日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
7 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
目次
焦点:地域では今一さまざまな在宅ケア活動の現状と課題一Part 2
原著
  • 前田 修子, 水島 ゆかり, 斎藤 好子
    原稿種別: 原著
    2004 年7 巻2 号 p. 34-42
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    【目的】痴呆性高齢者の介護者の悩みと希望する支援を日英で比較することにより,日本における家族介護者への支援を検討する.

    【方法】日本とイギリスの痴呆性高齢者の介護者を対象に,悩み,社会資源の利用状況,希望する支援等について質問紙調査を行った.

    【結果】①日本229人,イギリス70人の有効回答が得られた.②介護者の性,続柄,健康状態,同居家族人数,副介護者の有無の割合に差がみられた.③介護者の悩みは日本のほうが割合が高かった項目が多く,特に介護による疲労・ストレスに関連することであった.④対処困難時等に希望する支援は.日本では「預けられる所」の割合が高く,イギリスでは「対応する方法」「相談」の割合が高かった.また,介護継続に当たり希望する支援は.日本では「ショートステイ回数の増加」,イギリスでは「専門家の相談」が最も高かった.

    【結論】日本における痴呆性高齢者の介護者支援として,介護者の身体的・精神的負担の軽減と休息の確保に重点を置いた痴呆性高齢者を預けられるサービスの提供が重要である.

  • 盛田 寛明, 伊藤 日出男, 桜木 康広, 勘林 秀行
    原稿種別: 原著
    2004 年7 巻2 号 p. 43-49
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,リハビリテーション資源に恵まれない地域において,理学療法士(以下PT)が同行して行う訪問指導(以下訪問指導)が,在宅障害者の日常生活活動(以下ADL)および家族主介護者との家族関係に及ぼす影響について前方視的に検証することである.青森県内5町村の在宅障害者とその家族主介護者を対象とした.分析対象者は,介入群57例(平均年齢69.5±10.7歳),対照群27例(平均年齢70.5±8.5歳)であった.訪問指導を約2年半の期間実施し,6~24か月間の前後2時点でADLと家族関係を評価した.その結果,訪問指導の有無とADL自立度の変化との間に関連性が認められ,介入群ではADL自立度が向上する場合が多くなる傾向が示された.その程度は対照群に比べて3.89倍であった.一方,訪問指導の有無と家族関係の間に関連性があるとはいえないことが示された.結果から,リハビリテーション資源に恵まれない地域における訪問指導の意義が示唆された.

  • 矢富 有見子, 井上 智子
    原稿種別: 原著
    2004 年7 巻2 号 p. 50-57
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,在宅酸素療法患者の食生活に対する認識と行動を明らかにし,効果的食生活の支援を検討することを目的とした.外来通院中のHOT患者15名を対象に半構成的面接を実施し質的分析を行った.その結果,食生活に対する認識と行動に関し7カテゴリーが抽出された.カテゴリー間の関連を検討し,【いつもの食事・活動を保つことを重視する】カテゴリーを中核とする食生活に対する認識と行動が構造化され,患者が症状や困難な状況のなかで判断をし,対処しようと試行錯誤していることが明らかになった.

    適切な食生活のための看護支援として,患者の認識と行動との隔たりを埋めるために食生活上の困難を緩和する支援や,不足する認識の獲得と誤った認識の修正への関わりが必要である.患者が疾病と食生活を関連させて認識し,適切な行動をとるために,看護職者は専門的・継続的役割が求められている.

  • 福井 貞亮, 岡田 進一, 白澤 政和
    原稿種別: 原著
    2004 年7 巻2 号 p. 58-66
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,要援護在宅高齢者の排泄,入浴・清潔保持,食事行為が困難になる状態と,それらの行為での介助状況と関連する要因を,基本動作,認知,問題行動要因から明らかにするものである.調査設計は横断的調査である.アセスメント用紙を用い,ケアマネジャーが要援護在宅高齢者への聞き取り調査からデータ収集を行った.本研究では二次分析を行った.調査対象者は321名である.分析結果は,1)行為が困難な状態には,基本動作と認知の状態が,介助状況には,基本動作と問題行動の状態が強く関連していた.また,2)介助状況には,基本動作や認知,問題行動要因以外にも強く関連する要因の存在が示唆された.本結果から,介護支援専門員がアセスメントを行う際には,1)行為の困難さは基本動作とともに認知の状態も踏まえた視点からの理解が必要であること,2)介助が必要となる状況を理解するためには,問題行動や環境的な要因などにも配慮しなければならないこと,が示唆された.

  • 村田 伸, 忽那 龍雄
    原稿種別: 原著
    2004 年7 巻2 号 p. 67-74
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅障害高齢者に行った足把持力トレーニングの転倒予防効果を明らかにすることである.

    分析対象は3か月間の足把持力トレーニングを行えた在宅障害高齢者女性48名と,足把持力トレーニングを行わなかった在宅障害高齢者女性16名である.

    足把持力トレーニング介入前後における身体能力の変化は,コントロール群は変化を認めなかったが,介入群には足把持力,片足立ち保持時問,重心動揺,歩行速度の改善が認められた.さらに,1年後の追跡調査において,介入群の転倒経験者が有意に減少した.

    以上のことから,在宅障害高齢者の転倒予防プログラムとして,足把持力トレーニングが有用であることが示唆された.

研究
  • 鳥海 直美, 岡田 進一, 白澤 政和
    原稿種別: 研究
    2004 年7 巻2 号 p. 75-82
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,訪問介護事業者への苦情の内容を明らかにし,苦情の有無に関連のある要因を分析した.大阪市内の居宅サービス事業者の管理者832人を対象とする自記式の郵送調査を行い,有効回答のうち訪問介護サービスを提供している366票を分析対象とした.苦情の内容を集計した結果,利用者とヘルパーとのマッチングなどを含むコーディネートに関する苦情や利用料に関する苦情が多くみられた.また,苦情の有無との関連では,契約件数の増減,サービス提供を断るケースの有無,ケアマネジャーとの連携ケアプランへの希望反映度との問に有意な関連がみられた.本研究の結果,苦情を軽減するためには,ケアマネジャーと連携しながら,利用者のニーズを正確に把握したうえで,ニーズに即したサービスを柔軟に提供することが重要であることが明らかになった.また,このようなサービスの調整にかかわるサービス提供責任者の役割の重要性が示唆された.

  • 渡邉 知子
    原稿種別: 研究
    2004 年7 巻2 号 p. 83-90
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅失語症者が日常生活で行っているコミュニケーション行動の特徴について明らかにするためにクラスター分析を行った.失語症友の会会員の介護者を対象にCADL-FQを使用した自記式調査票による郵送法調査を実施し,有効回答68通の分析結果は以下のとおりであった.

    1.在宅失語症者は平均年齢65歳,失語症期間は約10年,原因疾患の9割は脳血管障害であり,約半数はADL自立していた.

    2.在宅失語症者は「話す」「日常生活における言葉のやりとり」に比較して「聞く」得点率が高値であった.

    3.「日常生活における言葉のやりとり」で実用性が高いとされた項目は「医療職者の指示に従う」「テレビの操作」であった.

    4.「日常生活における言葉のやりとり」のクラスター分析の結果《日常生活で習慣化された行動に伴うコミュニケーション》,《拡大ADLに伴うコミュニケーション》,《ジェスチャーや表情による情報伝達が難しいコミュニケーション》の3クラスターが形成された.

資料
  • 樋口 京子, 久世 淳子, 森 扶由彦, 島田 千穂, 篠田 道子
    原稿種別: 資料
    2004 年7 巻2 号 p. 91-99
    発行日: 2004年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,高齢者を看取り終えた直後の「介護者の満足度」の構造を明らかにすることである.方法は,訪問看護を受けた後,自宅または自宅以外で死亡した65歳以上の利用者704人の「介護者の満足度」を示す発言内容の記載文を内容分析の手法で検討した.

    その結果,満足度の構造は,①在宅療養開始時から死に至るまでのプロセス,②「死の迎え方」,③死別に対する意味づけ・解釈,に分類された.構成要素として①では「本人の自宅での過ごし方」「介護への評価」「サポートを評価」,②では,「安らかな死」「予期せぬ死」「見守りの中での死」「死にかかわる対応をした罪責感」「死亡場所の評価」など,③では,「介護者の死に対する肯定的な意味づけ」「死に対する尽きない思い」が抽出された.

    「介護者の満足度」は,①高齢者本人の満足度をある程度反映すると思われる要素と,②介護者自身の介護への評価と,介護者の死別の準備に関する要素からなることが示唆された.

feedback
Top