日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
13 巻, 1 号
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目次
新理事長あいさつ
第13回日本在宅ケア学会学術集会
学術集会長講演
特別講演
シンポジウムⅠ
シンポジウムⅡ
原著
  • 村松 恵子, 中谷 久恵
    原稿種別: 原著
    2009 年13 巻1 号 p. 30-37
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,療養病床から在宅療養へ移行できる患者・家族への退院支援と実践に関連する要因を明らかにすることである.対象は117 人の療養病床の看護師であり,郵送による自記式質問紙調査を行った.因子分析の結果,4 つの因子からなる29 項目の退院支援内容が明らかになった.実践状況は第4 因子の「患者の自立を目指した生活機能向上への援助」がもっとも高かった.実践に関連する要因では家族や親族の在宅介護の経験がある看護師が「患者・家族の生活に合わせた在宅医療チームによる援助」と「家族を支える援助関係形成への援助」の平均値が高く(P < 0.05),在宅サービスの経験がある看護師においては「患者の自立を目指した生活機能向上への援助」での平均値が高かった(P < 0.05).退院支援の実践能力を高めるためには在宅サービス経験者の知識や実践能力の活用,未経験者が在宅サービスを経験できる機会を提供し,支援していく必要がある.

  • 武田 彩子, 岡本 有子, 葛西 好美, 杉原 幸子, 内田 明子, 馬場 陽子, 山本 則子
    原稿種別: 原著
    2009 年13 巻1 号 p. 38-45
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,訪問看護ステーション管理者の離職意向の要因を検討した.A 県の全訪問看護ステーション191 件に郵送質問紙を送付し,返送された96 件(回収率50.3%)を分析した.7 割以上が離職を考えたことがあると回答した.設置主体が営利法人の場合,管理者の年収が400 万円未満または600 万円以上の場合に離職意向をもつ割合が低かった.「管理者・スタッフの勤務時間」と「予算の大枠づくり」の裁量権が管理者にない場合,給与体系の開示・明確化がなされていない場合に離職意向が高かった.管理者の困難は「訪問看護提供上の負担」「管理上の負担」「運営・経営に関与できない」「運営・経営の責任が負担」の4 因子に分類され,「運営・経営の責任が負担」以外の3 因子が離職意向に関連した.離職意向に関連する困難の項目は母体法人との関係に関するものが多く,母体法人との裁量権をめぐる関係が離職意向に強く影響することが示唆された.

研究
  • 林 裕栄
    原稿種別: 研究
    2009 年13 巻1 号 p. 46-53
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ホームヘルパーの精神障害者への支援に対する思いの構造を質的,記述的に明らかにすることである.研究方法は,M-GTA(修正版グラウンデッドセオリーアプローチ)を用いた.研究参加者は常勤ヘルパー10 人であった.各ヘルパーに個別面接インタビューを行い,それを基に分析した.結果,ヘルパーは≪病気が分からない≫という思いを抱いていた.支援の際には,いままでの介護保険でのケア経験を通して<高齢者ケアとの比較>をしながら,どのように今後支援を継続していくべきか考えていた.支援は,しだいに2 つの方向に分かれた.すなわち,【納得しながらの支援】と【不全感がありながらの支援】であり,これら2 つがコアカテゴリーに位置づけられた.今後の課題として,①ヘルパーの力量形成のための教育・研修の必要性,②第三者によるスーパービジョンの必要性,③ヘルパーを支えるサポートシステムの構築,④同僚同士の支え合いの強化,⑤ヘルパーと利用者の良好な関係の構築およびヘルパーと利用者双方の合意を基にした支援の実施,が挙げられた.

  • 浜崎 優子, 福間 和美
    原稿種別: 研究
    2009 年13 巻1 号 p. 54-62
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    地域における後縦靭帯骨化症(以下,OPLL)患者の心身状況および社会的状況について分析することを目的に,拡大ADL 尺度や難病患者の共通の主観的QOL 尺度(以下,主観的QOL)等について自記式質問紙調査を行った.分析対象者はA 県OPLL 患者友の会105 人であった.

    分析対象者の平均年齢は65.7 歳,発病年齢は平均55.1 歳であった.痛み,しびれ,手足の冷えがあると答えた人はいずれも約90%であった.65 歳以上の人は65 歳未満の人に比べて拡大ADL 尺度得点が12 点満点の人が少なく,主観的健康感の低い人が多かった. 拡大ADL 尺度得点は,手足の冷えがかなりある人は,少しある人およびない人に比べて有意に低下していた.主観的QOL 尺度得点は,痛み,しびれ,手足の冷えのすべてにおいて,かなりある人は,少しある人およびない人に比べて有意に低下していた.

    OPLL 患者を支えるためには,痛み,しびれ,手足の冷えの増悪を最小限にとどめるための日常的なケアの工夫が重要であると思われる.

  • 酒井 禎子, 加藤 光寳, 直成 洋子, 飯田 智恵, 樺澤 三奈子, 内藤 知佐子, 中島 紀惠子
    原稿種別: 研究
    2009 年13 巻1 号 p. 63-70
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    豪雪地域で生活する在宅療養者とその家族の療養生活の特徴を明らかにすることを目的とし,9 事例の訪問看護場面の参加観察と面接調査を行い質的に分析した.結果,積雪や豪雪地域に特徴的な高床式の住居は大きな困難としては認識されていなかったが,外出や療養者の健康管理が困難となる冬季において《移動・外出を支援するサービスの充実》《「来てくれる」専門家の配備》へのニードが高まっていた.また,療養者と家族のセルフケア向上のためには,誤嚥性肺炎を予防するための《口腔ケアの必要性と方法の指導》や《家庭での良肢位とリハビリテーション指導》が課題であった.そのほか,《療養者の視点に立ったサービスの柔軟性》を検討することや,介護者が自らが行っている介護の価値に気づき,要介護者とよりよい信頼関係を築いていくことができるような《介護者を理解し,話を聞く存在とサポートシステムの構築》も重要であると考えられた.

  • 村田 伸, 大田尾 浩, 村田 潤, 大山 美智江, 堀江 淳, 溝田 勝彦
    原稿種別: 研究
    2009 年13 巻1 号 p. 71-77
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,地域在住の女性高齢者26 人(68.2 ± 5.4 歳)を対象に,片足立ち保持時間に関連する要因について検討することである.方法は,片足立ち保持時間と上下肢筋力や足底感覚などの身体機能ならびにTrail making test による注意機能との関連を相関分析ならびに重回帰分析によって分析した.その結果,片足立ち保持時間と有意な相関が認められたのは,足把持力と注意機能であり,足把持力が強いほど,また注意機能が高いほどに片足立ち保持が安定していた.これらの知見から,女性高齢者の注意機能は,片足立ち保持能力に直接的に関与していることが示唆された.

実践報告
  • 古川 照美, 田髙 悦子
    原稿種別: 実践報告
    2009 年13 巻1 号 p. 78-85
    発行日: 2009年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では在宅療養者ならびに家族介護者に資する用具の開発を主眼にした演習プログラムを開発し,そのプログラムを評価するとともに,今後の在宅看護学教育のあり方を検討することを目的とする.研究方法は評価研究であった.看護学生が履修する在宅看護学演習において開発した演習プログラムを実施し,学生が製作した11 点の用具とそのプロトコルについて,訪問看護師および看護学,理学療法学,作業療法学を専門とする教育研究者らによる無記名投票方式を用いて,評価を得た.その結果,用具の「日常生活上の便宜性」「機能訓練上の性能」「社会参加への連動性」「身体的負担への軽減性」「精神的負担への軽減性」「経済性」などが評価された.開発した演習プログラムは,在宅看護における対象の特質の理解,環境の特質の理解への有用性が示唆され,同時に創造性を育み,高めるプログラムであり,今後の在宅看護学教育のあり方を検討するための基礎資料として意義を有すると思われた.

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