日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
10 巻, 2 号
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目次
論檀
原著
  • 大倉 美鶴, 村田 伸
    原稿種別: 原著
    2007 年10 巻2 号 p. 16-23
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は高齢透析患者の透析に対する受け入れ(以下,透析受容)とQOLとの関係を明らかにする目的で,福岡県および佐賀県で外来通院中の高齢透析患者(65歳以上)154人を対象に,透析受容レベル評価尺度とKDQOL-SFTMの2つのスケールを用いて無記名式質問紙調査を行った.その結果,高齢者の透析受容は,KDQOL-SFTM18項目中16項目と有意な相関を認めた.さらに,重回帰分析(A justed R2=0.42)により高齢者の透析受容と関連するQOL因子として抽出されたのは,認知機能,腎疾患の日常生活への影響,心の健康の3項目であった.

    したがって,透析受容は,認知機能,腎疾患の日常生活への影響,心の健康といったQOLとの関連が強く,それらをサポートすることが透析受容を高め,高齢透析患者の生活の充実や健康維持につながる可能性が示唆された.

  • 広瀬 美千代, 岡田 進一, 白澤 政和
    原稿種別: 原著
    2007 年10 巻2 号 p. 24-32
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    家族介護者が感じる介護への否定的評価に対して,緩衝効果および軽減効果を介護者資源から検討することを目的とし,主介護者550人を対象に郵送調査を行った.従属変数は否定的評価を構成する3つの下位尺度,独立変数はストレッサーである問題行動数,介護者の資源とし,二元配置の分散分析を行った.分析の結果,「社会活動制限感」に対しては,主観的健康度,「高齢者への親近感」および社会的活動が軽減効果を,副介護者および訪問看護の利用が部分的な緩衝効果を示した.「介護継続不安感」に対しては,主観的健康度,すべての肯定的評価および社会的活動が軽減効果を,副介護者が部分的な緩衝効果を示した.「関係性における精神的負担感」に対しては,「高齢者への親近感」のみが軽減効果を示した.

    以上のことから,介護者は外的資源だけでなく,肯定的評価のような内的資源によっても自らをエンパワーできることが示唆された.

  • 田中 薫, 小林 淳子
    原稿種別: 原著
    2007 年10 巻2 号 p. 33-42
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    Y県内の介護支援専門員を対象に質問紙調査を行い,精神的健康の実態を日本版GHQ精神健康調査票12項目版(以下GHQ-12)で測定し,関連要因を検討した.その結果,①GHQ-12で測定したGHQ得点は平均5.1点,精神的健康度が低い群の割合は72.9%であった,②重回帰分析の結果,精神的健康には,背景職種,同施設内の介護支援専門員の人数,松山らのストレス因子の「対応の不備」「上司・同僚との連携」「効率性」,職務上の戸惑いの因子の「利用者と家族とのかかわりのむずかしさ」,職務上の責任の程度,研修の効果,主観的健康感,ストレス対処特性の「積極的な問題解決」「あきらめ」「行動・感情の抑制」が関連した,③同施設内の介護支援専門員の人数が多いほど,また,対応,上司・同僚との連携,職務上の効率性がよく,研修が効果的と認識し,主観的健康感が高く,ストレスに積極的に対処するほど精神的健康度が高くなり,利用者と家族とのかかわりのむずかしさや責任を強く感じ,ストレスにあきらめや行動・感情を抑制して対処する特性があるほど低くなった.業務の効率化や研修内容の充実等により,介護支援専門員の精神的健康を良好な状態に保てることが示唆された.

  • 佐藤 鈴子, 菅田 勝也, 阿南 みと子
    原稿種別: 原著
    2007 年10 巻2 号 p. 43-50
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    人工呼吸器を装着した在宅療養者の介護者の睡眠パターンを調べる目的で,人工呼吸器装着在宅療養者の妻である介護者10人(平均年齢59.6歳)と介護をしていない女性(非介護者)10人(同59.8歳)を対象に夜間睡眠ポリグラフィと主観的睡眠評価を比較した.その結果,①介護者は非介護者に比べて頻回に離床(p<0.01)し,離床時間が長かった(p<0.01),②睡眠周期内睡眠段階出現率では,介護者のStage3+Stage4は,第2~第3周期にかけて急激に減少し,周波数解析では,第3周期で介護者は非介護者に比べて1~2Hzの帯域が有意に低く(p<0.05),12~13Hz,13~14Hzの帯域が高かった(p<0.05),③介護者は非介護者に比べ主観的睡眠評価が有意に低かった.

    これらより第2~第3周期にかけてStage3+Stage4(徐派睡眠)が急激な減少を示した人工呼吸器装着療養者の介護者の睡眠パターンは,頻回に離床してケアをした影響によると考えられた.こうした介護者の睡眠パターンは不十分な睡眠であり,主観的睡眠評価の低さと関連があることが明らかになった.

研究
  • 森 千佐子
    原稿種別: 研究
    2007 年10 巻2 号 p. 51-58
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,在宅介護における主介護者の生活習慣と精神的健康および介護負担感との関連要因について明らかにすることを目的とした.その結果,主介護者の精神的健康度は,非介護者と比較して不良な傾向にあった.生活習慣においては,食事時間が不規則で,中途覚醒や不眠があり,自由時間が少ない場合に精神的健康は不良な傾向にあった.また,定期受診をしている主介護者は抑うつ傾向にある人が多かった.さらに,要介護者のADL自立度が低く,認知症状がある場合に,主介護者の介護負担惑は高く,精神的健康は不良の傾向にあると考えられた.

    以上のことから,主介護者の精神的健康を良好に保つためには,要介護者の重度化予防,主介護者の自由時間を確保し,生活習慣を整えるための支援が必要であることが示唆された.

  • 飯吉 令枝, 平澤 則子, 斎藤 智子, 小林 恵子
    原稿種別: 研究
    2007 年10 巻2 号 p. 59-66
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,山間豪雪地に暮らす高齢者の生活行動とサポート・ニーズ,健康関連QOLが,季節によりどのような違いがあるのかを明らかにすることを目的とした.要介護下等以上を除く65歳以上のひとり暮らしおよび高齢者のみ世帯の対象者136人に質問紙による面接調査を実施した.その結果,季節によって日常の暮らし方に違いはあったが,生活行動で季節差がみられたのは「バスに乗って1人で外出」「災害への備え」,サポート・ニーズで季節差がみられたのは「防火・防犯」のみであった.また,「いまの生活を継続したい」人の割合は夏季のほうが多く,健康関連QOLでは,「活力」「身体的健康」は冬季に,「精神的健康」は夏季に得点が高かった.今後は,サポート・ニーズに対応した支援と合わせて,冬季には雪の不安を解消し社会的なつながりを継続できるサポート,夏季には身体的な健康管理と痛みへの対処等への働きかけが「精神的健康」「身体的健康」の維持に向け必要である.

  • 古川 秀敏, 永峯 卓哉, 中尾 八重子, 高比良 祥子, 吉田 恵理子
    原稿種別: 研究
    2007 年10 巻2 号 p. 67-74
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    訪問介護サービス利用者の満足度とその有効性との関連を検討するために,124人の訪問介護サービス利用者(男性41人,女性83人,平均年齢79.0土9.6歳)を対象に,利用者満足度の質問票を用いて調森を行った.因子分析の結果,利用者の満足度は『ていねいなサービス態度と利用後の変化』『利用者本位の接遇』『利用者の信用や信頼を失うヘルパーの態度』『ヘルパー利用による状態の改善』の4因子から構成されていた.サービスの有効性を従属変数,年齢,性別,介護度,居住形態,主介護者の続柄,ヘルパー利用数,利用者満足度の4因子を独立変数として2項ロジスティック回帰分析を行った結果,『基本的なサービス態度と利用後の変化』因子および『ヘルパー利用による状態の改善』因子の有意な関連を認めた.この結果より,ヘルパー利用者は生活の良好な変化に満足し,それによってサービスを有効と考えていることが示唆された.

資料
  • 村上 満子, 島内 節, 佐々木 明子
    原稿種別: 資料
    2007 年10 巻2 号 p. 75-82
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    大腿骨頸部骨折治療後に自宅退院した高齢者を対象に退院後2か月間について受傷前歩行能力と比較した2か月後回復度,そのときの自立度,2か月間のサービス利用状況,それらに応じた必要なケアを検討した.東北隣接2県2病院で骨折治療を受け自宅退院した65歳以上の高齢者52人のうち受傷前独歩者は27人であったが,退院2か月後の独歩者2人であった.受傷前独歩者の在宅サービス利用は5人であった.受傷前よりつたい歩きであった7人は退院後2か月の日常生活全般に要介助の準寝たきりの状態であったが,リハビリテーションがあまり期待できないデイサービスを主に利用していた.退院後の自立支援は,もっとも効果的である退院後2か月間に,受傷前独歩者は歩行能力再獲得,受傷前つたい歩きであった者は寝たきり化防止を目標として,入院時より退院計画を立案し積極的な介入が必要であることが示唆された.

  • 羽原 美奈子, 笹原 千穂, 真渓 淳子, 北山 明子, 大西 章恵
    原稿種別: 資料
    2007 年10 巻2 号 p. 83-90
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    家庭訪問に関する海外文献の収集を実施し,海外における保健師の家庭訪問研究に関して文献的考察を行うことを目的とした.

    米国立医学図書館医学文献データベースPubMed-MEDLINEを用い,「health visitor」「public health nurse」「home visit」「home visiting」「public health nursing」の5語をキーワードに検索したところ157件ヒットした.そのうち日本文献とno abstractを除いた66文献を対象とした.その結果①研究対象の半数以上がアメリカの文献で占められていた.②1990年代以降家庭訪問の効果や評価を主題にしたもの,家庭訪問のモデル構築に関する文献が散見された.③海外における家庭訪問研究の流れは,アメリカを筆頭に訪問効果を示すアウトカム指標の開発などに発展していった概要がつかめた.日本における行政保健師の家庭訪問活動は,件数的に衰退していく感を受けるが,海外文献からはその意義を再認識するとともに,家庭訪問研究を今後さらに発展させていく必要性があることが示唆された.

実践報告
  • 前田 修子, 滝内 隆子, 水島 ゆかり, 中山 栄純, 浅見 美千江
    原稿種別: 実践報告
    2007 年10 巻2 号 p. 91-98
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    2004年5月に,われわれは訪問看護師を対象とした「在宅における感染管理マニュアル」を作成し,A県内の主要訪問看護提供機関に配布した.今回,本マニュアルの内容は訪問看護師が理解できる内容であったか,なにかしらか役立つ内容であったかを中心に,本マニュアルの内容を評価することを目的とし,配布した機関の訪問看護師100人を対象に質問紙調査を行った.調査項目は,属性,本マニュアルの使用状況,各掲載項目に対する理解の程度と有用の程度,追加したほうがよい内容とし,それぞれ単純集計,理解・有用の程度は属性ごとに比較・分析を行った.結果,66人から回答が得られ,約9割が本マニュアルの存在を「知っている」と回答し,うち9割は「読んだことがある」と回答した.すべての項目で,9割以上が「とても理解できた」または「やや理解できた」,8~9割以上が「とても役立った」または「やや役立った」と回答し,属性による相違はなかった.以上の結果から,本マニュアルは,対象の大部分が理解でき,何らか訪問看護に役立つ内容であったと評価できた.

  • 竹森 志穂, 麻原 きよみ
    原稿種別: 実践報告
    2007 年10 巻2 号 p. 99-106
    発行日: 2007年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,実践現場である訪問看護ステーションの状況に応じて,発表者である事例提供者がツールを用いて準備・発表を行うカンファレンスの方法を開発し,カンファレンスの変化を評価することを目的とした.まず研究協力者である訪問看護ステーションのスタッフヘのグループ・インタビューを実施し,ツール案とカンファレンスの変化を自己評価するためのチェックリストを作成した.ツールの開発として,研究協力者がツール案を用いてカンファレンスを実施したあとにインタビューを行い,ツールの最終案を作成した.また,カンファレンスの変化を評価するために,ツール使用前後でチェックリストを実施,ツール使用後に個別インタビューを実施し,分析を行った.その結果,ツールを使用したカンファレンスでは,事例提供者の準備・発表に関する自己評価が高く,同時に参加者も事例を理解しやすくなり,討論の結論もだせるようになるという効果があった.

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