日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
21 巻, 2 号
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目次
巻頭言
「在宅ケア実践の質の向上と推進に関する日本在宅ケア学会のステートメント(声明文)」の作成と公開にあたって
第22回日本在宅ケア学会学術集会
学術集会長講演
特別講演 介護保険システムの持続とケアの質の保障;公助のあり方
シンポジウム 介護予防とセーフティ・マネジメント;自助,互助,共助,公助をつなぐ
原著
  • 橋本 通子, 井上 由美, 西田 真寿美
    原稿種別: 原著
    2018 年 21 巻 2 号 p. 33-41
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域包括ケアシステムの一環として設立されたコミュニティ・レストランで高齢者に食事を提供する過程を通して,レストランの調理スタッフと管理栄養士が協働することの意義を明らかにすることを目的とした.調理スタッフ7人を対象に個別インタビューを行い,SCATの手法により概念分析を行った.その結果,①調理者として高齢者への配慮を通し食の意味を知る,②安心感をもって調理の技術と知識を習得し地域の人に喜ばれる食事づくりを目指す,③信頼を寄せる管理栄養士の後押しを得て若い人に助言しながら食事を提供する,が抽出された.地域住民である調理スタッフは管理栄養士と協働することによって調理者として成長し,食を通した地域活動を担う人材として期待される.管理栄養士の役割にはコミュニティ・エンパワメントを活用した地域支援の可能性が示唆された.

  • 村山 佳代
    原稿種別: 原著
    2018 年 21 巻 2 号 p. 42-49
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    民法は認知症者など精神障害者の不法行為の損害を家族に賠償させてきた.しかし家族が一律にこの責任を負うと在宅介護の阻害要因となる.本稿は賠償責任主体と徘徊事故防止措置を整理し,今後の事例に示唆を与えることを目的とした.方法は,認知症者が線路に立ち入り死亡し鉄道会社が家族に賠償請求した2016年最高裁判決と徘徊による介護事故判例の分析を行い,徘徊事故に関する賠償責任を総合的に研究した.2016年最高裁判決は家族であることを理由に認知症者の監督義務はないとし,精神障害者の他害行為責任を負う準監督義務者の判断要素を示した.分析の結果,この要素は介護者・被介護者の状況と関係性の考慮を求め,親族関係を決定的としないなど家族の負担減を示した.また,介護事故判例の分析により,裁判所は介護者に高度な徘徊防止措置を求めていないことがわかった.これらは,在宅介護を選ぶ家族介護者と認知症者の人権保障につながるであろう.

研究
  • 荒木 亜紀, 山口 忍
    原稿種別: 研究
    2018 年 21 巻 2 号 p. 50-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,向老期にある人々が自分の人生の最終段階を見据え,最期までよりよく生きるための考えや生活上の工夫を当事者から得た結果を基に作成した「最期まで健康に生ききるための向老期における健康教育プログラム案」の専門職による評価および修正を目的とした.高齢者看護に精通した全国の老人看護専門看護師79人,A県の地域包括支援センター看護職57人を対象に,プログラム案と調査票を郵送し,自記式質問紙調査を実施した(回収率34.6%).プログラム案の目的・目標・構成・内容を「適切」「やや適切」「やや不適切」「不適切」の4段階で評価してもらい,内容妥当性指数を算出した.「やや不適切」「不適切」を回答した場合に記載された理由はその内容を整理・分類して検討し,プログラム案を一部改定した.内容妥当性指数は,ほとんどの調査項目で0.80以上を示したことから内容妥当性はおおむね得られた.今後はプログラムの実践を行っていく必要がある.

  • 中谷 久恵, 金藤 亜希子, 大﨏 美樹, 坂井 晶子
    原稿種別: 研究
    2018 年 21 巻 2 号 p. 59-66
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    ケアマネジメントの事例検討を学ぶホームページを制作し,ケアマネジャーが動画事例からケアマネジメントを学ぶICT教育を行った.本研究の目的は,eラーニングによる事例検討が,ケアマネジャーの教育に有効であるかを明らかにすることである.

    調査対象者はeラーニングへの研究参加に任意で同意した44人のケアマネジャーである.受講者は動画をみて,出題される6つのコンテンツを4週間で受講した.アクセスは296回で1人平均6.7回であり,受講時間帯は18〜23時台までが43.4%であった.コンテンツの評価として最も役立ったのは「受講者の投稿閲覧」が77.8%であった.学習目標は,認知領域(5項目)と情意領域(5項目)には全員が到達し,精神運動領域(2項目)は29.6〜37.0%が到達していた.eラーニングの有効性は「ある」が85.2%,「ない」14.8%であった.

    ケアマネジメントの実践を学ぶICT教育は,自己研鑽のみでなく現任教育として有効な教育方法であることが示唆された.

  • 河野 由美子, 桜井 志保美
    原稿種別: 研究
    2018 年 21 巻 2 号 p. 67-75
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,認知症グループホームの介護職に対してストレスの実態と虐待の認識の関連を明らかにすることを目的とした.

    調査は,認知症グループホームの介護職645人を分析対象者とした.郵送法による無記名自記式質問紙調査を行った.日本版バーンアウト尺度をストレス指標とし,虐待に関する個人の認識と職場環境,日常的介護行動における虐待の認識の有無との関連について2項ロジスティック回帰分析を行った(p < 0.05).

    分析結果から,虐待に関する職場環境の問題とストレスとの関連が明らかとなった.また,日常的介護行動における虐待の認識とストレスの関連が明らかとなり,新たな知見といえる.ストレスを低減することで,認知症高齢者の尊厳に配慮した日常的介護行動が遂行される可能性が示唆された.

  • 牛 嘯塵, 杉澤 秀博
    原稿種別: 研究
    2018 年 21 巻 2 号 p. 76-85
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,中国徐州市に在住の中年世代を対象に,老親介護における介護サービスの利用希望に影響する要因を解明する.要因として,従来の研究で着目されてこなかった介護サービスに関する意識と孝養意識などの心理的要因に着目した.調査対象は当該市に居住し,老親を介護している45〜59歳の中年世代320人であり,調査方法は自記式調査票を用いた留置法であった.分析例数は154であった.従属変数は,「家族介護のみ」「家族介護と在宅サービス両方」「在宅サービスに依存(在宅サービスのみと施設入所)」の3カテゴリーとし,独立変数には,上記の要因を含む心理的要因,介護サービスニーズ要因,社会経済階層要因を位置づけた.「家族介護のみ」を基準カテゴリーとし,多項ロジスティクス回帰分析を行った結果,制度抵抗感の強い人では「家族介護と在宅サービス両方」の利用希望が有意に弱かった.在宅サービスの理解度が高い人ほど「家族介護と在宅サービス両方」の利用希望が有意に強かった.介護している親の人数が多いほど,また体調が悪いと感じた人ほど,「介護サービスに依存」の希望が有意に強かった.要介護の老親の住所までの所要時間が30分〜1時間という人では,30分以内(同居も含む)のところに住む人より,「家族介護と在宅サービス両方」の利用希望が有意に強かった.

資料
  • 楢原 理恵
    原稿種別: 資料
    2018 年 21 巻 2 号 p. 86-91
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,新卒看護師を訪問看護ステーションで採用するために,訪問看護ステーションの管理者が望む教育面での方策について記述し,新卒訪問看護師を育成するための基礎資料とすることを目的とした.分析対象者は,訪問看護ステーションの管理者9人とし半構造化面接を行い,質的統合法(KJ法)を用いて分析を行った.その結果,【利用者の個別性を重視したOJT】【医療機関との連携教育】【看護教育機関との連携教育】【連携教育機関での学びの統合】の4つが抽出された.今後,新卒訪問看護師を採用するための方策として,地域に存在する訪問看護ステーション・医療機関・看護教育機関が新卒訪問看護師の学びを統合するための教育システムの構築が必要なことが示唆された.

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