心臓装着患者のケア経験を持つ訪問看護ステーションの医療従事者を対象とし無記名の自記式質問紙調査を実施した.記述統計と自由記述は質的帰納的に分析を行った.

    〔結果〕35名の多職種から回答があり,自由記述よりDT-VADの在宅支援システムの構築に必要なこととして【医療と介護の連携と拡充】,【介護者不在を想定したサービスの検討】,【離島・僻地における支援体制】の課題等が挙げられた.

    〔結論〕DT-VAD患者を支援するにあたり,在宅診療医師や訪問介護員,居宅介護支援事業所を含む連携と協働体制の充実が望まれる.

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