日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
2 巻, 1 号
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目次
焦点1
焦点2:在宅ケアの質を保証する戦略
原著
  • 浅川 典子, 髙﨑 絹子, 旭 俊臣, 吉山 容正
    原稿種別: 原著
    1999 年2 巻1 号 p. 32-40
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,痴呆性老人の主介護者の介護負担感の関連要因について主に問題行動を中心として検討し,併せて痴呆性老人の問題行動の尺度開発に向けての基礎資料を得ることである.在宅痴呆性老人の主介護者177名に対して質問紙調査を行った結果,以下の知見を得た.

    1)問題行動について因子分析の結果,9因子が抽出された.

    2)日常生活動作(ADL)・痴呆の重症度・問題行動と介護負担感の間には,それぞれ有意な相関があった.

    3)健康でない者,老人との人間関係が悪い者,1日の介護時間が3時間以上である者は,それぞれそうでない者に比べ介護負担感が有意に高かった.副介護者のいない者は,いる者に比べて介護負担感が高い傾向にあった.

    4)重回帰分析の結果,介護負担感に有意な寄与を示した変数は,問題行動,ADL,副介護者,人間関係,1日の介護時間であり,最も大きく影響していたのは問題行動であった.

研究
  • 津村 智恵子, 臼井 キミ力, 和泉 京子
    原稿種別: 研究
    1999 年2 巻1 号 p. 41-50
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    大阪府下の在宅介護支援機関5か所と訪問看護支援機関4か所の過去1年間の利用者より,介護負担が大きい高齢者を抱える家族112事例を対象とした.この調査より,在宅要介護高齢者の介護期間は平均4.4年と長期化しており,介護家族の高齢化傾向もみられた.また,高齢者虐待は約6割にみられ,事例にかかわる連携機関数が4か所以上と多いほど介護負担の改善率はよかった.

    高齢者虐待は幾種類か重複しており,虐待を生じる共通要因は人間関係の悪さ,介護負担,経済問題であり,高齢者虐待のタイプ別の要因特性も出現していた.

  • 天野 志保, 川村 佐和子, 数間 恵子, 牛久保 美津子
    原稿種別: 研究
    1999 年2 巻1 号 p. 51-59
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅において訪問看護婦が行っている,褥瘡管理における栄養状態の継続的な評価と栄養補給の方法を規準化し、「栄養状態の評価と栄養補給」判断樹(試案)を作成することである.方法は,訪問看護ステーション32施設に勤務する訪問看護婦315人を対象とし,Agency for Health Care Policy and ResearchのGuidelineを参考とした自記式調査票を用いて郵送調査を行った.

    131票(回収率41.6%)の有効回答について分析した結果,実践現場における栄養状態の評価項目として,①栄養状態および影響因子改善に関するアセスメント項目と判断基準,②1日の水分摂取量のアセスメント方法,③食事摂取に影響を及ぼす可能性のある身体的・心理的・社会的障害が,栄養補給の方法として,④栄養状態や水分摂取量の改善を目的とした栄養補給・水分補給の方法が提示された.これらに関する共通の用語や数値について整理し,「栄養状態の評価と栄養補給」判断樹(試案)を作成した.

  • 大野 絢子, 藤野 文代, 矢島 まさえ, 山田 幸代
    原稿種別: 研究
    1999 年2 巻1 号 p. 60-67
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,①高齢者を対象とした訪問指導の実際から,そこで実施された看護技術を抽出,分類することにより「在宅看護技術」として提示する,②在宅の高齢者を対象に,K町の全事例の訪問指導担当保健婦から活動実態を聴取し,研究者,市町村関係者との協議を経て,これからの課題を明らかにすることである.研究方法は,群馬県K町で平成7年度,9年度に行われた訪問指導の記録をもとに,訪問担当者から対象者ごとに訪問の経過を聴取し,看護技術を分類した.さらに,在宅療養の実態,家族への介護方法の指導,看護技術実施上の工夫を聴取し,これからの課題を検討.その結果,①9カテゴリー49項目の在宅看護技術が抽出された.②在宅看護の課題として家庭内の転倒や窒息等事故の予防,生活リズムの確立,病状変化への速やかな対応,家族が行う介護や医療処置の指導,介護者の精神的支援,施設ケアの適切な利用が明らかになった.

  • 江角 弘道, 吾郷 美奈恵, 高井 美紀子, 齋藤 茂子, 栗谷 とし子
    原稿種別: 研究
    1999 年2 巻1 号 p. 68-73
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅ケアを希望する要介護者の急増により,在宅ケアの質と量ともに充実することが重要な関心事になっている.一方,マルチメディアの発達により,遠隔医療の実用化が近づきつつあり,同時に在宅テレケアも各地で試みられている.そのような状況の中,我々はISDNを利用したテレビ会議システムとテレビ電話による双方向の通信を在宅テレケアに適用した.2事例について,3か月間の看護介入により,以下の結果が得られた.

    1)在宅テレケアは,要介護者の寂しさ・不安感の解消をするのに有効な手段となった.

    2)定期的な在宅テレケアは,要介護者に積極性や生活にリズムをつける効果があった.

    3)在宅テレケアにより,要介護者の社会性の拡大が図られた.

    今後,在宅ケアが増加していく中で,在宅テレケアの活用は,新しい質を持った独自の支援方法となりうるものと思われる.

  • 正野 逸子, 岡崎 美智子, 鷹居 樹八子, 白井 由里子
    原稿種別: 研究
    1999 年2 巻1 号 p. 74-85
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅ケアでは訪問看護婦は複数の他職種とかかわり,協働しながらケアにあたっている.このような協働場面において訪問看護婦はどのような役割を果たしているかを明らかにするために,訪問看護婦が他職種と協働で担当している清潔援助場面,問題解決調整場面,緊急対応場面を取り上げ,主に訪問看護婦と介護職の協働ケアに焦点を当てて分析した.対象事例の疾病・障害の程度,ケア内容,家族の介護状況,支援体制,訪問看護婦・介護職の背景の点から分析・検討した.研究対象は福岡県K市および近郊の訪問看護ステーションに勤務している訪問看護婦とホームヘルパーで,担当の10事例におのおの聞き取り調査を実施した.その結果,在宅ケアの協働場面において,訪問看護婦は健康問題の観点から役割を遂行し,他職種に情報提供,指導,メンバーの召集等を実施するなど,ケアマネジャー的な役割を果たしていた.

実践報告
  • 近藤 福次, 三室 明美, 羽田 芳子, 内田 克紀
    原稿種別: 実践報告
    1999 年2 巻1 号 p. 86-88
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    目的:長期尿道留置カテーテルの閉塞に対して,ソリューションG液による膀胱洗浄が有効かどうかを検討する.

    対象と方法:長期尿道留置カテーテル患者(外来患者および在宅ケア患者)で,一回以上の“つまり”(閉塞)があった5症例に,ソリューションG液を用いて膀胱洗浄を施行した.またソリューションG液使用前後で,尿pHと尿中細菌を検査した.

    結果:全例にウレアーゼ産生菌を認めたが,ソリューションG急使用後に菌消失は認められなかった.尿は使用前後でいずれもアルカリ性尿であったが,尿pHは8.0±0.45から7.6±0.49(mean ±SD)に有意に減少し,軽度の尿混濁を5例とも認めたものの,“つまり”などのカテーテル・トラブルは1例もみられなかった.

    結論:尿混濁が強く,アルカリ性尿の認められる症例では,ソリューションG液を用いたカテーテル洗浄・膀胱洗浄は,カテーテル閉塞の予防に有用なものと思われる.

  • 池田 召子
    原稿種別: 実践報告
    1999 年2 巻1 号 p. 89-94
    発行日: 1999年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    川崎市では,老人保健法に基づく機能訓練事業を保健所を中心に実施してきたが,平成8年度,国が新規にB型(地域参加型)機能訓練を創設したことに伴い,これまでの活動について検討を加え,自主グループで活動しているリーダーが中心となって新たな会を結成し,新たな社会資源の担い手としてB型機能訓練を開催可能となるまでに行政が基盤整備を行った.その結果,「かわさき七和会(ななわかい)」(7つの区の和を保つ意)が結成され,発会を記念して初めて全市レベルでの交流会を開催し,多様な地域間交流とさまざまな挑戦を生み出した.

    また,区ごとに七和会(ななわかい)の支部が結成され,障害を持つ本人が中心となって開催するB型機能訓練教室の開設と併せてピアカウンセリング事業にも取り組むことになり,新たな社会資源として力強い活動が展開されている.

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