日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
11 巻, 2 号
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目次
特集 在宅ケアにおける倫理を考える
原著
  • 田代 和子, 杉澤 秀博
    原稿種別: 原著
    2008 年11 巻2 号 p. 30-38
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,利用者と家族介護者の両者を対象にデイサービスに対する総合的満足度に関連する要因を明らかにすることにある.分析対象は,デイサービスを利用している利用者103人と家族介護者119人であり,利用者には面接聴取法で,家族介護者には自記式郵送法で調査を実施した.総合的満足度に影響を与えると予測される要因としては,利用者と家族介護者に共通するものとして「プログラムの各要素に対する満二度」(送迎,リクリエーションなど8項目)を,また,独自の要因として利用者については「家族介護志向」と「コーピング」を,家族介護者については「介護負担感」を取り上げた.分析の結果,①デイサービスに対する総合的満二度とプログラムの各要素の満足度との相関は,利用者と家族介護者のいずれについてもすべて有意であったが,「送迎サービス」に対する満足度と総合的満足度との相関については利用者のほうが家族介護者よりも有意に高かった.②利用者の総合的満足度は「家族介護志向」と有意に関連していたが,家族介護者の総合的満二度と「介護負担感」との関連は有意ではなかった.

  • 加藤 基子, 高砂 裕子
    原稿種別: 原著
    2008 年11 巻2 号 p. 39-48
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    訪問開始時期の看護活動を調べることを目的に,166人の看護師が172人の脳血管障害者に対し初回訪問から2か月間に実施している内容を分析した.看護師の訪問看護経験は平均6.9年(±3.6),脳血管障害者の平均年齢は73.9歳(±12.8),介護度は平均3.9(±1.1)であった.

    短期目標は再発予防,拘縮予防,合併症予防の立案が多く,実施内容は観察・評価・調整,教育・指導,精神的支援,リハビリテーションの頻度が高かった.これらは介護度により異なった.要介護3と4の目標はADLの維持(p<.01)が,実施は座位訓練(p<.05),立位訓練(p<.01),社会的交流支援(p<.01),精神的支援の6項目(p<.05~.001)が高かった.要介護5は排泄,清潔,家族支援が高かった.看護師は利用者に【結びつきを創る】【苦痛を緩和する】【即座に対応する】【意志決定を支える】の4要因(累積寄与率52.38%)からなる「気づかい」をしていた.

    訪問開始時期の看護は,①健康状態の維持と廃用症候群の予防,②専門職として信頼を得ること,利用者の意志決定に添うことに配慮した利用者・看護師関係をつくる「気づかい」からなっていた.

研究
  • 西地 令子
    原稿種別: 研究
    2008 年11 巻2 号 p. 49-56
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    近年,介護支援専門員の精神的健康やバーンアウト等に関する研究により,その低い精神的健康とその要因が報告されている.しかし,介護支援専門員のメンタルヘルスおよびジョブストレスとケアプラン評価との関連性を調査した研究はほとんどない.このため,今回研究は,これらの実態を調査し,その関連性を検証することを目的した.「精神健康パターン診断検査」の結果において,介護支援専門員のSCL得点平均値は基準値より高く,QOL得点平均値は低いことを示した.さらに,「職場ストレッサー尺度,ストレス反応尺度」の結果においては,「過度の負担」「過度の圧迫」(量的負荷ストレッサー)を強く感じ,「抑うつ」「疲労」のストレス反応が高い傾向が示唆された.さらに,ケアプラン自己評価とは,「役割不明瞭」「能力の欠如」(質的負荷ストレッサー)と有意な負の相関を示した.以上のことから,介護支援専門員は,メンタルヘルスが低く,量的負荷を強く感じる傾向にあるが,ケアプラン自己評価は,質的負荷との関連性が大きいことが示唆された.

  • 水島 ゆかり, 浅見 洋
    原稿種別: 研究
    2008 年11 巻2 号 p. 57-64
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅で終末期をすごした高齢者の苦痛を明らかにすることを目的として,訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師を対象に半構成的面接調査を行った.その結果,在宅で終末期をすごした高齢者のうち,訪問看護師に「身体的苦痛以外の苦痛」を表出したのは,62事例中22事例(35.5%)であった.また,抽出された「身体的苦痛以外の苦痛」は39コードで,その意味内容から10のサブカテゴリおよび4つのカテゴリが形成された.在宅で終末期をすごした高齢者は,【身体状況に関する苦痛】【他者との関係に関する苦痛】【生死に関する苦痛】【人生に関する苦痛】を感じていることが明らかになった.訪問看護師は,在宅で終末期をすごす高齢者が苦痛を表出しやすいように誠実な態度でかかわり,その苦痛の理解および軽減に努めることが重要であると考える.

  • 片倉 直子, 山本 則子, 石垣 和子
    原稿種別: 研究
    2008 年11 巻2 号 p. 65-74
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    統合失調症の利用者への訪問看護を行っている看護師に対する教育プログラムを開発し,その効果を検討することを目的に研究を行った.教育プログラムは,統合失調症をもつ利用者への効果的な訪問看護の概念に基づき作成し,4人の看護師に教育プログラムを実施した.教育プログラムは,看護師へのインタビューから①看護師の学習していく過程,②利用者の精神障害者社会生活評価尺度(LASMI)により評価した.収集したデータは,質的にまたは量的に分析された.看護師の学習していく過程は,統合失調症をもつ利用者に対する基本的な態度を,講義のみならず講義後の現場における看護実践を通して体得したことを示していた.LASMIの結果は,担当利用者のすべてに,対人関係能力の向上を認めていた.教育プログラムは効果を認めたが,今後の改善のために,講義と看護実践との統合を図る必要性が示された.

  • 伊藤 智子, 齋藤 茂子, 井山 ゆり
    原稿種別: 研究
    2008 年11 巻2 号 p. 75-82
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域包括支援ネットワーク機能ができるだけ早期に発揮できることを目的に,A県B市の地域包括支援センター,在宅介護支援センターの専門職と研究者で行ったワークショップで得られたデータを基に,地域包括支援ネットワークづくりの現状と課題を質的に分析したものである.研究の結果,地域包括支援ネットワークづくりの課題として,①住民主体の介護予防活動を進めるための技法習得と介護予防教育・地域包括支援センターPR,②家族・地域を視野に入れた介護予防マネジメント,③地域の特性を反映した,うつ・口腔ケア・栄養不足等に関する介護予防サービスの開発,④業務の効率性と目標設定,⑤地域の人相互のネットワークづくりと関係者との情報交換・連絡の5点が明らかとなった.今後はこれらをキーワードにした専門職のスキルアップが必要である.

  • 松井 妙子, 鳥海 直美, 蘇 珍伊, 岡田 進一
    原稿種別: 研究
    2008 年11 巻2 号 p. 83-90
    発行日: 2008年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅高齢者ケアにおける価値認識とアセスメント情報把握に関して訪問看護と訪問介護の職種間比較を行い.両職種の特徴を明らかにするために自記式質問紙を用いた横断的調査を行った.共分散分析の結果,価値認識では「主体性の尊重」の因子において有意な差が認められなかったが,「人権の尊重」の因子において5%水準で訪問介護の調整平均値が有意に高く,アセスメント情報把握では「医療的ケアの必要性」「家族の介護状況と社会資源の利用状況」の因子において0.1%水準で,「ターミナルケアの必要性」の因子において1%水準で訪問看護の調整平均値が有意に高く,「地域社会との関係性と生活意向」「食事と排泄状況」の因子において0.1%水準で訪問介護の調整平均値が有意に高かった.アセスメント情報把握が異なるということは,チームアプローチの重要性を示しており,介護支援専門員関与のもと両職種の積極的なチームアブローチが求められる.

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