日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
25 巻, 1 号
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目次
巻頭言
特集 東日本大震災:被災地の10年をふりかえる
総説
原著
  • 田島 貴大, 谷山 牧, 山下 留理子
    原稿種別: 原著
    2021 年 25 巻 1 号 p. 54-64
    発行日: 2021年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    わが国では,在宅介護のニーズが高まる一方,核家族化や介護者の高齢化に伴い,主介護者の介護負担が増大している.さらに,脳卒中療養者は介護度が高く,介護が長期化する特徴があり,介護負担も大きく介護継続に困難を来す.本研究の目的は,介護度の高い脳卒中療養者を介護する,75歳以上の後期高齢介護者(以下,介護者)の介護継続要因を明らかにすることである.介護者7名に半構造化面接を行い,Grounded Theory Approachを参考に分析を行った結果,【介護に対する前向きな姿勢】,【日常生活の中に感じる介護技術の向上】,【安定した夫婦の関係】,【介護者の精神的な安定】,【医療福祉制度の受容と活用】の5カテゴリーが生成され,コアカテゴリー《介護の日常化》が導き出された.

研究
  • 岸 恵美子, 望月 由紀子, 吉岡 幸子, 野尻 由香, 下園 美保子, 坂本 美佐子, 渡辺 昌子, 浜崎 優子, 小長谷 百絵, 野村 ...
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 25 巻 1 号 p. 65-76
    発行日: 2021年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,不衛生な家屋で生活するセルフ・ネグレクト状態の高齢者に,地域包括支援センターの専門職が行っている支援を分析し,効果的な支援を検討することを目的とした.

    専門職6名を対象に2回のフォーカスグループインタビューを実施し,支援に関わる内容を質的記述的に分析した.

    把握・見守り期では,【本人と会うことを目標に根気よく訪問する】【計画的に見守り孤立させない】等の8カテゴリが,初動期では【本人の困りごとを見つけ出す】【生命のリスクが高いことを的確に伝える】等の10カテゴリが,展開期では,【生命のリスクを見極め,生命を守ることを優先する】【つながりができるよう地域を巻き込む】等の9カテゴリが抽出された.

    専門職は,根気よく信頼関係を構築し,生命のリスクを常に見極めながら,本人の困りごとから入り込み支援関係を構築して生活の再構築へと支援しており,地域のネットワークが課題であると示唆された.

  • 春田 陽子, 丹羽 さよ子
    原稿種別: 研究報告
    2021 年 25 巻 1 号 p. 77-85
    発行日: 2021年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,認知症高齢者に対し,短時間の個人回想法の効果を検証し,訪問看護への活用について検討することを目的とした.アルツハイマー型認知症高齢者7名を対象に,個人回想法を週1回,約10分間,計8回(2カ月間)実施した.評価には,認知症に特異的なQOL指標であるDQOL,BPSDを測定するBEHAVE-AD,観察記録表を用いた.DQOLおよびBEHAVE-ADは,Wilcoxonの符号付き順位検定で分析した.結果,DQOLは,自尊感情が介入前より介入1か月後の方が有意に改善した.BEHAVE-ADは,いずれの項目においても有意差はなかった.観察記録表は,表情,喜び・楽しみ,全体的な雰囲気,発言回数,自発性・応答性の項目において得点が上昇した.過去の感情が想起され,肯定的な感情の表出が活性化されていた.認知症になっても自分らしさを取り戻す瞬間が増え,より安定した状態を作り出すケアになるのではないかと考える.以上のことから,認知症高齢者の肯定的な感情が引き出され,訪問看護ケアに回想法を活用できる可能性が示唆された.

資料
  • 木村 チヅル, 中尾 八重子
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 86-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,介護予防・生活支援サービス事業開始後のサービス利用相談時における地域包括支援センター職員の対応に迷う要因とその時の対処を明らかにすることである.地域包括支援センター7か所の職員14人を対象に半構造化面接を実施し,質的記述的に分析を行った.その結果,全地域包括支援センターが相談手順と方針を決めていたものの,職員は【本人の状態と生活状況に関する情報不足】【困難な認知症の進行予測】【本人・家族の希望と専門職の判断の相違】【本人と家族の意向の相違】があると対応に迷っていた.それらの状況に対し【本人の状態や生活状況の把握】【同行訪問による他職種との検討や対応】【センター内での検討】【個別ケア会議での検討】【事業利用と要介護認定両方の申請】を行っていた.職員の適切な相談対応には,他の関係機関や専門職の活用と,センターの相談対応職員へのサポート体制づくりの必要性が示唆された.

  • 須田 彩佳
    原稿種別: 資料
    2021 年 25 巻 1 号 p. 94-102
    発行日: 2021年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:訪問看護師の「2.5人称の立ち位置」と訪問看護のやりがいとの関係を明らかにすることを本研究の目的とした.

    方法:訪問看護師341名に無記名自記式質問紙調査を行った.調査内容は,属性,訪問看護のやりがい,須田・河口による訪問看護師の「2.5人称の立ち位置」尺度とした.分析は,訪問看護師の「2.5人称の立ち位置」尺度と訪問看護のやりがいとの関係についてSpearman順位相関係数を用いて検討した.

    結果:255名の回答を得た(回収率74.8%).対象者の6割以上が訪問看護にやりがいを感じ,訪問看護は魅力的な仕事であり,訪問看護の仕事が好きであると回答した.訪問看護のやりがいと訪問看護師の「2.5人称の立ち位置」尺度全体との間には比較的強い正の相関(ρ=.488~.366,p<.001)がみられ,特に専門職として冷静さと客観的な視点をもつ人ほど,訪問看護にやりがいを感じていた(ρ=.527~.396,p<.001).

    結論:専門的知見から状況を冷静に判断しケアする人ほど,訪問看護のやりがいを感じていた.訪問看護師は専門職として,利用者・家族に心から寄り添い心理的な近さを抱く態度や姿勢を持ち合わせることが訪問看護のやりがいの維持・向上につながると推察された.

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